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【文京学院大学オピニオンレター】匂い・香りと共存していくためには

学校法人文京学園

【文京学院大学オピニオンレター】匂い・香りとutf-8

ストレス・マネジメントや認知症予防にも


文京学院大学 オピニオンレター Vol.15

提言者:小林 剛史 (人間学部教授 専門:生理・認知心理学、神経科学)
文京学院大学人間学部心理学科長。研究テーマは、嗅覚を介した情報処理、感情と記憶、嗅覚認知機能の脳イメージングなど。嗅覚検査技術の評価にも従事。筑波大学大学院心理学研究科心理学専攻博士課程修了。独立行政法人産業技術総合研究所客員研究員、法政大学、東洋大学、目白大学、東京成徳大学等兼任講師歴任。研究論文(共著含む)に『人工観葉植物と精油の対提示が心理・心臓血管反応に及ぼす影響』(生理心理学と精神生理学、2013)など。



■匂い・香りに敏感な日本社会

近年、公共の場で体臭や口臭などの匂いや衣服の洗剤、柔軟剤の香りが周囲に不快感を与える“スメハラ”がクローズアップされています。衛生意識の強い日本は海外よりも匂いや香りに敏感であると言われ、無香料や無香性の商品も根強い人気を誇っています。その一方、匂いや香りを必要以上に排除しようとするあまり、本当は臭わないのに自分が臭いと思い込んでしまう自臭症に陥ってしまう人も存在します。しかし、本来匂いや香りには食欲を増進させたり、心身をリラックスさせたり、生活を楽しませる効能があることも事実であり、決して「匂い・香り=悪」という訳ではありません。加えて最近の研究では、匂いや香りの効能が認知症の予測や予防、改善にも有効であることが判明し、その効能へさらに注目が集まっています。

私たちの生活から匂いや香りを排除するのではなく、うまく活用しながら共存していくためにはどうすれば良いのでしょうか。匂い・香りのメカニズムをはじめ、記憶や心との関係性を解説しながら、日常生活への取り入れ方について考えてみたいと思います。



■嗅覚のメカニズム

そもそも私たちが匂いや香りを感じる仕組みはどうなっているのでしょうか。匂いや香りを感じる嗅覚は人間の五感の中でも、脳の原始的な領域へ直接伝わる最も「古い」感覚であると言われています。嗅覚は、鼻から無意識レベルの感情や記憶といった機能をつかさどる大脳辺縁系へ直接伝わるのに対し、他の4つの感覚(視覚・聴覚・触覚・味覚)は視床という脳部位からいったん大脳の感覚一次野における処理を経てから、大脳辺縁系へ到達します(右図参照)。匂いや香りが大脳辺縁系へ直接伝わる分、人間の意識的な情報処理の背景にある、無意識の情動や記憶との関係を示唆する研究者も多いのです。人間の主観的・意識的な経験は、こうした無意識の情動や記憶から形成されるため、嗅覚を刺激することは、認知的機能を刺激することにもつながると考えられています。このような背景から、嗅覚はストレス・マネジメントや認知症の予防においても注目され、そのメカニズムについて研究が進められています。

例えば、匂いや香りの趣向のほとんどは生まれつき備わっている先天的なものではなく、後天的なものであることが判明しています。バラと糞便の匂いがする箱を用意して2歳児に匂いを嗅いでもらい、どちらの箱に入る傾向があるか調査を行ったところ、バラ、糞便を選んだ幼児の数はそれぞれ約半々という結果になりました※。人間の匂いや香りの好みは先天的に備わっているものではなく、成長段階での「これは危険、汚いから触ってはいけない」という周囲の教えや自らの経験によって趣向が確立していくのです。

また、ある匂いや香りを嗅ぐと過去の情景が広がったり、思い出が想起されたりした経験のある人は多いと思います。このような現象は心理学では「プルースト現象」と呼ばれ、私の研究室では、このプルースト現象を実験的に再現することで、嗅覚の特性を探る研究を進めています。ある実験では、クレヨン、線香など懐かしいと感じるような数種類の匂いと、それらを表す絵を使って、嗅覚・視覚と記憶を思い出す時間(=想起時間)の速度を調べました。その結果、匂いを嗅ぐ嗅覚刺激のみによって想起された記憶は、その想起時間が早い場合は3年以上前の昔の記憶だった一方、絵を見る視覚刺激のみによって想起された記憶は、その想起時間が早い場合は1年以内の最近の記憶が多い結果となりました。この結果から示唆されることは、ある匂いを嗅いで過去に引き戻されるような感覚が速やかに生じるほど、それは過去の懐かしい記憶であることが多く、一方、絵を見て想起される記憶にはそのような傾向があまり見られない、ということです。このように匂いや香りは、人の強い情動や懐かしさを伴う記憶と密接に関わっていることを示す研究が蓄積されてきています。



■匂い・香りと共存するために

これまで述べたように、匂いや香りの嗜好は一人ひとりの経験によって形成され、個人差があります。ある人にとっては、好きな香りだったり良い思い出を想起させる匂いだったりしても、別の人にとっては好ましくない匂い・香りの可能性もあるのです。しかし、私は匂い・香りを身に付けていけないということではなく、むしろ活用した方が私たちの生活にとってプラスになるのではないかと考えています。

確かに、匂い・香りの体験や嗜好は人それぞれなので、適量を守り周囲への配慮を怠ってはなりません。人によっては匂いで化学物質過敏症といったアレルギー反応が生じる可能性があり、加えて心理的な拒否反応が起こることもあるので、公の場では特にデリケートになった方が良いでしょう。匂い・香りに関する問題として、身近な例では柔軟剤がわかりやすいかもしれません。柔軟剤を使用する人は、自分の服が香ると柔軟剤の香りと認識できますが、他人は何の香りかわからないので不快な香りに感じやすいのです。加えて、使用する人は柔軟剤の香りに順応していくので、最初は少量でも段々物足りなく感じるようになり、使用量が増えていくケースもあります。メーカーは大変努力をされていますが、万人に受ける香りを作り出すことは極めて困難であり、できる限り多くの人に嫌われない香りを最大公約数的に用いるのが現実です。

しかし、限度の越えた匂い・香りの排除は、ほんの僅かな匂いでも「臭うのではないか」と強迫観念を助長し、匂い・香りにまつわる習慣や文化を衰退させかねません。匂い・香りを取り入れて、共存していくためにはどうすれば良いのでしょうか。私は次の3つのポイントが大切であると考えます。


1.他者を受容・容認する文化の形成

まず、中長期的視野として、自分の嗜好と異なる存在をむやみに排除するのではなく、他者を受容・容認する文化を形成することが求められます。例えば、フレグランス先進国と名高いフランスでは、匂いや香りを無臭にこだわって排除するのではなく、異なる香りを混ぜて香りを整えるという文化、アロマを医療として認める文化が定着しています。衛生的とは言えない時代に貴族が使用したことで発展したという文化的背景がフランスにはあるにせよ、現代に他者を許容する文化が元々あれば匂いや香りを取り巻く日本の環境は随分と変わるでしょう。さらに、他者に対する許容度、自分に対する許容度が低くなってしまう現象は、多様性を阻み、日本が持つ豊かな文化の存続をも阻害する可能性があるのではないでしょうか。


2.「全か無か」の思考の抑制

他者や自身に受容的な文化の醸成は、そのまま「全か無か」の思考との抑制につながるでしょう。無臭にひたすらこだわるような文化性は、臭いが有るか・無いか、といった思考に繋がりがちです。そもそも絶対無臭といった環境は存在せず、無臭を追求すれば強迫的な思考や態度が促進されることが懸念されます。これは決して我々にとって幸せなことではありません。今そこにある匂いや香りを受けとめ、吟味し、それが自分にとってどのような意味や価値があるのかを評価できれば、いわゆる悪臭に対しても、それがどの程度危険なのか、といったより緻密で繊細な評価ができるでしょう。例えばファッションも、良い・悪い、だけで評価するようなものではないように、あらゆる刺激は、より繊細に、より多様に受けとめられるべきものだと考えます。


3.敏感な他者へのケア

とはいえ、他者への配慮も忘れてはならないポイントです。他者へ寛容な文化が形成されたとしても、自分の好きなだけ無尽蔵に香りを身に付けて良いというわけではありません。最初に設定した適量を維持することが大切です。トイレに行って最初は臭うと感じてもやがて何も感じなくなる、という経験が多くの人にあるのではないでしょうか。人間の嗅覚は数分で周囲の匂いに順応します。自分では「足りないかな」と感じるくらいでも、最初の適量を意識する周囲への気遣いが必要です。さらに化学物質過敏症で苦しむ人がいるということも忘れてはなりません。空間が密閉されるような空間で、こうした症状を持つ人がいるかもしれない状況では、香りを纏うことについて慎重になる姿勢も必要です。こうした姿勢も、受容的で、多様性を認める文化に含まれるものであることを忘れてはならないでしょう。

以上3つの視点を踏まえ、私たちは匂い・香りを適切な形でもっと生活の中へ取り入れることができるのではないでしょうか。匂い・香りに対する文化がもっと育てば、過度な無臭・消臭文化も緩和されるかもしれません。匂い・香りを身近な日常生活の中で取り入れることで、その効能や可能性を最大限引き出していくことができるのではないでしょうか。

※・・・綾部早穂・小早川達・斉藤幸子 (2003) 「2歳児のニオイの選好—バラの香りとスカトールのニオイのどちらが好き?」『感情心理学研究』第10巻, 第1号, 25-33


<文京学院大学について>
文京学院大学は、東京都文京区、埼玉県ふじみ野市にキャンパスを置く総合大学です。 外国語学部、経営学部、人間学部、保健医療技術学部、大学院に約5,000人の学生が在籍しています。本レターでは、文京学院大学で進む最先端の研究から、社会に還元すべき情報を「文京学院大学オピニオン」として提言します。


<本件に関するお問い合わせ先>
文京学院大学(学校法人文京学園 法人事務局総合企画室) 三橋、谷川
電話番号: 03-5684-4713


関連リンク
文京学院大学
http://www.u-bunkyo.ac.jp/

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