【神奈川工科大学】楽器の音色評価技術を開発 ― ギターなどの音色を定量的に評価することが可能に ―
神奈川工科大学
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神奈川工科大学(神奈川県厚木市/学長:小宮一三)工学部電気電子情報工学科 板子一隆教授がギターなどの楽器の音色を定量的に評価する方法を開発しました(特許出願済み)。これまで個人の感覚に頼らざるを得なかった音色の評価が、目に見える形で行えるようになります。
1.発明の背景
これまでギターなどの撥弦(はつげん)楽器の音色(おんしょく)の評価は人の感覚で行われてきており、例えば、伝統的高級手工ギターと安価な量産型ギターでは音色に大きな違いのあることが認められています。クラシックギターの銘器は美しく澄んだ音色(シルキートーン)であるといわれています。
しかし、入門者がお手頃な楽器を選ぶ際に感覚だけに頼っていると何が良い音なのか判断できず、お店のスタッフのお勧めに頼らざるを得ないことも多いでしょう。従って、この音色の良し悪しを定量化することができれば、楽器選びの一つの指標を得ることができると考えられます。さらに、楽器の特性に合わせた新たな奏法技術の開発や楽器製作時の評価基準として役立つものと考えられます。
そこで、撥弦楽器の音色を定量的に表す一つの方法を新たに開発しました。
2.当該特許について
ここでは、撥弦楽器の一つであるクラシックギターの例を示します。これまでクラシックギターに関する研究は種々行われてきましたが、音色を定量的に表す検討は行われていませんでした。本発明では、音色は音に含まれる倍音の分布の違いにより形成されることに着目しています。具体的には、クラシックギターの音を周波数分析し、音楽理論の音階論を用いることでこの中に含まれる基音(弦の音程を表す最も低い周波数成分)より高い周波数成分(倍音)を調和性によって分類し、そのバランスを評価係数により数値化します。この評価係数は、倍音が基音と調和し、澄んだ音色(シルキートーン)ほど高い数値となります。
一例として、伝統的な高級手工ギターの代表格であるホセ・ラミレスⅢ世(スペイン:1964年製)とお手頃な価格の量産型ギター(オーストラリア製)の開放弦の撥弦音(1弦~6弦を左手で何も押さえないで弾いた音)でこの評価係数を実験により比較したところ、全ての弦でラミレスⅢ世の評価係数の値は量産型ギターの値を上回る結果となり、感覚評価と整合した特性が得られています。
3.今後の展開
今回の技術を実用化し、さらに発展させることにより、楽器を選ぶ際の指標としてだけでなく、材料や構造等の違いを活かした様々な楽器作りに活かしたり、楽器の特性に合わせた新たな演奏法や楽しみ方を考案したりと音楽の世界をより豊かにすることに貢献していきます。
なお、本技術を搭載した音色評価装置を5月10日(土)~11日(日)に開催されるギターの展示会・サウンドメッセin OSAKA(大阪市)に出展してデモを行い、実用化を目指していく予定です。
【特許概要】
・発明の名称 : 音色評価システムおよび音色評価方法
・特許出願番号 : 特願2025-012800
※取材の際には、事前に下記までご一報くださいますようお願い申し上げます。
【関連リンク】
サウンドメッセ in OSAKA 2025に電気電子情報工学科が出展いたします - 神奈川工科大学 研究推進機構
https://cp.kanagawa-it.ac.jp/event/2877.html
▼本件に関する問い合わせ先
神奈川工科大学 研究推進機構
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住所:〒243-0292 神奈川県厚木市下荻野1030
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【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/
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記事提供:Digital PR Platform