ウッドマッケンジーがエネルギー転換の見通しを発表:日本は2050年までに炭素の排出量を60%削減する見込みがある一方で、エネルギー安全保障リスクが存在
Wood Mackenzie

データセンターからの電力需要が高まる中、新たなLNG供給源の確保、エクイティ・オイルの上流開発の拡大、再生可能エネルギーの加速的導入が急務に
ウッドマッケンジーは、このたび日本のエネルギー転換の見通しを発表しました。日本が2050年までに炭素の排出量を約60%削減する見込みがあり、気温上昇を2.6℃に抑えるシナリオでは世界的な目標を上回る成果を上げている一方で、引き続き石油、ガス、重要鉱物資源におけるエネルギー安全保障上の課題を抱えていることを指摘しています。
ウッドマッケンジーで会長兼主席アナリストを務めるサイモン・フラワーズは、次のように述べています。「日本は炭素の排出量削減において着実な進展を見せているものの、エネルギー安全保障上の懸念に対処する必要があります。多くのLNG契約の更新時期が迫っているにもかかわらず、日本企業の上流開発は限定的です。AI対応型データセンターの需要も高まる中、日本は増大するエネルギー安全保障リスクを管理するために、多方面で断固たる行動をとる必要があります。」
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出典: Wood Mackenzie Lens ETS
AIによる電力需要の増加によって数十年にわたる減少傾向が逆転
ウッドマッケンジーでは、日本の電力需要は2040年までに20%増加すると予測しており、ここ数十年で15%減少してきたものが逆転すると見込んでいます。AIとハイパースケールデータセンターが最大の要因であり、データセンターの需要は現在の総消費量の2%から2034年までに最大7%増加すると見通しています。
ウッドマッケンジーでアジア太平洋地域担当副会長を務めるジョシュア・グゥは、次のように述べています。「この動きは構造的転換を示しており、当社の予測では政府の第7次エネルギー基本計画で示された範囲の上限に近い成長を示唆しています。」
このような需要の急増は、系統の安定性を維持しつつ、脱炭素電源である原子力発電所の再稼働や再生可能エネルギーの導入を加速させるという、差し迫った必要性を生み出します。ウッドマッケンジーは、安定供給に資する系統用蓄電池に対する支援強化がなければ、太陽光発電量の成長は政府目標の下限値にとどまると予測しています。
米国による供給が市場を再編する中、LNG契約が重要な更新時期を迎える
日本は、2020年代末に向けて複数の長期LNG契約の更新時期を迎えます。供給の安定性を確保するためには相当量の新規契約が必要になります。日本は従来、マレーシア、インドネシア、ロシア、カタールからLNGを調達してきましたが、米国メキシコ湾岸からの納入コストが高額であるにもかかわらず、LNGの日本の買い手からは米国からの長期にわたる供給を求める傾向が強まっています。
サイモン・フラワーズは次のように指摘しています。「これは重要な検討事項であり、特に米国メキシコ湾岸からの輸送コストが、最も高額になる日本にとってはなおさらです。ただし、輸送コストの上昇に直面するものの、供給源の多様化、柔軟性の向上、そして、異なる価格連動方式へのアクセスが実現することも事実です。さらに米国からは相当量の新規供給が提供されることになります。」
地理的な多様化に加え、米国産の軽質LNG(リーンLNG)に対応するためには、日本はインフラと操業体制を適応させる必要があります。これはオーストラリア、インドネシア、カタール、マレーシアが主に供給する重質LNG(リッチLNG)とは異なるものです。そのため、ウッドマッケンジーは、契約期間、価格連動方式、発熱量仕様の多様化がレジリエンス維持において不可欠であることを指摘しています。
需要に追い付かないエクイティ・オイルの生産量
日本は国内での石油とガス資源が限られているため、これまでは国際投資に依存して供給を確保してきました。現在、日本は多様な上流ポートフォリオを保有していますが、保有資源の大部分はインドネシア、UAE、オーストラリアに集中しており、これら3カ国で日本企業の商業保有量の半分以上を占めています。それにもかかわらず、エクイティ・オイルの生産量は依然として国内需要を下回っており、日本の消費量は1日あたり約430万バレル(boe/d)であるのに対し、エクイティ・オイルの生産量は1日あたり約210万バレルにとどまっています。
また、日本のエネルギーミックスにおいて、天然ガスが最もレジリエントな化石燃料であることから、天然ガスの確保を補強することについて重点的かつ適切な取り組みが行われてきました、日本での液体燃料に対する需要が、依然としてガス燃料への需要を上回っている点を認識することが重要です。液体燃料の消費量は、現在の330万バレル/日から2050年までに170万バレル/日に減少すると予測される一方、日本企業のエクイティの生産量は約100万バレル/日です。ウッドマッケンジーは、海外での継続的なM&Aに加え、探査への重点的な取り組みが日本の上流ポートフォリオに戦略的優位性をもたらす可能性があることを指摘しています。
水素、アンモニア、二酸化炭素の回収・貯留(CCS)推進の鍵となる炭素価格設定
日本は200億米ドル 規模のGX(グリーントランスフォーメーション)基金、水素社会推進法、低炭素アンモニアの差金決済契約(CfD)制度を通じ、低炭素テクノロジーにおけるリーダーとしての地位を維持し続けています。
日本は、二酸化炭素回収・貯留(CCS)について、2030年までに300万トン、2050年までに2,000万トンの回収能力を確保することを目標に掲げています。ウッドマッケンジーでは、政策支援をさらに強化することによって最大で1,250万トンの潜在能力が回収されると試算しています。国内での貯留資源が限られるため、日本は地域の貯留拠点に二酸化炭素輸出を計画しており、これには二国間および多国間の協力が必要になります。
多様化と新たなパートナーシップに焦点を当てた重要鉱物戦略
日本は、特にEV用バッテリーや大規模なエネルギー貯蔵に関連する35種の鉱物を、戦略的に重要な鉱物と指定しています。中国が世界のサプライチェーンを支配する中、日本は先進的なバッテリー製造において中流として重要な役割を担っています。供給の安全性を強化するために、日本は新たなパートナーシップの構築を進めています。
ジョシュア・グゥは次のように述べています。「さらなる資源の確保と、鉱物や金属の精製能力の増強に向けたパートナーシップの推進は、日本がエネルギー安全保障の目標を達成するうえで重要な要素になります。日本はさらなる投資と、既存の供給網に代わるサプライチェーンの構築に重点的に取り組む必要があります。」
さらにグゥは次のようにまとめています。「日本は低炭素化政策において正しい方向に進んでいますが、需給ギャップを解消し、エネルギー安全保障を強化するためには、これらの分野にわたる継続的な支援が不可欠なのです。」
さらに複雑化する世界のエネルギー情勢
エネルギーの転換によって、世界のエネルギー情勢の複雑さが浮き彫りになりました。どの産業やセクターも単独で分析することはできず、結果を形作る制約を理解するには、相互にある依存関係を慎重に考慮する必要があります。多くの関係者はエネルギーの未来について、化石燃料から再生可能エネルギーに移行するだけと考えてきましたが、現実ははるかに複雑です。
ウッドマッケンジーで最高経営責任者を務めるジェイソン・リュウは次のように述べています。「エネルギーシステムを形成する力関係を理解するには、あらゆる産業に関する広範な視野と、投資理論をストレステストするための深い分析力の両方が求められます。この組み合わせにより、システム内の真の制約となる要因を特定し、真の成長機会を見極め、すべての人々にエネルギーを確保するために何を変えるべきかを示すことができるのです。」
お知らせ
ウッドマッケンジーは、ジェイソン・リュウとサイモン・フラワーズの共著の新刊「
Connected」を発表しました。「Connected」は、世界のエネルギーと天然資源分野における混乱、リスク、そしてチャンスを乗り切る意思決定者にとって強力なガイドとなる一冊です。気候変動が加速し、地政学的緊張が市場を再編する中、エネルギーシステムはかつてないほどに相互依存性を増しています。「Connected」はこうした相互依存関係が発展してきた過程について理解することが、エネルギーの未来を形作る最も重要な意思決定に役立つことを明らかにします。
ウッドマッケンジーによる日本の最新分析
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Japan’s Energy Plan(日本のエネルギー計画) | Wood Mackenzie-
Japan sweeps the dust from its energy strategy(日本がエネルギー戦略を刷新) | Wood Mackenzie-
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ウッドマッケンジーについて
ウッドマッケンジーは、エネルギーおよび天然資源分野全体に関する分析やインサイト、独自テータを提供する世界的なリーディングカンパニーです。50年以上にわたり、世界で影響力をもつエネルギー生産者、公益事業会社、金融機関、政府などのクライアントの意思決定を支えてきました。世界のエネルギーシステムがかつてないほど複雑かつ相互に関連されるなか、ウッドマッケンジーは新しい視点を用いて今後の可能性を再定義する「Intelligence Connected」(つなげられたインテリジェンス)を発表しました。Intelligence Connectedでは、30か国にわたる2,300名の専門家が、グローバルのバリューチェーン全体をひとつにつなげ、明確かつ相互につながりを持った視点を提言します。現代は、セクター別の視点だけでは不十分な時代です。ウッドマッケンジーでは、比類なき独自データと鋭い分析力を、Synoptic AIによって強化し、商品、市場、地域を横断した戦略的優位性をクライアントに提供します。詳細は
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