NISAは年末調整・確定申告が必要?一般・特定口座の場合は?運用のメリット・デメリットも解説!

NISA制度は2024年1月から新NISAに移行し、長期の資産形成を目指す方にとってはさらに使いやすくなった制度です。

しかし、実際にNISAの運用を検討する際、年末調整や確定申告などの手続き面で不安を感じる方も多いでしょう。

NISAでは年末調整や確定申告は原則不要ですが、ケースによっては必要な場合もあります

そこで今回は、NISAでは年末調整や確定申告が必要なのかについて、口座の種類別に解説します。

NISAを運用するメリットやデメリットも詳しく解説するため、NISAの運用を検討している方はぜひ参考にしてください。

目次

NISAの年末調整や確定申告は原則不要

NISAで得た利益は非課税の扱いになるため、年末調整や確定申告は原則不要です。

確定申告とは個人が1年間の所得を計算し、所得税や住民税などの金額を確定させる手続きです。

また、年末調整は会社が従業員の給与から源泉徴収した源泉所得税に対しておこなわれます。 

NISAは投資家にとって税制上のメリットを享受できるのみならず、手続きの手間も省ける頼もしい制度です。

長期的な資産形成を目指す投資家には、おすすめの制度といえるでしょう。

NISAで確定申告が必要なケース

NISAの年末調整や確定申告は原則不要ですが、例外的に確定申告が必要なケースも存在します。

NISAで確定申告が必要なケースを詳しく解説します。

ETFの配当金を「株式数比例配分方式」以外で受け取る場合

NISAで投資する場合でも、ETFの分配金の受け取り方によっては、税金を支払う必要が生じます。

ETFとは、東京証券取引所などの金融商品取引所に上場している投資信託です。

ETFからは利益に応じて分配金を得られますが、分配金の受け取り方を「株式数比例配分方式」に設定することで、NISAの非課税のメリットを享受できます。

しかし、分配金の受け取り方法を「株式数比例配分方式」以外、たとえば「登録配当金受領口座方式」や「従来方式(配当金領収証方式)」に設定した場合は分配金が課税になるため、確定申告が必要になる場合があります。

なお、ETF以外の投資信託商品は、受取方法にかかわらず分配金が非課税となります。

旧NISAで20年の非課税期間が終了し課税口座で払い出した場合

旧NISAの非課税期間は20年間と定められていたため、期間が終了して資産を課税口座に移動したあとは、確定申告が必要です。

非課税期間が終了した場合、NISA口座の資産は課税口座に移されるため確定申告の対象となります。

なお、2024年1月から始まった新NISAでは非課税保有期間が無期限になっています。

すでにNISA口座を持っている方は、自動的に新NISAの口座に移行されるため 、切り替えの手続きは不要です。

NISA口座以外で確定申告は必要?

NISA口座以外で運用をおこなった場合、確定申告は必要なのかについて解説します。

一般口座

NISA口座以外の上場株式を運用、管理する口座を一般口座と呼びます。

 一般口座での取引には、確定申告が必要です。

自身で1月1日から12月31日までの1年間の売買損益を計上し、翌年の定められた確定申告の期間で手続きをおこなわなければいけません。

ただし、次の条件をすべて満たす給与所得者は、勤め先の会社での年末調整により所得税額が決まるため、確定申告は不要となります

  • 収入金額が2,000万円以下
  • 利益が20万円以下
  • 給与の支払いが1箇所のみ

一方で、損失を計上した場合は「損益通算」と「繰越損失」の制度を利用するために、確定申告が推奨されるケースも存在します。

損益通算は1年間の利益から損失を相殺することで税負担を抑える制度であり、繰越損失とは控除しきれない損失を翌年以降に繰越す制度です。

上記のように、ケースバイケースで確定申告の必要性は異なります。

特定口座(源泉徴収あり)

特定口座とは、取り扱い可能な金融商品が一部に限定される口座です。 

源泉徴収ありの特定口座では、利益が確定した段階で源泉徴収がおこなわれるため、原則として確定申告をおこなう必要はありません。

ただし、先に解説したETFの例のように、配当金の受取方法を「株式数比例配分方式」に設定していないと、受け取る配当金の確定申告をおこなう必要が生じます。

また、一般口座と同様に複数の証券口座において損益通算や繰越損失をおこなう場合には、確定申告が必要です。

自身の状況を正確に把握した上で、確定申告を適切におこないましょう。

特定口座(源泉徴収なし)

源泉徴収なしの特定口座の運用で譲渡益が出た場合は、原則確定申告が必要となります。

ただし、一般口座の場合と同様、年間の利益が20万円以下の場合や、給与の支払いが1箇所のみで収入金額が2,000万円以下の場合は、確定申告の必要はありません。

また、一般口座や源泉徴収ありの特定口座と同様に、損失が発生した場合は損益通算と繰越損失による税負担軽減のメリットが受けられるため、確定申告をした方がよいケースも存在します

 一般口座との大きな違いは「年間取引書」を発行できる点で、確定申告をおこなう際に必要な損益がわかりやすく記載されるため、特定口座での運用の方が確定申告の難易度を下げられます。

NISAのメリット

NISAは少額から始められる点や、自身の都合のよいタイミングで引き出せる点など、税制上のメリット以外にもさまざまな魅力があります。

NISAを始めようか悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

少額から始められる積立投資

NISA口座で始められる投資信託は、少額から積み立てられる投資です。

 証券会社によっては毎月100円、1,000円、1万円など、少額の単位で積立投資をおこなえます。

家計の負担にならない範囲で長期的な資産形成を目指す方には、おすすめの制度といえるでしょう。

また、各種手数料が無料に設定されている金融機関も多いため、手続きにかかるコストも抑えられます

毎月の最低購入金額は金融機関毎に異なるため、公式サイトで確認してください。

非課税期間が無制限

NISAの大きなメリットの一つは、非課税期間が無制限であることです。

旧NISAでは一般NISAで5年間、つみたてNISAで20年間と非課税期間に制限がありましたが、新NISAでは無期限になりました。

投資を長期間にわたって非課税で運用できるため、資産形成において大きな利点となります。

特に、長期的に安定した成長を目指す投資家にとっては、魅力的な制度です。

同じ金額を定期的に購入できる積立投資

NISAでは積み立て投資の場合、同じ金額を定期的に購入できます。

積み立てでは、「ドル・コスト平均法」と呼ばれる手法が用いられています。

ドル・コスト平均法は定期的に一定額の投資信託を購入する手法で、平均の購入価格を引き下げられる特徴があります。

最適な売買のタイミングを見計らう取引は難易度が高いですが、NISAの積み立てであればリスクを抑えた運用が可能です。

いつでも引き出すことができる

NISAは自身の好きなタイミングで引き出せます。

引き出しの回数制限も設けられていないため、老後の資産形成を目指した長期運用以外にも、車やマイホームの購入、子どもの教育資金などさまざまな用途に利用できます。

また、NISAを引き出す際の手数料は基本的に無料です。

ただし、売却する商品によっては信託財産留保額と呼ばれる解約に関わる費用が発生するケースもあるため注意しましょう。

いつでも積み立てを一時停止・積立額変更ができる

NISAはいつでも積み立てを一時停止、または積立額の変更が可能です。

一時停止や金額変更を希望する場合は、NISA口座を保有する金融機関で手続きが可能です。

ライフスタイルの変化などで生活に余裕がなくなった場合でも、柔軟に対応できます。

NISAのデメリット

NISAのデメリットを解説します。

NSAをはじめる前には、デメリットや注意点についても十分理解しておきましょう。

運用商品が限られている

NISAは運用商品が限られているため、投資スタイルによってはデメリットとなるでしょう。

たとえばつみたて投資枠の対象商品は、「金融庁が定める基準を満たした長期投資に適した投資信託」が対象になります。

そのため、幅広い商品から投資先を検討したい投資家にとっては、NISAの限定的な対象商品はデメリットになるかもしれません。

一方で、信頼できる商品を選びたい投資初心者の方にとってはメリットといえるでしょう。

短期間では大きな利益が得られない

NISAは短期間では大きな利益を得にくい制度です。

NISAは長期的かつ分散投資が前提の制度になるため、運用のリスクを抑えられるメリットがあります。

一方で、値動きを見計らって取引し、利益の最大化を狙うような投資には向いていない制度といえるでしょう。

元本割れのリスクがある

NISAは元本割れのリスクがあります。

NISAは長期的かつ分散投資で、リスクを抑えた運用が可能です。

しかし、元本が保証される訳ではないため、評価額が下回る元本割れのリスクは0ではありません

そのため、資産運用は余裕資金でおこなう意識を持つとよいでしょう。

NISAを上手に運用するポイント

NISAは長期的な資産形成を目指すうえでメリットが大きい制度です。

しかし、上手に運用するためにはいくつかのポイントが存在します。

NISAを上手に運用するポイントを詳しく解説するため、ぜひ参考にしてください。

長い期間で投資をする

NISAは長い期間をかけて投資をする意識を持ちましょう

投資は長期的におこなうことで「複利効果」を得られます。

複利効果とは、投資運用により得られた利益を再投資し、より大きな利益を生み出す効果です。

長期投資を前提としたNISAでは、基準価額が上昇するたびに途中解約をすると効率的に資産形成ができません。

NISAでの投資は数年~数十年と、長い目で見る運用を心がけましょう。

分散投資をおこなう

NISAを運用する際には、分散投資が効果的です。

特定の資産に集中して投資をおこなうとリスクが大きくなってしまいます。

投資先を分散させることで、一つの投資資産で損失が出た場合でもほかの資産の利益と相殺できるため、リスクを軽減できます。

たとえば株式、債券、リートなど、異なる値動きの資産に分散するとよいでしょう。

また、日本、新興国、先進国など、異なる地域の資産に分散投資をしてリスク管理をおこなうのもおすすめです。

NISAに関するよくある質問

NISAに関するよくある質問と、回答をまとめました。

NISAについて疑問を持つ際は、ぜひ解決の参考にしてください。

新NISAと旧NISAの違いは?

旧NISAでは「つみたてNISA」と「一般NISA」という2つの枠がありましたが、2024年からの新NISA制度では「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という新しい枠に変更されました

新NISAへの移行により、それぞれの枠組で、非課税で運用できる投資可能額や保有限度額が拡大されています。

新NISAでは「つみたて投資枠」の年間投資額が120万円まで、成長投資枠では240万円までと設定されており、あわせて年間最大360万円の投資が非課税の対象になります。

また、非課税保有限度額は「つみたて投資枠」で最大1,800万円まで、そのうち1,200万円は「成長投資枠」で運用可能です。

新NISAになったことで、より柔軟かつ長期的な資産形成が可能になり、投資家にも有利な制度へと進化しています。

つみたて投資枠と成長投資枠は併用できる?

2024年からの新NISA制度では、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の併用が可能です。

旧NISA制度では「つみたてNISA」と「一般NISA」が併用できませんでしたが、新NISAではつみたて投資枠で年間120万円、成長投資枠で年間240万円までの投資可能です。

それぞれの枠を併用できるようになったことで、長期的な積み立てを行いつつ、成長を見込める投資にも柔軟に対応できます。

NISAの運用は勤務先に報告が必要?

NISAの運用を開始した場合でも、勤務先に報告の必要はありません。

NISAの運用口座開設にともなう手続きは、金融機関や証券会社との間で完結します。

勤務先を絡めて手続きする必要はなく、NISAの運用を会社に知られる心配もないでしょう。

また、仮に勤務先が副業を禁止している場合でも、NISAは副業には該当しないため問題ありません。

NISAで所得控除を受けられる?

NISAで積み立てた金額や利益は、所得控除の対象ではありません

NISAとよく似た制度に、iDeCo(個人型確定拠出年金)があります。

iDeCoはNISAと同様に利益が非課税扱いとなり、加えて掛け金の全額が所得控除の対象となります。

NISAとiDeCoを混同して、NISAでも所得控除が受けられると勘違いしないように注意しましょう。

まとめ

今回はNISAは年末調整や確定申告が必要なのかを口座の種類別に解説し、運用のメリットやデメリットも紹介しました。

NISAの運用で確定申告が必要かどうかはケースバイケースです。

自身のNISA口座の状態を正確に理解し、必要な手続きを遅滞なくおこないましょう。

NISAは長期の資産形成に適したメリットが多く存在する制度です。

コツコツと少しずつ資産を形成したい方は、本記事を参考にNISAの運用を検討しましょう。

※本記事は可能な限り正確な情報を記載しておりますが、内容の正確性や安全性を保証するものではありません。
※本サイトと提携する企業のPR情報が含まれます。

目次