転職先が見つからないまま退職すると、収入が途絶えるため経済的な不安を抱えて就職活動をしなければなりません。
そのようなときは、失業保険の活用がおすすめです。経済的な支援を受けられるため、就職活動に専念できます。
受給のための条件はありますが、受給資格がある方ならハローワークで手続きをおこなえば受給が可能です。
今回は、ハローワークで失業保険を申請する流れを解説します。受給額や受給期間も併せて解説するため、ぜひ参考にしてください。
ハローワークで失業保険(基本手当)を受け取れる条件
失業保険はすべての失業者が受給できるわけではなく、定められている条件を満たした場合のみ受給可能です。
ここでは、ハローワークで失業保険(基本手当)を受け取れる条件を紹介します。
離職日以前に雇用保険の被保険者期間が一定以上ある
ひとつ目の受給条件は、離職日からさかのぼった一定期間内に、雇用保険の被保険者期間が一定以上あることです。
雇用保険は雇用されている立場の方であれば強制的に加入の義務が生じるため、基本的には働いていた期間になります。
ここでの被保険者期間とは、離職日から1か月ごとに区切った期間に、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上、または賃金支払いの基礎となった労働時間が80時間以上ある月のことです。
参照元:ハローワークインターネットサービス – 基本手当について
計算の起点が離職日となるため、暦の月とは必ずしも一致しない点には注意が必要です。
必要な期間は離職の理由によって異なり、一般離職者は2年間のうちに通算12か月以上、特定受給資格者や特定理由離職者であれば1年間のうちに6か月以上となります。
ハローワークで求職の申し込みをおこなっている
次に就職する意思があることも条件のひとつです。
就職する意思の認定はハローワークでおこないますが、ハローワークで求職の申し込みをおこなえば就職する意思があると認められます。
また、特定の機関で職業紹介を受けたり、再就職に必要な資格の試験を受けたりといった活動も、求職活動として認定されます。
就職活動の状況の確認は4週間に1度おこなわれますが、基本手当の受給には4週間で少なくとも2回以上の求職活動が必要です。
参照元:ハローワークインターネットサービス – 雇用保険手続きのご案内
失業状態である
また、失業状態であることも条件になります。
ここでの失業状態とは単に職がない状態ではなく、就職する意思と就職できる能力があるにもかかわらず、就職できない状態のことです。
そのため、上述のように就職する意思が確認できない場合の他、病気やケガなどの理由ですぐに働くことが難しい場合も対象外となります。
失業状態の認定はハローワークにて4週間に1度おこなわれるため、受給者は4週間ごとに状況を報告する必要があります。
ハローワークで失業保険の手続きをする流れ
失業保険の申請はハローワークでおこないますが、経験がなければ不安な方も多いのではないでしょうか。
複雑な手続きはありませんがいくつかのステップがあるため、事前に確認するとスムーズに申し込めます。
ここでは、ハローワークで失業保険の手続きをする流れを解説します。
1:申し込みに必要な書類を準備する
失業保険の申し込みには必要な書類がいくつかあるため、まずは書類を準備します。
準備する書類は次のとおりです。
- 離職票
- 個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カードなど)
- 身元確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)
- 証明写真
- 本人名義の通帳やキャッシュカード
離職票は退職を証明する書類であり、正式名称は雇用保険被保険者離職証明書です。
退職から2週間ほどで、以前の勤務先から届きます。
2:ハローワークで求職申し込みをする
次に、必要書類をハローワークに持参して提出し、求職の申し込みをします。
求職の申し込みは、まずハローワークに設置された端末で求職情報の仮登録をおこない、窓口で手続きをおこなう流れです。
このとき、ハローワークの職員との間で面談をおこない、受給資格の決定と離職理由の判定がおこなわれます。
3:受給説明会を受ける
受給資格が決定されると、その場で雇用保険受給説明会の日程を知らされるとともに、「雇用保険受給資格者のしおり」を渡されます。
そのため、指定された日程の雇用保険受給説明会に出席し、雇用保険制度に関する説明を聞きましょう。
また、雇用保険受給説明会では雇用保険受給資格者証と失業認定申込書を渡される他、最初の失業認定の日程も知らされます。
4:求職活動をする
失業認定の際には求職活動をおこなっていることが条件となるため、最初の失業認定までに求職活動をおこないます。
基本的には求人への応募をおこなっていれば、求職活動の実績として認定されます。
その他にも、ハローワークでのセミナーの受講や特定の機関での職業紹介の受講なども、求職活動としての認定が可能です。
また、再就職のための資格試験の受験も求職活動に含まれます。
初回の失業認定までは3週間から1か月程度の期間があるため、その間に積極的に求職活動をおこないましょう。
5:失業の認定を受ける
続いて、定められた日時にハローワークを訪れ、失業認定を受けます。やむをえない事情がなければ、基本的に日程の変更はできません。
失業認定の際は、まず渡された失業認定申込書に求職活動の状況を記入し、雇用保険受給資格者証とともに窓口へ提出します。
6:雇用保険を受給する
失業認定を経て問題がなければ、基本手当が振り込まれます。振り込まれる金額は、後述する計算式で決定されます。
その後、定められた受給期間を満了するまで、4週間ごとに失業認定と受給を繰り返していく流れです。
求職活動を認定できない状態が2回以上続いた場合、基本手当を受給できなくなる可能性もあるため気を付けましょう。
ハローワークで受け取れる失業保険の受給期間
失業保険の受給期間は、離職した理由や離職時の年齢、被保険者期間によって変わります。
ここでは、ハローワークで受け取れる失業保険の受給期間について解説します。
自己都合退職の場合
離職理由が自己都合である場合は、自身の判断で離職のタイミングを決定し準備ができるとみなされ、失業保険の受給期間も短くなります。
給付日数は全年齢で共通しており、被保険者期間が1年以上10年未満で90日、10年以上20年未満で120日、20年以上で150日です。
なお、自己都合退職者のうち特定理由離職者に該当する場合は、6か月以上の被保険者期間で受給が可能になります。給付日数は変わりません。
特定理由離職者とは、自己都合退職でも本人の意思とは言えないような方のことです。病気やケガ、妊娠、出産、介護、雇止めなどを理由に退職した場合が当てはまります。
ただし、雇止めを理由として退職した特定理由離職者は、次の会社都合退職の場合と同じ給付日数が適用されます。
参照元:ハローワークインターネットサービス – 基本手当の所定給付日数
会社都合退職の場合
会社都合退職(倒産や解雇など)の場合は、準備する時間的余裕がなく離職したとみなされて、受給期間も長くなります。
給付日数は、被保険者期間と離職時の年齢によって細かく設定されており、最短で90日、最長で330日です。
自己都合退職の場合と同じく、被保険者期間が長いほど給付日数が多くなります。また、年齢では出費が多い45歳~59歳が最も手厚いです。
就職困難者の場合
就職困難者の場合は、受給期間がさらに長くなります。
給付日数は被保険者期間が1年未満で150日、被保険者期間が1年以上かつ45歳未満で300日、被保険者期間が1年以上かつ45歳以上65歳未満で360日です。
就職困難者には、障害がある方や保護観察に付された方、社会的事情により就職が著しく阻害されている方などが当てはまります。
ハローワークで受け取れる失業保険の計算方法
失業保険で受給できる基本手当の金額は、あらかじめ定められた計算方法で算出されます。
ここでは、ハローワークで受け取れる失業保険の計算方法について解説します。
1:賃金日額を算出する
受給できる金額は、賃金日額を起点としておこないます。そのため、まずは賃金日額を算出しましょう。
賃金日額とは、離職する前の6か月間に支払われた給与の合計金額を、180で割った値です。
ここでの給与には、通勤手当をはじめとした各種手当は含まれますが、賞与(ボーナス)は含まれないため気を付けましょう。
また、賃金日額には上限と下限がある点にも注意が必要です。算出した値が上限を上回るときは上限額が、下限を下回るときは下限額が賃金日額となります。
上限は年齢によって異なり、20代が最も低く、45歳~59歳が最も高いです。下限額は全年齢で共通しています。
参照元:Microsoft Word – LL050726保01_雇用保険法改正リーフ
2:賃金日額から基本手当日額を求める
続いて、算出した賃金日額に給付率を掛けて、基本手当日額を算出します。給付率は50%~80%で、賃金日額によって異なる値が設定されています。
賃金日額が5,110円未満で80%、5,110円~12,580円で80%~50%、12,580円を超える場合で50%です。
なお、離職時の年齢が60~64歳の場合は、11,300円を超える場合で45%になります。
また、基本手当日額にも上限と下限があります。上限が年齢によって異なり、下限が全年齢で共通する点などは賃金日額と同じです。
参照元:Microsoft Word – LL050726保01_雇用保険法改正リーフ
3:基本手当の総額を計算する
基本手当日額を算出すれば、そこから計算して受給できる基本手当の総額がわかります。
総額を計算する際は、基本手当日額に給付日数を掛けます。
給付日数は上述の基準によって決定されます。
4:毎月の基本手当額を求める
また、基本手当日額から毎月給付される具体的な金額もわかります。
1か月に給付される金額は最大で4週間分となっているため、基本手当日額に28を掛けた値が振り込まれる金額です。
失業保険に関するよくある質問
最後に、失業保険に関するよくある質問に回答します。
失業保険の給付はいつからいつまでもらえる?
失業保険の受給が決定しても、離職日から7日間は待機期間とされるため、その間は給付を受けられません。
待機期間を満了すると、続いてその翌日から最初の失業認定日までの給付を受けられます。実際の振り込みは、失業認定日から1週間ほどです。
ただし、一般離職者(自己都合退職者のうち特定理由離職者に該当しない方)は、待機期間の満了の翌日から2か月間は給付制限期間となり、給付を受けられません。
また、5年間のうちに3回以上の自己都合退職があった場合は、給付制限期間が3か月となります。
給付は、上述の給付日数分をすべて給付するまで続きます。
ただし、雇用保険受給資格者証に受給期間満了年月日を超えると給付ができなくなるため、決められた給付日数分が支給されない可能性もある点には気を付けましょう。
失業保険の受給中はアルバイトをしてもよい?
アルバイトであっても、週に20時間以上の継続的な仕事がある場合は就職とみなされるため、基本手当の受給ができません。
1日の労働時間が4時間未満の場合は「内職・手伝い」とみなされ、基本手当の受給ができます。
ただし、「内職・手伝い」であっても収入額によっては基本手当が減額される場合があるため注意が必要です。
受給期間中にアルバイトをおこなった場合は申告が義務付けられているため、失業認定日に忘れずに申告しましょう。
失業保険を不正受給するとどうなる?
パートやアルバイトを含む就労を申告しなかった場合や、求職活動の実績を偽って報告した場合などは、不正受給とみなされます。
不正受給をした場合は、まず給付が停止され、さらに受給した全額の返還と、受けた金額の最大2倍の納付が義務付けられます。
たとえば100万円を不正受給した場合であれば、その100万円を返還するとともに、さらに最大200万円の納付が義務付けられるため、合計で最大300万円です。
また、とくに悪質な場合は詐欺として刑事告訴される可能性もあります。
失業保険の受給中は保険料や税金の支払いは必要?
失業保険の受給中であっても保険料の支払いは必要ですが、失業の理由によっては国民年金や健康保険料の免除・減額措置を受けられる可能性があります。
また、失業保険には所得税がかからないため、確定申告の必要はありません。
失業保険の受給中は扶養に入れる?
扶養に入っている方でも、上述の受給資格を満たしていれば失業保険の給付を受けられます。
ただし、配偶者が加入している健康保険組合や勤務先の福利厚生の規定によっては、失業保険の受給者が扶養家族に入れない可能性もあるため、個別の確認が必要です。
転職先が決まったときはどうする?
転職先が決まった場合は、速やかにハローワークへ連絡します。このときは電話での報告で構いません。
再就職が決まっても直ちに給付が止まるわけではなく、再就職日の前日までは給付を受けられます。
その後、再就職先に採用証明書を記入してもらい、それを再就職日の前日にハローワークに提出して最後の失業認定を受ければ、手続きは完了です。
再就職後は基本手当が受給できないものの、再就職手当や就業手当など他の手当てを受給できる可能性もあります。
再就職手当は安定した職業に就いた場合、就業手当はアルバイトやパートなどに就いた場合に給付されます。
まとめ
今回は、ハローワークで失業保険を申請する流れを解説しました。
失業保険は失業中に給付を受けられる制度ですが、被保険者期間や就職する意思などの条件もあります。
また、条件を満たす場合も受給は任意であるため、受給したい方はハローワークでの手続きが必要です。
失業保険は再就職を目指す方のための制度です。条件を満たす方は必要書類や手続きの流れを確認して、積極的に活用しましょう。
<参考>
東京ハローワーク
ハローワークインターネットサービス
日本年金機構