SAS 2026年予測:AIの真価が試される年に
SAS Institute Japan株式会社
データとAIのリーダーがAI時代の到来を予測
データとAIのリーディング・カンパニーである米国SAS Institute Inc.(以下、SAS)は、2026年に向けてビジネスのあり方を変革し続けるAIの動向に関して予測しています。2025年も終わりに近づく中、世界は依然としてAIへの期待に沸く一方、その熱狂の影にはAIへの疑念がいたるところで頻出しています。また、AIは目覚ましい進化と成功が語られる中、AIバブルへの懸念、エネルギー供給の逼迫、成果につながらない生成AIのPoCなど、課題が浮き彫りになってきています。
SASの専門家は、2026年は、AIの真価が徹底的に試される年になると予測しています。AI分野で影響力を持つ企業が、ROI(投資対効果)の目標を達成し、これまで以上に倫理的・経済的な課題に正面から取り組むよう迫られる年になりそうです。
SASの思想的リーダーは、前進するためのメッセージを明確に示しています。それは、「今こそAIプロバイダーと企業ユーザーが説明責任を負うべき時が来ている」というものです。AIを活用するには、「データ基盤」と「信頼できるAI(
https://www.sas.com/en_us/news/press-releases/2025/september/ai-trust-idc-study.html )」が不可欠であり、この“基本”への回帰こそが人間に恩恵をもたらし、企業競争力を高め、イノベーションを加速させ、価値を最大化する唯一の道であると強調しています。
データセンターの衰退
データセンター建設への巨額投資は、その非効率性が明らかになると予想されています。期待こそ高かったものの、得られた収益は増大する費用に見合わず、多くのテック企業は代替策を模索しています。経済の専門家は、「予想していた通り」と指摘するでしょう。
– SAS プラットフォームエンジニアリング担当シニアバイスプレジデント、ジャレッド・ピーターソン(Jared Peterson)
AIへの投資評価基準の再編が始まる
ChatGPTの表面的な活用や中身の乏しいAIソリューションに何十億ドルも浪費した結果、CFOたちは真のROI(投資対効果)達成を求めています。しかし、ほとんどの生成AIプロジェクトがその期待に応えられていません。「AIによるイノベーション」で予算を正当化してきた蜜月時代は終わり、クエリあたりのコストや精度、測定可能なビジネス成果が厳しく問われています。導入後6~12か月以内に、明確なコスト削減、増収、生産性向上を実現できない企業は、AIプロジェクトを棚上げにするか、ベンダーの変更に踏み切ることになるでしょう。
– SAS AI&生成AI担当シニアプロダクトマネージャー、マニーシャー・カンナ(Manisha Khanna)
CIOは、企業のChief Integration Officer(最高統合責任者)に
2026年、CIO(最高情報責任者)は、エージェンティックAIの未来に向けて、企業全体の統合を主導する役割へと大きく変貌します。AIエージェントの普及に伴い、CIOの役割はテクノロジー導入の支援者ではなく、エコシステム全体を統合するChief Integration Officer(最高統合責任者)へと明確に進化していきます。AIガバナンス、システム統合、部門横断のリーダーシップが、エージェント主体の世界におけるITアーキテクチャの未来を形成する鍵となり、CIOの日々の業務を決定づけることになるでしょう。
– SAS 最高情報責任者(CIO)、ジェイ・アップチャーチ(Jay Upchurch)
新しい同僚はエージェンティックAI
半世紀にわたるイノベーション、レジリエンス、成長を経て、2026年は企業が新たな局面を迎える節目となります。AIエージェントはもはやツールではなく、同僚としての企業の一員となるのです。企業には、人間とAIエージェントによる協業が求められるようになるでしょう。AIエージェントは信頼できる協働パートナーとしてタスクを遂行し、文脈を共有し、人間と一緒に継続的に学習をしていく存在となるでしょう。
– SAS 応用AIおよびモデリング研究開発担当バイスプレジデント、ウド・スグラボ(Udo Sglavo)
エージェンティックAIは利益と損失の両方の責任を負う存在に
2026年末までに、Fortune 500企業の多くは、複数ステップからなる顧客対応の25%以上をエージェンティックAIが自律的に解決したと報告するようになるでしょう。これらのエージェントはアドバイスをするだけでなく、実際に業務を遂行し、収益に直結する存在へと進化します。その結果、エージェントSRE(エージェントの信頼性を担保する専門職)やChief Agent Officer(最高エージェント責任者)といった新たな役職も誕生します。一方で、重大なエージェント障害がニュースとして初めて取り上げられることになるかもしれません。自律システムが収益活動を担うようになるということは、ダウンタイムもまた、自律システムの責任範疇となることを多くの組織が気づかされることになるからです。
– SAS 北欧担当AI&データサイエンス責任者、イアン・ブラウン(Iain Brown)
AIは、人間の代替手段ではなく、人間を「支える」ための存在に
勝つためにプレーしますか、それとも負けないためにプレーしますか?2026年、リーダーは2つの選択肢に直面することになります。人員削減のためにAIを使うのか、それともAIで競争優位性を生み出すように人間をサポートするのか、どちらか一方を選ばなければなりません。AIは人間を「代替」するものではなく、人間を「支える」ものでなければならないということが明らかになってきており、今後は、継続的なイノベーションの中で人材へ投資し続けるため、行動力のある、そして人々を鼓舞する力を持つリーダーが必要とされることでしょう。
– SAS 最高技術責任者、ブライアン・ハリス(Bryan Harris)
AIの粗悪利用を精算する時が到来
かつてlog4Jの脆弱性がオープンソースコミュニティを揺るがしたことを覚えていますか?2026年には、AIを責任を持って評価・検証することなく、いち早く導入を決めた企業が、その代償を払うことになるでしょう。その結果、商品化された粗悪AIが表面化し、企業の信頼が大きく損なわれることになります。
– SAS 応用AI、オープンソースソフトウェア、ModelOPSのマーケットストラテジスト、ルイス・フリン(Luis Flynn)
信頼とイノベーションの両立
2026年、AIをめぐる議論は信頼かイノベーションかという対立構図ではなくなると予測されます。政府によるAI規制には依然として一貫性がないことから、企業は自らガバナンスを強化し、責任あるAIを活用するためのガードレールを自社に備える必要があります。成功するのは、AIをいち早く導入した企業とはかぎりません。ガバナンスはイノベーションの足かせになるものではなく、むしろ共に歩むパートナーであるという概念を理解した企業こそが、競争を勝ち抜いていくことになるのです。
– SAS データ倫理実践担当バイスプレジデント、レジー・タウンゼント(Reggie Townsend)
ソブリンAIおよびハイブリッドAIアーキテクチャの台頭
グローバル企業は、データ、モデル、インフラを従来以上に自ら管理することを求めるようになると予想されます。Bring Your Own ModelやソブリンAIにより、企業独自のガバナンスとコンプライアンスの下、基盤モデルを運用する体制が業界標準になるでしょう。つまり、クラウドはそのまま存在し続けるものの、管理は企業側に移行するということです。
– SAS グローバルエージェンティックAIストラテジーリード、マリネラ・プロフィ(Marinela Profi)
エージェンティックAIは成熟段階へ
2026年には、自律的に行動、判断、適応するエージェンティックAIは試行段階から企業運営や顧客サービスにおいて中心的な役割を果たすようになると予想されます。適切なインフラ、ガバナンス、スキルへの投資を行っている組織では、より高度な意志決定とシームレスな顧客体験を実現することでしょう。こうした投資を怠る企業は、パフォーマンスにおいても、顧客からの期待に応える点でも、競争に遅れを取ることになります。
– SAS 最高マーケティング責任者、ジェニファー・チェイス(Jennifer Chase)
量子技術への期待が高まる年に
2030年までに初期的な実用価値が実現するという期待から、2026年、量子市場が大きく活性化すると見込まれます。ほとんどの投資家が、ハードウェアやポスト量子暗号から、よりソフトウェアやアプリケーションに重点を置く方向へとシフトしています。また、量子アーキテクチャという用語に注目する必要があります。これは、ソフトウェア層やアプリケーション層を含む、量子システムを網羅することを示す概念であり、現実世界で量子の価値を生み出す核心的要素です。このような未来に向けた動きとして、専門人材の採用が増加することも予想されます。
– SAS 量子製品戦略責任者、エイミー・スタウト(Amy Stout)
AI覇権を決めるのは合成データ
合成データは、データ不足、プライバシーに関する制約、コンプライアンス障壁といった問題に対処するための戦略的手段です。2026年には、企業が競うのは現実世界のマルチモーダルデータだけでなく、そのデータをどれだけ高い精度で創り出せるかという領域へと競争が拡大するでしょう。勝者となるのは、合成データのリアリティを追求し、実験的な段階から、ビジネスでの競争力を生み出す能力へと変換できる企業です。
– SAS プラットフォームおよび汎用ソリューション担当シニアディレクター、アリッサ・ファレル(Alyssa Farrell)
人事部門の新たな労働力:人間 + AIエージェント
2026年には、人事責任者は人材だけでなく、AIエージェントも管理するようになると予測されます。AIエージェントが日常業務の一端を担うようになる中、オンボーディング、パフォーマンス、人間とAIエージェントとの協働に関する新たなポリシーを策定することになるでしょう。将来のワークフォースマネジメントは、人間とAIが共存するハイブリッド型へと移行していくと見込まれます。
- SAS 最高人事責任者、ジェン・マン(Jenn Mann)
AI市場の審判:無秩序なイノベーションから説明責任の時代へ
2026年はAI市場における審判の年の幕開けとなるでしょう。これまでの誇大な期待はガバナンスによって抑制され、責任あるイノベーションだけが生き残る時代へと移行します。一貫したROIと透明性のある監視を推進することで、表面的なプロジェクトは排除され、規律あるプロジェクトだけが正当な評価と成果を得られるようになります。その結果、データオーケストレーション、適切なモデリング、説明可能なガバナンスといった基本への投資が重視されていくと見込まれます。過度に期待されたテクノロジーは衰退し、測定可能な成果と運用面での厳密さを備えた責任あるAIが台頭していくことになるでしょう。
誇大なAIへの期待からAIの説明責任へと移行するなか、2つだけ疑問が残ります。それは、審判はどの程度厳しいものになるのか、そして復興はいつ始まるのかということです。
– SAS リスク、不正、コンプライアンスソリューション担当シニアバイスプレジデント、スチュ・プラッドリー(Stu Bradley)
エネルギー供給能力がAI競争力成功を左右
米国のデータセンターをこのまま稼働させ続けるには、2027年までにさらに29ギガワットの電力が必要になると見込まれています。5ギガワット規模のデータセンターを90%のキャパシティで稼働させた場合、365万世帯分の1年間のエネルギー消費と変わりません。世界各国他の大国が1日あたり数ギガワットの太陽光発電に投資しているなか、米国が一刻も早く発電容量を増やさないかぎり、2026年には国際舞台において、AIとデータの分野で遅れを取り、競争力を失ってしまうでしょう。
– SAS グローバル保険 インシュアランスアドバイザー、フランクリン・マンチェスター(Franklin Manchester, Global Insurance Advisor, SAS)
*2025年11月5日に米国SAS Institute Inc.より発表されたプレスリリース(
https://www.sas.com/en_us/news/press-releases/2025/november/sas-predictions-2026.html )の抄訳です。本プレスリリースの正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語を優先します。
SASについて
SASはデータとAIのリーディング・カンパニーです。SASの革新的なソフトウェアと業界特化型のソリューションが、世界中のお客様にデータを信頼できる意思決定に変換するパワーを届けています。SASは「The Power to Know®(知る力)」をお届けします。
*SASとその他の製品は米国とその他の国における米国SAS Institute Inc.の商標または登録商標です。その他の会社名ならびに製品名は、各社の商標または登録商標です。
記事提供:Digital PR Platform