「クルマ依存」の県ほど脳卒中死が多い ― 全国47都道府県・10年間のデータで実証。コロナ下の外出制限を“予測の的中検証”に ―
群馬パ―ス大学保健科学研究科木村朗研究室

日々の移動が自家用車に依存し、歩く機会が構造的に少ない地域ほど、脳血管疾患(脳卒中)による死亡率が高い ――。群馬パース大学大学院保健科学研究科(高崎市)の木村 朗(きむら あきら)教授は、全国47都道府県の10年分(2013~2022年)の公的統計を分析し、こうした関係を明らかにしました。研究成果は2026年6月11日付で、公衆衛生分野の国際英文誌Dialogues in Healthに掲載されました。
本研究は、木村教授が追究する「身体不活動による健康リスクを高い確率で予測して備える」身体活動疫学の一例で、どの地域が移動制限のような社会的ショックで脳卒中死を増やしやすいかを、コロナ流行期を仮想社会実験期間とみなして、分析を行った結果、健康リスクの高まりを事前に見分けられることを示しています。通勤に自家用車のみを使う人が約75%の群馬県では、全国でも有数の「クルマ依存県」であり、その影響が他都道府県に比べ高いことが示されました。本研究の知見は日本国にとどまらず世界の国の人々の健康にとっても示唆に富みます。
■研究のポイント
●「自家用車のみ通勤」の割合(歩く機会の少なさを示す構造指標)が高い県ほど、年齢・性別をそろえても脳血管疾患の死亡率が高かった。最も車に頼る山形県(79.0%)と、最も頼らない東京都(8.5%)を比べると、その差は約29%にのぼる。
●この関係は、医療資源・所得・教育・年齢構成・出生率を段階的に調整しても、脳血管疾患では一貫して残った。
●2020年のコロナ禍の外出・移動制限は、この予測の“的中検証”にあたる自然実験となった。事前に「危ない」と見分けられる、最も車依存の高い3分の1の県では、脳血管疾患による死亡が予測値より+8.3%多かった一方、それ以外の地域ではほぼ増加がみられなかった。
●重度の介護を必要とする割合(重度介護率)とも関連がみられた。歩けない環境は、死亡だけでなく“介護が必要な暮らし”の負担とも結びつく可能性がある。
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クルマ依存の県ほどコロナ下で脳卒中死が増えた ― 最も依存度の高い県で+8.3%
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『歩けない地域』を直撃した2020年 ― 自動車依存度別にみた脳卒中・糖尿病の超過死亡
■研究の意義
これまで「歩きやすい街は健康によい」という主張は、原理的には語られても、人口レベルで“どれだけの死亡コストか”という数値の裏づけが乏しいものでした。本研究は、歩行者中心の都市設計や公共交通への投資を、付随的な交通・環境政策ではなく、主要な非感染性疾患(NCD)予防策として位置づけるべきだという、実証的な根拠を示しています。超高齢社会において、車依存度の高い地域を健康モニタリングや災害・緊急時の保護計画の優先対象とすることにもつながります。
研究の性質について(記者の皆様へ):本研究は都道府県単位で関連をみた「生態学的研究」であり、個人一人ひとりについて『車通勤だから脳卒中になる』という因果関係を示すものではありません(生態学的誤謬への留意)。地域レベルの傾向としてお伝えください。
■掲載情報
掲載誌:Dialogues in Health(国際英文誌・公衆衛生分野、Elsevier発行) / 掲載日:2026年6月11日 /D OI:
https://doi.org/10.1016/j.dialog.2026.100320 / 著者:木村 朗(単著)
■木村教授コメント
「歩けるかどうかは、個人の心がけだけでなく、住む環境に大きく左右されます。私の研究は、誰が・どこで・いつ身体不活動から健康を損なうかを、できるだけ高い確率で予測して先回りで備えることを目指してきました。コロナ禍の移動制限は、その予測が当たるかどうかを確かめる機会になった。群馬のような車社会こそ、歩ける街づくりを“予防のための健康政策”として考える価値があると思います。」
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木村 朗
■研究者プロフィール
木村 朗(きむら あきら)
群馬パース大学大学院保健科学研究科教授。理学療法士として40年以上の臨床経験を持つ一方、統計ソフトウェア会社で予測モデルの統計専門家として働いた、稀有な経歴を持つ。臨床現場の「人を診る目」と統計の「予測する技術」を併せ持ち、健康な人にも障害のある人にも共通する「身体不活動による健康リスク」を、高い確率で予測して先回りで備える ―― この身体活動疫学を大学院で研究指導している。視覚障害者の歩行支援技術(電気触覚による衝突回避)や、生体電気インピーダンス(BIA)技術の研究でも知られ、国際共同研究も行う。2026年6月、日本発「身体不活動を予測して備える」身体活動疫学の研究で欧州最古級・モデナ大学の身体組成科学サマースクール招聘講師に招かれるなど注目されている上級疫学専門家。
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記事提供:@Press