2023年 都道府県別ランキング・自転車通学時の事故件数 前年に比べ、中学・高校ともに増加傾向 中学生 ワースト3 群馬県・徳島県・香川県 高校生 ワースト3 群馬県・静岡県・徳島県
自転車の安全利用促進委員会、一般社団法人自転車協会
自転車の安全利用促進委員会は、2024年9月21日(土)から始まる「秋の全国交通安全運動」にあわせ、2023年中の全国都道府県別、中学生・高校生の通学時における自転車事故発生件数について調査・分析しました。本調査は、公益財団法人交通事故総合分析センター(ITARDA)から提供を受けた2023年(1月~12月)の事故データを、当委員会メンバーの古倉宗治(一般社団法人日本シェアサイクル協会 会長/NPO法人自転車政策・計画推進機構 理事長)が監修し調査・分析を行なっております。
2023年4月から始まったヘルメット着用の努力義務化や、本年5月に自転車の交通違反に反則金を納付させる、いわゆる「青切符」による取り締まりの導入を盛り込んだ改正道路交通法が可決・成立しました。信号無視や携帯電話を使用しながらの運転など、従来クルマに適用されていた反則行為で自転車も違反となっていたもの(信号無視など110種類)と自転車特有の違反行為(歩道徐行等義務違反など5種類)がこの対象として、16歳以上の人に適用されることになり、2年以内に施行されます。自転車通学指導におけるこれらの対応は、欠かすことのできない喫緊の課題であります。
自転車の安全利用促進委員会は、自転車利用および安全に関する専門家によって、安全・安心な自転車利用のためのルールやマナーや安全な自転車の選び方について啓発するほか、教育関係者・学校と連携した自転車通学指導セミナーの実施、意識・実態調査などを発信しています。
【調査トピックス】
(1) 2023年都道府県別 通学時自転車事故件数ランキング
●全国の通学時の事故件数は増加傾向
●中学生1万人当たりの事故件数ワースト1位「群馬県」、2位「徳島県」、3位「香川県」
●高校生1万人当たりの事故件数ワースト1位「群馬県」、2位「静岡県」、3位「徳島県」
(2) 2023年通学時自転車事故の加害者(第一当事者)率ランキング
●中高生ともに、約2割の学生は通学時自転車事故の加害者である
●中学生では、加害者(第一当事者)ワースト1位「栃木県」、2位「東京都」、3位「京都府」
●高校生では、加害者(第一当事者)ワースト1位「東京都」、2位「栃木県」、3位「兵庫県」
(3) 通学時自転車事故の状況
●通学時自転車事故の相手方は中高生ともに8割強は自動車
●全国で通学自転車の事故時にヘルメット未着用の高校生は9割弱
●高校生の通学自転車の事故時ヘルメット着用率トップは「愛媛県」の88.7%
(4) 通学時の事故発生場所
●中高生ともに交差点内が7割以上
【(1) 2023年都道府県別 通学時自転車事故件数ランキング】
●全国の通学時の事故件数は増加傾向
●中学生1万人当たりの事故件数ワースト1位「群馬県」、2位「徳島県」、3位「香川県」
●高校生1万人当たりの事故件数ワースト1位「群馬県」、2位「静岡県」、3位「徳島県」
2023年通学時の全国の事故件数は、前年に比べ中学生・高校生ともに増加傾向にあります。
〈全国の事故件数:【中学生2022年1,605件→2023年1,735件】、【高校生2022年6,851件→2023年7,171件】〉
都道府県別では、中学生の1万人当たりの通学時自転車事故件数ワースト3は、1位「群馬県」、2位「徳島県」、3位「香川県」です。高校生1万人当たりの自転車事故件数においては、ワースト3は、前年同様のランキング、1位「群馬県」、2位「静岡県」、3位「徳島県」となりました。事故件数は、中学生・高校生のいずれも前年に比べ増加傾向にあります。自転車の安全利用促進委員会の本調査は、2023年で10年目を迎え、調査スタート以降、群馬県は高校生自転車事故10年連続ワースト1位となっています。
※中学生生徒数…文部科学省「学校基本調査」中学校、義務教育学校、中等教育学校(前期)、特別支援学校(中学部) をもとに算出
※高校生生徒数…文部科学省「学校基本調査」高等学校本科、中等教育学校(後期)、特別支援学校(高等部)、高等専門学校(1-3年)をもとに算出
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
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中学生・高校生通学時1万人当たり事故件数ランキング
【(2) 2023年通学時自転車事故の加害者(第一当事者)率ランキング】
●中高生ともに、約2割の学生は通学時自転車事故の加害者である
●中学生では、加害者(第一当事者)ワースト1位「栃木県」、2位「東京都」、3位「京都府」
●高校生では、加害者(第一当事者)ワースト1位「東京都」、2位「栃木県」、3位「兵庫県」
通学時の自転車事故では、通学自転車が加害者となり死傷者を発生させるなど、悲惨な事故が過去に発生しています。通学時の中高生が加害者になった場合※の自転車事故について調査したところ、通学時において全体の約2割(中学生20.1%、高校生20.9%)が自転車側(=学生)の加害事故であることが分かりました。通学時は事故に遭う危険性だけでなく、事故を起こし死傷者を発生させてしまう危険性にも注意する必要があります。事故の加害者になった場合、多額の損害賠償が必要となるケースがあるほか、本人の将来の人生に影響を及ぼす場合もあります。都道府県別では、中学生のワースト3は、栃木県52.8%、東京都51.4%、京都府50.0%と、いずれも全国の20.1%を大幅に上回っています。
高校生のワースト3は、東京都56.0%、栃木県38.8%、兵庫県37.6%で、いずれも全国20.9%を上回っています。
※自転車が第一当事者(一当)の事故=自転車側が加害者の事故と定義した場合。第一当事者とは、事故当事者の中で一番過失が重い人を指す。
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中学生・高校生自転車事故加害者(第一当事者)割合ランキング
【(3) 通学時自転車事故の状況】
●通学時自転車事故の相手方は中高生ともに8割強は自動車
●全国で通学自転車の事故時にヘルメット未着用の中学生は28.7%、高校生は88.1%
●高校生の通学自転車の事故時ヘルメット着用率トップは「愛媛県」の88.7%
通学時の自転車事故の相手方は、ほとんどが自動車であり、これは事故の発生が通勤・通学時間帯であることも一つの原因であると考えられます。出会い頭の自動車との衝突、接触には特に注意が必要です。
2023年4月よりヘルメット着用の努力義務化が始まりましたが、事故時の着用率は、全国的に、年齢的にも徹底しやすい中学生では高く70.1%、反して高校生では10.7%と極めて低く、約9割が未着用でした。中学校では着用が徹底されているのに対して、高校生ではより一層その着用を徹底することが強く求められます。
高校生事故時のヘルメット着用率は、トップの愛媛県が88.7%、2位が大分県の80.8%、3位が群馬県の40.6%となっており、着用率の落差は全国的に大きい状況で、全国にわたり一層の着用の推進を図ることが求められます。
自転車乗用中の交通事故で亡くなられた方は、約6割が頭部に致命傷を負っており、ヘルメットを着用していなかった方の致死率(死傷者のうち死者の割合)は、着用者に比べ約2倍も高くなっていることがわかっています(警察庁)。頭部損傷、死亡事故を防ぐためにヘルメット着用の促進が急務となっています。
※警察庁「頭部の保護が重要です~自転車用ヘルメットと頭部保護帽~」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/toubuhogo.html
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通学時の自転車事故の相手方
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通学自転車事故時のヘルメット着用
【(4) 通学時の事故発生場所】
●中高生ともに交差点内が7割以上
交差点内の事故は、中学生71.4%、高校生71.2%と高い割合となっています。次いで歩車道分離の歩道が中学生10.8%、高校生13.6%、歩車道分離車道は中学生5.3%、高校生5.5%となっています。全国的に見ると、中高生とも、歩道が車道の2倍以上になっています。まず、交差点での信号や一時停止の遵守、安全確認の徹底等を指導し、歩道は事故の危険性が相当程度高いことを認識するとともに、歩道での無警戒・安易な運転を戒めることが必要です。
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事故発生場所 中学生
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事故発生場所 高校生
【2023年の通学時自転車事故調査・分析総評】
<監修> 古倉宗治(こくら むねはる)
一般社団法人日本シェアサイクル協会 会長/NPO法人自転車政策・計画推進機構 理事長
●2023年の自転車の交通事故件数は、全国で72,339件となり、コロナ禍の2020年を底にして、それ以降増加傾向にあります。また、全交通事故に占める割合も、2016年以降一貫して上昇し、2023年には23.5%となりました。この割合は、入手できた1975年以降の統計で最大なものとなっています。交通事故全体の件数が減少傾向にある中で、自転車事故の減少がついていけず、その割合が高くなる形になっています。自転車事故に対するより一層の重点的取り組みが必要になってきており、冒頭に述べたようなヘルメット着用の努力義務化、自転車の違反行為に対する反則金の適用措置等が取られるようになっているのです。これらに対応した重点的な自転車の安全教育が必要です。
このような中で2023年通学時の事故件数は、全国については前年に比べると中学生および高校生とも増加しており、中学生で1,735件と2019年(1,712件)の水準に、高校生で7,171件と2021年(7,074件)の水準に戻ってしまいました。この統計を取り始めてから、コロナ禍の最中の2020年まで、2016年を除き減少傾向にあったのですが、2020年以降においては、中学生は増加傾向が顕著で、また、高校生も2022年に減少したものの全体として増加傾向にあります。また、人口1万人当たりの事故件数も、同様で、中学生は2020年以来増加 (2020年4.19人→2021年4.81人→2022年4.90人→2023年5.33人)し、高校生は2020年以来増加傾向(2020年19.50人→2021年22.75人→2022年22.38人→2023年23.75人)にあります。
コロナ禍が平常時に戻りつつある過程で、自転車通学時の自転車事故も増加傾向に転じているといえます。コロナ禍で通学時の自転車事故がせっかく減少したチャンスを逃さず、より自転車の交通安全指導も徹底をする必要があります。ただし、2023年の数値は、コロナ禍前の2018年以前の数値よりも低い水準にありますので、ヘルメットの義務化や反則金制度等の施行をばねにして、より、一層の事故防止を目指すことが肝要です。
●また、加害者の高い都道府県は、自転車という危険な車両を運転しているという自覚と加害者になる可能性、その場合の責任をルール教育の際に徹底して指導することが必要です。クルマとの事故が多いところでは、相手方の加害率が高いところや、相手方に法令違反率が高いところが比較的多く見られます。自転車事故の相手方にクルマが多いところで、相手方の加害率が高いまたは相手方の法令違反率が高いところでは、特にクルマのドライバーに重点をもっと置いて、クルマに対する広報啓発の対策が必要です。
●一方で、歩道上の歩行者との事故では、その自転車が加害者となることが多いです。歩道での事故割合が高いところでは、特に自転車が徐行・車道寄り通行等の法令を遵守するように指導を徹底する必要があります。これは、同時に歩道上での事故の相手方として多いクルマとの事故防止対策に直結します。歩道通行に際しても、安易な運転の態度を取らず、ルールの遵守が大切であることを認識させてください。
●さらに、重要な点は、自転車は地球環境にやさしく、健康に貢献できる重要な移動手段であることの認識が重要です。この重要な移動手段である車両を運転しているということを十分に認識し、軽い気持ちでルールを軽視するような態度で運転せず、責任ある態度でルールを遵守して運転するように指導しましょう。
●ヘルメットの着用の努力義務化と保険加入
ヘルメットは、死亡事故の際の頭部外傷が多いことから、致命傷になるのを防ぐという重要な役割を果たします。努力義務で罰則がないといっても、非着用の場合は事故の際の違法性や過失を問われたりし、損害賠償額も減らされる可能性もあります。中高生のみならず、大人から率先してヘルメットの着用を推進することで、ヘルメットの着用が社会全体で習慣化されるようにしなければなりません。中学生の事故時のヘルメット着用率は2022年の67.6%から2023年70.9%、高校生の2022年7.8%から2023年10.8%と少しずつ改善してきています。中学生の着用率が5割以上のところは39都道府県で、それ未満が東京や大阪、神奈川、京都という大都市を中心に8都道府県あります。また、高校生は全体に極めて低い着用率が目立ちます。
愛媛県と大分県が8割以上ですが、その他45都道府県では5割を切っており、1割未満のところが31都道府県もあります。高校生は着用率が極めて低く、大人がもっと模範を示して推進する必要があります。全年齢での自転車事故時の着用率は12.9%ですので、同様に低く、社会全体でその着用を推進することも必要です。街頭広告や情報媒体等の様々な場面での広報啓発が求められます。
また、昨今では自転車保険の義務化の自治体も多くなってきています。加害者になってしまったときのリスクも考えて自分が自転車保険に入っているか、保障内容は十分か、いま一度確認するようにしましょう。
ヘルメット着用と保険加入は、事故が起こった時いずれも身体的または経済的に自分を守ることになり、極めて重要ですので、率先して着用および加入をするようにしてください。
●点検について
3年間ほぼ毎日走る通学自転車は、1年間で日本縦断できるほどの走行距離になるとも言われています。事故を防ぐための車両点検と安全性確認を定期的に必ず行いましょう。神奈川県茅ヶ崎市で、自転車店の方々が学校に出向いて、約2,900台の自転車を点検したところ、整備が良好であったのはわずか34.3%で、ブレーキに整備不良があるもの44.6%など何らかの整備不良が見つかったものが65.7%もあったということです。自転車事故を防ぐための車両点検と安全性確認は、見落とされがちなポイントですが大変重要です。粗悪な製品の場合、いくら修理をしても次々に不具合が出るケースも見受けられ、「自転車そのものの安全性」は事故を防ぐだけでなく、安全な自転車利用の基盤です。
購入時には、耐久性や強度などの安全基準をクリアした「BAAマーク」(※)を目印にしましょう。
●群馬県の中高生について
群馬県の中高生は、確かに1万人当たり事故件数がワーストワンですが、以下のように自転車を運転する中高生は関係各位のご指導のもとに一定の交通安全の取り組みの努力をしていると考えられます。
(1) 自転車の加害率
2021年からワーストワンの群馬県の中学生は、事故件数はワーストワンですが、自転車側の加害率は7.4%(全国で32位)となっており、全国でも低い順位および割合(全国20.1%)であり、かつ、前年(2022年)の10.3%(全国で26位)から改善されています。また、10年連続ワーストワンの群馬県の高校生は、自転車側の加害率が6.5%(全国で36位)となっており、全国でも低い順位および割合(全国20.9%)であり、かつ、前年(2022年)の10.3%(全国の26位)から改善されています。事故に際して加害者とならないような慎重な運転が定着してきていると理解できます。
(2) 事故の際のヘルメットの着用率
群馬県の中学生は全国10位(92.0%)の高い着用率であり、また、同県の高校生は、全国3位(40.6%)と他に比較すると順位が極めて高くなっております。このように、ルール遵守の象徴の一つでありますヘルメット着用率が全国の中では高く、関係者の事故防止に対するご努力の成果が数字になって表れていると理解できます。
※≪BAAマーク≫
BAAマークは、一般社団法人自転車協会が定める自転車安全基準に適合した自転車に貼られています。自転車安全基準には全部で約90項目の検査項目があり、ブレーキ制動性能、フレーム・駆動部の強度、ライトの光度、リフレクターの反射性能などの検査に合格する必要があります。
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BAAマーク
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BAAマーク2
<監修>自転車の安全利用促進委員会メンバー
古倉宗治(こくら むねはる)
一般社団法人日本シェアサイクル協会 会長/NPO法人自転車政策・計画推進機構 理事長
博士(工学)
自転車の総合的体系的な利用促進策、データに基づく自転車の事故の詳細分析及び安全利用促進方策等、自転車に係る総合交通政策並びに、脱生活習慣病や脱炭素のまちづくり、コンパクトシティ、サイクルツーリズム、通勤、買物等のエビデンスデータに基づいたまちづくりの視点から自転車の活用のあり方を幅広く研究している。これら自転車まちづくりを都市計画・都市環境分野で、国・地方公共団体・民間に生かすべく活動している。長年にわたり、幅広い分野において国・地方公共団体の自転車利用促進に当たってきたことにより、国土交通大臣より令和6年度「自転車活用推進功績者」として表彰されている。
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古倉宗治氏
●47都道府県別 中学生、高校生の1万人当たりの自転車事故件数割ランキング(2023年)
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中学生通学時1万人当たり事故件数ランキング
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高校生通学時1万人当たり事故件数ランキング
●47都道府県別中学生・高校生の自転車事故 加害者(第一当事者)割合ランキング(2023年)
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中学生の自転車事故加害者(第一当事者)割合ランキング
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高校生の自転車事故加害者(第一当事者)割合ランキング
≪自転車の安全利用促進委員会≫
自転車の安全利用促進委員会とは、一般社団法人自転車協会の協力を受け、安全安心な自転車利用のための啓発活動を行う団体です。自転車の利用者の方々に快適な自転車生活を送っていただくため、購入時に知っておくべき自転車の選び方から購入後のメンテナンス、正しいルール・マナーなどの情報発信を行っています。また、活動の一環として教職員や学生を対象とした、自転車通学指導セミナーも全国で開催しています。
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