ラマン増幅器用励起光源デュアルポートラマンポンプにて消費電力低減を達成
古河電気工業株式会社

~モジュールの低消費電力化を加速~
● 当社従来製品と比べ、0.5Wx2=1W駆動時の消費電力を32%~39%低減し、ラマン増幅器全体の低消費電力化に貢献
● 米国で開催される「OFC 2025」で本製品を展示し、低消費電力化のソリューションを提案
古河電気工業株式会社(本社:東京都千代田区大手町2丁目6番4号、代表取締役社長:森平英也)は、高出力低消費電力駆動のラマン増幅器用励起光源において、デュアルポートラマンポンプ(DPRP:Dual Port Raman Pump)にて低消費電力化に成功しました。
■背景
近年、生成AIおよび機械学習(Machine Learning)の登場によりデータセンタなどの通信トラフィックが全世界で爆発的に増加しており、今後もさらに伸びていくことが予測されています。このような状況に対応するため、通信伝送速度の高速化が求められていますが、信号受信側のOSNR(注1)の低下により伝送距離が短尺化される課題があることから、特に既存の通信システムを活用して高速化する場合、信号光の品質を劣化させずに光出力を増幅するラマン増幅器の役割がより重要となってきています。また、高速伝送により信号の波長幅が広がるため、大容量伝送を両立するには波長帯域の拡大が必要となり、励起用光源の波長を選択することで任意の信号光源を増幅できるラマン増幅器の更なる普及が期待されています。一方で、今後のS帯・C帯・L帯への帯域拡張を踏まえ、使用数が増える励起光源は、省スペースかつ高出力低消費電力駆動であることが一層重要になります。
■内容
2個のLDチップ(LD:レーザダイオード)を1パッケージに搭載するDPRPは、伝送装置に使用する励起光源の数量削減を可能とするほか、1つのパッケージの中に搭載する2個のLDチップの配置を最適化することでお互いのチップ発熱の影響を抑え、電子冷却装置(TEC)の冷却能力を最大限活用することで従来よりも省電駆動できることが特長です。
今回、当社従来製品のFOL1439 Rシリーズに搭載するチップを2個搭載したDPRPを用いて、省電駆動の効果検証を行いました。その結果、レーザ温度(Ts)が35℃駆動時の両ポートのファイバ出力が各0.5W(合計1W)の時の消費電力は9.9Wとなっており、従来構成のシングルポート2台を各0.5Wのファイバ出力で駆動したときの消費電力14.6Wと比べて、同一出力時の消費電力を32%低減しました。さらにTsを40℃の高温駆動とすることでTECの負荷が低減し、消費電力は39%低減しました。この結果はラマン増幅器全体の低消費電力化に貢献します。今後は、省電効果が大きいFRL1441Uシリーズに搭載するチップを用いて、さらなる低消費電力化を図ります。
消費電力の比較
[画像1]https://digitalpr.jp/simg/1782/106452/700_168_2025032412541767e0d769586b6.png
本開発の成功にあたっては、25年以上培ってきたInP(注2)系光半導体材料を用いた光半導体プロセス技術と高精度のファイバ結合技術の活用に加え、当社独自の低損失・高効率動作の半導体レーザ素子構造を採用しました(当社特許取得済み、注3)。
なお、2024年11月よりサンプル出荷を開始しており、本年4月1日から3日に米国・サンフランシスコで開催されるOFC 2025で本製品を展示します(Lighteraブース内・ブース番号2843)。引き続き低消費電力化のソリューションを提案します。
OFC 2025(英語のみ):
https://www.ofcconference.org/en-us/home/
なお、本開発は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー))の委託研究「Beyond 5G超高速・大容量ネットワークを実現する帯域拡張光ノード技術の研究開発」(基幹課題JPJ012368C04501)及び助成事業「超高速・大容量ネットワークを実現する帯域拡張光ノード技術に関する研究開発プロジェクト」(JPJ012368G60101)の一環として実施しており、その成果の一部です。
当社は、今後も低消費電力高出力レーザチップ技術の開発に取り組み、モジュールの低消費電力化の加速と環境に優しいネットワークの構築に貢献します。
[画像2]https://digitalpr.jp/simg/1782/106452/350_233_2025032412124167e0cda9711c7.jpg
図1 モジュール外観
[画像3]https://digitalpr.jp/simg/1782/106452/350_214_2025032410393167e0b7d33b8ef.png
図2 消費電力削減効果
(注1)OSNR(Optical Signal to Noise Ratio):光信号 対 雑音比を表すパラメータ。
(注2)InP(Indium Phosphide):レーザダイオードチップ、高速トランジスタの製造に使用されるIII-V族半導体の一種。
(注3)米国特許US 9,083,150 B2
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■古河電工グループのSDGsへの取り組み
当社グループは、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を念頭に置き、2030年をターゲットとした「古河電工グループ ビジョン2030」を策定して、「地球環境を守り、安全・安心・快適な生活を実現するため、情報/エネルギー/モビリティが融合した社会基盤を創る。」に向けた取り組みを進めています。ビジョン2030の達成に向けて、中長期的な企業価値向上を目指すESG経営をOpen,Agile,Innovativeに推進し、SDGsの達成に貢献します。
古河電工グループのSDGsへの取り組み
https://furukawaelectric.disclosure.site/ja/themes/182


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