NTTと新潟大学が遠隔触診技術の確立に向け共同研究を開始 ~感触を再現できる技術で医師不足・偏在の地域課題の解決へ~
日本電信電話株式会社
発表のポイント:
NTTと新潟大学が、遠隔医療では実現が難しかった「触診」の遠隔化に挑戦します。触診の所作を解明し、デジタル化することで、遠隔でも患部の柔らかさや感触を再現できる技術の確立をめざします。
新潟県は、総人口が減少し後期高齢者の割合が増加傾向にあり、地域医療を担う医師の高齢化や人材不足、地域における医療・ケアサービスの偏在化も深刻です。それらの課題を解決するために、限られたマンパワーでも効率的に医療を提供する体制を構築していくことが必要であり、遠隔診療の確立は喫緊の課題となります。
本技術はロボットなど高額な装置を必要とせず、医療現場への導入ハードルを低くすることをめざし、将来的には、離島や過疎地などの医師不足の地域において対面診療と遜色のない遠隔診療の提供に貢献します。
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)と国立大学法人新潟大学(新潟県新潟市、学長:牛木辰男、以下「新潟大学」)は、医師不足及び医師の偏在という社会課題の解決に向けて、2026年3月31日まで、遠隔触診の実現に向けた共同研究を実施いたします。本共同研究では、対面で行われている触診の具体的な所作(手指の使い方・押し具合・判断の流れ)をデジタル化するための要素を解明し、触れた患部の柔らかさの取得やその再現をするための手法の確立をめざします。
1.背景と目的
日本の医療現場では、医師不足と都市部への偏在が深刻な課題となっています。特に地方や過疎地域では、医師の確保が難しく、地域医療として必要な医療を十分に提供できない状況が続いています。こうした状況は、持続可能な医療提供体制の構築を阻む大きな要因となっており、遠隔医療やICTを活用した新たな対策が急務とされています。※1 厚生労働省が発表した都道府県別の医師偏在指標※2によると、新潟県は全国で3番目に医師が不足している地域に位置付けられており、地域医療の充実と一人ひとりの医師の負担軽減は喫緊の課題となっています。
医療サービスの提供継続のために、テレビ電話やウェブ会議システムなどを用いたリアルタイムな視聴覚の情報に基づく遠隔診療は普及しつつあります。※3 一方、視聴覚の情報のみで行う遠隔診療には限界がある点も指摘されています。実際、医療現場における対面診療では、視診と聴診に加えて触診が標準的に実施されていますが、遠隔診療ではそうした触診が行えない状況となっています。さらに、大掛かりなシステムの導入にはコスト面の課題や操作・習得の負担もあり、多くの過疎地や小規模医療施設への展開が難しくなる懸念もあります。これらを背景として、本共同研究では、下肢浮腫を対象として、医療現場において対面で行われている触診のプロセスを詳細に観察・記録し、その遠隔化に必要な技術的・運用的要件を明らかにするとともに、触感を遠隔地に伝えるための触感取得やその再現手法を確立することをめざします。
[画像1]https://digitalpr.jp/simg/2341/112952/600_496_202506301131536861f7194aa85.png
図1 本共同研究での実施内容
2.本研究の内容
本研究では、医療現場で実施されている下肢浮腫の触診所作に焦点を当て、新潟大学 医学部保健学科 坂井さゆり教授の研究室とNTTが共同で、模擬患者を対象にして、医療従事者による触診を各種センサ・デバイスにより記録し、手・指の動きや押し具合といった触診実施のポイントとなる特徴的な所作を分析・解明します。さらに、こうした所作をデジタル化し遠隔地へ適切に伝達するにあたり、機械化・自動化を最小限に留め、医療従事者が直接触診を行う方法を活かすことでコスト面や患者への心理的負担にも配慮したアプローチを検討します(図1上)。
さらに、NTTが検討を進めてきた人の手を介して触診した患部の柔らかさを取得する手法や、押し込み時の抵抗感を変化させるピンをアレイ状に並べることで触感を再現する独自開発のデバイスを介して取得した患部の柔らかさを遠隔地において再現する手法について、医療現場の意見を取り入れながら、その有用性の評価や精度向上に取り組みます(図1下)。
3.本研究開発における各機関の役割
■新潟大学
・触診所作に関する知見、触診所作データの収集、データ分析、触感取得・再現手法評価
※共同研究者(研究代表者):医学部保健学科 坂井さゆり教授
■NTT
・触診所作記録システム構築、触診所作データの収集、データ分析、触感取得・再現手法の考案
4.今後の展開
本研究の成果は、地域医療における医師不足や医師の偏在化の改善に貢献し、触診プロセスをデジタル化することで遠隔地でも精度の高い診療を可能にすると期待されます。遠隔触診技術の確立をめざし、今後は手法の精度向上を進め、NTTグループ会社※4を交えた実証実験を通じて現場での運用可能性を検証する予定です。そして、各種センサやデバイスの医療機器認定などを段階的に進めながら、本技術の社会実装を推進してまいります。
5.関連リリース
東日本電信電話株式会社が新潟大学との共同研究として「NTT東日本×新潟大学 医療文書作成支援AIモデルによる医師不足の課題解決に向けた共同研究(
https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20250526_01.html )」を開始しております。本共同研究も含め、地域医療の課題解決を図る新潟大学との連携を強化し、医師不足の地域課題解決を様々な側面から推進していきます。
【用語解説】
※1.医師と医療の関係について、医師不足に対する病院勤務医の現状と提案について
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/001214324.pdf
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/043/attach/1300770.htm
※2.医師確保対策の現状と今後について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000194369.html
※3.適切なオンライン診療の推進について(P12)
https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001340999.pdf
※4.東日本電信電話株式会社による新潟地域医療に関する取り組み例
https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20250526_01.html
記事提供:Digital PR Platform