実践女子大学日野キャンパスで、ＮＨＫ大河ドラマの"蔦重"展を開催中。貴重な所蔵資料を中心に、江戸の名プロデューサーの軌跡を堪能。
実践女子大学
実践女子大学(東京都日野市、学長：難波雅紀)は８月5日まで、日野キャンパス図書館（日野市大坂上）で、NHK大河ドラマ「べらぼう～蔦重栄華子乃夢噺～」の主人公、蔦屋重三郎（1750～97年）に関する展示をしています。ドラマで関心が集まる“蔦重”こと蔦屋重三郎は、名もなき青年出版業者から稀代の名プロデューサーになり、戯作者や浮世絵師を発掘して江戸の出版文化に大きな影響を及ぼしました。その軌跡を本学の所蔵資料を中心に展示して振り返っています。入場無料。
「蔦屋重三郎－梓に夢を見た男－」。発掘した浮世絵師や戯作者とその本を展示。
展示名は、「蔦屋重三郎－梓（あずさ）に夢を見た男－」。江戸時代、印刷するための「版木」の素材は、主に山桜を使用していましたが、木版印刷の礎を築いた中国では、堅く緻密なところが特徴の落葉高木の梓が使われており、その影響を受け、日本語の「上梓（じょうし）」は出版を意味します。このため、出版にとっては、特別な意味を持つ梓をタイトルが付けました。図書館１階エントランスのガラス展示ケースで、洒落本や黄表紙など約20点を展示しています。
まず、目に飛び込んでくるのは、吉原遊郭の当時の地図。この地図では塀や堀で囲まれた吉原で唯一の入り口だった吉原大門（おおもん）からメインストリートを経て突き当りの火除けの神・秋葉権現の常燈明までを見ることがきます。蔦重は吉原に「耕書堂」という小さな本屋を構えることになりますが、そのころ、ヒット作となった洒落本の「娼妃地理（しょうきちり）」の複製を展示。これは、武家の戯作者、朋誠堂喜三二（ほうせいどうきさんじ）とのコンビで、吉原を日本、遊女を名所・観光地に見立てて案内したもので、吉原に生まれ育った蔦重ならではの発想で作られました。
その後、蔦重は、そうそうたる版元が集まる本屋街、日本橋の通油町に進出。展示では店を構えた同町の南側の場所を幕末の地図で示しています。蔦重は、吉原のガイドブック「吉原細見」の出版業者である小さな版元でしかありませんでしたが、黄表紙の出版で徐々に業界で知られるようになり、通油町に乗り込んで本格的に出版業を開始していくことになります。当時は、天明の狂歌ブームで、それをとらえて出版された写真の狂歌集「故混馬鹿集（ここんばかしゅう）」（天明５年刊）は、明らかに「古今和歌集」をもじっており、風刺や皮肉をきかせた遊び心がうかがえます。書の奥付には、版元として「常盤橋本町筋通油町 蔦屋重三郎板」と印刷され、表紙や金色の題箋は原装で、蔦屋重三郎の店先で売られていた当時の姿を残している点が貴重です。このほか、人気作家の山東京伝とのコンビで作った洒落本の「傾城觿（けいせいけい）」 と「令子洞房（むすこべや）」なども展示しています。
また、蔦重は、浮世絵師や戯作者の才能を見出したことでも知られていますが、喜多川歌麿が初めて挿絵を描いたとされる狂歌絵本の「絵本江戸爵（えほんえどすずめ）」、出世作の「画本虫撰（えほんむしえらみ）」（いずれも複製）も展示しています。
図書館の展示担当者は「蔦屋重三郎は人に恵まれ、人の才能を発見する能力があった。彼が展開した黄表紙や洒落本などの新感覚の文芸や、発掘した北斎、歌麿、写楽などの作品を通して、蔦重の活き活きとした出版活動の姿を感じていただければ」と話しています。
【開館日程】図書館ホームページをご確認ください。なお、一般の方が観覧する場合は、警備室で手続きをお願いします。
https://www.jissen.ac.jp/library/use/calendar/hino_calendar/index.html
【住所・アクセス】〒191-8510東京都日野市大坂上４-１-１
JR日野駅より徒歩約12分
▼本件に関する問い合わせ先
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