【矢野経済研究所プレスリリース】リチウムイオン電池主要四部材世界市場に関する調査を実施(2025年)~2024年のLiB主要四部材世界市場は前年比73.2%の616億ドルの見込~
株式会社矢野経済研究所
株式会社矢野経済研究所(代表取締役:水越孝)は、リチウムイオン電池主要四部材の世界市場を調査し、車載用や民生小型機器用などのLiBセル用途や主要四部材の出荷動向、国別の設備投資や部材価格の動向などを明らかにした。
1.市場概況
2024年(見込)におけるリチウムイオン電池(以下、LiB)主要四部材世界市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年比73.2%の616億117万1,000ドルであったと推計する。
LiB(セル)の用途別にみると、2023年~2024年にかけて車載用LiB世界市場では成長率の鈍化傾向が続いている。川下(LiBの需要先)側のEV、PHEVの市場をエリア別で見ると、中国市場が2024年も前年並みの伸びを示した一方で、欧州市場や北米市場では前年を下回る成長率での推移となった。中国市場でもEVの成長率は前年を下回り、PHEVの伸びが下支えする形となっている。そうしたことから、2024年の車載用LiBは出荷容量でも成長率は前年を下回る見込みである。
一方、2023年の民生小型LiB世界市場は前年から減少となったが、ノートPC向けやスマートフォン向け等のLiB需要の回復を受け、2024年では再び成長基調に転じる見込みである。
そのような背景のなかで、Li等の資源価格下落や、車載用LiBの成長鈍化による供給過剰、価格競争激化の影響もあり、2023年に続き2024年もLiB主要四部材の全てで価格の下落トレンドが続いている。2024年のLiB主要四部材は出荷数量では前年を上回る見込みとなっているものの、LiB主要四部材世界市場規模は2年続いて前年割れを見込む。部材別では正極材、電解液の価格下落幅が特に大きい状況にあり、2025年は価格が上向く要因が今のところ見当たらないものの、2026年以降については受給バランスの状況や資源価格の動向によっては、価格が上向く可能性はあると考える。
2.注目トピック~2024年のLiB主要四部材出荷数量シェア、全てで中国が9割超え~
2024年のLiB主要四部材世界市場における国別出荷数量シェア(見込)をみると、中国LiB部材メーカーの出荷量は四部材全てで9割を超える状況となった。
上位シェアの中国部材メーカーでは、2024年も出荷数量ベースでは前年比プラス推移が複数社で見られるものの、2021年から2022年時の高成長時期に比べ、成長率自体は停滞傾向を示す見込みである。川下側との需給アンバランスによる供給過剰状況が生じており、稼働率維持のための過度な価格競争が発生している。殆どの企業で金額ベースでは前年割れ推移を見込む。
なお、中国の車載用LiBに関しては、車載用LiBメーカー側の生産量とxEVへの搭載量の間での乖離が2022年頃から発生していると見られ、その乖離幅は2024年時点では更に広がっているとの見解も一部の中国LiB部材メーカーから聞かれる。中国のLiB部材メーカーの材料出荷の観点では、車載用LiBの生産量にあわせたLiB部材の出荷数量を求められることになるが、実需要(xEVへの搭載量)に近い出荷数量で見た場合、成長率は本推計値の伸びを下回る可能性もあると考えられる。
一方、日系LiB部材メーカーおよび韓国LiB部材メーカーでは、2024年の出荷数量は横ばい~前年割れを見込む企業が複数見られる。これは、中国市場の部材価格の下落トレンドに巻き込まれる形となっていること、利益確保の観点から部材の出荷量調整を行っていることが要因と考える。また、欧州でのEV市場成長停滞の影響で、現地の車載用LiB生産が落ち込む形となっており、欧州市場向けのLiB部材需要が減少に転じたことも要因として挙げられる。
3.将来展望
LiB主要四部材世界市場では、2021年から2022年頃にかけて中国LiB部材メーカーを中心に設備投資の動きが加速し、2023年以降、川下側との需給アンバランスに繋がっており、供給過剰状況を引き起こしている。今後、中国市場では企業の事業撤退や大手企業への傘下入りといった業界の整理淘汰が進み、LiB部材生産能力と需要規模のギャップが再び縮まることでLiB部材価格が上昇に転ずるタイミングがいずれ訪れると考える。
現時点では、LiB部材価格の下落による利幅減少(もしくは赤字状態)で、LiB部材メーカー各社が設備投資に踏み切るのは難しい状況となっているが、xEV市場は今後も長期的視点で見れば緩やかに拡大していく流れにあり、いずれ車載用LiB需要が供給に追い付くと予測する。
中国市場では、新車販売に占めるNEV(PHEV、EV)の比率が5割を占める状況が視野に入り、政府目標(2020年発表)を前倒しで達成している。更なる市場拡大には、より低価格化が求められる点、並びに中国の政府目標はNEV化100%が設定されていない点等を背景に、内需によるNEV需要拡大はかつてほどの勢いが期待出来ない見通しである。今後は欧州市場に向けた中国製LiB、LiB部材需要の伸びが、どのタイミングでどれぐらいの勢いで推移して行くかが市場成長のポイントになると考える。
一方、日韓のLiB部材メーカーは米国市場に向けたベクトルが強い。米国IRA(インフレ抑制)法については、バッテリー生産などクリーンエネルギー分野を対象とする税額控除(Section 45x)は残る可能性があり、Non-FEOC条件※をSection 45xへ追加する方向で今後、審議が進むと見られる。「中国以外の材料を使って欲しい」との要望がバッテリーメーカーやOEM(自動車メーカー)から日韓のLiB部材メーカーに対して寄せられており、米国におけるバッテリーサプライチェーン上の「中国外し」の流れは変わらないと見られる。
この先の成長対象エリアとして、欧州市場に向かう中国LiB部材メーカーに対し、日韓のLiB部材メーカーは短期的には米国市場向けが注力対象エリアになると考えられる。
※FEOC(Foreign Entity of Concern:懸念される外国企業)とは、対象国(中国、ロシア、イラン、北朝鮮)の政府に保有・支配されている、またはその指示に従っている事業体をさす。
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3842調査要綱
1.調査期間: 2025年2月~5月
2.調査対象: リチウムイオン電池部材メーカー(日本、韓国、中国)
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
4.発刊日: 2025年05月30日
お問い合わせ
⇒プレスリリースの内容や引用についてのお問い合わせは下記までお願いいたします。
株式会社矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム
https://www.yano.co.jp/contact/contact.php/press株式会社矢野経済研究所
https://www.yano.co.jp/配信元企業:株式会社矢野経済研究所
プレスリリース詳細へドリームニューストップへ
記事提供:DreamNews