iDeCoは2026年12月1日に変わる 会社員の枠は月2.3万円から6.2万円へ、第3号加入者だけ月2.3万円のまま据え置き
スペシャリスト・ドクターズ株式会社
iDeCoは2026年12月1日に変わる ── 会社員の枠は月2.3万円から6.2万円へ、第3号加入者だけ据え置き
── 引上げ幅は加入区分でまったく違う。据置(0円)から+3.9万円まで開き、経過措置の対象は施行日の時点でほぼ決まる
ライフプランメディア「IKIGAI TOWN」(運営:スペシャリスト・ドクターズ株式会社)編集部は、2026年12月1日に施行されるiDeCo(個人型確定拠出年金)の改正について、厚生労働省の公表資料を整理しました。施行期日は令和7年政令第441号、金額は令和7年政令第442号(2025年12月24日公布)で確定済みです。
■本リリースが扱う施行日は2つあり、片方はすでに過ぎている
※改正法にはこのほかにも多数の施行日があります。2026年4月1日には、ほかに簡易型DCの通常の企業型DCへの統合・自動移換に関する事業主の説明時期の見直し・中小事業主掛金納付制度の届出簡素化も施行済みです。以下は本リリースが扱う拠出限度額・加入可能年齢に関わるものだけの抜粋です。
・2026年4月1日(令和7年政令第430号・令和7年政令第431号)※施行済み
企業型DCのマッチング拠出における加入者掛金の額が事業主掛金の額を超えられないという制限の撤廃
・2026年12月1日(令和7年政令第441号/金額は令和7年政令第442号(2025年12月24日公布))
iDeCoの加入可能年齢の引き上げ
iDeCo・企業型DC・国民年金基金の拠出限度額の引き上げ
■拠出限度額:引上げ幅は区分でまったく違う
第1号加入者(自営業者等):月68,000円 → 月75,000円(+7,000円・1.1倍)
第2号加入者(企業年金等なし・公務員を除く):月23,000円 → 月62,000円(+39,000円・2.7倍)
第2号加入者(企業年金等あり・公務員を含む):月20,000円 → 月62,000円(最大+42,000円・最大3.1倍)
第3号加入者(専業主婦・主夫等):月23,000円 → 月23,000円(据置)
第4号加入者(国民年金任意加入被保険者):月68,000円 → 月75,000円(+7,000円・1.1倍)
第5号加入者:新設 → 月62,000円(iDeCo・企業年金等の合計)
企業型DC:月55,000円 → 月62,000円
※企業型DCのマッチング拠出(加入者掛金)を利用している方はiDeCoに加入できません。2026年4月1日にマッチング拠出の上限規制が撤廃されたため、どちらを使うかは選択になります。
※企業年金等がある方の月6.2万円はiDeCo単独の枠ではなく、事業主掛金・他制度掛金相当額を差し引いた残りがiDeCoの枠です。現行の月2.0万円も「合計して月5.5万円の範囲内」という合算枠の中の上限であり、iDeCo単独の別枠ではありません。
※第1号・第4号加入者の枠は国民年金基金の掛金・付加保険料との合算です。
「+42,000円」は名目上の最大値です。この区分は事業主掛金または他制度掛金相当額が必ず発生するため、実際にはそれを差し引いた残りが枠になります。
例:国家公務員共済組合の加入者(他制度掛金相当額 月8,000円)
現行:合算枠 月55,000円 の中で iDeCo は 月20,000円
見直し後:合算枠 月62,000円 - 月8,000円 = iDeCo 月54,000円(+34,000円・2.7倍)
厚生労働省の資料がこの欄だけ「最大4.2万円増額」と書き分けているのはこのためです。
据え置かれるのは第3号加入者だけで、企業年金等なしの第2号加入者との差は0円から月39,000円に広がります。
■「70歳まで」の主役は、新設される第5号加入者
定義:60歳以上70歳未満の国民年金被保険者以外の者で、iDeCoを活用した老後の資産形成を継続しようとする者
該当するのは次のいずれかです。
(1) iDeCo加入者
(2) iDeCo運用指図者
(3) 企業年金からiDeCoに資産を移換する者
加えて、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給しておらず、マッチング拠出を実施していないことが必要です。
※老齢基礎年金を繰り下げて老齢厚生年金を受給する方は加入可能です。施行日までに老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給した場合は加入できません。
■経過措置の対象は、施行日の時点でほぼ決まる
(1)~(3)のいずれにも該当しない方にも経過措置がありますが、「2029年11月30日までなら誰でも入れる」わけではありません。
改正法附則第33条により、対象は次のいずれかに該当し、かつ申出の時点で日本国内に住所を有する60歳以上70歳未満の方に限られます。
(1) 施行日(2026年12月1日)において改正後の確定拠出年金法第62条第1項各号のいずれにも該当せず、かつ施行日までの間に国民年金の被保険者であった方
例:施行日時点で60歳以上のため国民年金被保険者ではないが、過去に国民年金被保険者であった方
(2) 施行日から1年以内に、第1号から第4号までの加入者のいずれにも該当しなくなった方
例:施行日時点で59歳の国民年金第1号被保険者・第3号被保険者である方
2029年11月30日は「申出の期限」であって、対象者の範囲ではありません。(2)は「施行日から1年以内に第1号~第4号のいずれにも該当しなくなった方」なので、第1号・第3号被保険者の場合は、60歳の誕生日が2027年12月1日以前の方(=2027年11月30日までに60歳に達する方)が対象です。
60歳の誕生日が2027年12月2日以降の第1号・第3号被保険者の方は、原則として(1)にも(2)にも当たりません。70歳まで続けるには、60歳を迎えるまでに(1)~(3)のいずれかに該当している必要があります。
※第1号・第3号被保険者は60歳でiDeCoの加入資格を失います。(2)の「施行日から1年以内に第1号~第4号のいずれにも該当しなくなった者」の1年は2027年11月30日に満了し、国民年金の資格喪失日は誕生日の前日にあたるため、60歳の誕生日が2027年12月1日以前の方が対象になるからです。なお保険料の免除を受けているなど、施行日時点でそもそもiDeCoの加入資格がない方は(1)に当たる場合があります。
出典:令和7年改正法附則第33条/厚生労働省年金局長「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律の一部の施行に伴う関係省令の整備等及び経過措置に関する省令等の公布について(通知)」(年発0630第1号・2026年6月30日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001723445.pdfなお厚生労働省「iDeCoの加入可能年齢の引き上げ」は「(1)~(3)に該当しない60歳以上70歳未満の者であってもiDeCoの加入が可能」と概括的に記載していますが、対象者の範囲は改正法附則第33条および公布通知が上記(1)(2)に限定しています。
個別の該当性の判断は、厚生労働省または運営管理機関にご確認ください。
■前回の引上げで起きたこと ── 制度が上限を延ばすと、その年齢層は残る
2022年5月1日、国民年金被保険者であれば65歳未満までiDeCoに加入できるようにする改正が行われました。ただし60歳以降も国民年金被保険者でいられるのは第2号被保険者と任意加入被保険者だけなので、第1号・第3号被保険者の上限は60歳未満のまま据え置かれたという点に注意が必要です。
iDeCoの60歳以上の加入者数(各年度末)
2021.3末 617人(全体の0.03%)
2022.3末 923人(全体の0.04%)
2023.3末 80,685人(全体の2.8%)
2024.3末 146,068人(全体の4.4%)
2025.3末 216,164人(全体の6.0%)
改正前は原則60歳未満しか加入できなかったため、「60歳以上の加入者」は制度上ほぼ存在し得ないカテゴリでした。2022.3末の923人は法律が作った人為的な下限値で、施行前後の倍率(87.4倍)は加入の勢いを測る指標にはなりません。
増加の相当部分は、それまで60歳で抜けさせられていた人が残るようになったことで説明できます。2022.3末の50代加入者803,904人のうち1年で60歳に達するのは概ね80,390人で、2023.3末の60歳以上80,685人と桁が合います。
ただしこの80,390人の全員が残れたわけではありません。前回の改正で60歳以降も加入者でいられるようになったのは第2号被保険者と任意加入被保険者だけで、第1号・第3号被保険者は60歳でiDeCoの加入資格を失うためです。実際に残留で説明できるのはこれより少ない人数で、増加の主因が新規参入ではなく残留側にあることを示すものとお読みください。
※到達人数は50代の加入者が各歳に均等分布すると仮定した概算です。年齢別の内訳は公表されていないため厳密な推計ではありません。
この「残った」という動きは、別の表にも現れています。同じ統計資料にある運用指図者(掛金を出さず運用だけしている方)の年代別内訳では、60歳以上が改正年度だけ減っています。
iDeCoの60歳以上の運用指図者数(各年度末)
2021.3末 136,341人
2022.3末 175,559人(前年比 +39,218人)
2023.3末 170,429人(前年比 -5,130人)
2024.3末 185,847人(前年比 +15,418人)
2025.3末 210,330人(前年比 +24,483人)
前年まで増え続けていた60歳以上の運用指図者が、改正が施行された年度だけ5,130人減りました。改正前は60歳になると加入者が全員この区分へ移されていたため、加入者のまま残れるようになった分だけ運用指図者への流入が減ったとみられます。
収支の桁でも確かめられます。この年度の加入者の増加79,762人と運用指図者の減少5,130人を合わせると74,632人。60歳到達による流入は概ね101,164人と見込まれるので、差の26,532人が流出にあたります。同年度の給付は合計34,179人(老齢給付金29,170人・障害給付金1,284人・死亡一時金2,585人・脱退一時金1,140人)で、同じ規模です。
※これは概算どうしの桁の照合であって、厳密に対応する量ではありません。原典の注記により「「受給者数」は集計年度期間中の裁定請求受付人数(2024.3末以前は、一部の記録関連運営管理機関において受給者数を集計)」とされている点にもご留意ください。
※重要なのは、この収支が「運用指図者から加入者へ戻った人」をゼロと置いても成立することです。公表統計からは、拠出を再開した方がどれだけいたかを分離できません。本リリースはその有無を断定しません。
倍率ではなく構成比と寄与率で見るのが適切です。60歳以上は全加入者の0.03%(2021.3末)から6.0%(2025.3末)へ。この4年間の加入者の増加分のうち12.8%を60歳以上が占めました。同じ4年間でiDeCo全体は1.86倍です。企業型DCでも60歳以上は39,677人から114,654人へ2.9倍(全体は1.15倍)に増えています。
※4年間の倍率(350.3倍)も算出できますが、分母の617人は施行前倍率と同様に制度上の下限値であるため、本リリースでは指標として用いません。
■編集部コメント
今回の改正で大きいのは、年齢よりも金額だと考えます。会社員の枠が月2万円台から月6.2万円へ変わるのは、家計の設計そのものを見直す規模の変化です。しかも施行は2026年12月1日、この発表から3か月あまりです。
同時に、同じ改正で増えない人がいます。第3号加入者の月2.3万円は変わらず、差は0円から月39,000円に広がります。世帯で老後資金を準備する場合、どちらの名義で積むかによって使える枠が変わるということです。
年齢の引上げについては、前回の実測が示唆的です。60歳以上の加入者が増えた相当部分は、それまで強制的に抜けさせられていた人が残るようになった分でした。増えたというより、減らなくなったのです。動いたのは、すでにiDeCoの口座を持っていた人でした。
今回とくに見落とされやすいのが経過措置だと考えます。「3年の猶予がある」と読むと2029年まで待てるように見えますが、対象になるかどうかは施行日(2026年12月1日)時点でほぼ決まり、3年はあくまで申出の期限です。60歳の誕生日が2027年12月2日以降の第1号・第3号被保険者の方は、原則としてこの経過措置には乗れません。
まず確認したいのは、自分がどの区分にあたり、枠がいくらになり、経過措置の対象かどうか。その3つは、働き方と、施行日時点の年齢で決まっています。
■本リリースの位置づけ
・報道関係者向けの情報提供資料です。制度の内容・金額・施行日はすべて厚生労働省の公表資料の値で、編集部が算出したのは引上げ幅・倍率・構成比・増加寄与・60歳到達人数の概算・拠出できる元本の枠・公務員の実額例・加入者と運用指図者の収支です。
・特定の金融商品・運用商品・金融機関を推奨するものではなく、運用利回りを一切仮定していません。
・施行日も金額も既に政令で確定しています。改正法の条文は「公布から3年以内の政令で定める日」と定めていますが、その政令は公布済みです。厚生労働省のページ上の表記は現時点でなお「施行予定」です。
・企業年金等がある方の月6.2万円はiDeCo単独の枠ではありません。
・制度を評価するものではありません。引上げ幅の差や据置の是非を論じるものではありません。
・iDeCoの掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除の対象ですが、個別の控除額・税額の計算は税理士の独占業務であり本リリースでは扱いません。
・第5号加入者の該当性など条文の細部については、厚生労働省または運営管理機関にご確認ください。
・統計資料には「加入者数」と年代別の「計」の2つの総数があり、2023.3末以前は集計の作業日が異なるため一致しません(資料の注記)。本リリースの構成比は年代別の「計」を分母としています。
・統計は公表されている最新値(2025年3月末時点)で、今回の改正の施行前のものです。
■調査概要
分析主体:IKIGAI TOWN 編集部(スペシャリスト・ドクターズ株式会社)
根拠法:社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律(令和7年法律第74号、2025年6月13日成立)
施行期日:令和7年政令第441号(2026年12月1日)/令和7年政令第430号(2026年4月1日)
金額の根拠:令和7年政令第442号(2025年12月24日公布)
集計時点:2021.3末~2025.3末(各年度末)
編集部が算出した値:引上げ幅・倍率、年代別構成比、増加寄与率、60歳到達人数の概算、拠出できる元本の枠、公務員の実額例、加入者と運用指図者の収支
制度の出典:厚生労働省「2025年の制度改正(施行スケジュール)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2025kaisei.html 厚生労働省「iDeCo拠出限度額の引き上げ」
https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001597573.pdf 厚生労働省「iDeCoの加入可能年齢の引き上げ」
https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001597572.pdf 厚生労働省「iDeCo(個人型確定拠出年金)の概要」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/kyoshutsu/ideco.html統計の出典:運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計資料(2025年3月末)」(2025年11月)
https://www.mhlw.go.jp/content/001058200.pdfライセンス:CC BY 4.0(出典明記のうえ自由に引用・転載できます)
詳細・図版・CSV:
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記事提供:DreamNews