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遺族厚生年金の収入基準は年収850万円未満 ── 男性の平均給与569万円をはるかに上回るのに、54歳以下の夫には1円も出ない

スペシャリスト・ドクターズ株式会社

── 法律の条文が「ただし、妻以外の者にあつては」と書いている。2028年4月、その一文が変わる。

遺族厚生年金を受け取るには、亡くなった配偶者に生計を維持されていたことが要る。
その認定に使う収入基準は年収850万円未満。男性の平均給与は569万円(国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」)なので、
所得の条件は男性のほとんどが満たしている。それでも54歳以下の夫には支給されない。

※本リリースは報道関係者向けの情報提供資料です。条文はe-Gov法令検索、給与の数値は国税庁、
 改正内容は厚生労働省の公表資料から引用しており、編集部が独自に算出した数値はありません。

■本リリースのポイント

1. 収入の条件は、男性のほとんどが満たしている。生計維持の認定に使う収入基準は年収850万円未満。
  男性の平均給与は569万円、最も人数が多い階級は400万円超500万円以下(504万人・17.5%)。
2. それでも54歳以下の夫には1円も出ない。厚生年金保険法第59条第1項が「ただし、妻以外の者にあつては」として、
  夫・父母・祖父母に55歳以上であることを求めているため。
3. 遺族基礎年金は性別中立。国民年金法第37条の2は「配偶者又は子」と定めており、
  18歳到達年度末までの子と生計を同じくする父親も対象になる。「父親には遺族年金が一切出ない」わけではない。
4. 2028年4月1日、この一文が変わる。年金制度改正法により60歳未満の男性が新たに支給対象となり、収入要件は廃止される。
  あわせて18歳未満の子のない20~50代の配偶者は原則5年の有期給付となる。
5. 「5年で打ち切り」だけの話ではない。厚生労働省は影響を受けない方として
  「既に受給権を有する方」「60歳以降の高齢の方」「20代から50代の18歳未満の子のある方」の3類型を明記している。

■収入の条件は、男性のほとんどが満たしている

遺族厚生年金は誰にでも出るものではない。厚生年金保険法第59条第1項は、受け取れる遺族を
「配偶者、子、父母、孫又は祖父母」と定めたうえで、亡くなった人に生計を維持されていたことを求めている。
その認定基準は同条第4項により政令に委ねられ、実務では年収850万円未満という収入基準が使われる。
厚生労働省の改正資料にも「死亡者との生計維持関係の確認に用いる収入基準(850万円)」と明記されている。

国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」(1年を通じて勤務した給与所得者)

 全体     5,076万人 平均 460万円
 男性     2,887万人 平均 569万円
 女性     2,189万人 平均 316万円
 正社員          平均 530万円
 正社員以外        平均 202万円
 (参考)遺族年金の収入基準 850万円未満

収入基準まで、男性の平均から281万円の開きがある。
男性で最も人数が多い階級は400万円超500万円以下で504万人(17.5%)。
なお年収850万円以上の人が全体の何%かは本調査の概要に示されていないため、本リリースでは割合を示していない。





■それでも54歳以下の夫には出ない ── 条文にそう書いてある

【厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第59条第1項】
遺族厚生年金を受けることができる遺族は、被保険者又は被保険者であつた者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母(略)であつて、
被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時(略)その者によつて生計を維持したものとする。
ただし、妻以外の者にあつては、次に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。
 一 夫、父母又は祖父母については、五十五歳以上であること。
 二 子又は孫については、十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にあるか、又は二十歳未満で
   障害等級の一級若しくは二級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと。

「妻以外の者にあつては」── 法律そのものが、妻だけを別扱いすると書いている。
妻には年齢の要件がなく、夫には55歳以上という要件がある。
厚生労働省の現行制度図によれば、夫は55歳で受給権を得たあとも支給が始まるのは60歳からである。

したがって、54歳以下で妻を亡くした夫は、年収がいくら低くても遺族厚生年金を受け取れない。
この条文は1954年(昭和29年)の制定以来、妻を亡くした夫を想定していないまま残ってきた。
共働き世帯が当たり前になり、女性の給与所得者が2,189万人にのぼる現在も、扱いは変わっていない。

■遺族基礎年金は別の制度

遺族年金には遺族基礎年金(国民年金)と遺族厚生年金(厚生年金)の2つがある。
遺族基礎年金を定める国民年金法第37条の2は「遺族基礎年金を受けることができる配偶者又は子は」と規定しており、性別中立である。
18歳到達年度末までの子と生計を同じくしていれば、父親も対象になる。
「父親には遺族年金が一切出ない」というのは誤り。本リリースが扱っているのは、上乗せ部分にあたる遺族厚生年金である。

■2028年4月1日、この一文が変わる

社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律(年金制度改正法)により、
遺族年金の規定が見直される。厚生労働省の改正概要にはこう書かれている。

「遺族厚生年金の男女差解消のため、18歳未満の子のない20~50代の配偶者を原則5年の有期給付の対象とし、
 60歳未満の男性を新たに支給対象とする。」

報道では「5年で打ち切り」の側が繰り返し伝えられてきたが、同じ改正の中で受給できるようになる人がいる。

 支給対象:60歳未満の男性を新たに支給対象とする
 給付期間:18歳未満の子のない20~50代の配偶者は原則5年の有期給付に
 収入要件:収入要件の廃止
 配慮措置:男女ともに受給しやすくし、原則5年の有期給付に
 配慮措置:低所得など配慮が必要な方は最長65歳まで所得に応じた給付の継続
 配慮措置:有期給付の場合の加算や配偶者の加入記録による自身の年金の増額
 配慮措置:女性のみの加算を廃止(25年かけて段階的に縮小)
 施行期日:令和10年4月1日(2028年4月1日)

厚生労働省の資料は、遺族厚生年金について今回の改正の影響を受けない方を3類型あげている。
 ・既に受給権を有する方
 ・60歳以降の高齢の方
 ・20代から50代の18歳未満の子のある方
「子育て中の世帯も5年で切られる」という理解は、この記載と一致しない。

■編集部コメント

この記事で扱った数字は、どれも新しく計算したものではない。条文はずっとそこにあり、給与の統計も毎年公表されている。
それでも並べてみると、制度が想定している家族像と、いま実際にある家族が離れていることが見えてくる。
収入の条件は年収850万円未満。男性の平均は569万円だから、ほとんどの夫はこの条件を満たしている。
満たしたうえで、年齢で外れる。条文が「妻以外の者にあつては」と書いているからである。
私たちがFP相談の現場で見てきたのは、共働き世帯で妻の死亡保障だけが薄いという設計だった。
夫に手厚く、妻には最低限。遺族厚生年金が妻には出て夫には出ない現行制度を前提にすれば、それは合理的とも言えない。
むしろ逆で、公的年金が出ないほうにこそ民間の保障が要ることになる。
2028年4月に男女差は解消されるが、同時に子のいない配偶者は原則5年の有期給付になる。
どちらの向きに変わるかは、その家庭の年齢と子どもの有無で違う。「縮小」か「拡大」かの一言では片づかない改正である。
(IKIGAI TOWN 編集長 塩飽哲生)

■調査概要

調査テーマ:遺族厚生年金の収入基準および夫の年齢要件と、実際の給与水準との関係
調査主体:スペシャリスト・ドクターズ株式会社(IKIGAI TOWN 編集部)
根拠法:厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第58条・第59条/国民年金法(昭和34年法律第141号)第37条・第37条の2(e-Gov法令検索)
改正内容の出典:厚生労働省「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律の概要」
給与データ:国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」(1年を通じて勤務した給与所得者)
編集部の計算:なし。条文と公表値をそのまま引用し、収入基準と平均給与の差額(281万円)のみ引き算した
確認日:2026年8月27日
初出発表日:2026年8月27日(https://ikigai.town/ja/press/2026-08-27/

■ご利用にあたっての注意

本リリースは情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘・推奨を目的としたものではありません。
個別の受給可否・受給額は加入記録および生計維持関係によって決まります。日本年金機構または年金事務所にご確認ください。
改正後の取扱いには政令等で定まる部分が含まれます。

図表・詳細:https://ikigai.town/ja/press/2026-08-27/



配信元企業:スペシャリスト・ドクターズ株式会社
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記事提供:DreamNews

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