レポートオーシャン株式会社プレスリリース : データセンター液体冷却市場は2035年に258億米ドル、CAGR18.61%で拡大|AI・HPC向け高密度冷却需要が成長を牽引
Report Ocean株式会社
データセンター液体冷却市場は、2025年の46億8,000万米ドルから2035年には258億米ドルへ拡大し、2026年から2035年にかけて年平均成長率(CAGR)18.61%で成長すると予測されています。背景にあるのは、生成AI、機械学習(ML)、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、ハイパースケールクラウドの急速な普及です。AIサーバーではGPUを中心に従来型サーバーを上回る電力と発熱が発生するため、データセンター事業者にとって冷却は単なる設備管理ではなく、計算能力、電力効率、ラック密度、設備投資回収を左右する経営課題へと変わりつつあります。
国際エネルギー機関(IEA)によると、データセンターの電力需要は2025年に17%増加し、AI向けデータセンターの電力需要はさらに速いペースで拡大しました。こうした電力制約と計算需要の同時進行は、空冷方式だけでは対応しにくい高密度環境を増やし、ダイレクト・トゥ・チップ、浸漬冷却、間接液体冷却などへの投資を促す構造的な市場要因になっています。
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● データセンター液体冷却市場は、AI、生成AI、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、およびハイパースケールデータセンターの導入が急速に拡大していることを背景に、2025年の46億8,000万米ドルから2035年には258億米ドルへと成長し、予測期間中に18.61%という高い年平均成長率(CAGR)を記録すると見込まれています。
● ダイレクト・トゥ・チップ、浸漬冷却、間接液体冷却技術の採用拡大は、冷却効率の向上、電力使用効率(PUE)の低減、エネルギーおよび水消費量の削減、ならびに高密度GPUベースのコンピューティング環境のサポートを通じて、次世代データセンターの熱管理を変革しつつあります。
● アジア太平洋地域は、クラウドインフラへの投資加速、ハイパースケールおよびエッジデータセンターの拡大、AIの導入拡大、ならびに中国、インド、日本、シンガポール、韓国における政府主導のデジタルトランスフォーメーション(DX)イニシアチブに支えられ、2035年まで市場を牽引すると予想されます。
「空気で冷やす」から「液体で熱を運ぶ」へ、冷却アーキテクチャが転換
液体冷却の価値は、単純にサーバー温度を下げることだけではありません。高密度GPUラックから発生する熱を効率的に回収することで、ファンや空調設備への依存を抑えながら、限られたデータセンター空間により多くの演算能力を収容できる点にあります。調査では2025年にダイレクト液体冷却が市場をリードしたとされ、30kWを超え、50kW、80kW、さらに100kW級へ向かうラック密度への対応が導入理由となっています。一方、今後は間接液体冷却の伸長が見込まれています。これは、すべてのラックを一度に液冷化するのではなく、高密度AIゾーンには液体冷却を導入し、それ以外のエリアでは空冷を継続するといったハイブリッド構成を取りやすいためです。実際、Vertivの2026年発表のMegaMod HDXは、ダイレクト・トゥ・チップ液冷と空冷を組み合わせ、50kWから100kW超のラック密度、最大10MWの構成に対応しています。これは、液体冷却市場が単一技術の置き換えではなく、AIインフラ全体の設計思想そのものへ広がっていることを示す動きです。
高い初期コストが普及を抑える一方、運用データセンター液体冷却モデルが新たな商機に
液体冷却への移行には、冷却液分配ユニット(CDU)、配管、漏洩検知、熱交換設備、液冷対応サーバーなどの追加設備が必要となり、従来型空冷設備からの移行では初期投資が大きくなりやすいことが市場拡大の制約となっています。特に既存データセンターでは、施設設計、電力系統、ラック構成、配管、保守体制まで含めた再設計が必要になるケースがあり、技術的な導入難易度も無視できません。富士通も液冷導入における漏洩リスク、投資判断、保守、運用ノウハウを課題として挙げています。一方、この障壁は市場プレイヤーにとって新しい収益機会でもあります。液冷ハードウェアを販売するだけでなく、CDU管理、監視ソフトウェア、予防保守、設備設計、導入支援、サブスクリプション型サービスまで提供することで、設備投資負担と運用リスクを抑えるビジネスモデルが形成されつつあります。富士通が水冷設備の導入検討から構築、運用、保守までを支援するサービスを展開していることは、この市場が「冷却機器市場」から「冷却インフラサービス市場」へ広がる可能性を示しています。
主要企業のリスト:
● Alfa Laval
● Asetek, Inc.
● Asperitas
● COOLIT SYSTEMS
● Dell Inc.
● Fujitsu
● Hitachi, Ltd.
● Iceotope Technologies
● Lenovo Group Limited
● LiquidStack
● Mitsubishi Electric Corporation
● NTT Ltd.
● Schneider Electric
● STULZ GMBH
● Vertiv Group Corp
● その他の主要なプレイヤー
レポートオーシャン株式会社 最新レポート :
https://www.reportocean.co.jp/request-sample/data-center-liquid-cooling-market最近の市場動向――2025年から2027年に向けて「液冷+AI制御」が加速
● 2025年: 富士通はSupermicroおよびニデックと協業し、GPUサーバー、水冷技術、冷却システム、水冷監視制御ソフトウェアを組み合わせたデータセンター向けソリューションの開発を進めました。富士通は空冷方式の平均PUE 1.6に対し、水冷方式では平均PUE 1.2を実現できると説明しており、冷却技術を電力効率改善の手段として位置づけています。
● 2025年: Schneider Electricは、高密度AIクラスター向けに液体冷却、高出力バスウェイ、高密度ラックを統合したEcoStruxure Pod Data Centerを発表しました。最大1MW超のPod構成を含む設計により、AI向け設備をモジュール単位で拡張する方向性を打ち出しています。
● 2026年: KDDIは2026年1月に稼働を開始した大阪堺データセンターで、大規模な液体冷却技術を商用環境として導入しました。AI時代にGPU性能が高まるほど電力と発熱も増えることから、高効率冷却をAI対応データセンターの重要要素として位置づけています。
● 2026年: NTTドコモビジネスはRapidus向けに液冷方式の「Green Nexcenter」を提供すると発表しました。次世代半導体の研究開発で必要となるHPC規模のサーバーを支えるインフラとして液冷を活用する事例であり、AIだけでなく半導体設計・製造関連の高密度計算需要にも市場機会が広がっています。
● 2027年に向けて: ダイキンとNTT DATAは2026年7月、サーバーの電力・温度データから熱状態をAIで予測し、空調、チラー、液体冷却を統合制御するPoCを開始しました。2027年度の商用化を目指しており、液体冷却市場ではハードウェア導入だけでなく、AIによる冷却制御・運用最適化が次の競争領域になる可能性があります。
アジア太平洋が成長の中心へ、日本でもAIインフラと液冷の接点が拡大
地域別では、アジア太平洋地域が予測期間を通じて市場を牽引すると見込まれています。中国、インド、日本、シンガポール、韓国ではクラウド、通信、電子商取引、金融、AI、HPCなどのデジタルインフラ投資が拡大しており、高密度コンピューティングに対応する冷却需要も増加しています。日本では、経済産業省と総務省が2025年に「ワット・ビット連携」の取りまとめを公表し、AI利用や通信トラフィックの増加を背景にデータセンター整備を重要な政策課題として位置づけました。さらに2026年4月からは、データセンターの省エネルギーを促進する新たな措置が施行され、2026年度提出分からデータセンター関連項目が定期報告などに追加されています。AI計算需要の拡大と電力・省エネルギー政策が同時に進むことで、日本でもデータセンターの新設だけでなく、既存施設のエネルギー効率改善を目的とした液冷導入が重要性を増すと考えられます。
ブロックチェーンからHPCまで、高発熱ワークロードが新しい需要をつくる
市場機会は生成AIやクラウドだけに限定されません。調査では、ブロックチェーンや高頻度取引システムなど、高い処理性能を必要とする用途も液体冷却の潜在需要として挙げられています。こうした環境ではGPUやTPUなどの高性能プロセッサーが継続的に稼働し、発熱量の増加がシステム安定性やハードウェア寿命、電力コストに直接影響します。さらに、AI推論、HPC、半導体設計、科学技術計算、エッジコンピューティングなどでは、ワークロードの変動に応じて冷却能力を柔軟に調整する必要性も高まっています。2026年にはNVIDIAのGB300 NVL72のように、72基のBlackwell Ultra GPUと36基のGrace CPUを搭載した完全液冷のラックスケール構成が登場しており、液冷は一部の特殊用途向け技術ではなく、最先端AIシステムの設計要件へ移行しています。
セグメンテーションの概要
構成要素別
● ソリューション
● サービス
ソリューション別
● 直接液体冷却
● 間接液体冷却
サービス別
● 設計とコンサルティング
● 設置と導入
● 保守とサポート
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● 浸漬冷却
● コールドプレート冷却
● スプレー式液体冷却
データセンター別
● ハイパースケールデータセンター
● エンタープライズデータセンター
● コロケーションデータセンター
● エッジデータセンター
● ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)データセンター
エンドユーザー別
● IT
● 通信
● 医療
● BFSI
● 小売とEコマース
● エンターテインメントとメディア
● エネルギー
● その他
2027年以降、競争軸は「冷やせるか」から「どれだけ効率よく運用できるか」へ
今後の市場競争では、液体冷却そのものの性能に加えて、AIサーバー、電力設備、CDU、チラー、空調、ラック、監視ソフトウェアをどこまで統合できるかが重要になります。特にAIワークロードは処理量と発熱が常に一定ではないため、固定的な冷却制御よりも、サーバーの電力消費や温度変化を分析し、必要な場所へ必要な冷却能力を配分する仕組みが求められます。ダイキンとNTT DATAの2026年PoCはこの方向性を象徴しており、2027年度の商用化を見据えてAIによる熱状態予測と冷却設備の統合制御を検証しています。また、富士通とSupermicroは2024年から液冷システムとグリーンAIコンピューティングを共同開発し、2027年提供予定のFUJITSU-MONAKAプロセッサーとの連携も進めています。 これらの動きを踏まえると、2035年に向けたデータセンター液体冷却市場では、冷却装置メーカーだけでなく、GPU・サーバー企業、空調・電力インフラ企業、データセンター事業者、ソフトウェア企業が連携するエコシステム型の競争が一段と強まるとみられます。
データセンター液体冷却市場:AIインフラ投資が加速する一方、経営層が長期戦略で見落とせない5つの市場リスク
● 技術標準化の遅れは、将来の「ベンダーロックイン」を招くのか?
液体冷却市場で経営層が注視すべきリスクの一つは、急速な技術普及に対して標準化が十分に成熟していない点です。Direct-to-Chip、CDU、マニホールド、配管、クイックコネクト、冷却液など複数のシステムが相互接続されるため、仕様やインターフェースの違いは、将来のサーバー更新や設備増強時に互換性問題を生む可能性があります。Schneider Electricも、クイックコネクトやマニホールド、配管などには業界全体で受け入れられた統一規格がまだないと指摘しています。したがってCEOやデータセンター事業者にとって、初期導入価格だけでベンダーを選定することは、中長期的な切り替えコストや設備更新の自由度を損なう可能性があり、相互運用性、拡張性、保守性まで含めた調達戦略が重要になります。
● AI向けラック密度の急上昇は、今日の冷却設備を早期に陳腐化させる可能性がある
生成AIやHPCの普及によってGPU・CPUの発熱密度が高まるなか、企業が直面するのは「液体冷却を導入するか」という判断だけではなく、「どの程度の将来負荷まで設計に織り込むか」という資本配分の問題です。冷却能力を現在のIT負荷に合わせすぎれば、次世代サーバーへの更新時にCDU、配管、熱交換設備などへの追加投資が必要になる可能性がある一方、将来需要を過大評価すれば設備利用率と投資収益性が低下します。特にAIデータセンターでは電力需要予測そのものにも不確実性があり、米国では重複・投機的な接続申請による「ghost demand」がインフラ計画上の問題として浮上しています。経営戦略では、単一の需要予測ではなく、GPU世代交代、ラック密度、設備利用率を複数シナリオで評価できるモジュール型・段階投資型の冷却設計が重要になります。
● 液漏れ・冷却液管理・システム障害は「設備問題」ではなく事業継続リスクになる
液体を高価なGPUやサーバーの近くで循環させる以上、漏液、結露、流量不足、圧力異常、冷却液品質の劣化、ポンプや熱交換器の故障は無視できません。特にAIデータセンターでは、一つの冷却系統の障害が高価値なコンピューティング設備やサービス可用性へ波及する可能性があるため、冷却設備の信頼性は企業のSLA、顧客維持、レピュテーションにも直結します。CDUを含む液体冷却では、温度・圧力・流量・材料適合性・冷却液品質をIT側の要求条件と整合させる必要があり、漏液検知や冗長化、監視システム、予防保守まで含めた設計が不可欠です。経営層にとって重要なのは設備価格を最小化することではなく、障害発生時の損失額を含む「Total Cost of Risk」で投資を判断することです。
● サプライチェーンと専門人材不足が、大規模導入のボトルネックになる可能性
市場がCAGR 18.61%で拡大する局面では、需要増加そのものがCDU、コールドプレート、ポンプ、熱交換器、特殊配管、冷却液などの調達リスクを高める可能性があります。さらに液体冷却は単一製品を購入すれば完結する設備ではなく、サーバー、CDU、施設側冷却設備、制御、配管、コミッショニングを統合する能力が必要です。例えばインドでも液体冷却関連の国内供給能力は拡大していますが、事業者には部品の調達先だけでなく、システム統合、スペア部品、コミッショニング、専門技術者、稼働後のライフサイクルサポートまで確認することが求められています。CEOや調達責任者は価格競争力だけでなく、複数調達先の確保、現地サービス網、部品在庫、納期、技術者確保まで含めてサプライヤーのレジリエンスを評価する必要があります。
● 電力・水・環境規制が「どこにデータセンターを建設するか」という投資判断を変える
液体冷却市場の長期的な成長機会を左右する最大の外部変数の一つが、電力・水資源・環境政策です。AIデータセンターの急増によって地域電力網への負荷が高まり、一部地域では新規接続に対する審査や規制が強化され始めています。また、水ストレス地域ではデータセンターの水利用が地域社会や行政の重要課題となっており、インドでも一定規模以上の対象プロジェクトでは環境認可時に淡水確保、水収支、再利用などが評価されます。これは液体冷却ベンダーにとって単なる規制リスクではなく、閉ループ冷却、低水使用型設計、熱再利用、エネルギー効率改善などを競争優位に転換できる機会でもあります。したがって長期戦略では、市場規模の成長率だけを見るのではなく、電力確保、水資源、許認可、地域社会の受容性まで含めて立地と冷却技術を一体的に評価することが、投資リターンを左右する重要な意思決定になります。
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