【緊急声明】高額療養費制度における負担上限額の引き上げについて-多数回該当に関する変更案を受けて-
JPA
一般社団法人日本難病・疾病団体協議会(JPA)(代表理事:吉川 祐一)は、2025年2月21日、高額療養費制度における負担上限額の引き上げについて緊急声明を発表いたしました。
このたびの高額療養費の限度額の引き上げについては、医療費助成のない難病やがんについて、該当する方が多いと思われる、多数回該当については引き上げが行われないこととなりましたが、そのほかの引き上げは再来年までに3回にわたって行われ、収入区分によっては70%以上の引き上げとなります。
このため、制度維持は必要としても、その引き上げ額が必要以上に大きいと考えられるため、その軽減に加え、来年再来年に行われる見込みの区分の見直しについて、議論をやり直すよう求めていきたいと考え、下記の通り緊急声明を発表いたしました。
【緊急声明】高額療養費制度における負担上限額の引き上げについて-多数回該当に関する変更案を受けて-
政府は今年8月から再来年8月までに、3回に分けて高額療養費制度の負担上限額を引き上げることとしていました。
しかし、当事者の意見を聞くため、弊会並びに全がん連や白血病の患者会などの患者団体と福岡厚生労働大臣との懇談等を実施し、2月14日に、がんや医療費助成のない難病の方など、この制度の利用が多い患者への影響が非常に大きいとして、同制度案のうち多数回該当部分については、その負担額を据え置くことを発表しました。
多数該当の際の引き上げ額の軽減を求めていた弊会は、この決断について高く評価したいと思います。
一方で、石破首相は2月17日の衆院予算委員会で、制度維持のため多数回該当以外の部分の制度の見直しは実施すると述べ、このため2027年8月までに、収入区分によっては現行の負担額から最高で70%以上の引き上げが実施される見込みです。
大変残念なことですが、これにより、制度利用者の負担増はもとより、いままで限度額に届いていたが今後届かなくなる方が生まれ、結果、制度の保護から外れ、3割負担で高額な医療費の支払いを続けざるを得なくなる方も、特に引き上げの大きい、治療と仕事を両立しようとする現役世代で多く発生する可能性があります。
政府は高額療養費制度の直近3兆円弱の支出が2兆円強程度にまで縮小する財政効果を謳いますが、逆にこれは、制度の持つセーフティネット機能が大きく縮小することを意味し、さらに、受診抑制や重症化等、負の波及効果が生じる危険もあります。
制度の「維持継続」ではなく、特に引き上げの大きい現役世代には、利用しづらい名ばかりの制度になる危険があり、「病気や障害よる障壁をなくし、一人ひとりが人間としての尊厳が大切にされる社会」を願う弊会として、大変危惧するところです。
弊会は、今回の議論における資料の不足や粗さ、そして当事者参加が行われず短期間で議論が進められたことなどを受け、昨年12月に、多数回該当とともに負担上限額自体の引き上げ軽減等を要望しました。
ぜひ今年8月の引き上げの軽減とともに、来年再来年に予定されている引き上げや区分の細分化については、十分な資料を揃え、当事者や利用者も参画した審議の場において、セーフティネットとしての制度の維持継続のための慎重な議論がきちんと行われるべきと考えます。
一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会
代表理事 吉川 祐一
プレスリリース提供:PR TIMES
記事提供:PRTimes