【東京都23区マンション】データが捉えた“人口流入の新ルール” 価格上昇が先か、人口増が先か?
マンションリサーチ株式会社

~東京23区における、不動産価格主導型エリア成長説~
近年、東京都では人口の都市集中が顕著になっております。住民基本台帳人口移動報告によりますと、東京都は2020年以降も継続的に「人口増加」を維持しており、全国的な人口減少傾向に逆行するかたちで、人口の集中が加速しています。特にコロナ禍以降、一時的に見られた「地方移住」への動きも、2022年以降は減少傾向にあり、再び東京への回帰が明確になってきました。
このような背景のもと、東京都内、特に23区のマンション市場において、取引価格は記録的な水準で高騰しています。一般的に、人口増加は住宅需要の増加をもたらし、需給バランスの観点から不動産価格の上昇要因とされてきました。しかし、近年の都心マンション市場を精査すると、必ずしも「人口増加 → 価格上昇」という単純な因果関係では説明しきれない現象が観察されます。
この点を明らかにするため、本稿では「人口動態とマンション価格の相関性」に着目し、東京都23区のデータをもとに分析を試みました。
[表1:
https://prtimes.jp/data/corp/13438/table/102_1_38fee6506b751b6c2a22bea7d6985f78.jpg ]
一般的に、住宅価格の上昇は「需要の増加」が引き金になると考えられます。東京都における人口動態、特に人口増加の継続は一般的には住宅需要の高まりを示すものであり、それが価格を押し上げる主因となっていると考えられます。
しかしながら、実際の統計データを時系列で分析してみると、こうした直接的な相関は観測されませんでした。
表1:2020年~2024年における東京都全体の「人口増加率」対する「マンション坪単価の高騰率」
[画像1:
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出典:東京都庁「東京都の人口(推計)」と福嶋総研のデータを統合して作成
2020年~2024年にかけてのデータを参照した結果、「人口増加率」と「マンション価格高騰率」には明確な相関関係が見られませんでした。たとえば、2023年には人口増加率が大きく増加したものの、マンション価格の高騰率は鈍化しました。
従ってこの時系列データからは、「人口増加が価格を押し上げている」という従来の因果関係に対して、異なる視点からの考察が必要であると判断されます。
表2:東京都23区:「人口増加率」に対する「マンション坪単価の高騰率」
[画像2:
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出典:東京都庁「東京都の人口(推計)」と福嶋総研のデータを統合して作成
たとえば、港区などの高価格帯のマンションが集中するエリアでは、マンション価格の上昇が著しいにもかかわらず、人口増加率は他区と比較して必ずしも高くありません。逆に、比較的家賃や物価が抑えられた郊外寄りの区では、人口流入が活発であっても価格上昇率は鈍化しているケースも確認されました。このことから、23区内でも「人口の増加=価格の上昇」といった構図が崩れつつある実態が浮き彫りになりました。
[表2:
https://prtimes.jp/data/corp/13438/table/102_2_1135a264a73776be7ded640c85dd8345.jpg ]
筆者は、東京都心部のマンション市場において、価格形成のファンダメンタルズ(立地、交通利便性、教育・医療インフラなど)に加えて、過剰とも言える「期待値」が価格に上乗せされていると考えます。これは、「今後も価格が上昇するだろう」という市場心理が、投資・実需を問わず購入需要を加速させるものです。
この「価格上昇への期待」がある種のトリガーとなり、都市へのさらなる人口流入を生むという逆転現象が起きている可能性があります。すなわち、「人が集まるから価格が上がる」のではなく「価格が上がるから人が集まる」という因果関係の逆転です。
特に若年層の高所得者層や外資系企業勤務者、共働き世帯などは、上昇し続ける都心価格に対して早期の住宅取得を急ぐ傾向があり、さらに市場を過熱させます。また海外資本による投資需要もこれに拍車をかけており、価格形成における実需と投資の境界が曖昧になっています。
[表3:
https://prtimes.jp/data/corp/13438/table/102_3_8a7d58f2006afb6ae2c5b91f7011f6de.jpg ]
東京都23区における近年のマンション市場を分析すると、「人口増加が価格を押し上げる」という従来の図式には限界が見られます。代わりに「価格の上昇」自体が人を惹きつける「磁場」のような役割を果たしており、むしろ価格上昇が人口を押し上げるという逆転現象が起きていると考えられます。
このような市場構造では、表面的な相関関係が観測されにくくなるため、より多面的・動態的な分析が必要です。今後も価格上昇の継続が見込まれる中、マンション価格と人口動態の関係は、ますます複雑かつ密接なものとなっていくでしょう。
[画像3:
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福嶋総研
代表研究員
早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。また大手メディア・学術機関等にもデータ及び分析結果を提供する。
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【マンションリサーチ株式会社について】
マンションリサーチ株式会社では、 不動産売却一括査定サイトを運営しており、 2011年創業以来「日本全国の中古マンションをほぼ網羅した14万棟のマンションデータ」「約3億件の不動産売出事例データ」及び「不動産売却を志向するユーザー属性の分析データ」の収集してまいりました。 当社ではこれらのデータを基に集客支援・業務効率化支援及び不動産関連データ販売等を行っております。
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代表取締役社長: 山田力
所在地: 東京都千代田区神田美土代町5-2 第2日成ビル5階
設立年月日: 2011年4月
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プレスリリース提供:PR TIMES


記事提供:PRTimes