約9割の中等症~重症のCOPD患者が日常生活の中で苦しさを感じるが、助けを求められず一人で抱えている傾向が浮き彫りに
サノフィ株式会社

COPD患者さんを対象とした「日常生活における身体的・精神的負担に関する意識実態調査」結果発表
サノフィ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:岩屋孝彦)は、慢性閉塞性肺疾患(以下「COPD」)患者さんの日常生活における身体的および精神的な負担についての理解を深めることを目的に、全国の患者さん(40代から80代、男女200名)を対象に「日常生活における身体的・精神的負担に関する意識実態調査」を実施しました。
今回の調査では、COPD患者さんの大半が症状による息切れや呼吸困難といった身体的な負担だけなく、過去の喫煙への自責の念や呼吸困難が起こることへの不安など精神面における何らかの負担を感じていることが示されました。中等症~重症(以下「中等症以上」)の患者さんに絞ると9割に近い数字となっています。一方、日常生活で苦しさを感じるシーンで、「その動作を家族や周囲の人に助けてもらっている」という患者さんは1割にも満たないなど、苦しさを一人で抱えている傾向も明らかになりました。
主な調査結果は以下の通りです。
- 日常生活でCOPDによる息切れや呼吸困難など何らか身体的な苦しさを感じている患者さんは中等症以上では93.1%、軽症では70.7%。中等症以上では9割以上が何らかの身体的負担を抱えている結果となった。- 日常生活で身体的な苦しさを感じる場合に「その動作を家族や周囲の人に助けてもらっている」人は、軽症の患者さんでわずか7.5%、中等症以上では5.6%。9割以上の患者さんが自ら工夫して対処しており、家族や周囲に助けを求める患者さんは1割に満たなかった。- 日常生活で感じるCOPDによる精神的な負担を感じる患者さんは、軽症で60.0%、中等症以上では87.9%と高い割合が確認された。特に中等症以上ではおよそ9割の患者さんが何らかの精神的負担を抱えている結果となった。「過去の喫煙への自責の念がある」が、軽症で29.3%、中等症以上43.1%とそれぞれ最多回答であった。- 身体的負担を最も相談できる相手は「主治医」で、中等症以上が68.5%と回答。一方で、精神的負担を最も相談できる相手は「家族」で37.3%、「主治医」は31.4%にとどまり十分な相談環境が整っていないことが示唆された。- 何らかの症状悪化(増悪)経験がある患者さんは軽症で61.3%、中等症以上では74.1%と多数を占めた。しかし、「増悪という言葉も状態も知らなかった」と回答した患者さんは軽症で57.3%、中等症以上は55.2%。症状悪化に対する認識が十分に浸透していない実態がうかがえた。
COPD は、気道の慢性炎症と肺胞破壊により生じる、非可逆性の気流性閉塞を特徴とし、進行性に呼吸機能が低下していく、生命を脅かす呼吸器疾患です。有病率や死亡率は世界的にみても高いレベルにあり、日本においても策を講じるべき生活習慣病の一つとされ、「木洩れ陽2032-COMORE-By2032」と命名された2032年までにCOPD死亡率を減少させる取り組みもとられています。COPDの原因は主に喫煙や有害な微粒子への曝露とされていますが、 禁煙後、何年も経過してから発症することも稀ではなく、禁煙後も症状が持続・進行することも多いとされています。労作で息切れを感じる、咳が長引く、常時痰が絡むなどの呼吸器症状から身体的な負担が大きいことが知られていますが、さらに急性増悪に伴う入院の繰り返しや、不安、うつ病、睡眠障害を伴うこともあり、経済面のみならず社会生活面でも大きな負担があります。
サノフィは、免疫領域において、引き続き日本の患者さんに希望をお届けできるよう鋭意努力し、患者さんとそのご家族や医療関係者へ更なる貢献をしてまいります。
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室 繁郎 先生
奈良県立医科大学 呼吸器内科学講座 教授 室 繁郎 先生1989年京都大学医学部卒業。1989年田附興風会北野病院にて内科研修医・医員として勤務。1994年から1998年に京都大学医学研究科博士課程にて医学博士を取得。1998年マギル大学ミーキンス・クリスティー研究所研究員(カナダ)となる。2001年京都大学医学部付属病院 呼吸器内科医員、2002年同病院にて助手、2008年には講師として勤務。2012年京都大学大学院 医学研究科 呼吸器内科学講師、2017年同病院准教授として勤務。2018年より現職。2022年より奈良県立医科大学附属病院副病院長も兼務。
今回の調査結果は、COPD患者さんが日常生活で直面する身体的・精神的な負担の大きさを改めて浮き彫りにしました。軽症で約7割、中等症から重症の患者さんになると約9割が苦しさを感じているという事実は、医療従事者にとって見過ごせない課題です。
COPD患者さんにとって、呼吸困難や倦怠感といった身体的な症状は生活の質(QOL)を大きく左右します。それに加え、今回の調査では、症状の悪化に対する不安、咳き込んだ際の周囲の視線、さらには過去の喫煙歴に対する自責の念など、精神的な負担も少なくないことが明らかになりました。特に、中等症から重症の患者さんほど、この傾向が顕著である点は注目すべきです。
さらに、多くの患者さんがこうした苦しみを一人で抱え込んでいることも深刻な問題です。調査によると、日常生活で苦しさを感じる場面において、家族や周囲の人に助けを求める患者さんは1割未満にとどまります。「喫煙歴があるのは自分の責任」「周囲に迷惑をかけたくない」といった心理的要因が影響していると考えられます。また、社会全体のCOPDに対する認知不足も影響し、患者さんが適切なサポートを受けにくい状況を生んでいる可能性があります。
COPDは年余にわたって進行していくことが多く、風邪などを契機に症状が悪化することも少なくありません。しかし、調査では6~7割の患者さんが治療をしているのに悪化した、といった変化を経験しながらも、それが病状の急性の変化(増悪)であると認識していないケースが多く見られました。増悪を放置すると病状の悪化を加速させ、入院やさらなる生活の質の低下、さらには介護が必要になるリスクも高まります。特に高齢者では、呼吸機能の低下によって日常生活の動作が制限され、介護負担の増大や自立した生活の困難さが生じることも懸念されます。
これらの課題を踏まえ、医療従事者としては、患者さんとの対話を重視し、より積極的にサポートの手を差し伸べる必要があります。診察時には、単に症状の有無を確認するだけでなく、日常生活における困難や精神的な負担についても丁寧に聞き取ることが重要です。また、患者さんに対し、症状の変化に気づいた際には医療機関に相談することの重要性を繰り返し伝え、適切なタイミングで治療を見直せるような環境を整えることも求められます。これらの環境整備は、医師だけではなく、看護師、薬剤師、理学療法士、介護士、ケアマネージャー、医療体制を提供する行政など、さまざまな関係者が関わることによって達成されると考えております。
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遠山 和子さん
J-BREATH(NPO法人日本呼吸器障害者情報センター)理事長 遠山 和子さん1999年に当時COPD患者さんだったご主人の雄二さんと設立。2008年、雄二さんの遺志を継いで理事長に就任。呼吸器疾患の認知度向上を目指して、さまざまな活動を展開している。
今回の調査結果は、COPD患者さんが日常生活で抱える困難の大きさをよく示しており、患者会としても非常に重要な課題だと考えています。特に、中等症~重症の患者さんの約9割が苦しさを感じているにもかかわらず、その多くの方が周囲に助けを求められず、一人で抱え込みがちであるという現状は深刻です。
こうした背景には、COPDという病への認知度が低く、周囲の人々がその症状や困難を十分に理解していないことが挙げられます。例えば、患者さんが抱える呼吸困難や疲労感による身体的・精神的な負担を「ただの運動不足」や「怠けている」と誤解されてしまうこともあり、そうすると患者さんが支援を求めづらく感じ、内にこもりがちになって、外出を控えたりすることで、筋力が低下し、息切れをさらに加速させてしまう“悪循環”に陥ることがあります。また、患者さん自身も病気について十分な知識を持っていないことが多く、適切なセルフケアができていない場合もあります。「年齢のせい」「疲れやすいのは仕方がない」と思い込み、風邪の症状が長引いても、我慢して受診せず、症状の悪化を見逃すケースもあります。その結果、肺炎を引き起こして入院にいたるといった、「急性増悪」を繰り返し、症状はさらに悪化していきます。
こうした状況を改善するためには、患者さんが自身の症状の変化に敏感になり、医師に積極的に伝えることが何より重要です。「いつもより息切れが強い」といった小さな変化でも、遠慮せずに相談することが大切です。
COPDは長く付き合う病気なので、患者さんが一人で抱え込まず、周囲のサポートを受けながら安心して生活できるよう、患者会としても引き続き情報を提供し、支援を続けていきます。
- 実施期間:2025年2月5日(水)~2月9日(日)- 調査方法:インターネット調査- 調査対象:以下の条件を全て満たすCOPD患者さん 男女200名- - 現在、COPD/肺気腫/慢性気管支炎の治療を受けている患者さん- - 40歳以上- - 現在、吸入薬を処方されている- - 自身の治療状況を理解している- 調査エリア:全国- 調査委託会社:株式会社エム・シー・アイ
本調査における重症度は、患者さん自身が医師から伝えられた重症度の自己申告に基づいています。
1.日常生活でCOPDによる息切れや呼吸困難など何らか身体的な苦しさを感じている患者さんは中等症以上では93.1%、軽症では70.7%。中等症以上で9割以上が何らかの身体的負担を抱えている結果となった。最も多く挙げられたのは「階段の上り下り」だが、病態の進行に伴い中等症以上になることで「歩行」「掃除」「買い物」「入浴」「会話」など日常生活上の身体的な負担に対する回答が増大した。
軽症から中等症以上のCOPD患者さんに、日常生活での身体的な負担についてお聞きしたところ、軽症、中等症以上ともに「階段の上り下り」に負担を感じている患者さんが最多回答でした。次いで、「歩行をする」、「掃除をする」、「買い物に行く」となっており、日常生活への負担が伺える結果となりました。「身体的負担を感じることはない」と回答した患者さんは、軽症で29.3%、中等症以上でわずか6.9%と、多くの患者さんが身体的負担を抱えていることが分かりました。
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2.日常生活で身体的な苦しさを感じる場合に「その動作を家族や周囲の人に助けてもらっている」人は、軽症の患者さんでわずか7.5%、中等症以上では5.6%。9割以上の患者さんが自ら工夫して対処しており、家族や周囲に助けを求める患者さんは1割に満たなかった。
身体的な負担を感じた際にどのように対処しているかお聞きしたところ、軽症では83.1%が「その動作を減らす」、「時間をかけるなど楽に行う自分なりの方法がある」と答え、家族や周囲の人へ助けてもらっている患者さんはわずか7.5%となりました。中等症以上でも92.6%が「その動作を減らす」、「時間をかけるなど楽に行う自分なりの方法がある」と回答し、家族や周囲の人に助けてもらっている患者さんはわずか5.6%と、周囲へ身体的な負担を助けてもらっていないことがわかる結果となりました。
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3.日常生活で感じるCOPDによる精神的な負担を感じる患者さんは、軽症で60.0%、中等症以上では87.9%と高い割合が確認された。特に中等症以上ではおよそ9割の患者さんが何らかの精神的負担を抱えている結果となった。「過去の喫煙への自責の念がある」が、軽症で29.3%、中等症以上43.1%とそれぞれ最多回答。次点として、中等症以上では「いつ呼吸困難になる常に不安になる」が41.4%、「悪化することで起こりうるリスクを知り不安になる」が39.7%など、「旅行や外出が思うようにできず不自由を感じる」が37.9%となり、病態の進行に伴い、自責感から病気そのものへの不安や不自由さへと、心理的負担の内容が変化していることが示唆された。
精神的負担の内容としては、「過去の喫煙歴への自責の念」が軽症、中等症以上ともに最も多く、軽症では次いで「喫煙歴があるため自業自得と思われている気がする」、中等症以上では「いつ呼吸困難になる常に不安になる」、「悪化することで起こりうるリスクを知り不安になる」が続き、特に中等症以上の患者さんでは病気に対する不安が明らかになりました。「現在精神面の負担はない」と回答した患者さんは軽症では40.0%、中等症以上では12.1%と、特に中等症以上で多くの患者さんが何らかの精神的負担を抱えていることが分かりました。
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4.(中等症以上の患者さんのみ)身体的負担を最も相談できる相手は「主治医」で、68.5%と回答。一方、精神的負担を最も相談できる相手は「家族」で37.3%、「主治医」は31.4%にとどまり十分な相談環境が整っていないことが示唆された。
身体的負担と精神的負担について最も相談できる相手をお聞きしたところ、身体的症状に関しては中等症以上で「主治医」が最も多い結果となりました。しかし、精神的負担に関しては主治医にも相談できていない患者さんが多く、最も相談できる結果となった「家族」に関しても相談できると答えた割合は、37.3%となり、患者さんの精神的負担の十分な相談環境が整っていないことが示唆されました。
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5.何らかの症状悪化(増悪)経験がある患者さんは軽症で61.3%、中等症以上では74.1%と多数を占めた。しかし、「増悪という言葉も状態も知らなかった」と回答した患者さんは軽症で57.3%、中等症以上は55.2%。症状悪化に対する認識が十分に浸透していない実態がうかがえた。
一時的に症状が悪くなりいつもの薬で症状が抑えられない(=増悪)経験があるかお聞きしたところ、軽症、中等症以上ともに半数以上の患者さんが経験していることがわかりました。また、主治医には伝えていることもうかがえます。一方で、「増悪」という言葉も状態も知られていない現状も明らかになりました。治療が進まない一つの要因かもしれません。
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気道の慢性炎症と肺胞破壊により生じる、非可逆性の気流性閉塞を特徴とし、進行性に呼吸機能が低下していく、生命を脅かす呼吸器疾患です。日常生活動作に制限が生じるだけでなく、急性増悪に伴う繰り返す入院や、不安、うつ病、睡眠障害を伴うこともあり、経済面のみならず社会生活に大きな負担をもたらす可能性があります。
日本国内のアレルギー疾患患者さんおよびそのご家族を対象とした、サノフィが運営するアレルギーを含む2型炎症に関する情報サイトです。COPDを始め、アトピー性皮膚炎や気管支喘息、副鼻腔炎などの疾患と上手に付き合うために、お役立ち情報を提供しています。
サイトURL:
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サノフィは、人々の暮らしをより良くするため、科学のもたらす奇跡を追求する、というゆるぎない使命を原動力に進み続ける革新的でグローバルなヘルスケア企業です。約100ヵ国の社員は、医療を変革し、不可能を可能に変えるため、日々研鑽に努めています。私たちは、社会的責任と持続可能性を企業の本質とし、画期的な医薬品や生命を守るワクチンを開発し、世界何百万もの人々に届けていきます。
日本法人であるサノフィ株式会社の詳細は、
http://www.sanofi.co.jp をご参照ください。
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