キヤノンが高ダイナミックレンジを実現したSPADセンサーを開発 独自の技術により暗所や明暗差のあるシーンでも被写体の検知が可能
キヤノン株式会社

キヤノンは、156dBの高ダイナミックレンジを実現した2/3インチ・約210万画素のSPADセンサーを開発しました。独自の技術により、高ダイナミックレンジ、低消費電力、LEDフリッカーの抑制を実現しました。さらなる技術開発を進め、量産開始を目指します。
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新開発のSPADセンサー(プロトタイプ)
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0.1lux(※1)の低照度下で120m先の歩行者を検知することが可能(焦点距離25mm、開放F値1.4で撮影)
SPAD センサーは、画素に入射した光の粒子(以下、フォトン)を1つひとつ数えるフォトンカウンティングと呼ばれる原理を採用したセンサーです。光を読み出す際にノイズが入らないため、暗い所でもわずかな光を検出し、ノイズの影響を受けずに被写体を鮮明に撮影したり、対象物との距離を高速・高精度に測定したりすることができます。
しかし、従来高照度下では、入射したフォトンが一定数を超えると処理のスピードが間に合わずにそれぞれを分離して検出できなくなり、画像が白飛びしたり、フォトンを1つずつ全てカウントすることで消費電力が大きくなるという課題がありました。
今回開発したセンサーは、独自の「重み付けフォトンカウンティング」という技術を採用しています。この技術は、照度によってフォトンがセンサーに届く頻度に差があることに着目し、所定期間内で最初にフォトンがセンサーに到達する時間を測定することで、その後の一定期間に到達する総フォトン数を推計するため、被写体を白飛びさせずに鮮明に映し出すことができます。
具体的には、従来は1つひとつフォトンをカウントしていたのに対し、所定期間内で一つ目のフォトンが届く時間から複数の到達するフォトンを推計する方式のため、検出できるフォトン数が格段に増加します。これにより、従来のセンサー(※2)と比較して、約5倍となる156dBの高ダイナミックレンジを実現し、1画素あたりの消費電力は、約75%減の低消費電力化にも貢献しています。さらに、本技術により、信号機などのLEDのフリッカー現象の低減も実現しています。
本センサーについては、監視、車載、産業用途など、多岐にわたる応用を想定しています。用途の一例として、自動運転(AD)(※3)や先進運転支援システム(ADAS)(※3)への応用が期待されます。自動運転技術の進展により、車載センサーの需要は増加しており、各国において安全基準を厳格化する動きが加速するなど、自動運転の安全性を担保する高度なセンサー技術が求められています。これまで、一般的に普及しているCMOSセンサーをそのまま車載向けに用いた場合には、低照度やトンネル出口などの明暗差の大きい環境下での視認性に課題があることが知られています。低照度下での撮影を得意とするSPADセンサーに独自の技術を組み合わせた本センサーによって、これらの課題の解決に貢献します。
本センサーの技術については、京都で開催された「2025 Symposium on VLSI Technology and Circuits」において、2025年6月12日に発表を行いました。
キヤノンは、これからもテクノロジーとイノベーションの力で新たな価値を創造し、社会課題の解決に貢献していきます。
※1 月明かりの夜の明るさの目安が0.2lux。
※2 当社が2022年にISSCC(International Solid-State Circuits Conference)で発表したSPADセンサー。
※3 システムが主体で全自動の運転を実現するAD(Automated Driving)に対して、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems)は人が主体で安全な運転をサポートするシステム。
〈新開発のSPADセンサーについて〉
- 独自の技術である「重み付けフォトンカウンティング」により、従来は1つひとつフォトンをカウントしていたのに対し、所定期間内で一つ目のフォトンが届く時間から複数の到達するフォトンを推計する方式のため、検出できるフォトン数が格段に増加。- 本技術により、信号機などのLEDのフリッカー現象の低減も実現。
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重み付けフォトンカウンティングのイメージ 明るいほど1つ目のフォトンが入射する時間が短い
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重み付けフォトンカウンティングにより高照度から低照度下までフォトンの検出が可能
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156dBの高ダイナミックレンジにより、明暗差がある場所でも優れた視認性を実現
プレスリリース提供:PR TIMES




記事提供:PRTimes