拡大を続けるトランクルームの市場規模-その成長要因と未来を読み解く
株式会社アンビシャス

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近年、トランクルーム市場は右肩上がりの成長を遂げています。住居の広さが限られ収納不足になりがちな都市部などで収納スペースを増やしたいというニーズ、自宅にリモートワーク環境を整備する際の収納ニーズ、さらに高齢者の暮らしやすい住環境整備や生前/遺品整理のニーズなどがトランクルーム市場の成長を力強く後押ししています。今回は、トランクルームの市場規模とその背景、そして将来的な展望について詳しく解説します。
急拡大するトランクルームの市場規模
日本国内のトランクルーム市場は、ここ数年で急速に拡大しています。特に2020年以降、コロナ禍によるライフスタイルの変化が追い風となり、市場規模の拡大が加速しました。
2023年時点では、トランクルームの市場規模(売上高ベース)は約900億円※1に達しています。
また施設数も増加の一途をたどり、全国で1万拠点以上と推定されています。
※1 民間調査会社や業界団体のデータをもとにした概算値
日本におけるトランクルームの市場規模は、国内外さまざまな機関によって調査され、将来の成長が予測されています。
ここでは、代表的な市場規模調査について3事例ご紹介しましょう。
屋内型トランクルームの急成長
ドイツ・ハンブルクに本社を置く統計情報提供会社「Statista」は、世界200以上の業界に関する統計・市場データ・予測情報の提供を行っています。
2022年12月発表の同社調査※2では、2019年に約338億円だった日本の屋内型トランクルームの市場規模は、2025年には約577億円に達すると予測されています。つまり、約1.7倍となる急成長を遂げているとされています。
ちなみに屋外型コンテナの市場規模は2025年に約471億円に達する見込みとされています。つまり、屋内型の市場規模は屋外型の約1.2倍とされています。
なお、この調査では、屋内型・屋外型合わせて、2025年のトランクルームの市場規模は約1048億円に達する見込みとされています。
【日本のトランクルーム市場規模・2025年予測】
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※2 Statista: Market size of self-storage in Japan from 2010 to 2019 with a forecast until 2025, by type
https://www.statista.com/statistics/1221432/japan-self-storage-market-size-by-type/
2030年の市場規模は2024年の約1.4倍に
アメリカ・サンフランシスコに本社を置く市場調査・コンサルティング会社「Grand View Research, Inc」は、世界のさまざまな業界・地域に関する市場調査レポートを年間240以上発行しています。
2024年の同社調査※3では、日本の「セルフストレージ」の市場規模について記載しています。
この「セルフストレージ」とは、トランクルーム(屋内型・屋外型)に加え、貸倉庫等が含まれています。トランクルーム単体の市場規模予測とは算出方法が異なるため、他の市場規模調査の結果より金額が大きくなっています。
しかし、このデータには、年を追うごとにトランクルームへの関心が高まり利用者が増加してきたことが明確に反映されており、成長率やサイズ別の収益などに関して非常に参考になるデータです。
この調査によると、日本のセルフストレージの市場規模※4は、2024年に約3083億円でしたが、2030年には約1.4倍の約4417億円にまで成長するとされています。
※4 ドル換算による調査であり、2024年の平均為替レートである1ドル145円で換算
また、2024年時点で日本のセルフストレージ市場は世界の同市場の収益の3.6%を占め、2025年から2030年までは年平均成長率6.5%で着実に市場規模が拡大していくと予測されています。
同調査ではセルフストレージを大型・中型・小型に分け、2024年時点では中型の収益が最大であること、また、2030年までの調査機関内では大型の収益が最も早く成長していくとされています。
【2024→2030・日本のセルフストレージの市場規模推移予測】
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※3 Grand View Research Inc.: Japan Self-storage Market Size & Outlook, 2024-2030
https://www.grandviewresearch.com/horizon/outlook/self-storage-market/japan
国内の市場規模調査でも成長加速見込
ここで、国内での市場規模調査・予測を見ていきましょう。
日本の矢野経済研究所は、1958年創業・60年以上の歴史を持つマーケティングリサーチ機関で、3000以上のセグメントの市場を対象に調査を行っています。
2025年3月発表の同社調査※5では、2024年度の収納サービス(レンタル収納・コンテナ収納)の国内市場規模は878.7億円(見込)で前年度比6.2%増となり、2025年は917.8億円・前年度比4.4%増と予測されています。
大手トランクルーム事業者を中心とした新規拠点開発のペースが市場成長を支える大きな要因となっており、その流れは2025年度以降も加速するとみられ、消費者にとってより身近な環境での拠点数の拡大が今後も続くものと予測されています。
なお、2025年度の市場規模予測額は、2020年度の約1.4倍となっています。
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【グラフについて】
※注1: 賃料ベース
※注2: レンタル収納とコンテナ収納の合算値
※注3: 2024年度見込値・2025年度予測値
※5 調査サマリー及びグラフデータ引用: 矢野経済研究所プレスリリース
「収納サービス(レンタル収納・コンテナ収納)市場に関する調査を実施(2025年)」(2025/5/9)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3809
ニーズに応えるトランクルーム業界のサービス展開
トランクルーム市場急成長の重要な要因として、トランクルームサービスの目ざましい発展は注目したいポイントです。トランクルーム業界がどのようにユーザーニーズに応え、サービスを充実させているか詳しく見ていきましょう。
収納が不足しがちな都市部のニーズ応えるトランクルーム
トランクルームの市場の中心は、やはり人口が集中する東京、大阪、名古屋といった大都市圏です。これらの都市部では、居住空間の狭さや収納スペースの不足が慢性的な課題となっており、トランクルームの需要が特に高くなっています。
都市部など自宅の収納スペース不足に悩む利用者には、「自宅のクローゼットの延長」の感覚で利用できる屋内型トランクルームが特に人気です。ビルテナントなどを区切って収納スペースが設けられた屋内型トランクルームは、清潔な室内、安全性の高いロックや防犯カメラなどのセキュリティ対策、24時間いつでも使える利便性の高さなどがユーザーに高く評価されています。
トランクルーム店舗は、駅周辺や幹線道路沿いなど、アクセスしやすい立地に多くの施設が展開されています。
なお、都心部では土地価格の高さから屋内型施設が主流ですが、郊外では低コストが魅力の屋外型コンテナ施設も多く見られます。
市場における屋内型トランクルームvs 屋外型コンテナの傾向
都市部において屋内トランクのニーズが高まっているとお話しましたが、市場全体で見てみると、屋内トランクが約6割、屋外コンテナが4割程度を占めているとされています。
なお、最近の傾向では、やはり市場全体で屋内トランクの需要が高まっています。衣類・寝具・季節家電・食料備蓄・書類などを収納したいというニーズが多い中、施設内の温度や湿度管理、防犯対策が整ったハイスペックな屋内トランクは収納物の品質を保ちながら安心・安全に保管できる環境として人気です。
一方で、比較的安価で大型の荷物を収納しやすい屋外型も、郊外や物流拠点付近で一定の需要を維持し、個人・法人ともに便利に利用されています。
トランクルーム業界の近年の動向
トランクルームの需要の高まりに伴い、全国展開する大規模なトランクルーム企業も増えています。
これらの企業では、全国的なネットワークと豊富な施設数を強みに、ブランド認知度を高めています。また、無人化・省人化のテクノロジー導入で業務効率と顧客利便性の両立を実現し、シェアを拡大しています。無人化・省人化の進展とともに、ユーザーが安心してトランクルームを利用できるよう、より強固な防犯対策の導入が進んでいます。
さらに、急速に需要が高まっているトランクルーム業界では新規参入事業者も増えつつあり、競争が激化しながらも市場全体を活性化させています。
トランクルームの需要拡大の背景と要因分析
トランクルーム市場の成長は、さまざまな社会的背景や時代による生活の変化とも密接に関係しています。具体的な要因を詳しくみていきましょう。
住宅事情と都市集中型の人口分布
日本の住宅は、特に都市部においてその面積が限られている傾向にあります。これにより、多くの家庭で収納スペースが不足し、季節家電、趣味の道具、思い出の品などの置き場に困るケースが増えています。
加えて、東京や大阪といった都市部への人口集中により、スペースを自宅内で確保できず、外部に求めるニーズが高まっています。特に、首都圏などでは、通勤や生活における居住地の利便性と住居にかけられる費用を兼ね合わせると、どうしてもコンパクトな住居で限られた収納スペースをやりくりして暮らしていく必要が出てくる場合が多いようです。この都市部の住宅事情がトランクルームの需要を押し上げているといえます。
高齢化と「生前整理」ニーズの高まり
少子高齢化が進む日本では、高齢者による「生前整理」のニーズが高まっています。長年所有してきた家財や思い出の品を整理する際に、すぐに手放すのではなく、一時的に保管する場所としてトランクルームが活用されています。
大切なものを一時的に保管し、残したいものをじっくり吟味でき、かつ自宅内を整理して広々と過ごすことができるトランクルームは、このニーズにマッチしており、シニア層からの支持も増加しています。
また、二世帯同居や自宅のバリアフリー化、介護施設の入居などに伴う家財整理の際にも、トランクルームが一時的な保管場所として利用されるケースが増えています。
さらに、亡くなった家族の遺品整理・保管やいわゆる「実家じまい」の際にもトランクルームが便利に活用されています。
コロナ禍による生活の変化
トランクルームの市場成長を促進した大きな要因として忘れてはならないのは、コロナ禍による生活の変化です。
2020年以降のコロナ禍によってリモートワークが浸透し、自宅のレイアウト変更やワークスペースの確保が求められるようになりました。この流れにより、一時的に自宅のモノを預ける場所としてトランクルームが注目されました。
さらに、「おうち時間」が増えて自宅で過ごす時間を見直すなかで、自宅の居住空間をより快適に、効率的に使いたいというニーズが顕在化しました。自宅の整理をじっくり行う人も多く、シーズンオフに場所を取っている荷物やすぐ使わない家財などをトランクルームに預けるといった動きが活発化しました。
法人のトランクルームニーズの増加
企業においても、トランクルームの利用が増加しています。オフィス縮小に伴う書類や備品の保管場所、事業継続計画(BCP)対策としての重要書類・データの分散保管、在庫管理スペースとしての活用など、その用途は多岐にわたります。
特に、リモートワークの普及によりオフィスを縮小する企業が増え、法人向けのトランクルーム需要が伸びています。
法人需要は中長期的に安定的な収益源となることが多く、サービス多角化にもつながっています。
成長を支える新たなビジネスモデルと技術革新
トランクルーム市場を後押ししているのは、単なる需要増加だけではありません。新たなビジネスモデルと技術革新も大きな要因となっています。
スマートロック・無人管理システムの導入
トランクルーム施設では、安全なカードキー、スマートロックや顔認証システムなどの導入も進んでいます。一部サービスでは、スマートフォンアプリで鍵の開閉や入退室管理もできるようになっています。
また、屋内型トランクルームでは施設の入り口の鍵とトランクルームの鍵との二重施錠もセキュリティ強化の大切なポイントです。
24時間利用可能な施設が増加し、ユーザーの利便性と安全性の両立が実現されています。
安全なセキュリティ対策および無人管理システムの導入により、事業者側も人件費を削減できるため、効率的な運営が可能になっています。
月額制サプスクリプション型のビジネスモデル
トランクルームは、月額料金を支払うサブスクリプション型ビジネスとして定着しています。これにより、利用者は必要な期間だけサービスを利用でき、事業者側も安定した収益を得ることができます。利用期間に応じた多様な料金プランや割引キャンペーンなどが提供されており、ユーザーのニーズに合わせた選択肢が広がっています。
不動産テック・IoTとの連携
IoTや不動産テックとの連携による物件管理の効率化など、技術革新が市場の競争力を押し上げています。
例えば、IoTによる温湿度管理やセキュリティシステムの遠隔監視、空室状況のリアルタイム表示、オンラインでの契約手続き、AIを活用した最適な収納プランの提案などが挙げられます。
これらの技術の導入により、ユーザーは契約から日々の利用、退去に至るまで、よりスムーズにトランクルームの活用ができるようになり、利便性が飛躍的に向上しています。
今後の市場予測と展望
トランクルーム市場は、今後もさらなる成長が見込まれます。4つの視点からトランクルームの今後について考えていきましょう。
国内市場の成長予想
経済産業省や民間調査会社の予測によれば、2025年にはトランクルーム市場が1,000億円規模に達する見込みです※5。年間数パーセントの成長率を維持し、2030年には現在の市場規模を大きく上回る可能性があります。特に、都心部での供給不足が続くとともに、地方都市への展開も進むことで、市場全体が底上げされると予測されます。また、非接触・非対面サービスの浸透によって、安定した利用が続くと予測されています。
※5 業界予測や公開資料に基づく試算(2024年時点)
海外市場との比較
海外、特にアメリカと比較すると、日本のトランクルーム普及率はまだ低い水準にあります。
アメリカでのトランクルーム(Self Storage)の普及率は18%で、「約5人に1人が利用している」と話題になりました※6。アメリカの1世帯の平均人数は約2.5人とされていることを踏まえると、2世帯中1世帯がトランクルームを利用しているイメージになります。なお、アメリカにおいてトランクルームはすでに4兆円規模の巨大市場となっており、都市ごとの施設密度も日本の数倍に達しています。
一方、日本でのトランクルーム普及率は約1%※7とされています。アメリカよりかなり低い水準ではあるものの、日本における市場規模の拡大とともに普及率が上昇していく可能性があります。
アジア諸国においても、経済発展に伴う都市化と住宅事情の変化により、香港・シンガポールなどトランクルーム市場が急成長している国が多く見られており、アジア全体のトレンドを反映した日本のトランクルーム市場のさらなる発展にも期待が寄せられています。
※6 米国StorageSafeによる調査(2024年時点)
https://www.storagecafe.com/blog/self-storage-demand-and-trends/
※7 業界予測や公開資料に基づく試算(2024年時点)
地方都市での可能性と課題
現在、トランクルームの展開は大都市圏が中心ですが、今後は地方都市での展開も期待されます。地方でも、高齢化や住宅の整理、あるいは趣味の道具の保管といったニーズは存在します。ただし、地方都市での事業展開には、需要の見極めや適切な立地の選定、コスト効率の良い運営モデルの確立がビジネス展開の課題となっています。
地方では土地コストの低さを活かし、屋外型施設の展開が進んでいるものの、需要の集中度や人口動態により、採算性の確保が難しい場合もあります。今後の展開としては、地域密着型サービスや自治体との連携がカギを握っています。
投資対象としてのトランクルーム事業の魅力
トランクルーム事業は、比較的安定した賃料収入が見込まれ、景気に左右されにくいストック型ビジネスです。そのため、投資対象としても注目されています。
不動産投資の中でも、比較的小規模な初期投資で始められるケースもあり、利回りの安定性や空室リスクの分散といった点で注目されています。特に、既存の遊休地や空きビルを有効活用できる点も、投資家にとってのメリットとなっています。
不動産投資信託(REIT)やクラウドファンディングなどの手法で、一般投資家の参入も進んでいます。
まとめ:今後も発展が見込まれるトランクルーム市場
今回は、トランクルームの市場規模と背景、そして今後の展望についてお話しました。
トランクルーム市場は、社会構造やライフスタイルの変化を背景に急拡大しています。特に住宅事情や高齢化、そしてデジタル化の進展を反映してニーズが高まっています。
都市部の収納ニーズや高齢化社会の整理ニーズ、コロナ禍による在宅環境の見直しなど、多様な要因が市場を後押ししています。
さらに、スマートロックや宅配型保管といった技術革新により、サービスの利便性と競争力が高まり、今後もその成長は加速していくと見込まれます。
収納ニーズの多様化が進む中で、トランクルームは単なる「物置」ではなく、人々の暮らしを豊かにするインフラの一つとして、ますますその存在感を増していくでしょう。可能性が広がるトランクルーム市場に、今後ますます注目が集まることは間違いありません。
プレスリリース提供:PR TIMES



記事提供:PRTimes