女性のスポーツ実施や継続に必要な社会的・個人的要因 -結婚・子育ての影響は少なく、周囲の理解やサポートが重要-
公益財団法人 笹川スポーツ財団

日本とオーストラリアの国際比較
「スポーツ・フォー・エブリワン」を推進する笹川スポーツ財団(東京都港区赤坂 理事長:渡邉 一利 以下、SSF)では、仙台大学体育学部 体育学科 准教授 弓田 恵里香氏を代表者とする研究チームと共同で、「どのような社会的、個人的要因が運動・スポーツ経験のある女性のスポーツ実施継続に影響するのか」をリサーチクエスチョンとする研究を実施しました。
これまで日本人女性の運動・スポーツ実施率は20歳代から40歳代で低く、その要因として仕事や家事・育児などライフイベントの変化に伴う日々の忙しさが理由として挙げられていました。本研究では、日本およびオーストラリアにおける運動・スポーツ経験がある女性を対象にアンケート調査を実施、結果を比較し相違点を明らかにしています。その結果、結婚や出産といったライフイベントの影響は限定的である可能性が示唆されました。また、家族や友人といった周囲の理解が運動・スポーツ実施や継続の重要な要因となる可能性が示されています。
▼公式ウェブサイト
https://www.ssf.or.jp/thinktank/policy/women_sportparticipation2024.html
[画像1:
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<調査結果のポイント>
● 運動・スポーツ実施について就職、結婚、妊娠・出産などのライフイベントの影響は少ない
【日本】
・中学校期・高校期とも週4日以上運動・スポーツを実施する人は70%以上を占めるが、高専・短大・大学・大学院期になると39.1%へ大きく減少。成人以降は、各年代とも週1~3日の人が約70%。
【オーストラリア】
・40歳代を除き小学校期から50歳代まで「週2-3日」の割合が最も高く、年代別に大きな差異がない。
・ただし、30歳代の「週1日未満、年1日以上」と回答した割合が有意に大きいことから、この年代で一時的に週1回以上運動・スポーツを実施する割合が低下する傾向が読み取れる。
● オーストラリアの方が幅広い年代で運動・スポーツを実施している
【日本】
・中学校期をピークに学校期が上がるにつれ、「実施していた」と回答する者が減少し、大学卒業後も20台と低い水準で推移。
【オーストラリア】
・高校期、高専・短大・大学・大学院期で減少があるものの、減少幅は日本と比べ小さく、その後も60%前後を維持。
● オーストラリアの方が家族や友人からサポートを得られやすい
・「家族や友人は、運動・スポーツするように励ましたり、応援してくれたりする」は、日本41.5%<オーストラリア70.5%。
・「家族や友人は、運動・スポーツを実施することについて、ほめたり評価してくれたりする」は、日本38.3%<オーストラリア71.4%。
<研究担当者コメント>
日本では、学校体育や部活動を通じ、青年期にスポーツに触れる機会が比較的多い。しかし、日本人女性の20歳代から40歳代の運動・スポーツ実施率は著しく低下する。一方、オーストラリアのように一定の水準を維持する地域もある。そこで、本研究ではどのような個人的、社会的要因が運動・スポーツ経験のある女性のスポーツ実施継続に影響するのか、日本とオーストラリアの国際比較を通じて検討を行った。
調査の結果、両国において婚姻関係や子どもの有無などのライフイベントは運動・スポーツ実施継続に直接的な影響を及ぼさないことが示された。他方、差がみられたのは過去の運動経験に対する評価、家族や友人からのサポートの有無、そして情報の取得や人的支援などの社会的支援の有無であった。いずれも、オーストラリアでは高い数値がみられ、日本と比べて幼少期からスポーツを楽しめる環境が整っており、成人後も周囲の理解や社会的支援が充実し、これらが運動・スポーツ実施継続と関係している可能性が示唆された。今後は、両国における運動・スポーツの位置づけや過去の経験内容の違い、具体的な社会的支援の在り方などについてさらに検討を進める必要がある。
【仙台大学体育学部 体育学科 准教授 弓田 恵里香】
<主な調査結果>
過去の運動・スポーツ実施頻度についてたずねた(図表1、図表2)。日本では、中学校期・高校期とも「週4-5日」と「週6-7日」を合わせた回答が70%以上を占めているが、高専・短大・大学・大学院期にその割合は39.1%へ大きく減少する。その後、各年代において「週1日」「週2-3日」が約70%を占め、その他の回答にも年代による大きな違いはない。
一方オーストラリアは、40歳代を除き小学校期から50歳代まで「週2-3日」の割合が最も高く、加齢による実施頻度の低下は確認されず、年代別に大きな差異がない点が特徴である。
図表1. 過去の運動・スポーツ実施頻度(日本)
[画像2:
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注)「該当しない」を除いた割合を示している
図表2. 過去の運動・スポーツ実施頻度(オーストラリア)
[画像3:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/60227/104/60227-104-ef79756ad6c43aea0e9ad8925a7d4936-1011x640.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
注)「該当しない」を除いた割合を示している
また、子どもの有無による運動・スポーツ実施状況に差がみられず、自由記述においてもスポーツ継続要因として「子どもと楽しく運動ができる」といった記載があったことから、本調査の対象者にとっては子どもの存在が運動・スポーツ実施の阻害要因となっていないと考えられる(図表割愛)。
過去の定期的な運動・スポーツ実施状況をたずねた(図表3、図表4)。日本では、中学校期をピークに高校期、高専・短大・大学・大学院期と学校期が上がるにつれ、「実施していた」と回答する者が減少し、大学卒業後も20%台と低い水準で推移している。
一方オーストラリアは、高校期、高専・短大・大学・大学院期で減少があるものの、減少幅は日本と比べ小さく、その後も60%前後を維持しており、日本よりも幅広い年代で運動・スポーツを実施する女性が多いことが明らかとなった。
図表3. 過去の運動・スポーツ実施状況(日本)
[画像4:
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注)「該当しない」を除いた割合を示している
図表4. 過去の運動・スポーツ実施状況(オーストラリア)
[画像5:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/60227/104/60227-104-68ff0087b9d8be7d37923d6851556f9d-1115x613.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
注)「該当しない」を除いた割合を示している
運動・スポーツを実施するにあたり、どの程度家族や友人からの理解や協力が得られるかをたずねた(図表5、図表6)。「3.家族や友人は、運動・スポーツするように励ましたり、応援してくれたりする」では、日本で41.5%(「かなりそう思う」10.3%、「まあまあそう思う」31.2%の合計)が「そう思う」と回答し、オーストラリアは70.5%(「かなりそう思う」27.6%、「まあまあそう思う」42.9%の合計)だった。
また、「5.家族や友人は、運動・スポーツを実施することについて、ほめたり評価してくれたりする」においても、日本での「そう思う」と回答した割合は38.3%(「かなりそう思う」9.8%、「まあまあそう思う」28.5%の合計)だったのに対し、オーストラリアでの回答割合は71.4%(「かなりそう思う」27.8%、「まあまあそう思う」43.6%の合計)と30ポイント程度の開きがみられた。オーストラリアの女性が運動・スポーツを実施するにあたり家族や友人から態度的、行動的なサポートを得られやすい状況であることが示唆された。
図表5. 運動・スポーツ実施における家族や友人からのサポート(日本)
[画像6:
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図表6. 運動・スポーツ実施における家族や友人からのサポート(オーストラリア)
[画像7:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/60227/104/60227-104-59d4fc91129fe5f0309c698c449fd55b-1085x647.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
<調査概要>
【調査名】女性のスポーツ実施継続における社会的・個人的要因に関する調査研究 -日本とオーストラリアの国際比較調査-
【調査時期】日本:2025年1月23日(木)~27日(月)
オーストラリア:2025年1月14日(火)~17日(金)
【調査方法】Webアンケート調査
【調査対象】日本およびオーストラリアの20歳代~50歳代の女性登録モニター
上記モニターに対して「小学校以上の在学期間に、定期的な運動・スポーツ活動を1年以上継続して行った経験はありますか。」と質問し、「実施した経験がある」と回答した方のみ本調査の対象としている。
【有効回答】合計834(日本:417、オーストラリア:417)
【主な調査項目】
<全員への質問>
過去の運動・スポーツ経験/ここ1年間の運動・スポーツへの取り組み状況(実施時間、内容、場所、継続理由│今後の実施意図、非実施理由など)/運動・スポーツを実施する場合の「家族や友人からのサポート」/運動・スポーツ実施をどの程度自身で決定できるかという「行動統制」/運動・スポーツ実施における「社会的支援」/「性役割」に関する日頃の考え方や価値観 など
<日本の調査対象者のみへの質問>
スポーツ観戦状況/スポーツボランティア活動状況と今後の活動意図
【調査体制】
研究代表者:弓田 恵里香 仙台大学体育学部 体育学科 准教授
研究協力者:三倉 茜 順天堂大学スポーツ健康科学部 スポーツ科学研究科 助教
下窪 拓也 順天堂大学スポーツ健康科学部 スポーツ科学研究科 助教
研究担当者:吉田 智彦 笹川スポーツ財団 シニア政策ディレクター
※肩書は2025年4月時点
笹川スポーツ財団「行動するスポーツシンクタンク」
公益財団法人 笹川スポーツ財団は、「スポーツ・フォー・エブリワン」を推進するスポーツ分野専門のシンクタンクです。国、自治体のスポーツ政策に対する提言策定や、スポーツ振興に関する研究調査、データの収集・分析・発信、自治体との共同実践研究などを通し、スポーツで社会課題を解決します。
理事長 : 渡邉 一利
所在地 : 〒107-0052 東京都港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階
設立 : 1991年3月
目的 : スポーツ・フォー・エブリワンの推進
事業内容:
・生涯スポーツ振興のための研究調査
・生涯スポーツ振興機関との連携事業
・生涯スポーツ振興のための広報活動
URL :
https://www.ssf.or.jp/プレスリリース提供:PR TIMES





記事提供:PRTimes