「ガザ地区に大量の物資を」 ユニセフ事務局次長、ガザ訪問し声明 【プレスリリース】
公益財団法人日本ユニセフ協会

飢きんが迫る中、命を守る判断を求める
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ガザ地区にある病院の集中治療室で、治療を受ける10歳の子ども(写真中央)とユニセフのテッド・チャイバン事務局次長(写真左)(パレスチナ、2025年7月29日撮影) (C) UNICEF/UNI839539/Nateel
【2025年8月1日 ニューヨーク発】
ユニセフ(国連児童基金)の人道支援活動を統括する事務局次長のテッド・チャイバンは、イスラエル、パレスチナ・ガザ地区および東エルサレムを含むヨルダン川西岸を訪れ、声明を発表しました。
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皆さまに深刻な緊急性と深い懸念を込めてお話しします。
2023年10月7日の悲劇的な事件―数十年に及ぶ未解決の紛争の上に起きたあの事件―の後に戦争が始まって以来、私にとって4度目のガザ訪問でした。ニュース映像から何が起きているかを知っていても、実際に現場に赴くとあまりに衝撃的です。
ガザの家族や子どもたちの顔には、深い苦しみと飢えがはっきりと見てとれました。戦争が始まって以来、ガザでは 1万8,000 人以上の子どもの命を奪われています。これは 1 日平均 28 人の子ども、つまり 1 クラスに相当する人数の子どもが亡くなっている計算になります。子どもたちは愛する人たちを失い、空腹と恐怖にさらされ、トラウマに苦しんでいます。
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ガザ中部にあるブレイジ難民キャンプで暮らす、重度の栄養不良に苦しむ7歳の女の子と母親(パレスチナ、2025年7月28日撮影) (C) UNICEF/UNI838256/El Baba
ガザは現在、飢きんの深刻なリスクに直面しています。これは徐々に深刻化してきた問題で、今、飢きんの3つの指標のうち、2つがしきい値を超えています。ガザの3人に1人は連日食事をとることができていない状況で、栄養不良の指標は飢きんのしきい値を上回り、ガザ市における急性栄養不良の割合は16.5%を超えています。現在、32万人以上の幼児が急性栄養不良の危険にさらされています。
デルバラハのユニセフが支援する栄養クリニックでは、イスラエルの空爆により、両親らと一緒に食料を待っていた子ども10人が命を落とし、19人が負傷しました。私たちは、その事件に遭遇したアフメドさんと彼の父親に会いました。アフメドさんは13歳の姉、サマさんと一緒に列に並んでおり、彼女は亡くなりました。私は、アフメドさんが必死にロバの荷車を呼び止めて、サマさんを助けるために病院に連れて行こうとする写真を見ました。でも彼は姉を助けることはできませんでした。アフメドさんはサマさんを救えなかったことで深いトラウマに陥っており、どうすればよいのかわからずにいます。このようなことは、決してあってはなりません。私が出会った子どもは自然災害の犠牲者ではありません。彼らは飢えさせられ、爆撃され、避難を強いられているのです。
ガザ市の栄養治療センターで、私は、皮膚と骨だけのような、急性栄養不良の乳児たちに会いました。母親たちは、絶望と疲労に打ちひしがれた様子でそばに座っていました。ある母親は、自分自身があまりにも空腹で母乳が出なくなったと私に話しました。ユニセフは、母乳育児の支援、乳児用粉ミルクの提供、重度の急性栄養不良の子どもたちの治療など、この状況に対処するために全力を尽くしています。しかし、22 カ月間にわたる戦争と 2 カ月間にわたる人道支援物資の封鎖(現在は緩和されていますが、その影響は依然として残っています)を経て支援ニーズは膨大です。そして人々への支援は、十分なスピードおよび必要な規模では届けられていません。
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ガザ地区にある栄養治療センターで、上腕計測メジャーを用いた栄養状態の検査を受ける子ども(パレスチナ、2025年7月28日撮影) (C) UNICEF/UNI839533/Nateel
この混乱の中、ガザで活動するユニセフのスタッフは、その多くが、愛する人たちを亡くした喪失感に打ちのめされるような思いをしながらも、昼夜を問わず働き続けています。
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ガザの海岸沿いにある一時避難所で寝起きをしている10歳のハラさん(右)。支援の給水車を待ち、家族が使うための水を運ぶのが毎朝の日課。しかし、多くの人が避難しており、運ばれてくる水の量が十分でないこともよくある(パレスチナ、2025年5月23日撮影) (C) UNICEF/UNI809313/Nateel
ユニセフは、ガザ北部で 1 日 240 万リットルの安全な水を 60 万人の子どもに提供しています。これは1 人当たり 1 日平均 5~6 リットルに相当し、以前よりは改善されていますが、生き延びるために必要な最低量にはほど遠い状況です。2 月にはポリオ予防接種キャンペーンを実施しましたが、ワクチンを保管するためのコールドチェーンも再構築し、今も子どもたちに予防接種を続けています。また、恐ろしい体験をした子どもたちに心理社会的ケアを提供しています。新生児の命を守り、ガザ地区内外で離ればなれになった家族の再会を支援し、乳児用の粉ミルクを届けていますが、まだまだやるべきことはたくさんあります。
イスラエルが一時停戦を発表した後、人道アクセスは若干改善しています。ガザに物資を搬入する通行ルートであるエジプト、ヨルダン、イスラエル・アシュドッド、トルコでは、計1,500 台以上のトラックが、命を守る支援物資を積んで待機しています。その一部はすでに移動を開始しており、過去数日間で、命を守るための乳児用粉ミルク、高エネルギービスケット、衛生キットを積んだ33台のトラックが物資を搬入しました。しかし、これは依然として必要量のほんの一部にすぎないため、私たちの重要な任務として、イスラエル当局への働きかけを続けています。
ユニセフは、民間人や子どもを保護するため、交戦規定の見直しを強く求めました。栄養センターで列に並んでいたり、水を汲んでいたりする子どもが殺されるようなことはあってはなりません。人々が、人道物資の配給に押し寄せなければならないほど、絶望的な状況に直面することは、あってはなりません。
ユニセフは、人道支援および商用輸送をするトラックがより多く、ガザに入ることを求めました。1日当たり500台近くが通過できることを目指しています。状況を安定させるとともに、市民が抱えている絶望感を和らげることで、物資の略奪行為や、住民が支援物資の車列を自ら追いかけ物資を確保しようとする行為、および、食料価格の高騰により武装集団が物資を奪う行為を抑制するためです。
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ガザ地区内の支援物資を配布する場所で、食料を求める人々の様子(パレスチナ、2025年7月16日撮影) (C) UNICEF/UNI836420/Nateel
この問題に対処するためには、あらゆる経路、手段を通じて、ガザ地区に大量の物資を送り込む必要があります。これは人道支援だけでは達成できないため、私たちは、卵や牛乳、人道支援団体が配布している物資を補完するような必需品を含む商用物資のガザ地区への搬入も求めました。
ヨルダン川西岸地区でも、子どもが脅威にさらされています。今年に入ってから、パレスチナの子ども39人が命を落としています。私は、暴力によって避難を強いられた、ラマッラ東部にあるベドウィンのコミュニティを訪問しました。
戦争の影響を受けているイスラエルの子どもにも会いました。恐怖、喪失、避難生活を経験した子どもです。戦争を始めるのは子どもではありませんが、戦争の影響を最も受けるのは子どもなのです。
私たちはまさに今、岐路に立っています。今下す決断が、何万人もの子どもの生死を左右するでしょう。何をすべきか、何ができるかを、私たちは分かっています。ガザ地区へのアクセスが許可され、最終的にガザ地区に十分な物資が行き渡るような措置が講じられれば、人道支援を担う国連やNGOは、商用輸送と連携してこの危機に対処することができ、治安と秩序に関するいくつかの問題も沈静化されるでしょう。
資金も必要です。ユニセフが、ガザ支援のために要請している資金は深刻な不足に直面しており、保健と栄養分野においては、必要な資金の30%しかありません。
戦闘の人道的休止は、停戦ではないことを忘れてはなりません。紛争当事者が停戦に合意し、ハマスおよび他の武装集団に拘束されている残りの人質全員が解放されることを願っています。この状況は22 カ月と、あまりにも長く続いています。この戦争が 22 カ月間も続くと、誰が予想したでしょうか。非人道的な行為が起きています。すべてのコミュニティの子どもが今、必要としているのは、持続的な停戦と、前進のための政治的な解決策です。
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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(
https://www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。(
https://www.unicef.or.jp )
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