首都圏中古マンション市場 2025年7月度レポート ──横浜・川崎エリアに見る「一時的高騰」と「川崎市中原区の都心三区化」
マンションリサーチ株式会社

2025年7月、東日本不動産流通機構(通称:レインズタワー)が公表した「サマリーレポート」によると、首都圏中古マンション市場は1990年9月、バブル経済の最終局面以来となる高水準に達しました。すなわち、バブル崩壊から30年以上を経て、再び市場は過去のピークを意識する段階に突入したといえます。今回の数値は「価格の水準」を示しており、実際の体感としては多くの消費者にとって「中古であっても手が届かない水準」にまで高騰している状況です。
東京都23区の価格牽引力
今回の高騰を牽引した最大の要因は、取引数量の圧倒的に多い東京都23区の動きです。首都圏全体の数字は「東京都の動向」に大きく左右されますが、足元の動きを丁寧に見ると、東京都23区以外の神奈川県・千葉県・埼玉県については、むしろ横ばいか微減傾向が鮮明になっています。
つまり「首都圏全体が高騰している」という印象は、東京都23区の異常な高騰に引っ張られた“見かけ上の高騰”にすぎず、実際には地域ごとに温度差が広がっているといえます。
横浜・川崎エリアの注目すべき動き
こうした中で、2025年7月に特筆すべきは「神奈川県の横浜・川崎エリア」です。前月比で成約坪単価が大きく上昇し、首都圏市場の中で例外的に目立つ動きを示しました。
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出典:福嶋総研
横浜市は18の行政区から成り、川崎市は7区で構成されます。これら広大な都市圏の中で、今回の高騰を主導したのは「横浜市神奈川区・西区・中区・旭区、川崎市中原区」の5区に限定されます。言い換えれば、横浜・川崎といっても全域が一律に高騰しているわけではなく、スポット的に動いた区の存在が平均値を押し上げたにすぎないのです。
横浜市神奈川区・西区・川崎市中原区の動き
まず横浜市神奈川区、西区、そして川崎市中原区です。この3区はもともと価格高騰の傾向が続いていましたが、2025年7月は「前月下落の反動」という色彩が強い結果となりました。実際、6月にやや弱含んでいた価格が7月に戻ったことで「急騰」のように見えたのです。
中でも川崎市中原区(グラフ2)は特筆に値します。武蔵小杉を中心とする同区は、再開発によるタワーマンション群が形成され、都心へのアクセスの良さも相まって、近年「神奈川県内で最も東京に近い価格水準」を示してきました。2025年7月には過去最高値を記録し、すでに都心三区(千代田・中央・港)と似た価格の動きを見せています。高価格帯物件がさらに高値で成約しており、富裕層や法人需要を含む特殊な購買層が牽引しているとみられます。
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出典:福嶋総研
横浜市旭区の一時的上昇
一方、横浜市旭区の動きはやや特殊です。長期的には価格が減少傾向にあるものの、2025年7月だけ突出した上昇率を示しました。これはエリア全体の基調を示すものではなく、一部の高額物件成約による統計的なバラつきと解釈するのが妥当です。継続的な高騰基調に入ったとは言い難い状況です。
横浜市中区の横ばい傾向
また、中区についても全体的には横ばいです。山下公園や関内エリアを擁する中区はブランド力が高いものの、需給関係は安定しており、2025年7月の上昇は前月やや弱含んだ反動と考えられます。
中原区が示す「都心化」の兆候
今回のレポートで最も注目すべきは、川崎市中原区が単なる一時的な上昇ではなく、明確な上昇基調を描き続けている点です。東京都心の高額物件購入層が「都心三区では手が届かない」と感じた際、次に目を向けるのが交通アクセスに優れた近接エリアです。中原区はまさにその受け皿として機能しており、東京の需給構造がそのまま波及しているのです。またタワーマンションの供給が豊富で、東京都中央区の湾岸エリアに似た価格形成の構造を有してきています。
横浜・川崎エリアの今後の展望
以上を整理すると、横浜・川崎エリアの高騰は「基調としての上昇」ではなく「一時的な反動要因による数字の膨らみ」が大半を占めることが分かります。純粋に持続的な上昇トレンドに入っているのは川崎市中原区のみであり、他区は横ばいか局所的な値動きにとどまります。
しかし、だからといって横浜・川崎の魅力が薄れているわけではありません。東京都心の価格が高止まりする中で、利便性と生活環境のバランスを兼ね備えたエリアとして、長期的には再評価される余地が大きいです。特に横浜駅周辺や武蔵小杉といった拠点は、すでに「東京と地続きのマーケット」として国内外の投資家に注目されています。
消費者への示唆
本レポートが示す最大のポイントは、「首都圏中古マンション市場は一枚岩ではない」という点です。東京都23区の急騰に目を奪われがちですが、実際には県境を越えた周辺部では安定もしくは軟調なエリアが多いのです。したがって購入検討者にとっては「地域ごとの実情を把握すること」が極めて重要です。
とりわけ川崎市中原区のような特殊なエリアでは、今後も上昇トレンドが継続する可能性がありますが、それ以外のエリアについては慎重にデータを見極める必要があります。横浜市旭区のように「一時的な統計上の高騰」に惑わされないことも肝要です。
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福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社
データ事業開発室
不動産データ分析責任者
福嶋総研
代表研究員
早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、
建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。また大手メディア・学術機関等にもデータ及び分析結果を提供する。
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