女性管理職・女性役員の割合、ともに過去最高も上昇幅はやや鈍化 男性育休取得率は2年で8.6ポイント増 中小企業では人的余裕のなさがネックに
株式会社帝国データバンク

女性登用に対する企業の意識調査(2025年)
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株式会社帝国データバンクは、全国2万6,196社を対象に、女性登用に対する企業の見解についてアンケート調査を実施した。なお、女性登用に関する調査は2013年以降、毎年7月に実施し、今回で13回目
SUMMARY
女性管理職の割合の平均は前年比0.2ポイント増の11.1%で過去最高も小幅の上昇にとどまった。女性役員割合の平均は13.8%と過去最高も、「役員が全員男性」の企業は依然50%を上回る。企業が行っている女性活躍推進策は「公平な評価」が6割台で最も高かった。また、「男性育休の推進」の伸びが目立つも、大企業が中小企業を大幅に上回った。男性の育休取得率の平均は2023年調査から8.6ポイント上昇し、20.0%となった。特に従業員数300人超の企業で取得率が高かった。
調査期間:2025年7月17日~7月31日(インターネット調査)
調査対象:全国2万6,196社、有効回答企業数は1万626社(回答率40.6%)
女性管理職割合の平均は11.1%、過去最高も上昇幅はやや鈍化
自社における管理職(課長相当職以上)に占める女性の割合を尋ねたところ、「30%以上」が11.9%、「20%以上30%未満」が6.4%、「10%以上20%未満」が9.9%、「10%未満」が25.4%だった。また、管理職が全員男性である企業は42.3%と前年(43.0%)から0.7ポイント低下したが、全項目のうち最も高かった。政府は、管理職などの指導的地位に占める女性の割合を「2020年代の可能な限り早期に30%程度」という目標を掲げている。本調査の結果、政府目標の「30%程度」を達成している企業の割合は前年から0.5ポイント上昇し、調査を開始した2013年以降最高を更新した。
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管理職(課長相当職以上)に占める女性の割合
管理職に占める女性の割合の平均は11.1%で過去最高となった。しかし、前年からの上昇幅は0.2ポイントとやや鈍化する結果となった。
企業からは「どの企業においても、女性の力は大変大きいと感じる。女性にしかできないこと、女性特有の感性などを生かした配置が必要だと考える」(機械製造)や「女性のきめ細やかさなどで仕事のクオリティが上がる」(メンテナンス・警備・検査)といった声が聞かれた。また、「適切な人材がいれば男女問わず登用したい」(電気機械製造)のような意見も複数寄せられた。
一方で、女性管理職の割合が低いまたは女性管理職がいない企業からは、「女性の活躍を推進しているが、昇格する意欲がみられず、辞退する方がほとんどである」(情報サービス)や「社内制度を含めて女性の活躍を推進しているが、結婚、出産、パートナーの転勤など女性が継続して勤務するにはまだまだハードルが高い印象」(化学品製造)といったコメントがあがった。
女性管理職の割合を規模別にみると、「大企業」が平均8.3%で最も低かった。他方、「中小企業」は11.6%、うち「小規模企業」は14.3%となり、女性管理職割合の平均は規模が小さい企業ほど高い状況が続いている。
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業界別では、女性従業員が比較的多い『小売』が20.1%で全体(11.1%)を9.0ポイント上回り、トップとなった。次いで、『不動産』(16.7%)、『サービス』(15.4%)、『金融』(12.8%)、『農・林・水産』(11.5%)が上位に並んだ。一方で、工場における三交代制などで生活時間が不規則になりやすい『製造』のほか、長時間労働や力仕事のイメージが強い『建設』など、女性従業員数が比較的少ない業界は依然として低水準にとどまった。
女性役員割合の平均は13.8%と過去最高も、「役員が全員男性」の企業は依然半数を超える
自社の役員(社長を含む)に占める女性の割合は平均13.8%と、前年(13.5%)から0.3ポイント上昇し、過去最高となった。一方で、役員が全員男性の企業は同0.3ポイント減の52.1%と低下傾向が続いているものの、依然として半数を超えた。
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自社の役員(社長を含む)に占める女性の割合
31.8%の企業が「女性管理職割合の増加」を見込む規模が大きいほど「増加する」割合高く
自社における女性管理職の割合が、現在と比較して今後どのように変わると考えているか尋ねたところ、女性管理職の割合が「増加する」と見込んでいる企業は31.8%となった。他方、「変わらない」は42.7%だった。
女性役員については、今後「増加する」と考えている企業は13.0%となった一方で、「変わらない」は56.9%と半数以上を占めた。
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従業員数別にみると、従業員数「1000人超」では女性管理職の割合が今後「増加する」と見込む企業が72.7%と全体(31.8%)を40.9ポイント上回っており、女性役員の割合についても全体より20ポイント近く高かった。また、従業員数「301~1000人」も管理職、役員ともに全体を大幅に上回るなど、とりわけ行動計画の策定や比率の公表が義務化されている従業員数が多い企業では、女性管理職・役員が増加すると見込む企業の割合がより高い結果となった。
政府は、東証プライム市場に上場する企業の女性役員割合について、2025年には19%、2030年には30%以上とする目標を掲げている。そこで、女性役員の割合が「増加する」と見込まれる企業を上場・非上場別に比較した結果、非上場企業の12.6%に対し、上場企業では32.7%と20.1ポイントも高く、上場企業など規模の大きい企業を中心に、女性役員割合の増加が加速することが見込まれる。
企業からは、「今後ますます人手不足が深刻化するため、女性の活躍の場を拡充していく必要がある」(飲食料品・飼料製造)や「人口の半分は女性であり消費者の多くは女性であるため、当然もっと女性が活躍するべきと考える」(専門商品小売)といった前向きな声が聞かれた。
女性活躍推進策、「公平な評価」が60%超でトップ「男性育休」の伸びが目立つも、規模間格差が顕著
女性の活躍推進のために自社で行っていることについて尋ねたところ、「性別に関わらず成果で評価」が61.9%でトップとなった(複数回答、以下同)。「性別に関わらず配置・配属」(51.5%)が続き、男女平等に関わる項目が上位に並んだ。以下、「女性の育児・介護休業の取り組み促進」(34.1%)といった、女性が家庭と仕事を両立しやすい環境づくりに関する対応策が続いた。
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また、「時短勤務の対応」(27.7%)および「就業時間の柔軟化」(27.6%)といった男女問わず働き手の家庭と仕事の両立への支援となる柔軟な働き方関連の取り組みを行っている企業はおよそ4社に1社だった。他方、政府が特に強化している「男性の育児・介護休業の推進」は19.8%(前年比2.3ポイント増)で前年からの上昇幅は全項目のうち最大となった。
一方で、「キャリア開発・育成の充実」(7.2%)や「キャリアに関するモデルケースを提示」(2.8%)といった女性に対して直接的なキャリア支援となる項目は低水準だった。
規模別では、「男性の育児・介護休業の推進」で「大企業」が「中小企業」より20ポイント以上高いほか、「女性の育児・介護休業の取り組み促進」 でも20ポイント近くの差があり、育児・介護休業の推進に関する取り組みに規模間で大きな格差がみられた。
中小企業からは、「われわれ中小企業には、取得する従業員の給付金以外にも、別の人材の雇用や派遣社員の手配、その人に対する社内教育など人材の穴埋めにおける負担が大きいため、それ相応の給付金などが必要と感じる」(建設)などの声が聞かれ、厳しい様子がうかがえた。
男性の育休取得率は平均20.0%、2年で8.6ポイント上昇特に従業員数300人超の企業で高く
政府は2025年4月より、従業員数1000人を超える企業に義務化されていた男性労働者の育児休業取得率等の公表対象を従業員数301人以上の企業に拡大するなど、男性の育児参加を促す取り組みを強化している。そこで、自社の男性育休取得率について尋ねたところ、平均は20.0%と2023年に実施した前回調査より8.6ポイント上昇した。
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規模別にみると、「大企業」は前回調査から11.9ポイント増の26.0%、「中小企業」は同7.0ポイント増の18.3%、うち「小規模企業」は同2.3ポイント増の10.9%となり、すべての規模で上昇した。企業規模が大きいほど取得率が高く、上昇幅も大きい傾向にある。
従業員数別にみると、取得率の公表が新たに義務づけられている「301~1000人」が同16.3ポイント増の32.6%で最も高く、上昇幅も最大だった。次いで、「1000人超」の企業が同10.9ポイント増の31.7%で続いた。一方で、従業員数「5人以下」は10%台にとどまった。
企業からは「中小企業は人的余裕などがなく、育児で出社できない期間の代替え要員も期間満了にて安易に退職させられない。継続雇用をすれば人員超過で利益を圧迫する」(その他サービス)といったコメントがあがった。
調査の結果、女性管理職割合は平均11.1%で過去最高を更新し、政府目標である「女性管理職30%」に該当する企業の割合も過去最高の11.9%となった。しかし、女性従業員自身が昇進を望まないという考え方や、家庭と仕事の両立が困難であることのほか、適切な女性人材がいないなどといった問題が根強く存在しており、女性管理職割合の上昇幅は鈍い状況だった。
女性の活躍推進のために自社で行っていることについては、男女平等に関する項目の「性別に関わらず成果で評価」が60%を超えた。また、女性が仕事と家庭を両立しやすい環境づくりに関連する項目のほか、時短勤務など男女ともに働きやすくする取り組みが上位にランクインした。とりわけ、政府が強化している男性育休の推進に取り組む企業は約20%となり、前年からの上昇幅が最大の項目となった。ただし、大企業における取り組み割合が中小企業を大きく上回り、規模間で格差がみられた。実際の男性の育休取得率の平均は20.0%と、2年で8.6ポイント上昇した。従業員数別では2025年4月から取得率の公表が新たに義務づけられた「301~1000人」が32.6%で最も高く、上昇幅も最大だった。一方で、従業員数「5人以下」は 10%台にとどまるなど人的余裕がない規模の小さい企業では取得率が低い傾向にある。
生産年齢人口の減少にともない、今後さらに深刻な人手不足が懸念されるなか、女性の潜在的な労働力を積極的に活用し、社会進出を促進することは、労働力不足に直面する企業にとって重要な課題である。政府は女性の活躍を推進するため、企業に対して女性管理職比率や男女間の賃金格差の公表を段階的に義務づけてきた。さらに、2026年4月からは女性活躍推進法の改正により、女性管理職比率などの公表義務が従業員数101人以上の企業に拡大される方針が決定されており、企業には迅速な対応が求められている。
しかし、女性従業員の昇進意欲の不足や適切な女性人材の不足など、根深い課題が依然として存在している。こうした問題を解決するためには、柔軟な働き方の提供など、従業員が家庭と仕事を両立しやすい環境を整えることが有効な方法と考えられる。例えば、管理職として多忙であってもテレワークを利用することで育児への不安を軽減し、女性の意欲向上につながる可能性がある。また、このような取り組みによって、女性が働く時間や経験を制限されることなく、男性と同等の能力や経験を積むことが可能となり、管理職にふさわしい人材が育成されることも期待される。
企業の取り組みに加え、政府にも助成金制度、託児所設置の支援策の拡充など、家庭と仕事を両立しやすい環境づくりを支援する施策の強化が求められる。こうした取り組みによって、女性が職場で活躍する機会を増やし、人材不足への対応が進むことが望まれる。
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