南フランス・核融合実験炉イーター向けダイバータ外側垂直ターゲット 実機初号機が完成
三菱重工業株式会社

未来のエネルギー源への道を切り開く、核融合炉の重要部品の量産化を着実に推進
◆ 三菱重工とQSTがイーター向け主要機器の製作で協力、フュージョン(核融合)エネルギー開発をけん引
◆ QSTがイーターに納入する外側垂直ターゲットは58基、このうち実機製作が進む38基全てを三菱重工が担当
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三菱重工業株式会社(以下、三菱重工)と国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)は、南フランスで建設中の核融合実験炉イーター(以下、ITER)(注1、2)に用いられる、ダイバータの重要な構成要素である「外側垂直ターゲット」の実機初号機の製作を、このほど完了しました。三菱重工とQSTは、2020年6月より外側垂直ターゲットの製作に取り組んでおり、2024年7月には実機大のモックアップとなるプロトタイプ機が完成。そこで培った製作・検査に関する知見・経験を生かし、日本企業のみで今回の初号機完成に至っています。引き続き実機製作に力を注ぎ、ITER計画を推進していきます。
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ダイバータは、トカマク型をはじめとする磁場閉じ込め方式の核融合炉における最重要機器の1つです。核融合反応を安定的に持続させるため、炉心プラズマ中の燃え残った燃料および核融合反応で生成されるヘリウムなどの不純物を排出する重要な役割を担います。
ダイバータの熱負荷は、最大で20MW/m²に達します。これは、小惑星探査機が大気圏に突入する際に受ける表面熱負荷に匹敵し、スペースシャトルが受ける表面熱負荷の約30倍に相当します。ダイバータは、トカマク型装置の中で唯一、プラズマを直接受け止める機器であり、プラズマからの熱負荷や粒子負荷などにさらされる厳しい環境下で使用されます。そのため、高融点であるものの難削材であるタングステンなどの特殊な材料が用いられます。さらに、プラズマ対向面には微小な形状加工を施しています。全体形状と共に、個々のプラズマ対向材の傾斜、段差、隙間の加工には0.5mm以下の精度が必要となるなど、高精度の製作・加工技術が求められます。
QSTは革新的な研究開発力を背景に、ITER計画の当初からダイバータの研究開発に注力しており、三菱重工の卓越した製造能力を生かして、ITERの炉内機器の中で最も製造が困難とされるダイバータの構成要素である外側垂直ターゲットの製作に取り組んでいます。
QSTは、これまでITER向けの主要機器であるトロイダル磁場コイル(TFコイル)の製作に取り組み、2023年までに日本分担分全てのTFコイルとなる9基を出荷しました(注3)。三菱重工はこのうち5基の製作を担当しています。また、三菱重工は、QSTがITERに納入するダイバータの外側垂直ターゲット58基のうち、初号機を含め実機製作が進む38基全ての製作を担当しています。今回製作を完了した初号機を端緒として、2025年度から順次納入を開始する予定です。
今回のダイバータの外側垂直ターゲット実機初号機の完成を契機に、世界の持続的発展のために非常に重要な技術開発に取り組むITER計画への、日本の産学官を挙げた活動に一層、貢献していきます。また、ITER計画に続いて建設が計画されている核融合原型炉の開発にも取り組んでいきます。
(注1)核融合は太陽が輝き続けるエネルギーの源(みなもと)であり、地上での核融合の実現を目指して、重水素や三重水素などの軽い原子核がプラズマ状態で融合し、ヘリウムなどのより重い原子核になる核融合反応を利用します。燃料となる重水素、および三重水素の原料であるリチウムは海水中に無尽蔵にあり、フュージョン(核融合)エネルギーはCO2を発生しません。そのため、エネルギーおよび環境問題を根本的に解決すると期待されています。
(注2)ITER計画は、フュージョンエネルギーの実現に向け、科学的・技術的な実証を行うことを目的とした大型国際プロジェクトです。日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドの7極が参加しており、核融合燃焼による本格運転を目標に、ITERの建設をフランスのサン・ポール・レ・デュランス市で進めています。日本はダイバータやTFコイルをはじめ、ITERにおける主要機器の開発・製作などの重要な役割を担っており、QSTがITER計画の日本国内機関として機器などの調達活動を推進しています。
https://www.mhi.com/jp/news/211213.html
(注3)三菱重工が担当したITER向けTFコイルについて、詳しくは以下のプレスリリースをご覧ください。
https://www.mhi.com/jp/news/210524.html
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