精神障害に関する新指針「メンタル・ウェルビーイングメディアガイドライン」公開 ― 多様な当事者・家族・専門職・研究者が共同策定
みんなねっと

報道の正確性と人権尊重を推進、国際基準に基づくDos & Don’tsと用語集を提示 ― 10月10日発表
1.発表の趣旨
公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)は、共同プロジェクトとして、精神障害に関する報道の質を高めるための新たな指針「メンタル・ウェルビーイングメディアガイドライン」を策定し、2025年10月10日(世界メンタルヘルスデー)に公開します。
このガイドラインは、報道において当事者や家族の尊厳を守り、正確で人権に基づいた情報発信を促進することを目的としています。事件の背景は複合的であるにもかかわらず、精神障害を唯一の原因であるかのように取り上げる報道を是正し、差別や偏見の助長を防ぎます。そのような扱いは、科学的根拠を欠き、社会的な偏見や差別を助長する要因となっています。本ガイドラインは、この問題の是正を通じて、より正確で尊重ある報道を実現し、社会的理解の促進につなげることを目指します。
2.共同プロジェクトとしての背景
ガイドラインは、「メディア・ガイドライン策定普及プロジェクト」として、以下の団体・有識者が共同で参画し、議論と検討を重ねて策定しました
氏名所属
秋山剛 (公益財団法人こころのバリアフリー研究会 理事長)
井筒節 (東京大学大学院農学生命科学研究科 准教授)
伊東香純 (立命館大学 衣笠総合研究機構 生存学研究所 特別招聘准教授)
尾形多佳士 (公益社団法人 日本精神保健福祉士協会 副会長)
小幡恭弘 (公益社団法人全国精神保健福祉会連合会 事務局長)
木太 直人 (公益社団法人 日本精神保健福祉士協会 常務理事)
桐原尚之 (全国「精神病」者集団 運営委員)
草地仁史 (一般社団法人日本精神科看護協会業務執行理事兼政策企画局 局長)
相良真央 (一般社団法人精神障害当事者会ポルケ 理事)
堀合研二郎 (一般社団法人精神障害当事者会ポルケ 理事)
宮本有紀 (東京大学大学院医学系研究科精神看護学分野 准教授)
山口創生 (国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域精神保健・法制度研究部 室長)
山田悠平 (一般社団法人精神障害当事者会ポルケ 代表理事)
このように多様な立場が参加した点が大きな特徴であり、「私たち抜きに私たちのことを決めないで」という国連障害者権利条約の理念を実践する取り組みとなっています。
3.ガイドラインの柱:「Dos & Don’ts」
報道関係者が実際に参考にできるよう、ガイドラインでは「Dos(すべきこと)」と「Don’ts(すべきでないこと)」を整理しています。
<要約>
■Dos(すべきこと)
・当事者・家族・専門家と定期的に意見交換を行い、当事者参画を進める
・精神障害を多様性の一つとして捉え、エビデンスと人権に基づいた報道を行う
・国連や国内法が示す最新の人権基準を参照し、適切な用語を用いる
・アクセシビリティに配慮した表現(音・光に敏感な人への配慮、平易な言葉の使用など)を工夫する
・対処法、支援へのアクセス方法、相談窓口など、実際に役立つ情報を伝える
・診断名や通院歴等を個人情報として保護し、プライバシーを尊重する
・当事者と協働し、社内啓発や研修を行い、環境・制度・態度のバリアを減らす
■Don’ts(すべきでないこと)
・精神障害を「弱さ」「異常さ」などと結びつけたり、否定的に描いたりしない
・犯罪と精神障害を安易に結び付けない
・エビデンスや人権基準に基づかない情報発信により、スティグマや差別を助長しない
・人権にもとる表現や古い用語を用いない
・本人同意のない個人情報の公表(アウティング)をしない
・診断名で人を一括りにしない
・描写によって当事者や家族の健康や生活に害を与えない
4.報道現場で役立つ「用語集」
ガイドラインには、報道に携わる人が理解を深め、適切な言葉を選べるよう、国際基準に基づいた用語集を併せて収録しています
例:
・精神保健:日常生活のストレスに対処し、社会参加できるウェルビーイングの状態(WHO)
・精神保健的不調:強いストレスや精神疾患を含む幅広い状態、WHOによれば「8人に1人」が経験
・精神障害(Psychosocial Disability):社会的障壁との相互作用により参加が制限される状態
・障害の社会モデル:障害は「個人の問題」ではなく「社会の障壁」によって生じるものという考え方
・スティグマ/ラベリング:偏見やレッテル貼りを避けるための概念
・合理的配慮:平等な権利享有を可能にする調整や工夫
・インフォームドコンセント:十分な情報提供に基づく同意
この用語集は、記事執筆や表現検討の場面で活用できるよう工夫されています。
5.期待される効果
・報道の正確性と質の向上
・偏見や差別の抑制
・社会全体での理解促進と対話の深化
・政策や支援環境の改善促進
・メディアと当事者・家族との協働の強化
6.今後の展望
・報道機関や記者向けの説明会・研修会を開催
・実践事例を収集・公開し、現場での適用を促進
・定期的にガイドラインを改訂し、最新の知見や社会情勢を反映
・SNS時代に対応した市民向けの解説資料も発信
・国際的な動向と連携し、海外の事例とも比較・協働
7.公開概要
・公表日:2025年10月10日(世界メンタルヘルスデー)
・公開先:全国精神保健福祉会連合会公式サイト ほか
・公表日(10/10)に合わせて関連リンクURLよりガイドライン全文を掲載します。
https://drive.google.com/drive/folders/1ahJe11bJF6P6cx7OpzAObeEgE-Msze9G?usp=sharingプレスリリース提供:PR TIMES
記事提供:PRTimes