製造時CO2排出量を67%削減するプレキャストPC床版「クリーンクリート(R)PC床版」を開発
株式会社大林組

低炭素型のコンクリートを橋梁リニューアル工事にも適用拡大
株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:佐藤俊美)は、低炭素型のコンクリートを橋梁向けのプレキャストPC床版に適用できるように初期強度を高めた「クリーンクリートPC床版」を開発しました。
1.開発の背景
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、建設業界では建設資材の脱炭素化が求められています。大林組では、製造過程で多くのCO2を排出するセメントの使用量を削減するべく「クリーンクリート(※1)」をはじめとした低炭素型資材の開発を進めています。
一方で、社会インフラの老朽化が深刻な社会課題となっており、2030年には国内の道路橋の約54%が築50年を経過すると予測され(※2)、橋梁のリニューアルが急務となっています。リニューアルにあたって、従来の鉄筋コンクリート製の床版を、より耐久性が高く低炭素型資材を採用したプレキャストPC床版に取り替えれば、インフラ整備と同時に低炭素化の推進が可能になります。そこで大林組は、橋梁リニューアル工事に低炭素型のコンクリートを適用するため、大林組開発のクリーンクリートの技術を活用した「クリーンクリートPC床版」を開発しました。
2.クリーンクリートPC床版の特長
(1)初期強度の課題を克服し、従来と同等の製造サイクルとコストを実現
プレキャストPC床版は、製造時にプレストレス(※3)を導入するためコンクリートが十分な強度を発現している必要があります。しかしクリーンクリートは通常のコンクリートと比べて初期強度の発現が遅く、工場で生産するプレキャストPC床版の製造サイクルが長くなるという課題がありました。
今回開発したクリーンクリートPC床版は、ブレーン値(※4)4,000cm2/gの高炉スラグ微粉末と早強ポルトランドセメント、そして特殊混和剤を使用し、蒸気養生を行うことで初期強度を確保しました。材料の配合や養生条件を工夫することで、通常のコンクリートと同等の製造サイクルを実現し、製造コストも従来と同水準に抑えることが可能となりました。
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従来のプレキャストPC床版とクリーンクリートPC床版の初期強度の比較
(2)塩害環境下における床版の長寿命化に貢献
高炉スラグ微粉末を配合することで、コンクリートの硬化体はより緻密になり、塩化物イオンの浸透が抑制されます。その結果、海岸沿いや降雪地域に設置された場合でも、海水の飛沫や融雪剤に含まれる塩分(=塩化物イオン)によるコンクリートの劣化を防ぐことが可能となります。塩化物イオンの見かけの拡散係数は、一般的なコンクリートと比較して約6分の1にまで低減されており、塩害環境下における床版の長寿命化に貢献します。
[画像2:
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従来のプレキャストPC床版とクリーンクリートPC床版の塩害への抵抗性の比較
(3)製造時のCO2排出量を67%削減
クリーンクリートPC床版ではセメントの75%を高炉スラグ微粉末に置換しており、従来のプレキャストPC床版(高炉スラグ微粉末無配合)に比べ、製造時のCO2排出量を67%削減します。
[画像3:
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従来のプレキャストPC床版とクリーンクリートPC床版の製造時CO2排出量の比較
3.今後の展望
大林組は、クリーンクリートPC床版の技術を活用し、橋梁のリニューアルにおける低炭素化を推進することで、インフラの長寿命化と環境負荷の低減を両立させます。大林組は、今後も低炭素型資材の活用工事を積極的に提案することで、安全・安心なインフラ整備とカーボンニュートラルの実現に貢献していきます。
※1 クリーンクリート
大林組が開発した、セメントの大部分を高炉スラグ微粉末などの産業副産物に置き換えることで、CO2排出量を大幅に削減できるコンクリート
※2 出典:国土交通省ホームページ「社会資本の老朽化の現状と将来」
社会資本の老朽化の現状と将来 - インフラメンテナンス情報
※3 プレストレス
コンクリートにあらかじめ圧縮力を加えておく技術。圧縮には強いが引張には弱いコンクリートの弱点を克服するため、引張側となる断面に対して、あらかじめ圧縮応力を加えている。その技術で造られたコンクリート製品はプレストレストコンクリート(PC)といわれる
※4 ブレーン値
粒子の細かさを示す指標で、値が大きいほど粒子が細かいことを意味する
関連情報
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【技術・ソリューション】クリーンクリート(R)プレスリリース提供:PR TIMES


記事提供:PRTimes