「買い物カゴ投票」実証レポート発表 ならびに 2025年度グッドデザイン賞受賞のお知らせ
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン

サステナブルな消費を後押しする新しい仕組みとして効果を実証・どなたでも実施できるようマニュアルをオープンソースとして公開
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、会長:末吉竹二郎、以下 WWF ジャパン)は、本日2025年10月16日(木)、2024年に考案して公立大学法人滋賀県立大学(滋賀県彦根市、理事長:井手慎司)と共同研究を行なった「買い物カゴ投票」について実証結果をまとめたレポートを発表しました。また、このたび「買い物カゴ投票」が「2025年度グッドデザイン賞」(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞したことをお知らせします。
「買い物カゴ投票」特設サイト
https://www.wwf.or.jp/campaign/shoppingbasketvoting/
実際の投票の様子
https://www.wwf.or.jp/campaign/shoppingbasketvoting/images/movie.mp4
[画像1:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/18383/288/18383-288-484d7ba4b883c2a7471188391159285c-706x477.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
■買い物カゴ投票とは
「買い物カゴ投票」は、スーパーマーケット(以下スーパー)などの小売店で二者択一の問いかけに対して、消費者が買い物かごを返却する際に、「YES」か「NO」のかご置き場にかごを返却することで回答が行なえる仕組みです。スーパーからの問いに、消費者が簡単に意思表示でき、その声を受けてスーパーが取り組みを進めることができる新たなナッジ型コミュニケーション*の形となっています。
WWFジャパンが発案した「買い物カゴ投票」について、その有効性の検証を滋賀県立大学人間文化学部生活デザイン学科の山田歩准教授とWWFジャパンが共同で実施。具体的には、2024年10月より「買い物カゴ投票」の実証実験を都内スーパーで実施し、その取り組みを研究対象として効果検証し、検証結果を本日ウェブサイトに公開しました。
https://www.wwf.or.jp/campaign/shoppingbasketvoting/pdf/202510_shoppingbasketvoting_report.pdf
*ナッジ型コミュニケーション:ナッジ(nudge)は、英語で「軽くつつく、行動をそっと後押しする」という意味で、行動科学の知見の活用により、人々が自分自身にとってより良い選択を自発的に取れるように手助けする手法。
■店舗で成果を実証:ナッジ理論を活用した“楽しく・簡単・魅力的”な投票体験
「買い物カゴ投票」は、行動科学に基づく「FEASTフレームワーク(Fun, Easy, Attractive, Social, Timely)」を活用し、買い物中に自然と参加したくなる設計を試みています。2024年10月より都内スーパーで実施した実証実験結果では、以下の点が明らかになりました。
- 報酬の提供がないにも関わらず、3回の実施で延べ2,267人(来店者の約30%以上)の買い物客が自発的に投票に参加。従来のアンケート手法では届きにくかった幅広い層の声を集めることに成功。- 投票では、いずれの取り組みにも約7割が賛成。特に「畜産品のノントレー販売」では、投票後に売り場へパネルを設置し、ノントレー商品のラインアップを拡充した結果、売上比率が介入前の1.42倍に増加。買い物客の意思表示が、実際の購買行動にまでつながることが明らかに。- 店頭でのアンケート調査では、「買い物カゴ投票」の実施により、店舗に対する顧客の態度にポジティブな変化を確認。企業と顧客がともにサステナブルな消費を築いていく関係性の強化に寄与することが示唆される。- 一方で、サステナブルな消費全般に対する即時的な意識変容は見られなかった。しかし、「買い物カゴ投票」のような体験が繰り返されることで、小さな成功体験が蓄積され、消費者の社会参画意識や自己効力感が高まり、長期的な意識変容につながる可能性が期待される。
■全国の店舗で導入可能!オープンソースとして公開
「買い物カゴ投票」は、店舗と消費者がともにサステナブルな未来を築くための新しいコミュニケーションのかたちです。買い物カゴのある店舗であれば、特別な設備やシステムを必要とせず、すぐに取り入れることが可能です。導入を支援するため、マニュアルや店頭掲示物のテンプレートなど、必要なデータをすべてウェブページ上で公開しています。誰でもアクセスでき、すぐに実践に移せるよう設計されています。
実施マニュアル・ツール
https://www.wwf.or.jp/campaign/shoppingbasketvoting/images/kaimonokago_manual.pdf
■グッドデザイン賞受賞
このたび「買い物カゴ投票」は、2025年度グッドデザイン賞を受賞。受賞者はWWFジャパンのほか、滋賀県立大学、The Breakthrough Company GOの三者です。「小さな選択が積み重なることで大きな変化を生むことをわかりやすく示し、楽しさや納得感をもって行動につなげられる。日常の購買行動を社会変革へとつなげるデザインの好例である。」と評価されました。
グッドデザイン賞ウェブサイトでの紹介ページ
https://www.g-mark.org/gallery/winners/29607
■関係者コメント(滋賀県立大学 人間文化学部 生活デザイン学科 山田歩准教授)
[画像2:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/18383/288/18383-288-6d1e5c95130322f515bfa5e3e643d5b2-260x261.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
近年の行動科学の進展によって明らかにされてきた人間像は「つまづいたっていいじゃないか にんげんだもの」に代表される相田みつをの人間観に通じるところがあります。人間の理性には限界があり、「こうすべき」と頭で分かっていても、感情に流されるなどして、自らが思い描いていた通りに行動できない。人間は弱い存在なのだ。このことは「サステナブルな消費」が期待される「責任ある消費者」にもあてはまります。「サステナブルな消費」という理想に向かって、声をあげ、アクションを起こそう。しかし、そんなに力んで毎日の消費は続けられない、という人がほとんどなのではないでしょうか。「買い物カゴ投票」は、気楽に楽しく参加できる仕組みによって、多くの買い物客たちが、声をあげ、アクションを起こすという、大きな変化を作り出すことに成功しました。施策の端々に宿る「にんげんだもの」の精神が功を奏したと言えます。つまずきながらも、サステナブルな消費への取組みが広がっていくことを期待しています。
■ 担当者コメント(WWFジャパン ブランド・コミュニケーション室 増本香織)
[画像3:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/18383/288/18383-288-28a1c0876435cc7cffa9ea5a38a7c64f-267x268.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
気候変動問題との同時解決を視野に、生物多様性の回復を目指すにあたって、持続可能な消費の促進は大きな役割を担っています。「買い物カゴ投票」は、店舗と顧客がともに考え、ともにつくる、サステナブルな消費を後押しする仕組みです。日々の買い物の中で楽しく・簡単に・みんなで参加できる機会として、生物多様性を脅かしてきたこれまでのあり方を見つめ直す際の選択肢となって、社会に定着していくことを期待しています。全国の店舗でどなたでも自由に活用いただけますので、ぜひ、導入をご検討ください。
滋賀県立大学について
滋賀県立大学は、「キャンパスは琵琶湖。テキストは人間。」をモットーに、フィールドワークや実験・実習を積極的に取り入れた実践的な教育・研究を通して、“地”に足のついた「専門性」と他者への「思いやりの心」をそなえた「人が育つ大学」です。
https://www.usp.ac.jp/
WWFについて
WWFは100カ国以上で活動している環境保全団体で、1961年に設立されました。人と自然が調和して生きられる未来をめざして、失われつつある生物多様性の豊かさの回復や、地球温暖化防止などの活動を行なっています。
https://www.wwf.or.jpプレスリリース提供:PR TIMES


記事提供:PRTimes