「乳酸菌Lacticaseibacillus paracasei KW3110」による軽症から中等症の花粉症症状の緩和を確認~鼻症状および戸外活動への支障改善を実証~
キリンホールディングス株式会社

 キリンホールディングス株式会社(社長 COO 南方健志、以下キリン)のヘルスサイエンス研究所(所長 村島弘一郎)は、乳酸菌Lacticaseibacillus paracasei KW3110(以下、乳酸菌L. パラカゼイ KW3110)※1を含有する食品の摂取が、軽症から中等症の花粉症(季節性アレルギー症状)に伴う鼻眼の症状に与える影響を評価する臨床試験を実施しました。その結果、特に「花粉の飛び始め」において鼻症状の緩和が確認され、日常生活への支障度のうち「戸外活動の支障」において有意な改善が認められました。当研究成果は、2025年10月24日(金)~26日(日)に東京国際フォーラムで開催される「第74回日本アレルギー学会学術大会」で発表しました。
※1 International Archives of Allergy and Immunology. 2004;135:205-215
 株式会社ウェザーニューズが実施した「花粉症対策調査」によると、2人に1人以上が花粉症であると回答しており※2、近年、花粉症(季節性アレルギー症状)によるくしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状が日常生活に大きな支障を及ぼしています。特に「屋外活動の支障」や「集中力の低下」「睡眠障害」など、生活の質(QOL)への影響は深刻※3であり、花粉症は社会的課題として認識され始めています。花粉症のようなアレルギー反応はTh2細胞などの免疫細胞が深く関係しているといわれており、それらの細胞が2型炎症※4を引き起こします。花粉やダニ、ハウスダストなどの物質に対してそれらの細胞が過剰な炎症反応を起こすことでアレルギー症状が引き起こされるため、2型炎症を悪化させないことが重要です。キリンはこれまでに、2型炎症を抑制するサイトカイン※5(例:IL-12※6)の放出量を「乳酸菌L. パラカゼイ KW3110」と市販ヨーグルト由来の乳酸菌とで比較する実験を行った結果、「乳酸菌L. パラカゼイ KW3110」の2型炎症を抑制するサイトカインを産生する能力が他の乳酸菌に比べて優れていることを確認しています。(図1)
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※1 の論文より作図                                                図1.各種乳酸菌によって刺激された免疫細胞の2型炎症を抑制するサイトカイン放出量の割合
 このような基礎研究成果を踏まえ、「乳酸菌L. パラカゼイ KW3110」のさらなる可能性を探索することを目的として、本臨床試験を開始しました。本研究で得られた知見は、軽度から中程度の花粉症による生活の質(QOL)の低下に悩む人々に対して、食品による健康課題の解決に向けて意義あるものと考えています。
※2 株式会社ウェザーニューズ 花粉症対策調査(
https://jp.weathernews.com/news/45731/)
※3 厚生労働省 的確な花粉症の治療のために(
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/kafun_chiryo.pdf)
※4 アレルギー性の炎症の一種
※5 アレルギー反応に関与する情報伝達物質の一種。
※6 2型炎症によるアレルギー反応を抑制するサイトカインの一種。図1はIL-12の産生量のデータを示している。
■研究成果(概要)
 乳酸菌L. パラカゼイ KW3110の鼻眼の症状と生活の質に対する影響を評価するため、軽症から中等症のアレルギー性鼻炎を有する20歳から64歳の男女120名を対象とした臨床試験を実施しました。春先の花粉飛散時期(1~4月)に12週間、乳酸菌L. パラカゼイ KW3110含有食品(死菌体50 mg(1400億個以上))またはプラセボ食品(乳酸菌L.パラカゼイ KW3110を含まない食品)を摂取いただきました。その結果、乳酸菌L. パラカゼイ KW3110含有食品摂取群は、プラセボ食品摂取群と比べて、花粉飛散初期である摂取4週目において、鼻の自覚症状スコアが改善し、戸外活動の支障が軽減されることが確認されました(図2)。
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図2. 鼻の自覚症状スコアと戸外活動スコアの評価
■得られた示唆
 乳酸菌L. パラカゼイ KW3110は、花粉飛散初期の鼻の不快感を軽減し、戸外活動の支障に伴う生活の質(QOL)の低下を軽減することが示唆されました。
■今後の展望
 乳酸菌L. パラカゼイ KW3110の研究を通じて、花粉症などのアレルギー症状によるQOL低下を軽減することで健康課題の解決に貢献してまいります。
■医学博士 岡本美孝氏からの解説
 厚生労働省の調査によると、現在、日本では2人に1人が何らかのアレルギー疾患を抱えているとされており、アレルギーに悩む人は年々増加しています。中でもアレルギー性鼻炎は、国民の約半数が罹患しているとされ、特にスギ花粉症はその有病率の高さと症状の重さから「国民病」とも呼ばれ、社会的にも大きな課題となっています。
これまで、私たちの研究グループでも乳酸菌L. パラカゼイ KW3110が免疫細胞に取り込まれやすく、ユニークな反応を起こして、アレルギー反応の抑制に働く可能性があることから、この乳酸菌の摂取が花粉症患者のアレルギー症状の改善に寄与する可能性を示す研究成果を発表してきました。今回の試験結果は、特に軽度の鼻アレルギー症状を有する方々が食品として摂取することで生活の質を改善・向上させうる可能性を示しています。もちろん、強い症状があれば医療機関の受診が必要なことは改めて言うまでもありませんが、食品として摂取する乳酸菌の安全性、手軽さは着目すべきことですし、何より乳酸菌の中でもこの乳酸菌L. パラカゼイ KW3110が有するユニークな機能の解明はこれからも期待されると思います。
 今後は、さらなる作用メカニズムの解明や、新たな臨床データの蓄積が進むことで、花粉症などの鼻炎症状のみならず、様々な症状の改善に繋がる可能性を期待しています。
医師・医学博士:岡本美孝
独立行政法人労働者健康安全機構千葉労災病院病院長
千葉大学名誉教授
1979年秋田大学医学部卒、ニューヨーク州立大学バッファロー校でリサーチフェローとして粘膜免疫学を研究。山梨医科大学耳鼻咽喉科教授、千葉大学大学院耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学教授、千葉大学医学部附属病院副病院長などを歴任したのち2019年より現職。専門は耳鼻咽喉科学、特に頭頸部腫瘍の治療、上気道の免疫・アレルギーの研究と治療など。第67回日本アレルギー学会会長、過去に乳酸菌L. パラカゼイ KW3110とアレルギーに関する研究も行っている。
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 キリングループは自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、心豊かな社会に貢献します。
添付資料…「乳酸菌L. パラカゼイKW3110」の軽症から中等症の季節性アレルギー性鼻炎症状への影響について(1枚)
■乳酸菌L. パラカゼイKW3110とは
 乳酸菌L. パラカゼイKW3110はキリンと小岩井乳業の共同研究で100種類以上の中から発見され「免疫バランスを整える」ことが期待できる乳酸菌です。もともとはチーズから分離された乳酸菌Lacticaseibacillus paracaseiの1種です。
■背景・目的
 花粉症(季節性アレルギー症状)は、花粉によって引き起こされるアレルギー疾患で、くしゃみ、鼻水、鼻づまり等のアレルギー性鼻炎や目のかゆみ、流涙等のアレルギー性結膜炎が最も多くみられます。花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)の有病率は国民の約40%以上となっており、特に、スギ花粉症の有病率は10年間でおよそ10%の増加が確認されており、今後さらに花粉症有病率が増加する可能性があり、大きな社会的課題となっています。現在では食品に含まれる有用成分を利用し、眠気を誘発する等の懸念が少なく、安全性の高いアレルギー症状を緩和する製品の開発が求められています。キリンはこれまでの研究で、「乳酸菌L. パラカゼイKW3110」が自然免疫細胞の一種であるマクロファージを活性化させ、Th1サイトカイン産生能を高める作用やアレルギー症状緩和効果などを明らかにしてきました。本研究は、乳酸菌L. パラカゼイKW3110の花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)などのアレルギー症状を緩和する製品の開発を目的とし、鼻炎症状により低下するQOL向上を目指すものです。
■研究方法
 研究デザインは無作為化二重盲検プラセボ対照試験とした。春先に鼻眼の不快感を有する20歳以上64歳以下の男女のうち、症状緩和の医薬品を常用していない軽症から中等症のアレルギー性鼻炎に該当する120名を対象に、乳酸菌L. パラカゼイKW3110含有食品(死菌体50 mg(1400億個以上))またはプラセボ食品を12週間(1~4月)摂取させました。鼻眼の自覚症状は日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票を用い、アレルギー性鼻炎症状の重症度分類は医師の診断に基づいて評価しました。
 
■結果
 乳酸菌L. パラカゼイKW3110含有食品摂取によりプラセボ食品摂取と比べ、花粉飛散初期である摂取4週目の自覚症状スコア(「鼻症状」と「戸外活動の支障」)および重症度分類スコア(「くしゃみ発作または鼻漏」と「重症度」)の変化量が有意に改善した。(図1、2)
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図1.鼻の自覚症状スコアと戸外活動スコアの評価分類スコアの評価
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図2.医師によるアレルギー性鼻炎症状の重症度の評価
■研究成果
 本研究により、乳酸菌L. パラカゼイKW3110は、花粉飛散初期の鼻の不快感を軽減し、戸外活動の支障に伴う生活の質(QOL)の低下を軽減することが示唆されました。
プレスリリース提供:PR TIMES




記事提供:PRTimes