フードバンク利用で「子どもの笑顔増えた」約6割が実感──親の”安心”生み出す場にも ひとり親1,200人超調査で見えた、食品支援の可能性と課題
特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパン

近年の物価高騰などの影響により、この日本においても食の確保がこれまで以上に困難となっている家庭が多くみられます。
NPO団体等による食品支援やフードバンクの活動は、そうした家庭を支える役割として全国各地で広がりを見せていますが、その「支援の効果」について示すデータは限られています。
このたび認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン(本部:東京都大田区、代表理事:小泉 智)は、自団体が運営するフードバンク「グッドごはん」の利用者である低所得のひとり親家庭を対象に調査を実施し、本食品支援を利用することで当事者に生じた変化や、支援における今後の課題について明らかにしました。
【主な調査結果】
・心理面で前向きな影響を実感 ”頼れる場所がある”という安心感の形成、子どもの様子に変化も
・家庭内の変化では「他の支出にお金を回せるようになった」が最多回答
・食事の栄養面の改善は限定的で、支援の内容に課題も
【調査概要】
「フードバンク「グッドごはん」利用前後の暮らしに関するアンケート」
・実施日程:2025年10月9日~10月19日
・対象者:グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業「グッドごはん」で定期的に食品を受け取っているひとり親家庭の保護者 ※「グッドごはん」利用者は、原則としてひとり親家庭等医療費受給者証保有者に限る(ひとり親家庭等医療費受給者証とは、18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証)
・回答方法:アンケート回答フォームへの入力(オンライン)
・有効回答者数:1,274名
・回答者属性:
- 性別:女性 1,222名 (95.9%)|男性 34名 (2.7%) (性別無回答:18名)
- 年代:|20代 19名 (1.5%)|30代 215名 (16.9%)|40代 682名 (53.5%)|50代 343名 (26.9%)|60代以上 8名 (0.6%) (年代無回答:7名)
- 居住地域:首都圏(主に東京・神奈川・埼玉・千葉)587名 (46.0%)|近畿(主に大阪・京都・兵庫・奈良)429名 (33.7%)|九州(主に佐賀・福岡)258名 (20.3%)
[画像1:
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フードバンク「グッドごはん」食品配付の様子
【フードバンク「グッドごはん」について】
「グッドごはん」は、日本国内の子どもの貧困対策事業として、低所得のひとり親家庭を対象に無償で食品を配付する取り組みです。
2025年11月現在、首都圏、近畿、九州における約40か所の配付拠点にて、1世帯あたり約1万円相当の食品を毎月対面でお渡ししています。(配付拠点数は月により変動)
保護者自身の変化
- フードバンク「グッドごはん」の食品支援利用以降「食事に対する不安が減った」:約7割が「あてはまる」と回答- 「頼れる場所があるという安心感を感じられるようになった」:約8割が実感
[画像2:
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フードバンク「グッドごはん」の食品支援利用後における保護者自身の変化
<自由記述回答>
・「自身のご飯を限界まで切り詰めなくて良いと感じられるようになり、心的負担が減った。」
・「助けてくれる人がいるという安心感が出来て、毎日あった絶望感がやわらいだ。」
・「頼れる場所があると思えるだけで、日々の不安が軽減した。また、同じ境遇の人がいるのだと実感できて孤独感も減った。」
・「どうにか節約でやりくりするために、食事はいつも自分の分は残り物で過ごしていました。こういった支援をいただけ、なんとか自分の食事もしっかりとれるようになりました。」
・「気分の落ち込みが激しかったりしたのが、グッドごはんの利用で(食品を貰えることで)また頑張ろうと気持ちを切り替える事が出来るようになった。食品配付がある事で生きる活力も頂いているし、色々あっても踏ん張ろう、頑張ろうと思う事が出来る。」
これらの回答結果より、本食品支援の利用を通じて保護者が心理的な安心感を得ている場合がうかがえます。とりわけ、孤独感を抱えやすいひとり親家庭にとって、支援の場の存在が精神的な支えとなっているケースも考えられます。
子どもの様子の変化
- 「よく食べるようになった」:約6割が「あてはまる」と回答- 「笑顔が増えた」:約6割が該当(子どもが乳児のみである回答者については、食品支援による変化との関連を適切に評価することが困難であると判断し、分析対象から除外した)
[画像3:
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フードバンク「グッドごはん」の食品支援利用後における子どもの様子の変化
<自由記述回答>
・「利用する前はよく体調不良があったけれど、沢山食べられるようになり、学校をお休みする回数が凄く減りました。」
・「メニューや食事の内容が良くなり、食卓の悲壮感が減って子ども達の笑顔が増えてきた。家庭内も明るい雰囲気に少しずつなっている。」
・「お菓子を持って友達の家に遊びにいけるようになった。今までは貰ってばかりだったので、あげられるようになって、遊びにも行きやすくなった。」
・「お米の支援をいただけていることで白米の食べる量が以前よりも多くなりました!子どもなりに物価高を理解して遠慮させてしまっていたんだろうな…と反省する一方で、食べ盛りの子たちに少しでも多く食べさせてあげられる嬉しさを実感しています。」
・「食品配付の日をとても楽しみにしており、世の中に自分を応援してくれる人がいるということが嬉しいようで、自分も大きくなったら、困った人がいれば助けてあげられる人になりたいと言うようになりました。」
・「食べ盛りなのにあまり食べたいと言わなかったが、グッドごはんのおかげで、きちんと食べたいという要求が出せるようになったと思う。」
当結果より、本食品支援の利用後に家庭に食の安心感がもたらされ、子どもの行動や感情面に前向きな影響が表れている可能性が考えられます。
家計にも良い影響、しかし食事の栄養面の改善には課題も
本アンケートでは、フードバンク「グッドごはん」の利用を通じて、家庭内に生じた変化についても調査しました。
- 食品支援利用前の状況
本食品支援の利用前における家庭の状況として、「食材を購入する際、安さを優先して栄養バランスを気にできなかった」との回答が最も多くみられました。このことから、一部の家庭では経済的な理由により、栄養面に十分に配慮することが難しかった状況もうかがえます。
[画像4:
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フードバンク「グッドごはん」の食品支援利用前における家庭の状況
- 食品支援利用後の状況
支援利用後の変化としては、「他の支出(医療費、光熱費、子どもの教育費など)にお金を回せるようになった」との回答が最多となり、支援が家計面の負担軽減に寄与している傾向が確認されました。
一方で、「食事の栄養バランスが改善した」とする回答は比較的少数にとどまり、「グッドごはん」での食品受け取りを通じた食事の栄養面の改善には課題が残されていることが示唆されます。
さらに、本食品支援を利用し、食費の負担が一部軽減された場合でも、栄養面に配慮した食材を十分に購入できるほどの経済的余裕までは得られていない可能性も考えられます。特に、限られた家計の中では、住居費や医療費などの固定的かつ優先度の高い支出を確保するため、結果として栄養のある食事を諦めざるを得ないケースも想定されます。
また、昨今の物価高騰の影響下では、栄養面よりも価格を重視せざるを得ない食材選びや、生活費全体の中であらゆる支出の取捨選択を迫られる状況が深刻化していることが懸念されます。
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フードバンク「グッドごはん」の食品支援利用後における家庭の状況
<自由記述回答>
・「ありがたいね、と子供といただいています。でも、残念ながら物価の高騰が響いており、肉や野菜が買えないので、生活が変わったとは思えません。」
・「少し食費がかからなくなったかと思えたら、物価高騰でまた食費も日用品でもお金がかかるのでなんとも言えない。」
・「利用を開始した頃から米不足、価格高騰が少しずつ始まり、スーパーの売り場からお米が無くなった時期も毎月支給していただいて、毎月手に入るタイミングがあるという事が一つの安心材料になっています。現在はさらに信じられないくらいの価格になってしまい、結局、物価高の影響で、グッドごはんの利用前と生活の苦しさや家計に占める食費の負担はあまり変わらなくなってしまいました。」
グッドネーバーズ・ジャパンでは、こうした課題への対応として、「グッドごはん」の食品倉庫に冷蔵・冷凍設備を導入し配付可能な食品の種類を拡充する体制整備や、学校給食のない長期休暇中に栄養面に配慮した食品を重点的に配付する取り組みなど、支援施策の工夫や改善に努めてまいりました。
一方で、ニーズの高まりに対し、配付食品や人員の確保が十分に追いついておらず[1]、支援内容にはさらなる向上の余地があると認識しています。
今後は、本活動に対する企業・個人からのご寄付やボランティアのご協力をより積極的に募り、ニーズに対応できる体制整備に引き続き取り組んでいくことで、より質の高い支援の実現を目指してまいります。
また、食の支援を必要とする家庭が依然として数多く存在しているという現実に目を向け続け、その状況の改善に向けて、実態の発信や地域社会との連携に継続して取り組んでまいります。
[1] 参考:グッドネーバーズ・ジャパン「
【食のセーフティーネットに試練】食品支援利用世帯が過去最多も、配付食品の確保追いつかず――フードバンクの現場から」(2025年5月リリース)
<本調査結果の引用・参照に関するお願い>
本調査結果を引用・参照される際は、出典として当団体名称「認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン」を明記いただけますようお願い申し上げます。
また、本調査は、グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業「グッドごはん」を利用する低所得のひとり親家庭を対象に実施したものであり、日本のひとり親家庭およびフードバンク・食支援活動全体を代表するデータではございません。つきましては、本調査結果を引用・参照される際には、この調査の対象範囲が伝わる形でご使用くださいますようお願いいたします。
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<フードバンク「グッドごはん」へのご寄付に関して>
より多くのひとり親家庭を支援するため、「グッドごはん」では食品のご寄付を常時募集しております。
・企業・法人ご担当者の方は
こちら
・個人の方は
こちら
■団体について
特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパンは、国際組織グッドネーバーズ・インターナショナルの一員として、2004年に開設されました。「子どもの笑顔にあふれ、誰もが人間らしく生きられる社会」を目指し、国内外の子ども支援を行っています。公益性の高い団体である「認定NPO法人」として東京都から認可を受けています。
https://www.gnjp.org/
■ひとり親家庭のためのフードバンク「グッドごはん」とは
「グッドごはん」とは、ひとり親家庭等医療費受給者証をもつ、所得が限度額未満のひとり親家庭を対象に、食品を毎月無料で配付する事業です。2017年9月の事業開始以降、延べ13万を超える世帯に食品をお渡ししてきました*。
首都圏、近畿および九州における約40か所*の配付拠点にて、企業や個人の寄付によって集まったお米や調味料、レトルト食品、お菓子など、約10,000円相当のカゴいっぱいの食品をひとり親家庭に配付しています。
*2025年5月時点(配付拠点数は月により変動)
https://www.gnjp.org/work/domestic/gohan/
※通常、配付拠点に直接取りに来られる方を対象に食品を配付しています
※生活保護受給中の方は対象外です
■フードバンク「グッドごはん」を利用する低所得のひとり親家庭を対象とした各種調査について
グッドネーバーズ・ジャパンは、フードバンク「グッドごはん」を利用する低所得のひとり親家庭を対象に実施してきた各種調査の一覧を、以下のページにて公開しています。
▶
https://www.gnjp.org/survey/
同調査では、食事・収入・子どもの体験・孤立の実態など、ひとり親家庭が直面する多様な課題について、定量・定性的に可視化しております。ぜひご覧ください。
プレスリリース提供:PR TIMES




記事提供:PRTimes