大手会計事務所、平均売上高は38.4億円と上場企業並みの規模に。顧客ニーズの広がりにより会計事務所の提供するサービスや収益源が多様化
一般社団法人会計事務所連携協議会

~会計事務所連携協議会、「大規模会計事務所の実態調査レポート2025」を公開~
一般社団法人 会計事務所連携協議会(理事長:本郷 孔洋、事務局所在地:東京都中央区、以下会計連)は、2025年4月から5月にかけて会計連の会員17社を対象に実施した「大規模会計事務所の実態調査レポート2025」を発表しました。
近年、AI技術の進展やITツールの普及を背景に、会計業務の自動化が加速する一方で、2023年のインボイス制度導入や副業人口の増加など、税制度や経済構造の変化により会計事務所は、役割の大きな転換期を迎えています。本レポートは、そのような環境下で、大規模会計事務所(注1)の実態を客観的に把握することを目的として実施したものです。
(注1)本実態調査レポートで対象とする会計事務所は、税理士登録した公認会計士も含め、税理士資格を持つ専門家が、税務を中核に会計・税務・財務に関する幅広いサービスを中小企業や個人に提供する事業体を指すものとします。
■調査結果サマリ
(1)会計事務所の事業規模と売上高
大規模会計事務所の平均売上高は38.4億円に達し、東証グロース市場の270位前後の企業と同水準であることが判明。顧客ニーズの拡大に伴い、会計事務所の提供サービスや収益源は多様化が進んでいる。
(2)会計事務所の業務内容
業務内容では、8~9割の会計事務所が経営コンサルティング、企業再生・M&A支援にも対応しており、従来の会計・税務にとどまらず幅広い領域へと業務がシフトしている。
(3)会計事務所におけるキャリア
税理士資格を持たない職員でもキャリアアップが可能で、専門性の高い業務に関わる機会が広がっている。
(4)会計事務所の将来性(DX・AI活用への取り組みと今後の方向性)
AIやDXの進展により、会計事務所は単なる記帳・申告業務から、経営者との信頼関係を基盤とした高付加価値サービスを提供するビジネスへ転換しつつある。
■調査結果
【事業規模について】
各会計事務所のクライアント数(注2)を調査した結果、16社から回答があり、平均値は5,204件、中央値は2,470件となりました。クライアント数が10,000を超えているという回答が2社あり、平均値を引き上げている傾向が見られました。また、社会保険労務士法人や司法書士法人など、複数の法人でグループを形成している会計事務所について、グループ全体のクライアント数を調査したところ、12社から回答が得られ、平均値は7,381件、中央値は3,825件となりました。
この12社のうち、会計事務所単体のクライアント数とグループ全体のクライアント数を比較できる11社について分析したところ、グループ全体のクライアント数は平均で42.0%増となり、単体と比べて1.4倍のクライアント数を獲得していることが判明しました。これは、複数士業を束ねて事業グループとして活動することで、より多様な専門ニーズに応えられ、その結果としてクライアント数の増加につながっていることを示しています。
(注2)本調査における「クライアント」は、継続的に取引のある顧客と定義し、相続税申告などの一回きりの顧客の数は除外しています。
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【売上高について】
各会計事務所の売上高について調査した結果、13社から回答があり、最小値は7.4億円、最大値は200.0億円、平均値は38.4億円、中央値は16.0億円という結果となりました。また、グループ全体の売上高に関しては、11社から回答があり、最小値は16.0億円、最大値は260.0億円、平均値は76.0億円、中央値は50.0億円となりました。
グループ全体の売上高の回答があった11社について、会計事務所単体の売上との比較を行ったところ、平均して111.0%増となっており、会計事務所単体の売上に対し、グループ全体では2.1倍の売上高を達成していました。なかには、グループ全体の売上高が会計事務所単体の6倍以上となる事例もあり(注3)、会計事務所が税務以外の分野にサービスを広げ、収益源を多角化している実態がうかがえます。
なお、会計事務所単体の売上高の最大値である200億円は、1,500社強が上場している東証スタンダード市場において650位前後の企業と同水準であり、平均値の38.4億円は、500社強が上場している東証グロース市場において270位前後の企業に相当します。会計事務所は株式会社と異なり上場制度の対象外ではありますが、大規模会計事務所の事業規模は上場企業並みの水準に達していると言えます。
(注3)本事例により全体の平均値が引き上げられています。
[画像2:
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会計事務所の業務内容について調査したところ、税理士の基本業務は税務代理、税務書類の作成、税務相談などとされていますが、業務内容に関しては、回答のあった会計事務所の88%が経営コンサルティングを、82%が企業再生・M&A支援を、76%が財務戦略アドバイザリーを実施していることが分かりました。
なお、その他の業務としては、グループ士業法人を通じた行政書士業務、司法書士業務などのその他士業業務、BPO事業、ITコンサルティング/DXコンサルティング、人材サービス業、スタートアップ支援、バーチャルオフィスの運営など、多岐にわたる業務を行っていることが確認できました。顧客ニーズの広がりにより、会計事務所が提供する業務は圧倒的に広範になっていることが明らかとなりました。
[画像3:
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【キャリアパスについて】
キャリアパスについて、各会計事務所に入社後3ヶ月、1年、3年時点の成長イメージを調査しました。17社の回答をまとめると、以下のような傾向が見られました。
〈入社3ヶ月後〉業務の基本を習得する時期
・仕訳・記帳・入力業務などの基本的な会計実務に従事
・OJTを通じて先輩職員の補助業務を担当
・クライアントとの関わりはまだ少なく、社内作業が中心
・使用するソフトウェアや業務フローに慣れ、業務基盤を整える段階
・一部ではクライアント面談への同席や同行が始まることもある
〈入社1年後〉一人で業務をこなせるようになる時期
・月次処理や申告書の準備を単独で担当できるようになる
・担当クライアントを持ち、顧客対応が本格化
・繁忙期の経験を経て、年間の業務サイクルを一通り理解
・社内レビューやチェックを受けつつも、自走できる業務領域が増加
・一部では後輩指導やOJTサポートの役割も始まる
〈入社3年後〉プロフェッショナルとして活躍する時期
・クライアントの主担当者として信頼関係を構築
・会計・税務に加え、経営相談やコンサルティング対応にも関与
・複数社を担当しながら後輩指導や育成にも関与
・マネジメント職やリーダー候補としての期待を受ける段階
・事務所によっては資産税や国際税務など専門領域への展開も
また、会計事務所は税理士資格者が中心というイメージがありますが、有資格者と無資格者の待遇差について調査したところ、59%が「資格による待遇差はない」と回答しました(待遇差がある場合の代表的な内容は資格手当)。
さらに、資格を持たない職員にも明確なキャリアパスがあるかどうかについて聞くと、全17社が「ある」と回答しており、組織化が進む大規模会計事務所ほど、税理士資格を持たない職員も有資格者と同様に活躍し評価され、キャリアアップが可能であることが明らかになりました。
【評価制度について】
昇給、昇格のためにどのような評価制度があるかを分析したところ、17社から回答が得られ、88%が「上長による業績評価」となり最も多い回答となりました。その他には「担当売上連動」「所長による業績評価」という回答も多く、単一基準での評価ではなく、複数の評価の組み合わせが一般的であることが伺えます。一方で「年功序列」という回答は6%と少なく、基本的に実力主義と言えます。
[画像4:
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AI・DXの進展に伴い、会計事務所はこれまでの記帳代行・申告中心の業務モデルから脱却し、経営者との信頼関係を基盤とした高付加価値サービスへと転換しつつあります。本調査では、クラウド活用やAI導入の状況、今後の方向性について自由記述形式でヒアリングしました。17社の回答を分析したところ、各社の強みを生かした多様な戦略が示されました。
・AIやRPAを駆使して業務効率を高める(例:RPA自社開発、全社デジタル化)
・クラウドを活用した在宅体制の構築や全国採用の実現
・中小企業支援や起業家支援に特化し、地域密着型のコンサルティングを強化
・国際税務やIPO支援など高度専門領域に注力
・人材育成とテクノロジーを組み合わせた新たなビジネス創出を模索
今後の方向性として共通で挙がったのが「信頼」「人にしかできない価値の提供」「中小企業のパートナー」としての進化です。定型業務はテクノロジーを最大限に活用することによって自動化する一方で、人間には「顧客との関係構築」「経営判断のサポート」など、より高付加価値な業務が求められているという認識は各社に共通していました。
多くの会計事務所が、テクノロジーの台頭を会計事務所の役割の終焉と捉えるのでなく機会と捉えています。DXによって生まれた時間を、人間ならではの信頼関係の構築や経営への伴走に注力しているためです。各事務所が自社の強みと戦略に基づき、社会における役割を拡大させていく未来を構想していることが伺えます。
※「大規模会計事務所の実態調査レポート2025」の詳細結果は以下よりご確認いただけます
https://j-tax.or.jp/report/daikibo-kaikei-report-2025
■会計連 理事長(辻・本郷グループ 会長)本郷 孔洋のコメント
会計事務所のうち、とりわけ大規模事務所の業務領域は、税務・会計の枠を超え、経営コンサルやDX支援へと拡大しています。これは、会計事務所が単なる「数字の処理役」から「経営のパートナー」へと役割を大転換している証拠と言えます。
AI・DXの進展で定型業務が自動化されつつある中、資格の有無に関わらず若手が活躍できる場は広がり、育成・研修への投資、そしてリモートワークを含む多様な働き方も進んでいます。
私たち税理士業界は、中小企業の経営基盤を支える社会インフラとして、日本経済の成長に不可欠な存在です。会計連としても、こうした変革を牽引し、業界全体のブランド向上と次世代の担い手育成に注力することで、持続的な経済発展に貢献してまいります。
■ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士 中村真一郎のコメント
今回の調査で明らかになったのは、会計事務所が「専門家」から「経営のパートナー」へと大きく変化しているという現実です。
平均売上38億円という規模感に加え、8割以上の事務所が経営コンサルティングやM&A支援を手がけるなど、会計事務所はもはや「数字を処理する場所」ではなく、経営の意思決定を支える存在となっています。また、働き方や待遇の面も以前より改善されており、確実に進化しています。
AIやDXの浸透によって単純業務が自動化される一方で、「信頼関係の構築」や「伴走支援」といった人にしかできない価値が高まっており、会計業界は新たな成長フェーズに入っています。
■調査概要
・調査主体:一般社団法人 会計事務所連携協議会
・調査対象:会計連に加盟する大規模会計事務所17社
・調査期間:2025年4月~5月
・調査手法:調査票による書面調査
・分析主体:株式会社リアルソリューションズ
■一般社団法人 会計事務所連携協議会について
一般社団法人 会計事務所連携協議会(略称: 会計連)は、会計事務所17社が発起人となって、2024年12月に設立された一般社団法人です。会計事務所連携協議会は、会員間の積極的な連携を通じ、会計事務所およびその先の顧問先にとってより最適な対応を実現し、会計事務所業界が社会のインフラとしてより大きな価値を提供することを目指しています。
団体名: 一般社団法人 会計事務所連携協議会
事務局所在地: 東京都中央区銀座3-7-3 銀座オーミビル
代表者: 理事長 本郷 孔洋 (ほんごう よしひろ)
活動内容: 会計事務所間の連携を通じ、会計事務所業界が提供する価値の最大化を図る
Webサイト:
https://j-tax.or.jp/プレスリリース提供:PR TIMES



記事提供:PRTimes