◆MOF(金属有機構造体)とは異なる仕組みで「選択的捕捉」機能を発現◆ 関西大学環境都市工学部の田中俊輔教授らが開発。米国化学誌で発表
関西大学

身近なゼオライトがCO2分離回収・カーボンニュートラルの切り札に!
MOF(金属有機構造体)は北川進・京都大学高等研究院特別教授がノーベル化学賞を受賞されたことで一般の方にも広く知られるようになりました。関西大学環境都市工学部の樋口雄斗助教、同学環境都市工学部・カーボンニュートラル研究センターの田中俊輔教授らの研究グループは、これまでMOF特有の現象と考えられてきたゲート開閉型の分子選択的な捕捉機能を、CO2分子に対して、堅牢で産業実績のあるゼオライトに材料設計と構造制御を通じて実装することに成功しました。MOFでは「ターゲット分子に対応した骨格構造が変形して分子捕捉」するのに対して、本研究グループが開発したゼオライトは「細孔内のイオンが移動することでCO2捕捉」を可能にしています。構造本体は変形せず、安価で安定性が高く、長期間使用できる実用的な吸着材として社会実装が期待されます。本研究成果は、米国化学会(ACS)の国際学術雑誌「ACS Applied Materials & Interfaces」(2025年11月29日付)に掲載されました。
【本件のポイント】
・ゼオライトが示す新たな「ゲート型吸着」の新機能を設計。CO2分離回収への活用に道
・構造柔軟なMOFとは対照的。"固い"ゼオライトがイオン移動という仕組みにより"柔らかく"
応答
・安価で丈夫な素材。高性能・省エネ・コンパクトなCO2分離回収の新技術へ前進
■ 研究概要と背景
近年、カーボンニュートラルの実現に向けて、工場や焼却施設などから排出されるCO2を省エネで分離回収する技術の重要性が高まっています。こうした中、本研究では多孔質材料 「ゼオライト」に着目し、ある閾値圧力に達すると内部のカチオンが位置を変え、CO2が細孔深部へ入り込む“ゲート型吸着”が発現することを明らかにしました。“ゲート型吸着”は、構造設計性の自由度が高く、構造柔軟性をもつMOFで特異的に確認されてきた現象であり、 これを無機で堅牢なゼオライトで実証されたのは初めての成果です。
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■ 成果と意義
堅牢な構造をもつゼオライトは安価で耐久性に優れ、触媒や吸着材として広く産業利用されています。本研究では、構造自体を変形させることなく、内部のカチオンの移動のみで高いCO2吸着性能を発現できることを明らかにしました。さらに、わずかな圧力差でCO2の吸着・脱着が可能であることに加え、水蒸気を含む排ガスに対しても性能を維持できる可能性が示されました。これらの特性は、省エネで運転でき、装置を小型化しやすいCO2分離回収システムの実現につながるものであり、高性能・コンパクトな装置としての社会実装が期待されます。
■ 社会的波及・今後の展開
カーボンニュートラルを実現するには、発電所などの大規模排出源に加え、数が多いがゆえに合計すると大きな割合を占める中小規模排出源からのCO2も確実に分離回収することが必要です。本成果により、高性能かつコンパクトなCO2回収装置の具現化が見えてきました。今後は企業との共同研究を通じて、実用装置の開発や材料設計の最適化を進め、カーボンニュートラル社会に貢献する技術基盤をつくりたいと考えています。
田中教授は「北川先生のMOFに関する先駆的研究は、“ゲート型吸着”という新たな概念の扉を開き、この分野の可能性を大きく押し広げた。ゼオライトによる“ゲート型吸着”は、産業材料としての強みを活かし、CO2回収技術の社会実装を力強く後押しするものになると確信している。」と話しています。
▼本件の詳細▼
関西大学プレスリリース
https://www.kansai-u.ac.jp/ja/assets/pdf/about/pr/press_release/2025/No61.pdf
▼メディア関連の方▼
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環境都市工学部教授
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