日本美術院(院展)が元理事に対し行った処分は違法かつ無効、控訴審判決も220万円の損害賠償を命じる
日本画家 梅原幸雄
公益財団法人日本美術院(以下「日本美術院」といいます。)が令和5年4月27日に、梅原幸雄元理事に対して行った1年間の出品停止処分(以下「本件処分」といいます。)が違法かつ無効であり、梅原に対する不法行為であるとして、日本美術院に対して220万円を支払う旨を命じた判決に対し、日本美術院及び梅原が控訴していた裁判の控訴審判決が、令和7年12月10日に東京高等裁判所で言い渡されました。
控訴審判決は、日本美術院が梅原に対して行った本件処分が違法かつ無効であり、梅原に対する不法行為に当たるとして、日本美術院に220万円の損害賠償の支払いを命じた一審判決を維持しました。
梅原は、判決後、司法記者クラブで記者会見を開き、以下のコメントを述べました。
(コメント全文)
本日はお忙しいなか、記者会見にご出席いただきありがとうございました。
本日の判決で、私に対する日本美術院の処分が、違法かつ無効であったことが認められたことは、うれしく思います。
また、この場を借りて、はっきり申し上げたいのは、私は盗作をしておりません。この3年間、日本美術院のホームページに処分内容が掲載され続けたことで、私は、盗作作家の汚名を着せられました。これは、私にとっては何より耐え難いことでした。
國司華子氏は、私の作品が國司氏の20年前の春の院展出品作と似ていると主張し、理事長の田渕俊夫氏に倫理委員会の設置を申し立てました。しかし、私の作品は、國司氏の作品とは全く無関係に制作したものであり、私は國司氏の作品を記憶してもいませんでした。
國司氏によれば、私の作品が國司氏の作品に類似しているという点について、匿名の同人7名も賛同していたということでした。しかし、その同人が誰なのかということは裁判においても明らかにされず、真実だったのかも分からないままです。國司氏の言動には不可解な点が多く、私としては、國司氏からも謝罪をしていただきたいです。
倫理委員会が開催される前から、私に対する処分内容は、理事から事実上予告されていました。結論は最初から決められていたのだという印象を受けました。倫理委員会の審理においては、私が制作過程を説明しても耳を傾けていただけず、追加の証拠の提出も許されないまま、田渕理事長は早々に審理を打ち切りました。
そして、私を日本美術院の理事から解任することを上程する処分の決議と、1年間の出品を停止する処分が言い渡されました。この出品停止処分が日本美術院のホームページに公表されたことから、私の45年間の日本画家人生は消し去られたのも同然となりました。決まっていた仕事は次々とキャンセルとなり、個展を開くこともできなくなり、私は絶望のなか、茫然自失となり、絵を描く気力すら失ってしまいました。
日本美術院は、本件の処分について、私の作品が國司氏の作品に依拠して制作されたものでなくとも、類似しているのだから「結果責任」を負うと主張していました。
しかし、日本美術院の主張を前提とすると、普遍的なモチーフを描こうとする場合、例えば富士山や、花・動物・人物を描く際に、先人の作品に似てないか逐一確認して類似しないようにしなければならないということになります。そのようなことは現実には不可能であり、自由な表現としての創作活動を著しく制限することは明らかです。
これからの日本画を志す後輩が、理不尽な不安に縛られることなく、自由な発想で創作出来ることこそが一番大切なことと思っています。
最後に、私の代理人弁護士としてご尽力していただいた渥美陽子弁護士には、心よりお礼を申し上げます。また、ここまで頑張ってこれたのは、私の心身共に味方になってくれた妻のおかげです。妻の存在なくしては、厳しい裁判を戦い抜くことはできなかったと思います。日々私を支え、共に行動してくれたことに、改めて感謝しています。
プレスリリース提供:PR TIMES
記事提供:PRTimes