海洋における事業を通じたネイチャーポジティブへの貢献「パラオ パシフィック リゾート」に関するTNFD開示を実施
東急不動産
～優先地域「リゾート施設」で、東急リゾートタウン蓼科の『森林』に続いてパラオ パシフィック リゾートの『海洋』での自然への依存・インパクト等を評価～
東急不動産ホールディングス株式会社（本社：東京都渋谷区、代表取締役社長：西川 弘典、以下、「当社」）は、当社グループのリゾート事業におけるフラッグシップ・プロジェクトであり、東急不動産株式会社（本社：東京都渋谷区、代表取締役社長：星野 浩明、以下「東急不動産」）および東急不動産の子会社であるPacific Islands Development Corporation（本社：パラオ共和国、President：丹下 慎也）が、パラオ共和国で運営する「パラオ パシフィック リゾート」（Palau Pacific Resort）において、自然関連財務情報開示タスクフォース（Taskforce on Nature-related Financial Disclosures, 以下、「TNFD」）※1のフレームワークを参照したTNFD開示を、「TCFD/TNFDレポート（統合版・第2版）」（以下、「本レポート」）にて策定・公開しましたので、お知らせいたします。
パラオ パシフィック リゾートでは、施設開発時から現在に至るまで「自然環境の保護と開発の両立」を掲げ、現地の森林保全と海洋保全を行ってまいりました。東急不動産初代社長の五島昇の「ヤシの木より高い建物は建てるなよ」という言葉に象徴される、当社グループの環境への想いの原点とも言える事業です。開発時の森林や岸辺の保全、40年以上に渡るホテルの運営を通じて、地域住民や外部機関とともにサンゴやオオシャコガイ等の希少生態系の保全活動を継続しています。このような豊かな自然をお客様に体験頂くことが、当社グループのリゾート事業の高い付加価値に繋がっていると考えています。
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今回、パラオ パシフィック リゾートにおけるリゾート開発・運営による自然への依存・インパクトについて、生物多様性定量分析のスタートアップ 株式会社シンク・ネイチャー（以下「シンク・ネイチャー」）による評価を含め、分析を行いました。
その結果、陸域では開業に伴う建物用地を大きく上回る面積の森林が再生されたことが分かりました。海洋では、前面の海域について、サンゴ礁の豊かさの指標であるサンゴ被度*2が他のリゾートエリアと比較しても非常に高く、気候変動の影響による海水温上昇等に伴い、世界的にサンゴが減少している潮流の中でも、近年は新個体定着数が増加傾向であることが分かりました。加えて、絶滅危惧種であるオオシャコガイの放流により近年は大型無脊椎動物個体数*3が増加しています。こうして陸域と海洋の自然を保護することにより、それらのつながりを通じて、それぞれが豊かになることが分かっており、当社グループのリゾート開発・運営がネイチャーポジティブに貢献していると評価されました。
当社は、2021年に策定した長期ビジョン「GROUP VISION 2030」で全社方針として環境経営を掲げ、環境先進と社会課題解決により、当社ならではの高付加価値「環境プレミアム」の創出を目指しています。生物多様性に関しては、事業を通じたネイチャーポジティブへの貢献の取組みを推進しています。
2023年度には、当社は国内不動産業で初めて「TNFDレポート」を策定し、優先地域を「広域渋谷圏※4」と「リゾート施設等13地域」とし、注力する「広域渋谷圏」おける都市事業での取組みを開示、2024年度には、リゾート事業に関し、当社グループの代表的なリゾート施設として、長野県の森林リゾート地域である蓼科エリアに位置する大型複合施設「東急リゾートタウン蓼科」を取り上げました。
今般、体感型サステナブルリゾートとして、「陸（森林）」の代表である蓼科と並ぶ、「海洋」の代表施設として、海洋リゾート地域であるパラオを代表する大型リゾートホテルのパラオ パシフィック リゾートについて、当社グループの自然に関わるインパクトと依存、リスクと機会に関してとりまとめています。
これにより、当社グループが事業を行う地球上の大きな2つの区分「陸（森林）」と「海」の両方を評価・分析を行ったこととなります。「都市」の評価・分析と合わせて、約3年間かけて、当社の優先地域に関する代表物件の評価・分析の開示が概ね完了したものです。
なお、当社のTNFD開示としては、2023年8月の第1版から数えて、5度目の改訂となり、2025年2月にTCFDと脱炭素社会への移行計画、TNFD開示を統合した「TCFD/TNFDレポート（統合版）」としては、第2版となります。今後も引き続き、気候・自然関連の依存・インパクト、リスク・機会の検討やシナリオ分析・財務影響開示を深めていくなど、先進的な開示を進めてまいります。
*1 自然関連財務情報開示タスクフォース（Taskforce on Nature-related Financial Disclosures, またはTNFD）とは、2021年に発足した自然関連の依存・インパクト、リスクと機会を適切に評価し、開示することを要請する国際的なタスクフォース。気候変動におけるTCFD（気候関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Climate-related Financial Disclosures）)と連動したフレームワークを提示している。
*2サンゴ被度とは、海底の面積に対して、生きたサンゴが覆っている面積の割合を示したものです。サンゴ礁の豊かさや健康状態を把握するための、最も基本的な指標となります。
*3 大型無脊椎動物個体数とは、脊椎の無い動物のうちサイズが大きいものの数を指します。
*4「広域渋谷圏（Greater SHIBUYA）」とは、東急グループの渋谷まちづくり戦略において定めた、渋谷駅から半径2.5km圏のエリアを指しており、本レポートでは、当社グループとして広域渋谷圏を優先地域と定めています。
■今回のTNFD開示内容のポイント
１．主な追加項目
パラオ パシフィック リゾートを中心に、海洋に関するネイチャーポジティブへの貢献の取組みの追加および各種データ更新しています。
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２．パラオ パシフィック リゾートの概要
（１）施設概要と開発の経緯 （パラオ パシフィック リゾート【公式】 | Palau Pacific Resort
https://www.palauppr.com/）
パラオ パシフィック リゾートは、太平洋ミクロネシア地域の西端に位置する200を超える群島からなる国であるパラオ共和国のうち、アラカベサン島西岸に位置しています。1984年に開業し、総敷地面積約27ヘクタール、総客室数172室の、パラオを代表する本格リゾートホテルです。敷地内にはダイビングショップも備え、世界遺産の一つであるロックアイランドへのアクセスの容易なロケーションとなっています。
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1956年、東急不動産初代社長五島昇が日本の民間人として戦後初めて入国し、「ヤシの木より高い建物は建てるなよ」という指示の下、「自然と開発の両立」「地元に貢献し地元の人々に受け入れられる事業」をコンセプトに、まだ戦争の傷跡が残るこの地で事業をスタートしました。事前に、東急不動産の子会社である株式会社石勝エクステリアによって、植生等に関する綿密な環境調査を実施した上で、自然保護のため最大限既存樹木を生かすとともに、環境調査も踏まえ、サンゴの移植等も含め施設前面の海岸を改修しました。
1984 年に開業した後、前面海域の保護を州政府に継続的に訴えた結果、2002 年には海洋保護区に指定され、保全活動が強化されています。2012 年には、「ロックアイランド群と南ラグーン」が世界遺産（複合遺産）に認定されるなど、パラオ全体の自然や文化の維持・保全に繋がっています。
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（２）ステークホルダーエンゲージメント
パラオ パシフィック リゾートでは「地元に貢献し地元の人々に受け入れられる事業」というコンセプトの下、以下の取り組みを実施しています。
１. 地元住民との連携
地元住民を、従業員全体の約6割をスタッフとして雇用することでの地元経済への貢献、従業員による自主的な地域清掃活動や前面海域の保護活動による自然保護、地元伝統文化を取り入れることでお客様にパラオの文化を体験いただくとともに、スタッフが自分の文化への誇りを持って接客サービスを行っています。
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２.ルーク ネイチャーセンターの開業
2025年12月、敷地内に、パラオの独特な自然環境の体験施設としてネイチャーセンターを開業しました。ここではガイドツアーや展示を通じて、お客様に目の前の自然の不思議や生物多様性の面白さ、そしてその大切さを感じていただくことと合わせて、パラオ国内外の研究機関等と連携し、パラオでの研究活動の発信拠点化を目指しています。
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３．TNFD開示の概要
（１）自然への依存
豊かな自然に囲まれたパラオ パシフィック リゾートは、陸域、海洋における自然資源に依存していると考えられます。当社はシンク・ネイチャーと連携し、生物種の分析を軸に観光資源としての自然への依存について、詳細分析しました。
その結果、周辺地域を含めた陸域・海洋の両方において生物多様性重要度が世界トップクラスに高いことが評価されました。
例えば、陸域では、コブバトなどの絶滅危惧種や、ホリイヒメアオバト（国鳥）などのパラオ固有種が生息しています。海洋では、レッドリスト種として有名なジュゴンなどの海棲哺乳やタイマイ、その他マンタの分布の豊富なエリアです。
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（２）自然へのインパクト
次に、当社事業による自然へのインパクトの定量評価を行いました。
１. 森林（陸域）
インパクトを詳細に評価するため、当社の開発開始前からの敷地内における森林面積の変化を、シンク・ネイチャーにより、1976年以降の空中写真や衛星画像を用い、森林/非森林の区別を推定し、森林面積の変化傾向を定量的に分析しました。その結果、開業に伴い建物用地が増えたものの、これを大きく上回る面積の森林が再生され、開発前後で比較すると森林面積割合は約1.4倍に増加していることが分かりました。「自然との調和」を方針とした整備・開業が天然林の保全・再生に寄与し、当社グループのリゾート開発・運営がネイチャーポジティブに貢献していると評価されました。
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２. サンゴ（海洋）
前面海域におけるサンゴ被度を、衛星画像による推測により時系列で分析しました。開発当初から海浜整備、サンゴ移植、前面海域の保護区指定、地域での啓蒙活動などの取り組みを実施し、2012年ごろまでサンゴ被度は増加していることが分かり、ネイチャーポジティブへ貢献していると評価されました。その後、気候変動の影響等による世界的な海水温上昇、大型台風の発生や極端な潮位の低下、生物による食害などの外部要因により近年は減少傾向にありましたが、2025年からアジア開発銀行とのパートナーシップによりサンゴ礁回復プロジェクトを新たに開始し、サンゴの早期育成・養殖を行っています。施設前面のアラカベサン海洋保護区での最新のモニタリング調査では、サンゴの新個体の定着（幼生加入*5）が増加しているとの結果が出ています。
*5サンゴの新しい個体が定着することを幼生加入と言います。
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３. オオシャコガイ（海洋）
シャコガイはサンゴ礁に生息する海洋生物です。シャコガイとサンゴは共に、体内に褐虫藻という光合成をおこなう藻類を共生させていることから、シャコガイとサンゴには密接な関係があります。パラオ パシフィック リゾートでは、1998年から、絶滅危惧種であるオオシャコガイの放流の取り組みを行っています。施設前面の海洋保護区におけるモニタリング評価からは、シャコガイを含む大型無脊椎動物個体数は増加しており、このような保護・再生の取り組みが増加に有効に働いていることが分かりました。
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以上のように自然とのつながりを定性・定量的に分析した結果、開発当時のコンセプトを守り続け、地元の人々や文化伝統を大切にしながらリゾート事業を40年以上に渡り継続し、様々な自然保護活動も含め、事業を通じてネイチャーポジティブへ貢献していることが評価されました。
今後も引き続き、海洋・陸域における生物多様性の保全に取り組むとともに、お客様にも生物多様性や自然の重要性を理解いただきながら、この場所での滞在そのものが、この美しい島の未来をより豊かにすることに繋がる「サステナブル・デスティネーション」となることを目指し、挑戦を続けるとともに、情報開示・対外発信により、当社ならではの高い付加価値「環境プレミアム」の創出に努めてまいります。
詳細はTCFD/TNFDレポートをご覧ください。
https://tokyu-fudosan-hd-csr.disclosure.site/ja/environment/tcfd-tnfd
今回追加の海洋ページのみをご覧になりたい方は、抜粋版をご参照ください。
４．TNFD開示にあたって
本レポートは、パラオ パシフィック リゾートの運営管理を行うPacific Islands Development Corporationをはじめとした当社グループ各社*のほか、自然資本に関するコンサルティングを手掛けるMS＆ADインターリスク総研株式会社、衛星データを含めた生物多様性ビッグデータ等を活用するスタートアップのシンク・ネイチャーなど、生物多様性に精通したパートナー企業と協業し策定しました。
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本リリースの生物の画像の出典は「TCFD/TNFDレポート」をご参照ください。
https://tokyu-fudosan-hd-csr.disclosure.site/ja/environment/tcfd-tnfd
■ 長期ビジョン「GROUP VISION 2030」でめざす、生物多様性の取り組み
東急不動産ホールディングスは 2021年に長期ビジョン「GROUP VISION 2030」を発表しました。多様なグリーンの力で 2030 年にありたい姿を実現していく私たちの姿勢を表現する「WE ARE GREEN」をスローガンに、「環境経営」「DX」を全社方針として取り組んでいます。
当社では、「環境先進企業」をめざして「脱炭素社会」「循環型社会」「生物多様性」を主要な３つ環境課題とし、事業を通じて様々な取り組みを積極的に進めています。中でも「生物多様性」は、土地や様々な資源の利用、自然によるレクリエーションや人々のゆとり・癒しや生産性の向上、そして資産価値向上など、多様な側面で自然に依存し、インパクトを与えながら事業が成り立っていることから、重要な課題と認識し、2011 年に生物多様性方針を策定するなど、早期より自然と共生する取り組みを継続的に実施してきました。
また、「地域特性を踏まえたネイチャーポジティブへの貢献」を目標に掲げ、都市においては、都市に点在する緑を繋ぐ、人と自然に配慮した緑化、地方においては、生態系サービスとの共存を取組み目標として、不動産開発・運営管理を行っています。
今後も、重点課題への取り組みを通じて、お客様へ環境価値を提供し、自社の成長と、事業を通じた持続可能な社会の実現を目指してまいります。
東急不動産ホールディングス「GROUP VISION 2030」について
https://www.tokyu-fudosan-hd.co.jp/group-vision-2030/
東急不動産ホールディングス「中期経営計画 2030」について
https://www.tokyu-fudosan-hd.co.jp/ir/mgtpolicy/mid-term-planプレスリリース提供：PR TIMES
記事提供：PRTimes
