【山口大学】最新のがん免疫療法CAR-T細胞の技術改良に向けた共同研究を開始 ~国立大学法人山口大学×株式会社日立製作所~
山口大学医学部

国立大学法人山口大学〔所在地︓山口県山口市、学長︓谷澤 幸生〕(以下「山口大学」)は株式会社日立製作所(以下「日立製作所」)と、CAR-T細胞(※1)の技術改良に関する共同研究を開始しました。
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山口大学 大学院医学系研究科 免疫学講座の玉田耕治教授(
山口大学細胞デザイン医科学研究所・所長)が日立製作所と協力して進める本共同研究では、最新のがん免疫療法であるCAR-T細胞の安全性や有効性を高めるための技術開発に取り組み、がんに苦しむ患者さんに新たな治療選択肢を提供することを目指します。
※1 CAR-T細胞(キメラ抗原受容体(CAR : Chimeric Antigen Receptor)遺伝子改変T 細胞)
がん細胞を効率的に発見し、攻撃するよう遺伝子改変されたT細胞。T細胞は、免疫系細胞の一種で、体を守るためにウイルスやがん細胞と戦う役割を担う。2025 年現在、一部の白血病やリンパ腫、骨髄腫といった血液のがんに対する治療薬として承認されている。
近年、細胞・遺伝子治療分野の市場は急拡大しており、2030 年には7.4 兆円規模に達すると予測されています。特に、CAR-T細胞はがんに対して優れた効果を発揮する新たな治療法として高い注目を集めています。しかしながら、CAR-T細胞による治療をがんに苦しむ患者さんに広く提供するためには、今まで以上に高い安全性や有効性を目指した技術改良が必要とされています。
玉田教授らの研究チームは、難治性の固形がんに対して高い治療効果を発揮しうる次世代CAR-T細胞である「PRIME CAR-T細胞」を独自に創生し、その実用化に向けた研究開発を進めています。
PRIME CAR-T細胞とは、CARに加えて、さらに免疫反応を高める物質であるCCL19 ケモカインとIL-7サイトカインを産生するように遺伝子改変されたT細胞で、通常のCAR-T細胞としての働きに加えて、者さんの体内に存在する様々な免疫細胞をがんの部分に集結させ、増殖させることを可能とした技術です(図1)。これまでに、複数の動物モデルや初期の臨床試験において、PRIME CAR-T細胞の固形がんに対する治療効果を示唆するデータが得られています。
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図1 PRIME CAR-T細胞について
日立製作所は、独自の遺伝子配列生成AI を用いて1億通りの組み合わせに及ぶ新たなCAR遺伝子配列を効率的にデザインする技術を有しています。また、単一細胞レベルでCAR-T細胞を評価可能なプールスクリーニング技術と、ロボット操作により細胞への遺伝子導入から細胞の機能解析までの一連の工程を自動化したアレイスクリーニング技術を組み合わせることにより、極めて効率的なCAR-T細胞のスクリーニング評価を可能としています。これらの技術に基づき、CAR-T細胞の設計、合成、検証、学習を高速で繰り返すDBTL サイクル(Design, Build, Test, Learn)を実施し、CAR-T細胞の最適設計を可能とする「デザイン細胞開発プラットフォーム」(※2)を確立しています(図2)。
※2 デジタル×バイオ融合により、細胞遺伝子治療薬の効果的な開発を支援する技術を開発︓2025年5月13日
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図2 デザイン細胞開発プラットフォーム
本共同研究は、山口大学玉田教授らが有する「固形がんに対する次世代CAR-T技術」と日立製作所が有する「デザイン細胞開発プラットフォーム技術」を組み合わせ、医療ニーズの高い固形がんに対して優れた安全性と有効性を発揮しうるCAR-T細胞の開発を目指します。また、最適なCAR-T細胞の設計・検証を加速化し、CAR-T細胞の開発期間を短縮することにより、さらに革新的なCAR-T細胞の実用化を可能とするプラットフォーム技術の確立を目指します。
本共同研究では、山口大学発スタートアップ企業である
ノイルイミューン・バイオテック株式会社が提供するCAR配列を基盤として、最適化されたCAR-T細胞のデザイン及びスクリーニングを実施します。山口大学からは、大学院医学系研究科 免疫学講座 教授であり、
細胞デザイン医科学研究所 所長を兼任する玉田 耕治(研究統括)、准教授の佐古田 幸美が参画します。日立製作所からは、研究開発グループ 技師長 兼Next Research デザイン細胞プロジェクトリーダの武田 志津(研究統括)らが参画します。
玉田耕治(山口大学 大学院医学系研究科 免疫学講座 教授、細胞デザイン医科学研究所 所長)のコメント
「山口大学はがんに対する免疫細胞治療の研究開発に積極的に取り組んでいます。今回、日立製作所が有する革新的スクリーニング技術と我々の知見を融合し、これまでの手法では同定できなかった、優れた機能性や安全性を有するCAR-T 細胞を迅速に創り出す技術基盤の確立を目指した共同研究に取り組めることを大変嬉しく思います。本共同研究の成果が、がんに苦しむ多くの患者さんの治療に貢献できることを期待しています。」
武田志津(日立製作所 研究開発グループ 技師長 兼Next Research デザイン細胞プロジェクトリーダ)のコメント
「CAR-T 細胞療法は、血液がんに対して高い治療効果が示されていますが、がんの多くを占める固形がんに対してもより優れた安全性と有効性を発揮しうるCAR-T 細胞の開発が求められています。
山口大学の「固形がんに対する次世代CAR-T 技術」と日立製作所が開発した「デザイン細胞開発プラットフォーム」を組み合わせることで、固形がんの治療へ貢献したいと思います。」
【本件に関するお問い合わせ先】
<研究に関すること>
山口大学 大学院医学系研究科 免疫学講座
〒755-8505 山口県宇部市南小串1-1-1
E-mail: immunol@yamaguchi-u.ac.jp
<報道に関すること>
山口大学医学部総務課広報・国際係
〒755-8505 山口県宇部市南小串1-1-1
電話:0836-22-2009
E-mail:me268@yamaguchi-u.ac.jp
プレスリリース提供:PR TIMES


記事提供:PRTimes