次世代光センシングに向けた2µm帯赤外線レーザー発振に成功
旭化成株式会社

- フォトニック結晶レーザー(PCSEL)構造を用いた、高指向性・狭帯域光源を実現 -
旭化成エレクトロニクス株式会社(本社:東京都千代田区、社長:篠宮 秀行、以下「当社」)と京都大学高等研究院の野田進特別教授らのグループは、2µm帯赤外線フォトニック結晶レーザー(PCSEL:図1)の発振に成功しました。PCSELは小型でありながら高出力・高指向性・高機能性を特長とする次世代の半導体レーザーであり、PCSELによる2µm帯レーザーの実現により、生体内物質の非侵襲センシング、がんリスク研究への応用など、従来技術では適用が難しかったアプリケーションへの展開を目指します。
[画像1:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/79452/239/79452-239-2f945df2c5a753d5672199d5f5093215-1396x798.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図1:フォトニック結晶レーザー(PCSEL)の構造
1. 研究背景と内容
当社は1980年からホール素子の量産を行っており、化合物半導体技術を強みの一つとしています※。さらにMBE(分子線エピタキシー)を用いた薄膜形成技術も有しており、これらの技術を組み合わせ、これまでも磁気、ガス、生体センシングなどの多様なセンサーや、赤外線LEDなどを開発し、上市してまいりました。
※
(参考)「薄膜ホール素子の商用化」がIEEEマイルストーンに認定
また、光強度や波長幅の制約から赤外線LEDでは対応が難しい用途も存在しており、近年はより高輝度・狭帯域な光を必要とする生体内物質や呼気ガス分析などの用途において、小型で量産性に優れる赤外線レーザーの開発が期待されています。
京都大学高等研究院 野田進特別教授が発明したPCSELは、フォトニック結晶がもつ光制御機能により、従来のレーザーと比較し、小型でありながら高指向性・狭帯域・高輝度を同時に実現できるのが特徴です。当社はこれまで蓄積した化合物半導体技術を活用し、共同研究を通じ、光源構造の最適化を進めることで、PCSEL構造での2µm帯レーザー発振を実現しました。
このたび、測定したレーザー発振特性から、PCSELがもつ高指向性・狭帯域といった特長を2µm帯において確認しました(図2)。ビームパターンは今回のフォトニック結晶設計に基づく一例であり、設計により単峰状を含む多様なビーム制御が可能です。今後、フォトニック結晶構造のさらなる最適化により、応用展開に向けた性能向上が期待されます。
[画像2:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/79452/239/79452-239-92bd66c23a236e51be6297e023d3a766-1526x689.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図2:実現した2μm帯赤外線PCSELのレーザー発振特性 (a) 発光スペクトル (b) ビームパターン
2. 想定される応用領域
(1)医療・ヘルスケア分野:健康モニタリングの高度化
小型な2µm帯のレーザー光をセンシングに使用することで、ウェアラブルデバイスによる生体内物質の非侵襲なセンシングや、呼気に含まれるガス成分(VOCs、アセトン等)の検知を通じた健康モニタリングなどへの展開が期待されます。
(2)環境モニタリング:温室効果ガス等の高感度・微量定量測定
2µm帯にはCO2やCH₄などの吸収線が存在します。PCSELの高指向性・狭帯域特性を組み合わせることで、CO2・CH₄などの温室効果ガスを対象とした微量ガスを高精度で測定することが求められる領域での応用が期待されます。
(3)通信/LiDAR:安全性と高性能化への貢献
2µm帯の赤外線はアイセーフ性(目への安全性)の観点からも注目される波長帯であり、PCSELの高指向性と組み合わせることで、高性能LiDARや次世代通信の発展に寄与する可能性があります。
3. 今後について
今回の成果を踏まえ、当社は2µm帯PCSELの研究開発をさらに加速させます。より高度なフォトニック結晶構造の採用を含めた光源構造の最適化を進め、高指向性・狭帯域・高輝度動作の実現を目指します。
また、実用化に向けて量産性の検証も進めてまいります。これらの取り組みを通じて、ヘルスケア、環境モニタリング、通信、LiDARなどの領域における応用可能性を検討し、次世代センシング技術の進展に貢献してまいります。
本技術に関する研究成果については、2026年3月の応用物理学会での発表を予定しています。
プレスリリース提供:PR TIMES

記事提供:PRTimes