ものづくり現場の「暗黙知」をAIで継承・進化させる「知識駆動型DXプロジェクト」を始動
株式会社荏原製作所

― 開発ナビとEbara Brainを融合し、次世代ものづくり知識基盤を構築 ―
荏原製作所(以下:荏原)は、製造現場に眠る「暗黙知」をAIエージェントで形式知化・継承・進化させる「知識駆動型DXプロジェクト(以下:本プロジェクト)」が2026年3月1日(日)付で発足し、3月16日から本格始動したことを発表いたします。本プロジェクトは、東京大学の梅田靖教授が提唱する「デジタルトリプレット」の概念に基づき独自開発した設計開発支援システム「EBARA 開発ナビ」と、自律分散型AIエージェント基盤「Ebara Brain」を、共通の概念である「知識」を軸として融合するものです。「知識」の集約・深化・交換を可能とするAIエージェントシステムの実用化は日本初となります※1。
1.背景とねらい
荏原は1912年の創業以来、ポンプをはじめとする産業機械メーカとして業界をリードし、水・エネルギー・半導体・環境など多様な社会インフラを支えてきました。一方、製造業が直面する「労働力人口の大幅な減少」と「暗黙知を含む技術・知識の若手への継承不安」は業界共通の喫緊の課題となっています。
2025年版ものづくり白書(経済産業省)によると、能力開発・人材育成における最大の問題点は「指導する人材が不足している」(65.9%)であり、熟達技術者の退職などに伴う暗黙知の喪失が加速しています。荏原は、この課題を技術的に解決することが、持続的な競争力強化と社会インフラの安定提供に直結すると判断し、独自の知識基盤構築に着手しました。
2.概要
今回始動した「知識駆動型DXプロジェクト」は、データ活用による業務効率化にとどまらず、組織が持つ「知識」そのものを競争力の源泉と位置づける「Knowledge-Driven DX(知識駆動型DX)」の実現を目指すものです。「単なるAIツールの導入」ではなく、荏原の知識構造そのものを再設計し、AIと人が共に進化する基盤を構築します。
(1)技術基盤であるデジタルトリプレット(D3)について
本プロジェクトの基盤となるのは、東京大学梅田靖教授が提唱する「デジタルトリプレット(D3)」の概念です。従来のデジタルツインが「物理空間」と「デジタル(情報)空間」の双対構造であるのに対し、デジタルトリプレットはそこに「知識空間(形式知)」を加えた三層構造となります。これにより、熟達技術者のノウハウや現場の暗黙知をデジタル空間につなげ、AIが自律的に知識を推論・継承できる「人間中心のDX」を実現します。
[画像1:
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荏原のデジタルトリプレットの概念図
(2)本プロジェクトが生み出した2つのシステム
1. EBARA 開発ナビ(暗黙知を含む知識を見える化するシステム)※2
設計・開発の思考プロセスを構造化し、暗黙知を含む知識を形式知として段階的に見える化するシステムです。大・中・小プロセスおよびタスクレベルまで情報を整流化し、入力諸元から出力諸元を決定するナレッジ(論理・根拠・アドバイス・イレギュラー対処)を体系的に記述します。手戻りを最小化した製品開発の実現と、ものづくり知識の伝承・蓄積・共有を促進することを目的としています。
2. Ebara Brain(AIエージェント基盤)
荏原が独自開発した自律分散型AIエージェント群です。社内GPUクラスタ上で安全に動作し、外部通信を必要としないオンプレミス型の知識推論基盤として設計されています。主要なエージェントは以下の通りです。
・形式知化エージェント:
現場に眠る「知」を抽出。各種データを融合・整理し、知識のデータベース化を行う
・ヒアリングエージェント:
質問を自動生成し、ユーザーとの対話を通じて知識の精度を向上させる
・エキスパートエージェント:
高品質な知識ベースを活用し、高い専門性で業務を支援するとともに、ユーザーと共に進化し続ける
・パーソナルエージェント:
各個人が作成するデジタルの分身で、エージェント間の相互作用で知識空間を拡張し、人と共に成長する
[画像2:
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業務フローと意思決定の「暗黙知」を形式知化する 知識駆動型AIプラットフォーム
(3)実証結果(PoC:給水ユニット)
マンションや商業施設などの給水設備として広く採用されている「給水ユニット」を対象としたEbara Brainの概念実証(PoC)において、人が時間をかけて整理した設計プロセスの85%を、形式知化エージェントにより生成できました。また、設計諸元間の関係性予測においては、生成AIを活用することで精度83%を達成しました。これらの成果は、AIエージェントと人間が協働することで、属人的ノウハウを組織全体の知的資産へと転換できることを示しています。
(4)プロジェクトの履歴と今後の展開
荏原は本プロジェクトを段階的に発展させ、2028年までに4つのフェーズで展開を予定しています。
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(5)開発担当者のコメント
【荏原製作所 技監 後藤 彰】
「熱と誠」の創業の精神のもと、荏原製作所は100年以上にわたって現場の知を積み上げてきました。本プロジェクトは、それら蓄積された知を次の100年へ受け渡すための活動です。人とAIが共創することで、製造業の暗黙知が組織全体の知的資産となり、知識を生み出した人も正しく評価され、持続可能な成長へとつながると確信しています。
【荏原製作所 知識駆動型DXプロジェクト プロジェクトマネージャー 王 宇坤】
本プロジェクトは、単なるAIツールの導入を目指すものではありません。荏原製作所の知識基盤そのものを再構築し、AIと人が共に進化する新たな「知識経済圏」を創出することが究極の目標です。世界的に希少な製造業発のIndustrial Knowledge Agent Platformとして、日本の製造業のDXをリードしていきます。
ー 荏原グループについて ー
荏原グループは、長期ビジョンと中期経営計画に基づき、事業活動を通じて社会課題を解決し、持続可能な社会の実現と企業価値のさらなる向上を図っていきます。
※1「複数のAIエージェント間の相互作用を促進するためのシステム、方法、およびプログラム」ほか、基本特許を取得済み。
※2 関連リリース:
技術伝承と知の循環を実現する「EBARA 開発ナビ」を本格始動プレスリリース提供:PR TIMES


記事提供:PRTimes