ispace、ミッション2「改善タスクフォース」による検討結果を公表
株式会社ispace

共同議長により「7つの提言」が報告される
株式会社ispace(東京都中央区、代表取締役:袴田武史、以下ispace)(証券コード
9348)は、2025年6月に実施したミッション2の軟着陸未達に関する技術要因分析を踏まえ、より広範な改善策の一つとして立ち上げた、第三者専門家を中心とする「改善タスクフォース」による検討結果を、本日開催された記者会見にて公表しました。同会見では、共同議長である米国マサチューセッツ工科大学(MIT)アポロ計画記念教授のオリヴィエ L. デ・ヴェック教授および、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授である神武直彦教授から、当社経営メンバーに対する具体的な改善案として「7つの提言」が報告されました。
本検討は、主にispaceが実施した技術要因分析内容の妥当性の確認を中心に、独立した第三者の視点から、社内検討で見落としている点の可能性について検討が実施されました。また検討においては、CAST手法(Causal Analysis based on Systems Methodology:システム理論に基づく因果分析)と呼ばれる、複雑な社会技術システムにおいて損失が発生したケースにおいてその原因を解明するために用いられるインシデント分析手法が採用されました。これにより、ミッション2の軟着陸未達の要因を、レーザー・レンジ・ファインダーの技術的ハードウェアに起因する問題に限らず、システム全体の観点から包括的に分析・検討が行われました。
当社が「改善タスクフォース」を設置した目的は、以下の3点です。
- 第三者の視点から、ミッション2着陸失敗に関する社内の技術要因分析の妥当性を検証し、関連する技術的・システム的要因について追加の知見を得ること- 第三者の視点から、将来の当社ミッションに向けた提言を取りまとめ、月面着陸技術の成熟度を商業化に足る水準へ引き上げること- 第三者の視点から、当社の現状(できていること・できていないこと)を明確化し、透明性をもって開示することで、株主・顧客・政府をはじめとする、すべてのステークホルダーとの信頼関係を維持すること
改善タスクフォースからは、CAST分析に基づき、運用レベル、システム開発レベル、および経営判断レベルの3階層に分けて、以下の項目が「7つの提言」として報告されました。
■ 改善タスクフォースによる「7つの提言」:
運用レベル
1. 地形相対航法(Terrain Relative Navigation:TRN)の導入
2. 着陸運用時の残燃料の活用
システム開発レベル
3. ベンダー選定プロセスの改善
4. 試験に割り当てるプロジェクト・リソースの増強
5. 故障検出・隔離・回復(Fault, Detection, Isolation, and Recovery)の設計と検証
経営判断レベル
6. ispaceとドレイパー社間の連携の改善
7. 企業のリスク管理アプローチ強化
またこの提言を受け、当社は現時点で検討可能な具体的な改善策を発表し、今後のミッションに向けて実装する計画です。主要な例としては、運用レベルでの地形相対航法の導入(上記1)の提言については、本年1月に発表の宇宙戦略基金事業第二期「月極域における高精度着陸技術」への採択を通じてJAXA/SLIMの知見を最大限に活用すると共に、従来から開発していた地形相対航法(TRN)を搭載することが計画されています。システム開発レベルでの試験に割り当てるプロジェクト・リソースの増強(上記4)に提言に対しては、ispaceの従来のFlight Operation部門をTest and Flight Operation部門へと拡張し、試験と運用を1つの部門が担うことによる相乗効果により、試験の準備・実行を担うリソースを拡充し、試験で得た知見・ノウハウにより効率的に運用計画・準備・実行する体制に変更します。経営判断レベルでの企業のリスク管理アプローチ強化(上記7)の提言に対しては、「技術リスク評価委員会(仮称)」を新設し、経営戦略に対して、独立した立場からミッション技術リスクの特定・評価および対策提言を行う機能を構築し、全社的なリスク低減プロセスと経営判断の透明化・高度化を図り、より良いリスクマネジメント体制と企業文化の醸成を目指します。
「7つの提言」の詳細な内容および、それに対する当社の改善策につきましては、公式Youtubeに本日公開する動画をご覧ください。また当社IRサイトには後日、本記者会見の資料も公開いたします。
Youtube:
https://youtube.com/live/8d0IZfL4EWk?feature=share
IRサイト:
https://ir.ispace-inc.com/jpn/news/
本検討結果を踏まえ、当社は「7つの提言」を真摯に受け止めると共に、失敗から最大限学び取り、次へと活かすことを当社の大きな責任と捉え、実行してまいります。今後のミッションに向けた月面着陸技術の成熟度を商業化に足る水準へ引き上げるとともに、取り組みを透明性高く開示し、着実に改善を実装することで、すべてのステークホルダー皆さまとの信頼関係の維持・強化に努めてまいります。
「改善タスクフォース」は、2名の共同議長に加え、JAXA、NASA、ESA等の専門職員6名の外部メンバーと4名のispace関係者が加わり、計12名で構成されました。この場をお借りして、多大なご尽力と当社経営メンバーに対する貴重な示唆を賜りました改善タスクフォースの皆さまに、深く御礼を申し上げます。
■ 改善タスクフォースメンバー
改善タスクフォースのメンバーは以下のとおりです。(敬称略)
オリヴィエ L.デ・ウェック(共同議長)
アポロ計画記念宇宙工学・・工学システム教授
マサチューセッツ工科大学
神武直彦(共同議長)
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授
スタンフォード大学デザインリサーチセンター招聘教授
山中浩二
JAXA 宇宙探査センター長
クリストファー N・ドスザ
NASA 誘導・航法・制御技術フェロー
ミゲル・サン・マルティン
NASA ジェット推進研究所 ガイダンス制御 チーフエンジニア
オリヴィエ・デュボワ=マトラ
ESA 誘導・航法・制御システムエンジニア
牧野隆
ispace取締役 元IHIエアロスペースCEO
ケビン・デュダ
ドレイパー プログラムマネージャー
氏家亮
ispace CTO
ジェレミー・フィックス
ispace-U.S. チーフエンジニア
日達佳嗣
ispace JP Engineering Office EVP
デビッド・ルーセル
ispace 安全・製品保証マネージャー
■ 株式会社ispace 代表取締役CEO & Founder 袴田武史のコメント
「まずは、改善タスクフォースに参画いただいた共同議長はじめ、国内外の専門家の皆さまに、心より感謝申し上げます。今回の報告を受け、失敗の本質を『システムとして捉えること』『バイアスを排し第三者視点を取り入れること』『データに基づく意思決定を徹底すること』の3点に整理しました。改善タスクフォースからの7つの提言は、私たちの今後にとって重要な指針であり、その本質を理解し、従業員一同具体的な行動で実装してまいります。
限られたリソースの中で挑戦し、失敗から真摯に学び改善することを繰り返し、リスクを管理可能な形へ転換していくことが、今後の使命だと感じています。従来の手法にとらわれず革新に挑み続けます。そして、WE-GO-BEYONDというispaceの新たなカルチャーのもと、歩みを止めず全力で取り組んでまいります。引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。」
■ 株式会社ispace (
https://ispace-inc.com/jpn/ )について
「Expand our planet. Expand our future. ~人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ~」をビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業。日本、ルクセンブルク、アメリカの3拠点で活動し、現在約350名のスタッフが在籍。2010年に設立し、Google Lunar XPRIZEレースの最終選考に残った5チームのうちの1チームである「HAKUTO」を運営した。月への高頻度かつ低コストの輸送サービスおよびデータサービスを提供することを目的とした小型のランダー(月着陸船)と、月探査用のローバー(月面探査車)を開発。民間企業が月でビジネスを行うためのゲートウェイとなることを目指し、新たに月周回の自社衛星を活用した、通信・測位を中心とするルナ・コネクトサービスの提供も目指す。2023年には民間企業として世界で初めて月面着陸に挑戦するミッション1を実施。2025年にはミッション2を実施し、月周回までの確かな輸送能力や、ランダーの姿勢制御、誘導制御機能を実証することが出来た。最速2027年には新ミッション2.5として月周回衛星1基を月周回軌道へ投入することを予定。2028年iには、経産省のSBIR補助金を活用し、日本拠点が主導で開発を進めるランダーモデル「ULTRA(ウルトラ)」による新ミッション3(旧ミッション4)の打ち上げを予定しており、続く2029年iiには南極近傍への高精度着陸を目指す新ミッション4(旧ミッション6)の打ち上げを予定している。さらに、米国拠点が主導する新ミッション5(旧ミッション3)(正式名称:Team Draper Commercial Mission 1)の打ち上げは2030年iiiを予定しており、NASAが行う「アルテミス計画」にも貢献する計画。
――――――――――
i 当該打上げ時期については2026年3月時点の予定であり、今後変更する可能性があります。なお、当社が補助対象事業として採択されたSBIR(Small Business Innovation Research)制度の公募テーマ「月面ランダーの開発・運用実証」の事業実施期間が原則として2027年度とされており、SBIR制度に基づく補助金の対象となるミッション4は、当初2027年中の打上げとして経済産業省及びSBIR事務局と合意しておりましたが、2026年3月時点では当社内の開発計画上、2028年内の打上げとなることを見込んでおります。本変更については今後、関係省庁及びSBIR事務局と調整中の段階であり、最終的には経済産業省により正式に計画変更が認可されることとなります。
ii 2026年3月時点
iii 本米国ミッションは当社がTeam Draperの一員としてNASAのCLPSタスクオーダーCP-12に採択されているミッションであり、新スケジュールの下でのCP-12実行に関してはNASAからの正式な承認待ちとなります
プレスリリース提供:PR TIMES
記事提供:PRTimes