超臨界流体技術の最新動向:脱炭素・環境浄化・材料革新を牽引する次世代プロセス
アスタミューゼ株式会社

アスタミューゼ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 永井歩)は、超臨界流体に関する技術領域において、弊社の所有するイノベーションデータベース(論文・特許・スタートアップ・グラントなどのイノベーション・研究開発情報)を網羅的に分析し、動向をレポートとしてまとめました。
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超臨界流体・超臨界水・亜臨界流体技術とは
超臨界流体とは、物質の温度と圧力をともに「臨界点」以上にたもった状態の流体です。液体と気体の区別がなくなり、液体に近い密度と気体に近い拡散性・低粘性を同時に持ちます。二酸化炭素(CO2)の臨界点は温度31.1℃・圧力7.38MPa、水の場合は374℃・22.1MPaです。
超臨界CO2は比較的低い温度・圧力で超臨界状態に達するクリーンな溶媒で、カフェインレスコーヒーの製造やホップ香気の抽出など食品・医薬品分野ではすでに商業利用が確立されています。超臨界水は強力な酸化力を持ち、PFAS(パーフルオロアルキル化合物:フライパンのフッ素加工や防水スプレーなどに使われてきた化学物質群で、自然界で分解されにくく体内に蓄積しやすいため国際的に規制が強化されています)などの難分解性汚染物質を完全に無害化できます。亜臨界水(約150~374℃・高圧液体水)は条件がゆるやかであつかいやすく、植物・廃棄物からの有用成分抽出やバイオマスの化学的な資源回収(ケミカルリサイクル)に活用されています。
一方、超臨界水を扱うプロセスでは高温・高圧下での装置腐食が設備寿命に影響します。超臨界CO2発電では高効率タービン・熱交換器の材料確立が商業化の鍵であり、超臨界地熱発電についても坑井掘削技術や耐腐食材料など克服すべき技術課題が残されています。
このような背景から、超臨界流体・超臨界水・亜臨界流体に関わる技術開発では幅広い分野での研究が進められています。
- 発電・エネルギー変換技術:超臨界CO2サイクル発電、太陽熱集光(CSP)統合、廃熱回収、超臨界地熱発電など- CO2回収・貯留(CCS/CCUS)技術:超臨界CO2地中圧入・貯留、岩石・塩水層との反応評価など- 環境浄化・廃水処理技術:超臨界水酸化(SCWO)によるPFAS・難分解性化合物の分解、超臨界流体による廃水修復など- 材料加工・製造技術:超臨界CO2発泡成形、超臨界乾燥・エアロゲル製造、超臨界流体含浸・コーティングなど- 抽出・分析・精製技術:超臨界流体抽出(SFE)、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)、SFE・SFC・質量分析(MS)を組みあわせた連結分析など- 医薬・バイオ応用技術:超臨界反溶媒法による薬剤の微粒子化とドラッグデリバリー製剤の設計、亜臨界水抽出による機能性成分回収など
本レポートでは、アスタミューゼ独自のデータベースを活用し、特許・論文・グラント(研究プロジェクト)における「超臨界流体・超臨界水・亜臨界流体」に関する技術動向を分析します。
超臨界流体・超臨界水・亜臨界流体技術に関連する特許の動向
アスタミューゼが保有する特許データベースから、要旨に「超臨界流体(supercritical fluid)」「超臨界水(supercritical water)」「亜臨界流体(subcritical fluid)」および周辺技術に関連するキーワードを含む特許母集団24,725件を抽出しました。これらを対象に、要旨中にふくまれる特徴的なキーワードの年次推移を分析し、近年進展がみられる技術要素を特定する「未来推定」分析を実施しました。
キーワードの変遷を把握することで、すでにブームがすぎた技術や、今後注目をあつめると予測される技術を定量的に評価できます。さらに、それぞれの要素技術について、技術ステータス(黎明・萌芽・成長・実装)の段階を予測することが可能です。
図1は、2016年以降に出願された超臨界流体関連特許の要約にふくまれる特徴的なキーワードの年次推移です。
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図1:超臨界流体・超臨界水・亜臨界流体に関連する特許の要旨にふくまれるキーワードの年次推移(2016~2025年)
成長率(growth)は、2016年以降の文献中における各キーワードの出現回数と、2021年以降の文献中における出現回数の比をあらわしています。値が1に近いほど、直近の文献で多く出現していることを意味します。
2016年以降に出願された超臨界流体関連特許の分析では、「CO2回収・利用・貯留(ccus)」、「超臨界CO2と岩石・油層相互作用(co2-rock / co2-saturated / co2-wet / co2-in-oil)」、「CO2の地中貯留・地質隔離(sequestration / geo-sequestration / geo-storage)」、「超臨界水酸化(scwo)」やPFAS系キーワードなど、エネルギー転換と環境対応技術の高度化に関するキーワードが顕著に増加しています。
「CO2回収・利用・貯留(ccus)」は超臨界状態のCO2を地中に圧入・隔離するプロセスを中核とする技術群であり、2021年以降の特許出願が急拡大しています。日本では経済産業省が2023年1月に「CCS長期ロードマップ」を策定し、2030年までに年間600~1,200万トンの貯留能力確保、2050年までに1億2,000~2億4,000万トン規模の実現を目標にかかげています。2023年5月にはGX(グリーントランスフォーメーション)推進法が国会で可決・成立し、CCSは同戦略の中核技術と位置づけられました。JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)が選定した9つの先進CCSプロジェクト(注1)では、2030年までに年間最大1,300万トンのCO2貯留を目指しています。
注1:
https://www.meti.go.jp/english/press/2023/0613_001.html
「超臨界水酸化(scwo)」は超臨界水(374℃・22MPa以上)の強力な酸化力を利用してPFASなどの難分解性汚染物質を完全に分解する技術であり、特許出願件数が2021年以降に大幅に増加しました。日本では化審法に基づきPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)の製造・輸入を2010年から、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)を2021年から原則禁止しており、2023年2月には水質汚濁防止法の改正でPFOS・PFOAが指定物質に追加されました。同年7月に環境省が「PFASに関する今後の対応の方向性」を公表し、PFAS一斉分析法の開発(2023年度~)も進行中です。こうした規制強化がSCWOへの特許出願増加の背景にあります。
「超臨界乾燥(fluid-drying / supercritical-dried)」や「超臨界流体微粒子化(micronization)」も特許での増加が顕著であり、超臨界CO2を利用したエアロゲル製造や医薬品粒子設計といった材料加工用途での技術開発が活発化していることを示しています。
続いて、国別の特許出願動向を見ていきます。 図2は、2016年以降における超臨界流体関連特許の全世界での出願件数の年次推移を示しています。なお、特許データには出願から公開まで一定のタイムラグがあるため、直近の集計値は参考値として扱う必要があります。
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図2:超臨界流体・超臨界水・亜臨界流体に関連する特許出願件数(国別)の年次推移(2016~2025年)
超臨界流体・超臨界水・亜臨界流体関連の特許は、2016年から2024年の9年間で計24,210件が出願されています(2025年は公開ラグのため参考値)。国別では中国が圧倒的多数を占め、米国、国際出願(WO)、韓国、欧州特許庁(EP)、日本が続きます。
中国は2016年以降で高水準を維持しており、2022年に2,127件のピークを記録した後、2023年2,041件、2024年1,923件と、やや減少傾向に転じています。この背景としては、超臨界CO2発電を中心とした技術の一部が研究段階から実装段階へ移行しつつある可能性があげられます。実際、2025年12月に中国・貴州省六盤水市の製鉄所において、世界初となる超臨界CO2(sCO2)を用いた商業発電ユニット「超炭1号」(注2)(中国核工業集団[CNNC]が開発)が稼働を開始しており、基礎研究から商業実装への移行が進んでいることがうかがえます。
注2:
https://jp.news.cn/20251222/c62c6eefb3f24ebe99fe0b35ab97f29f/c.html
米国および韓国は2021年に件数のピークを記録した後、2022年から急速な減少が見られました。日本は2016~2023年を通じて年62~79件と安定して推移しています。なお、各国で2024年から2025年にかけて出願件数が減少していますが、これは公開ラグによる未公開案件の影響と考えられ、実態の出願数が減少していることを意味するものではありません。
以下に、近年の代表的な特許事例を紹介します。
- WO2023/102120A1 "Supercritical water oxidation system and method for PFAS destruction"- - 出願人:374Water Inc.(米国)- - 公開年:2023年- - 概要:PFAS(パーフルオロアルキル化合物)を含む廃液・汚泥を超臨界水酸化(SCWO)により完全分解・無害化するシステム。374℃・221bar超の超臨界水中で空気(Air)を酸化剤として注入し、有機フッ素化合物を炭素・フッ素・水に完全鉱化する連続処理プロセス(AirSCWO)の特許。- US11780127B2 "Foaming and dyeing integrated production method for polymer material product"- - 出願人:Fujian Huafeng New Material Co., Ltd.(中国)- - 公告年:2023年- - 概要:超臨界CO2を発泡剤かつ染色媒体として同一の加圧釜内で使用し、高分子材料の発泡と着色を一工程で完結させる統合プロセスを特許化。最初に超臨界CO2に染料を溶解させてポリマープリフォームを染色し、次いでCO2と窒素の混合ガスを用いて発泡工程に移行する。
(以降、超臨界流体・超臨界水・亜臨界流体技術に関する論文およびグラントのキーワードと動向分析、それらをふまえた全体のまとめについては、
弊社コーポレートサイトの該当ページでご確認ください)
著者:アスタミューゼ株式会社 金子 亮 博士(農学)
さらなる分析は……
アスタミューゼでは「超臨界流体」に関する技術に限らず、様々な先端技術/先進領域における分析を日々おこない、さまざまな企業や投資家にご提供しております。
本レポートでは分析結果の一部を公表しました。分析にもちいるデータソースとしては、最新の政府動向から先端的な研究動向を掴むための各国の研究開発グラントデータをはじめ、最新のビジネスモデルを把握するためのスタートアップ/ベンチャーデータ、そういった最新トレンドを裏付けるための特許/論文データなどがあります。
それら分析結果にもとづき、さまざまな時間軸とプレイヤーの視点から俯瞰的・複合的に組合せて深掘った分析をすることで、R&D戦略、M&A戦略、事業戦略を構築するために必要な、精度の高い中長期の将来予測や、それが自社にもたらす機会と脅威をバックキャストで把握する事が可能です。
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記事提供:PRTimes