富士フイルムと堀場製作所 バイオ医薬品製造の培養・精製工程をリアルタイムで可視化する「インラインラマン高感度計測システム」を共同開発
株式会社堀場製作所

抗体医薬品の精製工程において抗体収率を従来比約10%向上
富士フイルム株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長・CEO:後藤 禎一)と株式会社堀場製作所(本社:京都市南区、代表取締役社長:足立正之)は、このたび、バイオ医薬品製造の培養・精製工程におけるタンクや装置内の成分濃度を連続的にリアルタイムで可視化する「インラインラマン※1高感度計測システム」を共同開発しました。本計測システムを使用して抗体医薬品製造の精製工程を管理した場合、従来の紫外可視吸光光度法※2による管理と比較して抗体の収率が約10%向上する※3ことを確認しています。
なお、富士フイルムは、2026年6月22日~25日に米国サンディエゴで開催される「BIO International Convention」に本計測システムを展示します。
バイオ医薬品は、タンパク質などの生体由来分子をもとにした医薬品で、抗体医薬品や細胞・遺伝子治療薬など多様かつ高度なモダリティへと進展しています。こうした医薬品は、がんや免疫疾患などの幅広い疾患の治療に使われており、年率約9%※4で市場成長しています。バイオ医薬品の製造過程においては、培養液・精製液中の酸素濃度など、わずかな条件変動が製品の品質や収率に大きく影響することから、培養・精製工程において、各種成分の識別・分析が行われています。しかし、現在の各工程で製造途中の培養液や精製液などをサンプリングするオフライン分析では、培養液・精製液中の成分の変化をリアルタイムに分析することが困難でした。こうした背景から、培養・精製工程のタンクや装置内の状態をリアルタイムに分析し、その状態の変化を高精度に捉える高感度計測技術へのニーズが高まっています。
今回、両社が開発したシステムは、高感度ラマン分光装置と高集光効率シングルユースプローブ※5、独自の計測アルゴリズムを組み合わせたものです。富士フイルムが写真・光学デバイス事業で培ってきた光学設計技術およびバイオCDMO事業におけるバイオ医薬品製造の知見と、堀場製作所が持つ高い感度・精度・安定性を誇るラマン分光の技術を融合し、業界最高感度※6を実現した「インラインラマン高感度計測システム」を開発しました。これにより、培養液・精製液中の成分の変化を高精度かつリアルタイムに可視化することが可能となります。
今後、両社は早期の実用化に向け、本計測システムの実装検証を進めます。さらに、製造プロセスの可視化と高度なデータ分析技術の確立を通じて、抗体医薬品をはじめとする高品質なバイオ医薬品の安定製造および製造コスト低減に貢献していくことを目指します。
※1 ラマン分光技術(光の散乱を利用して物質の構造や成分を明らかにする技術)を製造プロセスに適用し、試料を取り出すことなく、製造工程中の化学組成や反応状態を連続的にリアルタイムで非破壊分析するインライン計測技術。
※2 紫外光や可視光を試料に照射し、吸収される光の量(吸光度)を測定することで、成分の濃度や特性を分析する手法。
※3 富士フイルムのモデル実験系での実証試験において。
※4 Evaluate Pharma(2026年1月15日付)を参考に富士フイルム推定。
※5 光を効率よく集めて測定感度を高めるとともに、単回使用を前提とした簡素な構造により、汚染リスクの低減や洗浄工程の省略を可能にする光学プローブ。
※6 2026年6月時点、富士フイルム調べ。市販されているインラインラマン計測用途のラマン分光装置およびプローブを組み合わせた計測システムにおけるSN比で計測。
SN比:測定信号(シグナル)と雑音(ノイズ)の比率を示す指標。この値が高いほど微弱な信号を正確に検出できるため、高感度な成分分析において重要な性能指標となる。
1.「インラインラマン高感度計測システム」の特長
本システムは、堀場製作所のラマン分光装置と、富士フイルム独自のシングルユースプローブ、計測アルゴリズムを組み合わせたものです。これにより、微弱なラマン信号を高効率で取得し、高精度な分析を可能としています。
今回用いる堀場製作所のラマン分光装置は、過酷な使用環境下で安定したモニタリングが求められる石油業界の精製工程において豊富な実績を有し、長期稼働に耐えうる堅牢性を備えています。また、温度上昇により生じる信号のゆらぎを最小化する独自のノイズ低減設計により高感度化を実現し、温度変化等で生じる測定値のずれを自動的に校正する機能によって、高精度な連続計測を可能とします。
これに富士フイルム独自の光学設計技術を用いてバイオ医薬品製造に適した材質・形状の高集光効率プローブを組み合わせることにより、従来は難しかった微弱信号の取得を実現し、業界最高感度を達成しました。短時間の計測でも十分な精度を確保できるため、計測スループットの向上(処理能力の高速化)に寄与します。
また、富士フイルム独自の計測アルゴリズムは、取得したラマンスペクトル※7から、測定対象物に由来する特徴的な波数を抽出し計測モデルを構築することで、培養液成分の経時的変化や精製液中の目的物・不純物の濃度を高精度に計測することを可能にします。
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【インラインラマン高感度計測システムの概略図】高集光効率プローブとノイズ低減設計のラマン分光装置により、SN比の高いラマンスペクトルを取得。取得したラマンスペクトルから、測定対象物に由来する特徴的な波数を抽出し、計測モデルを構築。リアルタイムで目的物と不純物の濃度を可視化する。
2.「インラインラマン高感度計測システム」の適用事例
・抗体医薬品製造の精製工程における抗体の収率向上
従来の紫外可視吸光光度法による工程管理では、タンパク質の総量は分析できるものの、タンパク質である抗体と組成が類似した不純物を識別することが困難でした。本システムは、ラマン分光装置とシングルユースプローブを組み合わせることで得られた高いSN比のラマンスペクトルから、計測アルゴリズムで抗体や不純物に由来するそれぞれの波数を抽出。それをもとに計測モデルを構築することで、抗体と不純物の濃度を識別して、高精度に連続的に計測することが可能です。それにより、不純物濃度を基準内に管理しつつ、抗体濃度が最大になるタイミングで抗体を回収できます。本システムを用いた実験において、従来の紫外可視吸光光度法 による工程管理と比較して、約10%の収率向上が確認できました。さらに抗体医薬品以外のバイオ医薬品においても、製造する目的物と不純物を高感度に識別することにより、品質の向上及び収率向上に寄与することが期待されます。
3. 「インラインラマン高感度計測システム」の応用価値・今後の展開
・バイオ医薬品製造の培養工程における品質安定化
培養工程では、培養液中に含まれる複数のアミノ酸を識別して連続的に計測し、タンク内の培養液成分の経時的変化の分析・可視化が可能です。これにより、異なるバッチ間や同一のバッチ工程内における変動要因を特定し、生産プロセスを精密に制御することで、安定した品質のバイオ医薬品製造への貢献を目指します。
・バイオ医薬品製造のプロセス開発の迅速化
インラインの連続的なリアルタイム分析により、従来必要だった工程中にサンプリングするオフライン分析にかかる時間を削減します。それにより、条件検討から検証までの一連の試行プロセスをより短期間で繰り返せるようになり、プロセス開発の効率化および迅速化に寄与します。
※7 ラマン散乱光のエネルギー変化(ラマンシフト)を横軸に、強度を縦軸に示したスペクトル(波形)で、物質の分子構造や組成を反映する。
*富士フイルム株式会社について
富士フイルム株式会社は、富士フイルムグループにおける主要な事業会社の一つです。富士フイルムグループは、独自のコア技術と豊富な知識を活かし、ヘルスケア、エレクトロニクス、ビジネスイノベーション、イメージングの4つの事業セグメントを通じて世界中に革新的な製品とサービスを提供しています。全世界で70,000人以上の従業員が働くグローバル企業として、「地球上の笑顔の回数を増やしていく。」というグループパーパスのもと、社会課題への対応など、製品、サービス、事業活動を通じて社会にポジティブな影響を生み出しています。
富士フイルムの詳細や最新情報については、公式サイト(
www.fujifilmholdings.com) をご覧ください。また、当社が取り組むサステナビリティとCSR計画「Sustainable Value Plan2030」についての詳細は
こちらをご参照ください。
*株式会社堀場製作所について
HORIBAグループは1945年に京都で創業し、社是「おもしろおかしく(Joy and Fun)」に代表されるユニークな企業風土のもと、約30の国と地域にグループ会社を持ち、グローバルにビジネスを展開する分析・計測システムのリーディングカンパニーです。
ビジョン「Joy and Fun for All おもしろおかしくをあらゆる生命へ」を掲げ、人々の暮らしを支える 「エネルギー・環境」、「バイオ・ヘルスケア」、「先端材料・半導体」の3分野に向けて、オートメーションやデータマネジメント、データサイエンス、サンプルハンドリングなど、先進的なソリューションを提供しています。
HORIBAグループの詳細や最新情報については、公式サイト(
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プレスリリース提供:PR TIMES
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