和牛を「美味しい」と感じると生理的にリラックスする~和牛(黒毛和種)の肉の味覚刺激による心理・生理反応の関係を検証~
国立大学法人千葉大学

千葉大学国際高等研究基幹/環境健康フィールド科学センターの池井晴美准教授と姫路大学の平野秀樹教授(研究当時)らの研究グループは、日本を代表する和牛(黒毛和種)の肉を食べたときに生じる心理的な印象と生理反応の関係解明に取り組みました。その結果、和牛を食べたときに「美味しい」と感じるほど、リラックス時に高まる副交感神経活動が上昇し、覚醒時に高まる交感神経活動が低下することが明らかとなりました。和牛肉による味覚刺激について、人の心理・生理反応の関係を示した研究はこれまでなく、本研究は、食品の美味しさによる心身の反応とのつながりを科学的に捉える新たな知見として期待されます。
本研究成果は、2026年7月1日に国際科学誌 Scientific Reportsに掲載されました。
(論文はこちら:10.1038/s41598-026-48123-z)
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図1:リラックス時に高まる副交感神経活動と主観的美味しさ感の相関 図2:覚醒・ストレス時に高まる交感神経活動と主観的美味しさ感の相関
■研究の背景
和牛は、日本の代表的な食品の一つであり、海外でも人気を集めています。一方、牛肉の美味しさの評価は、これまで主に質問紙や成分分析に基づいて行われており、「美味しい」と感じた時に生じる生体の変化は、明らかにされていませんでした。そこで研究グループは、日本の代表的な和牛(黒毛和種)の肉を食べた時の主観的な印象と自律神経活動(注1)等の生理反応の相関関係を調べました。
■研究成果のポイント
20代の健康な日本人大学生・大学院生の男女49名を対象に、和牛(兵庫県産の黒毛和種)のヒレ肉・シャトーブリアンと、対照として同量の大豆由来代替肉を食べてもらいました。条件をそろえるため、いずれも味付けをせず、摂取量を4gとしました。その結果、和牛は代替肉に比べて、主観的な美味しさ感やリラックス感を高めることが示されました。さらに和牛をより美味しいと感じた人ほど、副交感神経活動が高く(図1)、交感神経活動が低い(図2)という有意な相関関係(P値(注2)0.05未満)が認められました。関連の強さを示すRho値(注3)でも中程度の相関が示されており、和牛を「美味しい」と感じると生理的にリラックスすることが明らかになりました。
■今後の展望(研究者コメント)
本研究は、和牛の味覚刺激が人の生理反応に及ぼす影響を調べた研究です。今後は、日常での牛肉摂取を想定した実験を行い、美味しさが人の心身にもたらす効果を明らかにします。また、和牛を食べたときの反応に大きな個人差があることも明らかになったため、個人差の観点からも研究を進めます。
■用語解説
注1)自律神経活動:呼吸や心拍などの体の働きを無意識に調整する神経の働き。リラックス時に高まる「副交感神経活動」と緊張やストレス時に高まる「交感神経活動」の2つの系からなる。本研究では、心拍のゆらぎ(変動)からこれらの働きを評価した。図1の lnHF値は副交感神経活動を表し、値が高いほどリラックス状態にあることを示す。図2の ln(LF/HF)値は交感神経活動を表し、値が高いほど覚醒・ストレス状態にあることを示す。
注2)P値(有意確率):統計分析において「その結果が単なる偶然によって生じた確率」を示す。本研究では0.05(5%)未満を「統計的に有意」とし、偶然ではなく明確な相関があるとの判断基準とした。
注3)Rho(ロー)値:「スピアマンの順位相関係数」と呼ばれ、2つの項目の関連性の強さと方向(一方が増えればもう一方も増える等)を示す。本研究の値は、両者に「中程度の関連」があることを裏付けている。
■論文情報
タイトル:Physiological and Psychological Effects of Wagyu Beef Taste Stimulation: A Randomized Crossover Trial
著者:Harumi Ikei, Hyunju Jo, Hideki Hirano, and Yoshifumi Miyazaki
雑誌名:Scientific Reports
DOI:10.1038/s41598-026-48123-z
プレスリリース提供:PR TIMES
記事提供:PRTimes