日立、学術実証から産業応用への展開の加速に向け、インテル株式会社および産業技術総合研究所との協力によりシリコン量子コンピュータの研究開発を開始
株式会社 日立製作所
NEDO公募「社会課題解決に向けた量子コンピュータ次世代機開発・実証の加速」に採択
株式会社日立製作所(以下、日立)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)が公募した「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」のテーマ「社会課題解決に向けた量子コンピュータ次世代機開発・実証の加速」に実施予定先として採択されました。
本事業は、Intel Corporationの日本法人であるインテル株式会社(以下、インテル)との協力により共同提案したものです。日立は、本提案を進める過程でIntel Corporationと包括的な戦略的協業を公表しており*1、本採択を受け、国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)との共同研究を通じて本事業を推進します。実施期間は2029年3月までを予定しています。
日立は、半導体量産プロセスを前提とした量子ビットチップの設計・製造・実装に関する基盤技術の確立を進めるとともに、実用的な量子計算の実現に向けて、量産化を見据えた大規模かつ高信頼なシリコン量子コンピュータの研究開発を加速し、社会課題の解決を支える次世代の計算基盤の構築および新しいソリューションの創出、社会実装をめざします。
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日立とIntel、主要産業領域におけるAX(AIトランスフォーメーション)加速に向けた戦略的協業を発表:2026年6月5日
■背景
従来のコンピュータでは解決が難しい社会課題への対応に向けて、量子コンピュータへの期待が高まっています。実社会で明確な価値を発揮するには、ノイズによる誤りを訂正できる「誤り耐性型量子コンピュータ」の実現が必要であり、そのためには100万規模の量子ビットを集積する必要があります。シリコン量子コンピュータは、既存の半導体製造技術を活用できることから、大規模化に適した方式として期待されています。今後の実用化に向けては、研究段階から量産・産業化段階への円滑な橋渡しや、デバイスの性能ばらつきへの対応など、製造・実装・運用を一体で捉えた課題解決が求められています。
日立は、内閣府が主導するムーンショット型研究開発事業(目標6)においても研究開発を強力に推進しています*2。また、国立研究開発法人理化学研究所(以下、理研)や、ナノエレクトロニクスやデジタル技術の世界的な研究イノベーション・ハブであるimecなどの研究機関と連携し*3、量子ビットを長時間安定して動作させる制御技術*4などの基礎技術の成果を重ねています。本事業は、こうした学術的成果を実用化・産業応用へつなげるための取り組みです。日立は、今後も、チップ設計から高密度実装、クラウド運用までを一体で進める日立独自のアプローチのもと、これらの産官学の知見を結集し、大規模シリコン量子コンピュータの早期実現とそれによる新しいソリューションの創出、社会実装をめざします。
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日立、JSTムーンショット型研究開発事業 目標6 「2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現」第2期の研究プロジェクトに参画:2026年3月3日
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シリコン量子コンピュータの実用化に向けた研究開発を加速 - 研究開発:2025年10月2日
*4
ノイズの多い環境でも安定動作する量子ビットの高精度制御技術を実証 - 研究開発:2026年2月20日
■採択された本事業について
本事業では、量産プロセスへの展開を見据えた量子デバイス製造およびシステム設計基盤の確立に向けて、量子ビットチップの設計、3D実装、クラウド運用までを一体で進めます。これにより、将来の大規模かつ高信頼なシリコン量子コンピュータの実現に必要となる、設計・製造・運用基盤の構築をめざします。主な開発項目は以下のとおりです。
1. 産業品質100量子ビット・シリコン量子コンピュータ向け量子ビットチップ設計およびパッケージング技術開発
日立は、インテルと連携し量子ビットを安定して動作させるためのチップ構造を設計します。あわせて、インテルの18Aプロセス技術*5に基づいた量子デバイス製造のプロセスを適用することにより、研究・試作段階における大きな課題であったデバイスごとの性能ばらつきの克服を目的とした開発を進めます。さらに、将来の誤り訂正の実装を見据え、周辺回路を含むチップ全体の設計を進めます。また、量子ビットチップを極低温の環境で安定して動作させるため、チップを搭載する部品の設計や、配線数を抑える制御回路の開発にも取り組みます。これにより、日立は100量子ビット以上を搭載するチップ全体の設計と実装に必要な基盤技術の確立をめざします。
*5 18Aプロセス技術: リンクをご覧ください
https://www.intel.com/content/www/us/en/foundry/process/18a.html
2. 産業品質100量子ビット・シリコン量子コンピュータ向けプロセスデザインキット(PDK)の開発
インテルが開発する量子ビットチップの設計に必要なPDK*6を活用することによって、日立は実際の製造条件を踏まえながら、量産を見据えたチップ設計を進めることが可能になります。さらにインテルは、日立による設計を支援するとともに、将来の量産移行を見据えた設計環境の整備を進めます。
*6 プロセスデザインキット(PDK): 半導体チップの設計に必要な、製造条件や設計上のルールをまとめたツール群
3. 1,000量子ビット・シリコン量子コンピュータ向け3D実装技術開発
日立は、量子ビット数の増加に伴って生じる配線や実装面積の課題に対応するため、極低温環境で使う量子コンピュータ向けの高密度な実装技術を開発します。チップ同士や部品を狭い間隔で接続する技術を評価しながら、多くの量子ビットを効率よく実装できる方法の確立を進めます。これにより、将来の1,000量子ビット級システムの実現に向けた基盤づくりを進めます。
4. シリコン量子コンピュータのクラウド展開向けシステム開発
日立と産総研は、シリコン量子コンピュータの実験環境に対応したクラウドシステムを開発し、産総研量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(以下、G-QuAT)を通じた公開をめざします。これにより、外部の研究者や技術者も量子ビットチップや制御装置の実験環境を利用できるようになり、研究開発の効率向上が期待されます。あわせて、幅広い人材が参画できる開発環境を整えることで、オープンな開発エコシステムの形成につなげます。
株式会社日立製作所 執行役常務 CTO 兼 研究開発グループ長 鮫嶋 茂稔のコメント
AIの進展により、社会や産業を支える計算需要は急速に拡大しています。一方で、データセンターをはじめとする計算基盤の電力消費増大や、創薬・材料開発、エネルギーシステム、物流・サプライチェーンの最適化など、従来型コンピューティングだけでは対応が難しい課題も顕在化しています。日立は、量子コンピュータを、こうした「計算そのもの」の限界を突破し、将来の社会インフラや産業システムを支える戦略技術と位置づけています。今回、NEDO事業に実施予定先として採択され、インテル、産総研とともに研究開発を開始できることを大変嬉しく思います。日立は、グローバルな産官学の集合知を結集し、将来的なFTQC(誤り耐性量子計算)の早期実現に貢献するとともに、日本発の大規模量子コンピュータの実現、新規市場の開拓、エコシステムの構築を通じて、Lumadaを中核とする日立のデジタル事業のさらなる発展につなげてまいります。
インテル株式会社 代表取締役社長 大野 誠氏のコメント
量子コンピューティングは、従来のコンピューティングでは解決できない科学的および産業的な課題の解決に、計り知れない可能性を秘めています。その実現のためには、全く新しいコンピューティングモデルに対応したチップ、製造プロセス、システム技術が必要となります。今回の協業を通じて、インテルと日立は、インテルの高度な半導体プロセスおよび設計に関する専門知識と、日立の量子研究開発能力の連携により、シリコン量子コンピューティングを研究段階から大規模な産業応用へと移行させるために必要な、基盤となるチップ設計、製造、パッケージング技術の確立を支援します。
国立研究開発法人産業技術総合研究所
量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター 副センター長 堀部雅弘氏のコメント
産総研G-QuATは、量子デバイスの評価機能や、量子コンピュータとスーパーコンピュータの融合計算基盤の実証環境を備えています。これらの機能を日立とインテルの連携事業のもとで活用し、シリコン量子コンピュータの研究開発からクラウドを通じた実験環境の提供まで、包括的に関与できることを大変嬉しく思います。シリコン量子コンピュータという産総研G-QuATにとっての新たな取り組みを起点として、エコシステムの形成・拡大が加速するものと確信しており、引き続き、量子技術による市場形成に貢献してまいります。
■今後の展望
日立は、本事業で開発する量子ビットチップ設計、実装、クラウド運用の基盤技術をもとに、2027年度までにクラウド公開を行い、その後の段階的なサービス展開をめざします。あわせて、実用化に向けた重要なマイルストーンとして、2028年度に100量子ビット、2030年度に1,000量子ビット規模の、量子誤り訂正符号を実装したシリコン量子コンピュータ試作機の実現に取り組みます。今後も、インテルや産総研をはじめとする協力者との連携を通じて研究開発を加速します。さらに日立は、本成果を通じてLumadaの進化を支え、従来の計算基盤では対応が難しい社会課題の解決に貢献することで、産業や社会インフラの高度化と持続可能な社会の実現をめざします。
日立製作所について
日立は、IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を通じて、社会インフラをデジタルで革新し続けるグローバルリーダーをめざし、環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献します。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターに加え、新たな成長事業を創出する戦略SIBビジネスユニットの事業体制でグローバルに事業を展開し、Lumadaをコアとしてデータから価値を創出することで、お客さまと社会の課題を解決します。2025年度(2026年3月期)売上収益は10兆5,867億円、2026年3月末時点で連結子会社は606社、全世界で約29万人の従業員を擁しています。詳しくは、
www.hitachi.com/ja-jp/をご覧ください。
お問い合わせ先
株式会社日立製作所
研究開発グループ
問い合わせフォーム:
https://www8.hitachi.co.jp/inquiry/hqrd/news/jp/form.jspプレスリリース提供:PR TIMES
記事提供:PRTimes