使用後に肥料へ変換できるプラスチックの“柔らかさ”を自在に制御~ ポリマーと可塑剤の両方を肥料化できる循環型プラスチックを開発 ~
国立大学法人千葉大学

千葉大学大学院融合理工学府博士前期課程 藤又俊介氏(研究当時)、同大大学院工学研究院 青木大輔 准教授(同大園芸学研究院附属宇宙園芸研究センター兼任)、谷口竜王 教授らの研究グループは、東京大学 神谷岳洋 准教授、東北大学 西田瑞彦 教授らと共同で、使用後に肥料へ変換可能でありながら、柔軟性も自在に制御できる循環型プラスチックシステムを開発しました(図)。研究グループはこれまでに、糖由来化合物イソソルビド(ISB)(注1)からなるポリカーボネート(PIC)(注2)がアンモニア(NH3)により分解され、その生成物を肥料として利用できることを報告しています。本研究では、新たにイソソルビド由来可塑剤(注3)を開発することでPICの柔軟性や加工性を自在に制御できることを実証しました。さらに、ポリマーと可塑剤の双方を肥料成分へ変換できることに加え、分解生成物が植物成長を促進することも確認しました。本成果は、使用中は機能材料として利用し、使用後は肥料へ変換する新しい資源循環型プラスチックの実現に貢献するものです。
本研究成果は、2026年8月18日に学術誌Scientific Reportsにオンライン掲載されました。
(論文はこちら:10.1038/s41598-026-63638-1)
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図:本研究概要
■研究の背景
プラスチックは生活や産業を支える重要な材料ですが、使用後の廃棄物による環境負荷が課題となっています。本研究グループはこれまでに、植物由来化合物であるイソソルビドから合成されるPICが、使用後にアンモニア処理により分解され、肥料成分へ変換可能であることを報告してきました。一方で、PICは硬くもろい性質を有するため、柔軟性や加工性の向上が課題でした。そこで本研究では、イソソルビド由来の新規可塑剤を設計し、物性制御と資源循環を両立する循環型プラスチックシステムの実現を目指しました。
■研究成果のポイント
1.新たにイソソルビド由来可塑剤を開発:PICとの高い相溶性を有する可塑剤を設計・開発しました。
2.PICの柔らかさを自在に制御:イソソルビド由来可塑剤の添加により、PICの柔軟性や加工性を幅広く調整できることを明らかにしました。
3.アンモニア処理による肥料化と植物栽培を実証:ポリマーと可塑剤からなるブレンド材料をアンモニア処理により肥料成分へ変換し、分離・精製することなく得られた分解生成物を用いてモデル植物(注4)および食用野菜であるコマツナの栽培に成功しました。
■今後の展望
今後は、本技術をさまざまなイソソルビド系プラスチックへ展開するとともに、安全性や環境負荷評価を進めることで、フィルムや包装材などの実用材料への応用が期待されます。
■用語解説
注1)イソソルビド(ISB):グルコース(ブドウ糖)から製造される植物由来の化合物。高い剛直性を有することからプラスチック原料として利用されており、石油資源への依存低減に貢献するバイオマス由来化学品として注目されている。
注2)ポリカーボネート(PIC):イソソルビドから合成されるバイオベースポリカーボネート。透明性や耐熱性に優れ、本研究では使用後にアンモニア処理することで、肥料成分として利用可能なイソソルビドと尿素へ変換できる循環型プラスチックとして用いた。
注3)可塑剤:プラスチックに添加し、材料を柔らかく加工しやすくする添加剤。可塑剤として機能するためには、ポリマーと良好に混ざり合うことが重要である。身近な例として、ポリ塩化ビニル(PVC)は可塑剤を少量添加すると水道管などの硬質材料、多量に添加すると消しゴムやホースなどの軟質材料として利用される。
注4)モデル植物:植物の成長や生理機能を調べるために研究で広く用いられる植物。生育が早く取り扱いやすいため、さまざまな植物研究の基準となる。本研究では、モデル植物にシロイヌナズナを用いた。
■論文情報
タイトル:Plastics to fertilizer: a polymer system based on isosorbide as a monomer, plasticizer, and fertilizer
著 者:Shunsuke Fujimata, Yoshiki Tokonami, Raj Kishan Agrahari, Toyokazu Tsutsuba, Kazuaki Rikiyama, Norio Tomotsu, Tatsuo Taniguchi, Takehiro Kamiya,* Mizuhiko Nishida,* and Daisuke Aoki*
雑誌名:Scientific Reports
DOI:10.1038/s41598-026-63638-1
■研究プロジェクトについて
本研究は、以下の事業の支援を受けて行われました。
・科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST
研究領域:「[分解と安定化] 分解・劣化・安定化の精密材料科学」
(研究総括:高原 淳 九州大学 ネガティブエミッションテクノロジー研究センター 特任教授)
研究課題名:「カーボネート結合に基づく高分子材料循環システムの構築」(JPMJCR22L1)
・科学技術振興機構(JST) 大学発新産業創出基金事業 プロジェクト推進型 起業実証支援
研究課題名:「モノマーと肥料を与えるポリカーボネートのケミカルリサイクルの事業化」(JPMJSF2302)
(研究代表者:青木 大輔 千葉大学 大学院工学研究院 准教授)
プレスリリース提供:PR TIMES
記事提供:PRTimes