1億円を超えると売れにくい? 首都圏中古マンションで進む価格帯別の二極化
マンションリサーチ株式会社

【調査概要】
調査期間:2023年1月~2026年7月
調査機関:マンションリサーチ株式会社
調査対象:首都圏中古マンション
サンプル事例数:481,019事例
調査方法:公開されている中古マンションの売出情報を収集し、統計処理を施して集計しました。
東日本不動産流通機構が公表しているデータによると、首都圏の中古マンション市場では、直近の動きとして「成約件数は4ヶ月連続で減少し、成約平方メートル 単価は3ヶ月連続で下落」という状況が見られています。これだけを見ると、これまで上昇を続けてきた首都圏中古マンション市場にも、いよいよ価格調整の兆しが出てきたように感じるかもしれません。
実際、これまでの中古マンション市場では、成約平方メートル 単価が長期間にわたって上昇を続けてきました。そのため、成約件数の減少と成約平方メートル 単価の下落が同時に起きると、「市場全体の勢いが弱くなっている」「中古マンション価格が下落局面に入った」と受け止められやすくなります。
しかし、公開されているデータをもう少し細かく見ていくと、単純に「首都圏の中古マンション価格が下落している」と判断するのは、少し早いのではないかと思います。
[画像1:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/13438/237/13438-237-ee0fc94ad6db9162b7287d90a4ac2f15-1920x1080.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
出典:東日本不動産流通機構
東日本不動産流通機構の公開データを確認すると、直近の市場では新規登録物件の平方メートル 単価は逓減する動きが見られる一方、成約平方メートル 単価については大きく下落しているというより、横ばいに近い動きとなっています。
つまり、売り出される物件については価格を抑える動きが出始めているものの、実際に売買が成立している物件の価格については、まだ一定の水準を維持していると考えることができます。
この違いは非常に重要です。
市場を見る際には「売り出し価格」と「実際の成約価格」を分けて考える必要があります。売主が価格を下げて市場に出すケースが増えても、実際に成約する価格が大きく下がっていなければ、それは市場全体の価格下落というより、売主と買主の価格認識の調整が進んでいる段階とも考えられます。
そこで、今回特に注目したいのが「在庫平方メートル 単価」です。
在庫平方メートル 単価の推移を見ると、成約平方メートル 単価とは異なる動きが確認できます。
成約平方メートル 単価が横ばいから下落傾向にある一方で、在庫平方メートル 単価は一貫して上昇を続けています。
これは一見すると非常に不思議な現象です。
通常、価格が下落しているのであれば、市場に残っている在庫の価格も下がっていくと考えがちです。しかし実際には、在庫として残っている物件の平方メートル 単価が上昇している。
この背景を理解するためには、「どの価格帯の物件が在庫として残っているのか」を見る必要があります。
つまり、単純な平均価格や平均平方メートル 単価だけではなく、在庫の中身を確認することが重要なのです。
以下のグラフでは、首都圏中古マンションの価格帯別の在庫数の推移を示しています。
ここで非常に興味深い動きが確認できます。
[画像2:
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出典:福嶋総研
まず、「5億円超」の物件については、在庫が高止まりしています。非常に高額なマンションについては、売り出されているものの、短期間で買い手が見つかりにくく、市場に滞留している状況が続いていると考えられます。
[画像3:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/13438/237/13438-237-47d41f0ef7ff5c6506722c32a76f14db-1920x1080.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
出典:福嶋総研
[画像4:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/13438/237/13438-237-d91d3f239698c4d34999097a78ffd27c-1920x1080.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
出典:福嶋総研
さらに、「1億円~2億円」と「2億円~5億円」の価格帯についても、いずれも在庫が増加傾向にあります。
つまり、1億円を超える価格帯では、価格が高くなるほど売却までの時間が長期化しやすくなり、結果として市場に残る物件が増えている可能性があります。
一方、これとは対照的なのが「1億円未満」の価格帯です。
[画像5:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/13438/237/13438-237-71862c851a44ab4291a1779e9232209e-1920x1080.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
出典:福嶋総研
1億円未満の中古マンションについては、在庫数が明確に減少傾向を示しています。
この違いから、現在の首都圏中古マンション市場では、単純に「中古マンションが売れなくなっている」のではなく、「価格帯によって売れ行きが大きく異なっている」と見る必要があります。
ここから見えてくるのが、現在の中古マンション市場における「1億円」という価格の壁です。
1億円を超える高額物件では在庫が積み上がっている一方、1億円未満では在庫が減少している。
もちろん、1億円を境に市場が完全に二分されているわけではありません。しかし、現在の市場環境を考えるうえで、1億円という価格帯が一つの大きな分岐点になっていることは間違いありません。
特に重要なのは、平方メートル 単価の高い物件ほど、在庫として残った場合に全体の在庫平方メートル 単価を押し上げるという点です。
例えば、1億円未満の物件が次々と成約して市場から消えていく一方で、1億円を超える高額物件が売れ残って市場に残り続ければ、在庫全体に占める高価格帯物件の割合が高くなります。
その結果、実際には成約価格が下落傾向にあったとしても、「現在売りに出されている物件」の平均平方メートル 単価は上昇することがあります。
これが、現在の「成約平方メートル 単価」と「在庫平方メートル 単価」の動きが異なっている一つの理由と考えられます。
では、なぜ1億円を超える中古マンションが売れにくくなっているのでしょうか。
大きな要因の一つとして考えられるのが、住宅ローン金利の上昇です。
中古マンション市場の中心的な購入層である実需層にとって、住宅ローン金利の上昇は単純に「金利が少し上がった」という話ではありません。金利が上昇すれば、同じ年収でも借りられる金額や、無理なく返済できる借入額は変わってきます。
特に1億円を超える物件では、購入者が必要とする借入額も大きくなります。そのため、金利上昇による返済負担の増加が購入判断に与える影響も大きくなります。
これまで低金利を前提として形成されてきた住宅価格に対して、購入者側の資金調達環境が変化している。その結果として、高価格帯から徐々に購入者が減少している可能性があります。
もう一つ重要なのが、これまでの急激なマンション価格の上昇です。
首都圏では長期間にわたって中古マンション価格が上昇してきました。その結果、以前であれば購入できた価格帯の物件が、現在では手の届きにくい価格になっています。
そこで購入者が取る行動が、「物件を買わない」という選択だけとは限りません。
例えば、都心の希望エリアから少し離れたエリアへ変更する、駅からの距離を調整する、築年数を古くする、専有面積を小さくする、あるいはタワーマンションなどの人気物件から一般的なマンションへ変更するなど、条件の一部を調整することで購入可能な価格帯に収めようとする動きが考えられます。
つまり、購入者が市場から完全に退出しているのではなく、「購入する物件のスペックを調整している」ということです。
このように考えると、現在の首都圏中古マンション市場を分析する際には、単純に「成約平方メートル 単価が下落した」という数字だけを見るのでは不十分です。
重要なのは、「どの価格帯の物件が売れていて、どの価格帯の物件が売れ残っているのか」という市場の構造です。
現在のデータを見る限り、1億円を超える高額物件では在庫が増加し、1億円未満では在庫が減少している。この動きは、購入者が現在の価格水準と金利環境を踏まえ、購入可能な価格帯を改めて選び直していることを示している可能性があります。
したがって、今後の市場を見るうえでは「中古マンション価格は上がるのか、下がるのか」という二択ではなく、「どの価格帯で需給が緩み、どの価格帯で需要が維持されるのか」という視点がより重要になってくるでしょう。
今後、住宅ローン金利がさらに上昇した場合、この傾向が一段と強まる可能性があります。
特に1億円を超える物件については、価格そのものだけでなく、借入額や月々の返済額が購入者の意思決定に大きく影響するため、価格調整をしなければ売却が難しくなる物件も増えてくるかもしれません。
一方で、1億円未満の物件については、購入者がエリアや築年数、面積などを調整することで需要が維持される可能性があります。
つまり、これからの中古マンション市場では、「市場全体が下落する」というよりも、価格帯や物件スペックによって売れやすさが大きく分かれる、いわゆる二極化がさらに進む可能性があります。
現在の首都圏中古マンション市場を理解するうえで重要なのは、成約平方メートル 単価の下落だけを見て「中古マンション価格が下落局面に入った」と結論づけないことです。
成約件数の減少、成約平方メートル 単価の下落という表面的な数字の裏側では、高額物件の在庫増加と、1億円未満の物件の在庫減少という、非常に対照的な動きが起きています。
これは、購入者が価格上昇と金利上昇を受けて、購入そのものを諦めるのではなく、「買える価格帯に合わせて物件の条件を変える」という行動を取り始めている可能性を示しています。
今後の中古マンション市場を見る際には、平均価格や平方メートル 単価だけではなく、「どの価格帯の在庫が増えているのか」「どの価格帯の物件が実際に売れているのか」を確認することが重要です。
市場全体の数字だけを見ると「価格下落」に見える局面でも、その内側では価格帯ごとに全く異なる市場が動いている。現在の首都圏中古マンション市場は、まさにそのことを示しているのではないでしょうか。
[画像6:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/13438/237/13438-237-43b1a22e88f5033c1da95e9384ce9b83-1792x2400.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社
データ事業開発室
不動産データ分析責任者
福嶋総研
代表研究員
福嶋総研代表研究員。早稲田大学理工学部卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、
建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。また大手メディア・学術機関等にもデータ及び分析結果を提供する。
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【マンションリサーチ株式会社について】
マンションリサーチ株式会社では、 不動産売却一括査定サイトを運営しており、 2011年創業以来「日本全国の中古マンションをほぼ網羅した14万棟のマンションデータ」「約3億件の不動産売出事例データ」及び「不動産売却を志向するユーザー属性の分析データ」の収集してまいりました。 当社ではこれらのデータを基に集客支援・業務効率化支援及び不動産関連データ販売等を行っております。
会社名: マンションリサーチ株式会社
代表取締役社長: 山田力
所在地: 東京都千代田区神田美土代町5-2 第2日成ビル5階
設立年月日: 2011年4月
資本金 : 1億円
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