公共施設へのペロブスカイト太陽電池導入について検討の手順と留意点を体系化
株式会社日本総合研究所

~企画から維持管理まで、公的機関担当者向けの実務ガイドを発表~
株式会社日本総合研究所(本社:東京都品川区、代表取締役社長:内川淳、以下「日本総研」)は、自治体などの公的機関が公共施設へのペロブスカイト太陽電池の導入を検討する際に必要となる考え方や実務上の留意点をまとめたホワイトペーパー「公的機関担当者のためのペロブスカイト太陽電池導入推進ガイド」(以下「本レポート」)を作成しました。
ペロブスカイト太陽電池は、軽量性、柔軟性、透光性、意匠性などに優れ、従来型シリコン系太陽電池では設置が難しかった屋根、壁面、窓面などへの導入が期待されています。政府は2040年までに国内約20GWの導入を目標に掲げており、社会実装への関心も高まっている状況です。
脱炭素化や防災機能強化の観点から、自治体での導入も検討が始まりつつあります。また、自治体が先行的に活用することによって、主な原料を国内で賄えるペロブスカイト電池が産業として発展することにも注目が集まっています。ただし、実際に公共施設への導入を進めるには、技術や製品の理解だけでなく、施設の選定、庁内合意、発注、設計・施工、維持管理など、自治体特有の実務課題を解決することが必要です。
本レポートでは、ペロブスカイト太陽電池の技術的特徴や政策上の位置づけを整理した上で、自治体の導入検討を6段階に分け、各段階で確認すべき事項を示しています。また、自治体、設計事務所、施工事業者、メーカーなどへのヒアリングを踏まえ、実際の導入時に課題となりやすい論点と対応の方向性を整理しています。
本レポートは、以下からご覧になれます。
公的機関担当者のためのペロブスカイト太陽電池導入推進ガイド
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/pdf/company/release/2026/1007.pdf
■背景
軽量・柔軟なフィルム型から透光性や意匠性を備えたガラス型まで、多様な形態で展開できるペロブスカイト太陽電池は、日本発の次世代太陽電池として注目を集めています。従来型シリコン系太陽電池では活用が難しかった建物の壁面や耐荷重の小さい屋根などへの設置可能性も有しており、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた重要な技術として期待されています。また、主原料の一つであるヨウ素については、日本は世界第2位の生産国として世界生産量の約3割を占めています。国内資源を有効活用できる技術としてエネルギー安全保障の強化にも資することから、政府も開発・普及を積極的に支援しています。
自治体の間でも、公共施設の脱炭素化や災害時の電力確保を含む防災機能強化のための活用可能性が検討されるようになってきました。シリコン系太陽電池は重量などの制約から設置できない施設も少なくありませんが、ペロブスカイト太陽電池であれば軽量、薄型、透光性、意匠性などを担保でき、設置可能性が高まります。自治体がさまざまな施設で先行的に活用し、その効果や課題を検証しながら蓄積した知見を広く共有することは、脱炭素化や防災のためばかりではなく、地域住民・企業への普及やペロブスカイト太陽電池の発展にもつながると考えられます。
ただし、自治体が導入を検討する際には、施設条件や費用対効果、安全性を確認するとともに、複数部門による庁内調整、公共調達、建築・電気工事の責任分界、導入後の維持管理など、さまざまな実務上の論点に対応する必要があります。一方で、こうした一連の検討事項を自治体の実務に即して体系的に整理した資料は限られています。
そこで日本総研は、自治体がペロブスカイト太陽電池の導入可能性を適切に評価し、具体的な検討を進めるための実務ガイドとして、本レポートを取りまとめました。
■本レポートの要旨
本レポートでは、ペロブスカイト太陽電池を取り巻く技術・政策動向を整理するとともに、公共施設への導入を検討する担当者の視点から、導入に当たっての考え方や実務上の留意点を取りまとめました。技術的な特徴を整理した上で、「施設ごとの最適解の選び方」と「庁内横断での進め方」に焦点を当て、導入検討を6段階に体系化しています。技術解説にとどまらず、導入判断から維持管理までを一気通貫で扱う、公的機関担当者のための実践的な道しるべとなっています。
〇施設特性に応じた最適な太陽電池の選定フロー
ペロブスカイト太陽電池には、フィルム型やガラス型などの種類があり、それぞれ特徴や適地が大きく異なります。フィルム型は軽量・柔軟で、耐荷重の小さい屋根や曲面への設置に適しています。ガラス型は透光性のほか、形状や色柄の自由度が高い意匠性を備えており、建材一体型(BIPV)や後付け設置(BAPV)として活用することで、窓やファサードなどへの導入が期待されます。
図表1は、公共施設に太陽電池を導入する際に、施設の耐荷重、設置部位、意匠性、安全性、施工性および経済性を踏まえた最適な方式を選定するためのフロー図です。例えば、耐荷重に制約のある屋根や曲面では、フィルム型ペロブスカイト太陽電池を検討対象とします。一方、既存の太陽電池の置き換えでは、技術的な成熟度が高い従来型シリコン系太陽電池や、将来的により高い発電効率が見込まれるシリコン・タンデム型ペロブスカイト太陽電池を選定することなどが示されています。
また、新築時には、壁面・窓面などの部位で、ガラス型ペロブスカイト太陽電池やシリコン系BIPVを候補として検討することとしています。これらは、窓や外壁そのものを発電する部材に置き換えるものであるため、発電性能に加えて、耐風圧性、水密・気密性、防火性、安全性といった建材としての性能(建材性能)を満たすことが導入の前提となります。
(図表1)建築物・設置条件に応じた太陽電池の候補選定フロー)
[画像1:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/68011/217/68011-217-84358564d95c9ef01802dbf18b655acf-867x757.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
※ PSC=ペロブスカイト太陽電池、BIPV=建材一体型太陽電池
(出所:日本総研)
〇初期段階にあるペロブスカイト電池の発展を後押しする自治体の役割と意義を提起
日本発の技術であり、主原料ヨウ素の国内供給基盤を有するペロブスカイト太陽電池は、エネルギー安全保障や国内産業基盤強化の観点からも重要な選択肢です。しかし現在のところ、「需要が乏しいためコストが下がらず、コストが下がらないため需要も増えない」という初期市場特有の課題に直面しています。
本レポートでは、自治体がペロブスカイト太陽電池を先行的に活用することが、その社会実装や普及拡大に重要な役割を担うことが示されています。あわせて、公共施設への導入が、地域の脱炭素化や防災機能・レジリエンスの強化にとどまらず、地域産業へのノウハウ蓄積、民間普及を促すショーケースなど、多面的な価値を生み出すことを明らかにしています。
〇導入検討を「6段階」に体系化――「庁内横断の施設整備プロジェクト」へ再定義
図表2は、自治体によるペロブスカイト電池の導入検討を「企画・構想」「対象施設・方式の選定」「基本計画・庁内合意」「発注・設計」「施工」「運用・維持管理」の6段階に体系化し、各段階で確認すべき事項を具体的に整理したものです。
ペロブスカイト電池の導入には、環境部門、施設所管部門、営繕・建築部門、財政部門、契約部門など多くの部門が参画することになります。そのため単なる設備導入ではなく、運営・維持管理や将来の更新・撤去まで見据えた施設整備プロジェクトとして捉えることが必要です。各部門が脱炭素や施設価値向上といった共通の目標の下で企画・構想段階から連携して検討を進めることが、円滑な導入と継続的な運用の鍵となります。
(図表2)自治体における導入検討フロー(ペロブスカイト太陽電池(フィルム・ガラス型))
[画像2:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/68011/217/68011-217-cc88f22c4fec9ee1a4a10d71bcc9ef23-857x809.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
(出所:日本総研)
〇現場ヒアリングが明かす実務の壁――責任分界と維持管理を見据えた対応策を提示
本レポートは、自治体、設計事務所、施工事業者、メーカーなどへのヒアリングを踏まえ、実際の導入時に直面しやすい課題と対応の方向性を整理しています。技術そのもの以上に、関係者がどう役割を分担し、建築プロジェクトとして進めるかが成否を左右するとの指摘を踏まえ、次の論点を重要な勘所として提示しています。
・庁内連携のあり方
関係する各部局が目的意識を共有し、企画段階から便益と負担を共有する体制づくりが求められます。
・発注条件と責任分界の明確化
特定製品への過度な限定を避けた公平な要求水準を設定するとともに、建築(外装)工事と電気工事の境界や保証範囲を整理することが重要です。
・運用(O&M)と将来の出口設計
高所作業などを伴う日常点検から、将来的な部材交換・撤去・リサイクル費用までを見据え、ライフサイクル全体で計画することが求められます。
日本総研は、本レポートが地域の脱炭素化を担う自治体担当者の確実な一歩につながることを期待しています。
以上
■本件に関するお問い合わせ先
【報道関係者様】 広報部 山口 電話: 080-7154-5017
【一般のお客様】 リサーチ・コンサルティング部門 栗木 メール:kuriki.ryo@jri.co.jp
榎本 メール:enomoto.kyohei@jri.co.jp
プレスリリース提供:PR TIMES

記事提供:PRTimes