SHIRO & Co.、TOOL JAPAN 2026で「提案しないAI」を実証
株式会社SHIRO & Co.

29件の展示会商談を分析。人間が「提案」と一次判定した8件のうち、Customer to Proposalが初期段階で提案可能と判断したのは1件
株式会社SHIRO & Co.(本社:東京都、代表取締役:白子考介、以下 SHIRO & Co.)は、展示会「TOOL JAPAN 2026」の実運用環境において、名刺情報や断片的な会話メモをもとに、次に取るべき営業アクションを整理する営業意思決定支援システム「Customer to Proposal」の検証を実施しました。
今回の検証では、展示会で得られた商談記録を企業単位で整理し、29件の商談データを対象に、人間による一次判定とCustomer to Proposalによる再判定を比較しました。
人間による一次判定では、
- 提案:8件- 保留(強):12件- 保留(弱):8件- 提案しない:1件と分類されました。
その後、顧客の発言、企業の公開情報、営業側の仮説、未確認事項を分離してCustomer to Proposalで再判定したところ、初期段階で実際に「提案」まで進めると判断された案件は1件となりました。
特徴的だったのは、AIが大量の提案書を生成したことではありません。
人間が「提案できそうだ」と判断した案件に対しても、根拠が不足している場合には提案を急がず、追加確認が必要な案件としてHOLDしたことです。
さらに、一部のHOLD案件では確認資料を送付した後、顧客側からMOQ、価格、ロゴ対応、現地語パッケージ、見積依頼などの具体的な商業条件に関する返信が発生し、次の商談フェーズへ進む動きも確認されました。
SHIRO & Co.では今回の結果を、AIによる営業自動化ではなく、「今、どこまで提案してよいか」を見極める営業意思決定支援の実証と位置付けています。
人間は8件を「提案」と判断。Customer to Proposalでは1件に
展示会の営業現場では、企業規模、販路、役職、会話の雰囲気などから、「提案につながりそうだ」と判断することがあります。
今回の一次判定でも、29件のうち8件が「提案」と分類されました。
その中には、
- 「販売したい」- 「販売パートナーになりたい」- 「今月中に商談したい」といった明確な発言がある案件だけでなく、販売チャネルや取引先、海外販路などから営業機会が想定できる案件も含まれていました。
Customer to Proposalでは、こうした情報をそのまま購入意向や提案根拠として扱いません。
たとえば、企業が大規模な販売網を持っていることは公開情報として確認できます。しかし、それだけでは今回の製品を販売したいという意思を示したことにはなりません。
同様に、顧客が製品に関心を示していても、数量、対象市場、用途、商流、価格条件などが確認されていなければ、提案内容を確定するには情報が不足しています。
Customer to Proposalは、こうした境界を確認した結果、初期段階で提案可能と判断する案件を1件まで絞り込みました。
HOLDは「失注」ではない
今回の検証で重要だったのは、HOLDを「営業を止める判定」としなかったことです。
HOLDは、
「現時点では提案する根拠が足りない」
という状態を示します。
その代わりに、
- 何が確認できているか- 何がまだ分からないか- 次に何を聞くべきか- どの資料を送るべきか
を整理します。
実際に、初期段階ではHOLDとなった案件の一部に対して確認資料を送付したところ、顧客側から具体的な条件が返ってきました。
ある案件では、
- ロゴ対応の可否- 英語および現地語を併記したパッケージ対応- 推奨バッテリー仕様- MOQ- 価格
について具体的な確認が入りました。
別の案件では、海外販路を持つ企業から販促に向けた見積依頼があり、具体的な商談へ進みました。
つまり、HOLDは案件を止めたのではなく、提案へ進むために不足している情報を明らかにする役割を果たしました。
展示会では、会話は構造化されていない
展示会では、営業担当者が短時間に多数の来場者と会話します。
その場に残される情報は、
「EC」「小売」「輸出」「ユニフォーム」「OEM」「興味あり」「販売したい」
といった数語のメモであることも少なくありません。
すべての会話を詳細に構造化して記録することは、現実的ではありません。
Customer to Proposalでは、営業担当者の業務を大きく変えるのではなく、展示会後に、
名刺情報 + 会話メモ + 公開情報
を組み合わせて整理します。
そのうえで案件を、
- 提案に進める- 追加確認を優先する- まず関心や用途を確認する- 営業提案とは別のトラックで扱う
といった次のアクションへ振り分けます。
「顧客が言ったこと」と「営業側が考えたこと」を分けるCustomer to Proposalでは、情報を少なくとも次のように分離します。
CUSTOMER STATED
顧客が実際に話した内容
PUBLIC SOURCE
企業Webサイトなどから確認できる公開情報
PROPOSAL HYPOTHESIS
現時点で考えられる提案の方向性
VERIFY
提案前に確認する必要がある事項
たとえば、「海外に販売網がある」という事実が確認できても、それを「今回の製品を海外で販売したい」という顧客意向へ自動的に変換することはありません。
Customer to Proposalでは、事実と仮説の間に境界を設け、まだ確認できていないことを補完して提案を作るのではなく、次の質問へ変換します。
Customer to Proposalの裏側にあるDecision BoundaryCustomer to Proposalには、SHIRO & Co.が開発する「Decision Boundary」の考え方が組み込まれています。
Decision Boundaryは、AIが生成した答えをそのまま実行へ移すのではなく、その判断を現実のアクションに移してよいかを確認するレイヤーです。
基本となる判断は、
ALLOW
現時点の根拠で次へ進める
HOLD
追加情報や人間による確認が必要
DENY
現時点では使用・断定・実行すべきではない
です。
Customer to Proposalでは、この考え方をB2B営業に応用しています。
顧客が「安全性が高まりそうだ」と発言した場合、その発言自体は顧客の期待として保持できます。
しかし、それを製品の安全効果として事実化することはできません。
同様に、AIが魅力的な提案書を生成できたとしても、その提案に必要な顧客意向や条件が確認されていなければHOLDします。
AIは提案数を増やしたのではなく、提案してよいタイミングを絞った
今回の検証で得られた示唆は、「AIを使えば大量の提案書を作れる」ということではありません。
むしろ結果は逆でした。
人間による一次判定:提案8件
↓
Customer to Proposalによる再判定:初期提案1件
SHIRO & Co.では、Customer to Proposalの役割を、
「提案してよい案件」と「まだ聞くべき案件」を分けること
にあると考えています。
重要なのは提案数を最大化することではなく、現在持っているEvidenceに対して、どこまで営業活動を進めてよいかを判断することです。
そしてHOLD案件に新しい顧客情報が加われば、再判定して次の提案へ進めることができます。
ConversationからProposalまで
今回の実証では、展示会で得られる断片的な情報を、次の流れで扱いました。
Conversation → Evidence → Decision Boundary → Follow-up → Proposal
ConversationをすぐProposalへ変換するのではなく、その間にEvidenceとDecision Boundaryを置くことがCustomer to Proposalの特徴です。
これにより、
「会話した」「興味を持っていた」「大きな販路を持っている」
といった営業上のシグナルと、
「この条件で提案してよい」
という意思決定を分離します。
Signal to ProposalからCustomer to Proposalへ
SHIRO & Co.では、Customer to Proposalの前段として、市場・技術・企業動向などの外部シグナルから提案機会を探索する「Signal to Proposal」も開発しています。
展示会営業では、以下の流れを想定しています。
展示会前:Signal to Proposal
市場や企業の変化から提案機会を探索
展示会中:Conversation Capture
名刺と断片的な会話メモを取得
展示会後:Customer to Proposal
Evidenceを整理し、提案、HOLD、次の質問を判断
全体:Decision Boundary
どこまで事実として扱い、どこで止めるかを監査
SHIRO & Co.では、これらを個別のAI機能ではなく、イベント前後の営業意思決定をつなぐ一つのシステムとして検証しています。
「提案しないAI」が必要になる理由
生成AIの進化によって、メール、提案書、企業分析などを高速に生成することは容易になりつつあります。
一方、生成できることと、その内容を顧客に送ってよいことは同じではありません。
Customer to Proposalが扱うのは、その間にある境界です。
SHIRO & Co. 代表取締役の白子考介は、今回の実証について次のようにコメントしています。
AIに提案書を書かせること自体は、それほど難しいことではなくなっています。今回見たかったのは、その提案を今、本当に顧客へ出してよいのかという点です。
人間の一次判断では8件が提案候補でしたが、Evidenceを分けて確認すると、初期段階で提案できる案件は1件でした。ただしHOLDは失敗ではありません。何が分からないかが分かれば、次に聞くことが決まります。そして顧客から新しい情報が返れば、HOLDだった案件は次の提案へ移ることができます。AIがたくさん提案することより、まだ提案しない方がよいと判断できることの方が、企業で使うAIには重要だと考えています。
今後について
SHIRO & Co.は、今回のTOOL JAPAN 2026で得られた実運用結果をもとに、展示会後のフォロー業務におけるCustomer to Proposalの実運用上の有用性と適用条件を引き続き検証します。
また、HOLD案件が追加情報の取得後にどのように提案、商談、トライアルなどへ移行するかについても継続的に観察します。
今後は、出展企業、展示会主催者、イベント関連企業との連携も視野に、名刺・会話メモの整理から、確認事項の抽出、フォロー判断、メール、提案資料までをつなぐ仕組みとして展開可能性を検討していきます。
Customer to Proposalについて
Customer to Proposalは、短いB2B商談記録を構造化し、顧客発言、公開情報、営業仮説、未確認事項を分離したうえで、次回確認事項、フォローアップ、確認メモ、提案資料へ変換するSHIRO & Co.の営業意思決定支援システムです。
AIによる自動提案を目的とするのではなく、人間による最終確認を前提として、現在のEvidenceでどこまで営業アクションを進めてよいかを整理します。
SHIRO & Co.について
株式会社SHIRO & Co.は、AI、社会、企業活動の間に生まれる「意思決定の境界」をテーマに、Observatory、Decision Boundary、Signal to Proposal、Customer to Proposalなどの研究・プロトタイプ開発を行っています。社会・技術・環境の変化を観測し、
Observation → Structure → Interpretation → Form
というプロセスを通じて、観測を意思決定や実装へ接続する仕組みを設計しています。
Web:
https://www.shiroand.io
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Web:
https://www.shiroand.io
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