ビデオ通話を用いた「イメージの書き直し(ImRs)」がつらいフラッシュバックを改善―オンライン認知行動療法による新たなメンタルヘルス支援の可能性―
国立大学法人千葉大学

千葉大学病院 認知行動療法センターの清水栄司教授、阿久津実彩特任研究員(大学院医学研究院 認知行動生理学)らの研究チームは、つらい思い出のフラッシュバックや不快なイメージの想起などストレス体験に起因する持続的な侵入記憶に悩む適応反応症(適応障害)やうつ病の成人患者を対象に、オンライン(ビデオ通話を活用)で行う認知行動療法(心理療法の技法)「イメージの書き直し(Imagery Rescripting: ImRs)」(注1)の有効性と実施可能性を検証するランダム化比較試験を実施しました。
その結果、通常の治療に比べて、オンラインによるImRsを追加したグループでは、侵入記憶による心理的苦痛(IES-Rスコア)が大幅かつ統計学的に有意に軽減し、うつ症状や不安症状が改善されたことが確認されました。本研究成果により、オンラインで実施する認知行動療法の有効性が示されたことで、地理的制限や外出の困難さによる受診のハードルを下げ、より多くの人が心理支援を受けられる新たな選択肢となることが期待されます。
本研究成果は、2026年9月28日に国際学術誌 Journal of Psychiatric Researchに公開されました。
論文はこちら:
https://doi.org/10.1016/j.jpsychires.2026.09.033
■研究の背景
適応反応症(適応障害)やうつ病は、ストレスフルな出来事やその後に生じるつらい侵入記憶が症状の持続・悪化に関与していることが知られています。ImRsは、つらい侵入記憶を書き換える認知行動療法の技法として有効性が示されてきましたが、オンライン(ビデオ通話)による実施の効果検証は限られていました。そこで本研究では、適応反応症(適応障害)やうつ病と診断され、抗うつ薬等による治療を受けているにもかかわらず、つらい侵入記憶に苦しむ成人患者30名を対象に、6週間のオンラインによるImRsの有効性を検証するランダム化比較試験(RCT)を実施しました。
■研究成果のポイント
1. 侵入記憶による心理的苦痛の劇的な改善:
通常治療(TAU)にオンラインイメージの書き直し(ImRs)を加えた介入群(14 名)は、通常治療のみの群(16 名)と比較して、出来事インパクト尺度改訂版(IES-R)のスコアが大幅に低下しました(群間差 -20.59, p < 0.001, Cohenʼs d = -1.58)。介入群の50%が臨床的に意味のある改善基準を満たしました。
2. うつや不安症状の同時改善(診断を越えた効果):
侵入記憶による苦痛が和らぐのに伴い、抑うつ症状(BDI-II, PHQ-9)および不安症状(GAD-7)においても統計学的に有意な改善が見られました。
3. 高い安全性を実証:
オンラインでの実施期間中、有害事象(副作用や症状の悪化等)は一切観察されず、高い実現性と安全性が確認されました。
■研究者コメント
[画像:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/15177/1257/15177-1257-82af8097e4264cf031c68068d87c90e6-2160x2700.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
阿久津 実彩(認知行動療法センター /大学院医学研究院認知行動生理学 特任研究員)
本研究成果で、通院が困難な患者さんや遠方にお住まいの方に対しても、オンラインを介して効果的なイメージの書き直し(ImRs)を提供できる可能性が示されました。今後は、より大規模な多施設共同研究や長期的な効果の検証を進め、ストレスに関連するメンタルヘルス不調に対する標準的な遠隔心理療法の確立を目指したいと考えています。
■用語解説
注1)イメージの書き直し(Imagery Rescripting: ImRs):
治療者との安全な関係の中で、あえて過去 のトラウマや不快な記憶のイメージを目を閉じて思い出し、さらに、当時の自分のニーズにあわせ、やさしくかつ力強く助けてくれる現在の自分(あるいは治療者のような第三者)がその場面に介入することで、その強い感情を伴う記憶が持つ「恐怖」「無力感」「恥」などの意味合いを再評価し、「思いやり」や「安心」へと再構成する認知行動療法という心理療法の技法。
■論文情報
タイトル:Videoconference-Based Imagery Rescripting for Persistent Stressor-Related Intrusive Memories in Adults With Adjustment Disorder or Major Depressive Disorder: A Randomized Controlled Trial
著者:Misa Akutsu, Tokiko Yoshida, Rieko Takanashi, Yoko Hattori, Yuki Shiko, Eiji Shimizu
雑誌名:Journal of Psychiatric Research
DOI:
https://doi.org/10.1016/j.jpsychires.2026.09.033
■研究プロジェクトについて
本研究は、以下の支援によって実施されました。
・科学研究費助成事業 基盤研究(B) 課題番号:22H02994)
・臨床研究データベース(jRCT)研究番号 jRCT1032220619
プレスリリース提供:PR TIMES

記事提供:PRTimes