【青山学院大学】日本人の外向性は低下している ~言説として存在していた内向き化のエビデンス~
青山学院大学
東京大学人文社会系研究科心理学研究室の秋元涼之介大学院生(青山学院大学教育人間科学部心理学科卒業)と青山学院大学教育人間科学部心理学科の荻原祐二准教授は、2010年から2021年にかけて日本人の外向性(※1)が低下していることを明らかにした(図1)。
【ポイント】
●「内向き化」の実証:
これまで社会的な言説に留まっていた日本人の外向性の低下を、データを用いて実証的に示した。
●男女共通の傾向:
外向性の低下は男性・女性ともに同様に確認されており、変化の程度に性別による差異は見られなかった。
●世界的に特異な変容:
諸外国(アメリカ、中国、ドイツ、オランダ、スウェーデンなど)で報告されている「外向性の上昇」とは真逆の傾向であり、日本の外向性の低下は国際的には特異である可能性を示唆している。
【発表の概要】
これまで日本のメディアや社会評論では、日本人が以前よりも「内向き」になっているという言説が度々指摘されてきた。しかし、こうした言説を裏付ける客観的なデータは限られており、実証的な検討が求められていた。
そこで本研究では、日本人を対象に外向性を測定した過去の研究を網羅的に収集し、参加者の年齢や性別などの属性を統計的に統制した上で、12年間にわたる推移を分析した。
その結果、日本人の外向性は近年になるにつれて一貫して低下していることが明らかになった。この低下傾向は男女ともに同程度生じており、性別による差は見られなかった。また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響を考慮し、2019年までのデータに限定した分析も行ったが、同様の低下が確認された。これにより、長年ささやかれてきた日本人の「内向き化」という言説に対し、実証的根拠を提供することができた。
本研究成果は、2026年6月26日に国際学術誌「Personality Science」に掲載された。
図1 日本人の外向性の変化(2010~2021年)
【研究の背景】
日本のメディアや社会評論においては、日本人が以前よりも「内向き」になっていると度々指摘されてきた。例えば、若者の海外留学希望者数の減少や海外赴任への消極的な姿勢は、日本人の内向き化の象徴として、産業界や政策立案者の間で「国家的な懸念」として議論されてきた(Yonezawa, 2014)。
しかし、こうした「内向き化」について十分な実証的データは得られていなかった(Burgess, 2015; 菊地他, 2015)。そこで同研究では、人々の活動性や社会性を反映する指標であり、性格の5大因子(ビッグ・ファイブ)の一つである「外向性」に着目した。日本人の外向性を測定した先行研究を網羅的に収集し、その平均値の経時的変化を統計的に分析することで、日本人の性格変容の実態を検証した。また、その変化の程度に性別や年齢による差異があるかについても検討を行った。
【研究結果の詳細】
本研究ではまず、収集対象とする尺度を決定するため、2018年から2020年に外向性を測定した国内の先行研究を調査した。その結果、近年、最も頻繁に使用されている尺度が「日本語版Ten Item Personality Inventory(TIPI-J; 小塩他, 2012)」であることがわかった。そこで、この尺度を使用して外向性の平均値を報告している過去の研究をできるだけ多く収集し、性別や年齢などの属性を統計的に考慮した上で、年ごとの変化を分析した。
分析の結果、日本人の外向性は近年になるにつれて低下していることが明らかになった。この低下傾向の程度は男女間で差がなく、男性も女性も同程度に低下していることが確認された。十分なデータが集まらなかった高齢者層を除き、「学生のみ」および「成人(20~60歳)のみ」に分けた分析も行ったが、いずれの年齢層においても同様の低下傾向が見られた。
また、感染症の流行は人々の外向性を低下させることが先行研究で示されている(e.g., Mortensen et al., 2010)。そのため、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛が生じた2020年以降のデータを除き、2019年までのデータに限定した分析も実施した。その結果、パンデミックの影響を除外しても、近年になるにつれて外向性が低下しているという同様の傾向が見られた。これらの結果は、これまで言説として存在していた日本人の「内向き化」に実証的な裏付けを与えるものである。
さらに、アメリカ (Twenge, 2001)、中国 (Peng & Luo, 2021)、オランダ (Smits et al., 2011)、スウェーデン (Billstedt et al., 2013)などの海外で行われた先行研究では、外向性の平均値が上昇していることが報告されている。このような世界的な傾向とは対照的に外向性の低下が示された今回の結果は、日本人の性格特性が特異なパターンで変容していることを示唆する。
本研究の限界点として、分析対象となった変化の期間が12年間に限られていることが挙げられる。そのため、より長期的なスパンでの変化についてはさらなる検証が必要である。今後は、こうした外向性の低下がなぜ生じているのかを明らかにするとともに、この変化が社会にどのような影響を及ぼしているのか、多角的に検討していきたいと考えている。
Billstedt, E., Waern, M., Duberstein, P., Marlow, T., Hellström, T., Ostling, S., & Skoog, I. (2013). Secular changes in personality: study on 75-year-olds examined in 1976-1977 and 2005-2006. International Journal of Geriatric Psychiatry, 28(3), 298–304.
https://doi.org/10.1002/gps.3825
Burgess, C. (2015). To globalise or not to globalise? ‘Inward-looking youth’ as scapegoats for Japan’s failure to secure and cultivate ‘global human resources’. Globalisation, Societies and Education, 13(4), 487–507.
https://doi.org/10.1080/14767724.2014.966805
菊地千秋美・佐藤広夢・申知元・田崎勝也 (2015). 日本人学生は本当に「内向き」なのか─達成動機から観た日韓比較調査─ 多文化関係学, 12, 57–70.
https://doi.org/10.20657/jsmrejournal.12.0_57
Mortensen, C. R., Becker, D. V., Ackerman, J. M., Neuberg, S. L., & Kenrick, D. T. (2010). Infection breeds reticence: the effects of disease salience on self-perceptions of personality and behavioral avoidance tendencies. Psychological science,21(3),440–447.
https://doi.org/10.1177/0956797610361706
小塩真司・阿部晋吾・Cutrone, P. (2012). 日本語版Ten Item Personality Inventory(TIPI-J)作成の試み パーソナリティ研究, 21(1), 40–52.
https://doi.org/10.2132/personality.21.40
Peng, L., & Luo, S. (2021). Impact of social economic development on personality traits among Chinese college students: A cross-temporal meta-analysis, 2001–2016. Personality and Individual Differences, 171, 110461.
https://doi.org/10.1016/j.paid.2020.110461
Smits, I. A., Dolan, C. V., Vorst, H. C., Wicherts, J. M., & Timmerman, M. E. (2011). Cohort differences in Big Five personality factors over a period of 25 years. Journal of Personality and Social Psychology, 100(6), 1124–1138.
https://doi.org/10.1037/a0022874
Twenge, J. M. (2001). Birth cohort changes in extraversion: A cross-temporal meta analysis, 1966–1993. Personality and Individual Differences, 30(5), 735–748.
https://doi.org/10.1016/S0191-8869(00)00066-0
Yonezawa, A. (2014). Japan’s challenge of fostering “global human resources”: Policy debates and practices.Japan Labor Review, 11(2), 37–52.
http://www.jil.go.jp/english/JLR/documents/2014/JLR42_yonezawa.pdf
【発表者によるコメント】
コロナ禍以降、私を含め多くの友人が引きこもりがちになったように感じ、パンデミック前後での日本人の外向性の変化について関心を抱くようになりました。既存の議論を調査する中で、日本人の内向化に関する指摘がコロナ禍以前から存在していたものの、その実証的な知見が乏しいという課題に直面しました。
そこで新型コロナが蔓延する以前まで調査期間を拡大して研究を行ったところ、日本人の外向性が年々低下しているという事実が明らかになりました。さらに、この外向性の低下は、諸外国で報告されている外向性の上昇とは真逆の動きであり、注目すべき現象であると考えています。今後は、日本人の外向性がなぜ低下しているのか、また外向性の低下が社会にどのような影響を及ぼしているのかについて検討し、日本の文化変容の理解に貢献したいと考えています。(秋元)
【用語】
*1 外向性
自分の関心やエネルギーを、自身の内面よりも「外の世界や人、物事」に向ける傾向(APA, 2018)のことです。現代の性格心理学で広く研究されている「ビッグ・ファイブ(性格の5大因子)」という理論を構成する、主要な5つの特性のひとつです。外向性が高い人は、社交的で活動的、快活に話し、自分の意見をはっきり伝えるといった特徴があります。
American Psychological Association. (2018). Extraversion. In APA Dictionary of Psychology. Retrieved February 16, 2025, from
https://dictionary.apa.org/extraversion
【論文情報】
雑誌名: Personality Science
論文タイトル: Decline of Extraversion in Japan: A Cross-Temporal Meta-Analysis
著者: Ryonosuke Akimoto, Yuji Ogihara
DOI: 10.1177/27000710261452522
論文リンク:
https://doi.org/10.1177/27000710261452522
掲載日: 2026年6月26日
※論文はオープンアクセスですので、どなたでもお読みいただけます。適切な方法に従っていれば、図表を掲載していただくことも可能です。
※本リリースにおいて用いられている図も、適切な方法に従っていれば、掲載していただくことが可能です。
※記事や番組等において紹介していただく際には、論文情報の説明や論文へのリンクを可能な範囲で掲載していただくことができますと大変幸いです。
【発表者】
●秋元涼之介
東京大学 人文社会系研究科 心理学研究室 修士課程
青山学院大学 教育人間科学部 心理学科卒業
ウェブサイト:
https://sites.google.com/g.ecc.u-tokyo.ac.jp/akimotoryonosuke/profile
●荻原祐二
青山学院大学 教育人間科学部 心理学科 准教授
ウェブサイト:
https://sites.google.com/site/yujiogiharaweb/home
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【お問い合わせ先】
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秋元涼之介(あきもとりょうのすけ:筆頭著者)
東京大学 人文社会系研究科 心理学研究室 修士課程
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https://sites.google.com/g.ecc.u-tokyo.ac.jp/akimotoryonosuke/profile
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