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ビタミンBの吸収・代謝には亜鉛栄養が重要

学校法人慈恵大学

概要
 ビタミンB1(VB1)、B2(VB2)、およびB6(VB6)(以下ビタミンBと表記)は、細胞内で様々な生体反応に関与する重要な必須微量栄養素です。ビタミンBが活性を有するには、リン酸エステルまたはヌクレオチドの形(以下、リン酸エステル体)である必要がありますが、リン酸エステル体のままでは細胞膜を通過できません。そこで、ビタミンBは、膜輸送される前に一旦リン酸エステルが加水分解され、細胞内に取り込まれた後に再びリン酸エステル化されて、体内で利用されます。これまでに、リン酸エステル加水分解過程に亜鉛依存性酵素が関与していることが示唆されていましたが、正確な作用機序は明らかにされていませんでした。今回、神戸大朋 京都大学大学院生命科学研究科准教授、湯浅花 同修士課程学生(研究当時)、西野勝俊 同助教(現:東京工科大学講師)、永尾雅哉 同教授、木戸尊將 東京慈恵会医科大学講師、須賀万智 同教授、福渡努 滋賀県立大学教授らの研究チームは、培養細胞とラットを用いて、ビタミンBのリン酸エステル加水分解に4つの亜鉛依存性酵素が重要な役割を果たすこと、さらに、この加水分解活性が亜鉛栄養状態によって大きく影響されることを明らかにしました。これは、ビタミンB代謝に亜鉛が重要であることを明確に示した成果になります。本研究成果は、2024年9月16日に国際学術誌「The FASEB Journal」にオンライン掲載されます。

1.背景
ビタミンBは水溶性の補酵素であり、さまざまな酵素の補因子として生命維持に不可欠な役割を果たす必須微量栄養素です。例えば、ビタミンB1(VB1)は、ピルビン酸脱水素酵素やα-ケトグルタル酸脱水素酵素などの酵素とともに炭水化物代謝に関与します。ビタミンB2(VB2)はクエン酸回路、脂肪酸酸化、およびホモシステイン代謝に関与するいくつかの酸化還元酵素の補因子として機能しており、また、他のビタミンの代謝にも関与します。ビタミンB6(VB6)はアミノ酸、脂質、炭水化物の代謝を含む細胞代謝過程に関与しており、神経伝達物質の合成や1炭素代謝にとって重要です。このように、ビタミンBはさまざまな生体反応に関わっているため、不足すると健康が損なわれることがよく知られています。細胞内でビタミンBが生理機能を発揮するには、リン酸エステルまたはヌクレオチドといった活性体の形(以下、リン酸エステル体)である必要があり、VB1はチアミン二リン酸(TDP)、VB2はフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、VB6はピリドキサールリン酸(PLP)が主たる活性体となります。一方で、これらのリン酸エステル体が細胞内に取り込まれて利用されるためには、膜輸送される前にリン酸エステルが加水分解される必要があります[TDP→チアミン、FAD→リボフラビン(RF)、PLP→PL(ピリドキサル)]。この過程には亜鉛依存性酵素が関与していることが示唆されていましたが、これまで、その正確な作用機序は明らかにされていませんでした。4.研究プロジェクトについて
 本研究は、文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域研究「細胞内生命金属動態を制御するタンパク質メタレーション, JP19H05768」、日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究(B)「亜鉛欠乏が炎症性腸疾患の発症や増悪に関与する仕組みの解明とその予防・治療への戦略, JP19H02883」、基盤研究(B)「メラニン合成に必須となるチロシナーゼファミリーの配位金属識別機構とその生理的意義, JP22H02257」公益財団法人 飯島藤十郎記念食品科学振興財団、公益財団法人コーセーコスメトロジー研究財団、一般財団法人旗影会、公益財団法人ヤクルト・バイオサイエンス研究財団、公益財団法人内藤記念科学振興財団、公益財団法人日本応用酵素協会、一般財団法人杉山産業化学研究所の支援のもとに行なわれました。

<用語解説>
ENPP (Ectonucleotide pyrophosphatase/phosphodiesterase): アデノシン三リン酸(ATP)をAMPに加水分解する酵素。ヒトではENPP1からENPP7までの7種類のホモログが発現するが、ENPP1とENPP3がビタミンB2のリン酸エステルの加水分解に関わる。

CD73: AMPをアデノシンに加水分解する酵素(5’-nucleotidase)。細胞外で機能する5’-nucleotidaseは本酵素のみであり、ビタミンB2のリン酸エステルの加水分解に関わる。

ALP (Alkaline phosphatase): ATP、ADP、AMPの全てを加水分解できる酵素。ヒトではTNAP、IAP、PLAP、GCAPの4種類のアイソザイムが存在し、ビタミンB1、B2、B6のリン酸エステルの加水分解に関わる。

<研究者のコメント>
 ヒト体内には、500種類を超える亜鉛依存性酵素が働いていると考えられています。これらの酵素は亜鉛欠乏時に一様に活性が低下するのではなく、活性が低下しやすい酵素としにくい酵素に分類できることがわかってきています。今回見出したALP、CD73、ENPP1、ENPP3は、亜鉛欠乏時に最も活性が低下しやすい酵素ですので、これら4つの酵素が関わるビタミンB代謝のような代謝系が亜鉛欠乏症の多様な症例に関わることが予想されます。今後も、ビタミンとミネラルという重要な生理活性物質を相互作用についての詳細を明らかにして、健康維持・増進に役立つ知見を提示したいと考えています。

<論文タイトルと著者>
タイトル Rate of hydrolysis of the phosphate esters of B vitamins is reduced by zinc deficiency: In vitro and in vivo(ビタミンBのリン酸エステルの加水分解速度は、亜鉛欠乏により低下する:In vitroとin vivoでの研究)
著  者 Hana Yuasa, Kiyoshi Miyazaki, Takamasa Kido, Katsutoshi Nishino, Miku Shiotsu, Tsutomu Fukuwatari, Machi Suka, Masaya Nagao, and Taiho Kambe
掲 載 誌 The FASEB Journal
DOI 10.1096/fj.202401207R


<研究に関するお問い合わせ先>
神戸大朋(かんべ たいほう)
生命科学研究科・准教授
TEL:075-753-6273 FAX:075-753-6274
E-mail:kambe.taiho.7z@kyoto-u.ac.jp

<報道に関するお問い合わせ先>
京都大学 渉外・産官学連携部広報課国際広報室
TEL:075-753-5729 FAX:075-753-2094
E-mail:comms@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp

東京工科大学 法人本部 コミュニケーション企画部 メディア・広報課
TEL:03-3732-1154
E-mail:oomoriysysh@stf.teu.ac.jp

学校法人慈恵大学 経営企画部 広報課
TEL:03-5400-1280
E-mail:koho@jikei.ac.jp

滋賀県立大学 経営企画課
TEL:0749-28-8506
E-mail:keiei_kikaku@office.usp.ac.jp


2.研究手法・成果
 研究チームはこれまで、消化管からの亜鉛吸収や亜鉛依存性酵素に亜鉛を供給する役割を果たす亜鉛トランスポーターに関する解析を実施してきました。その研究過程で細胞外や細胞膜に局在して機能する亜鉛依存性酵素が、様々なリン酸エステル体化合物を加水分解していること、さらに、このリン酸エステル体の加水分解がいくつかの栄養素の細胞膜の通過に重要であることに注目しました。特に、リン酸エステル体の加水分解が吸収・代謝に必須となる栄養素としては、VB1(TDP)、VB2(FAD)、VB6(PLP)があり、本研究ではこの加水分解に関わる酵素を特定することを試みました。リン酸エステル体の除去に関わると予想される15種の酵素を1つずつ過剰発現させて加水分解活性をHigh Pressure Liquid Chromatography (HPLC) を使用して解析した結果、ALP、CD73、ENPP1、ENPP3の4つの亜鉛依存性酵素が重要な役割を果たすことを明らかにしました(図1)。研究チームは、別の先行研究において、これら4つの亜鉛依存性酵素の活性が亜鉛欠乏に応じて鋭敏に低下することを明らかにしていました。そこで、亜鉛状態を変化させて培養した培養細胞や亜鉛欠乏食で飼育したラットの血清を使用して、亜鉛栄養状態とビタミンBリン酸エステル体の加水分解との関係を解析したところ、この加水分解活性が亜鉛欠乏によって大きく減少することが明らかとなりました。これらの結果は、ビタミンB代謝が亜鉛栄養状態によって大きく影響されること、すなわち、亜鉛栄養状態を適切に保つことがビタミンB代謝において重要であることを明確に示した成果になります。

3.波及効果、今後の予定
亜鉛欠乏は非常に多様な症例を示します。その中にはビタミンB欠乏症と類似したいくつかの症状も存在しています。今回の研究成果は、亜鉛栄養状態とビタミンB代謝との間の関連性を示す興味深い結果となるだけでなく、亜鉛欠乏症とビタミンB欠乏症との間の類似性を説明し、亜鉛欠乏症の多様な症状に関する新たな知見を提供する成果となると考えています。今後は、本知見を臨床戦略に役立てたいと考えています。




本件に関するお問合わせ先
学校法人慈恵大学 広報課 
メール:koho@jikei.ac.jp
電話:03-5400-1280

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