女川町地域おこし協力隊がトリガイ種苗生産に成功!町内4か所で養殖を開始 町の水産業に“次の一手” 女川の新たな特産物として、産業創出&水産業再興へ
特定非営利活動法人アスヘノキボウ
宮城県女川町を拠点に地域課題解決に取り組むNPO法人アスヘノキボウ(代表理事 後藤大輝、以下アスヘノキボウ)に所属している女川町地域おこし協力隊の長谷川翔亮(はせがわ・しょうすけ)(30)が、技術的に難易度の高いトリガイの種苗生産に着任からわずか1年で成功。2025年7月より、町内4か所での養殖が本格的に始動しました。来夏には、女川初となる養殖トリガイの水揚げが期待されています。
本事業は、人口減少や漁業資源の不安定化が進む沿岸地域において、地域おこし協力隊による産業創出の可能性を示す事例として町内外から大きな期待を寄せられています。宮城県漁業協同組合女川町支所の杉山支所長は「環境変化でホタテやホヤが難しい状況の中、トリガイに大いに期待しています」と語ります。次世代の水産業を切り拓く新たな一歩を紹介します。
【小さな貝からはじまる、女川の未来】
トリガイの養殖は、成功すれば女川の水産業にとって新たな柱となる可能性を秘めています。現在、ホタテやホヤなどの既存の養殖魚種は、環境変化によって生産量が激減するなど、漁業者の不安は年々増加しています。今あるものを守るだけでなく、未来に向けて新しい選択肢を用意する必要がある中で、その役割を外から来た若者が担うことが、女川町に大きな意味をもたらしています。長谷川、今後、研究設備の拡充はもちろん、同様の取り組みに関心のある若者を受け入れる場づくりも積極的に行っていきたいと考えています。
【高学歴と成長企業でのキャリアを捨て、トリガイに魅せられた長谷川の物語】
長谷川は東京大学を中退し、米国ブラウン大学で環境学を学びました。卒業後は商社やUber Eats Japan、Oishii Farmでキャリアを積んだ長谷川ですが、環境負荷の低い食のあり方を模索するなかで「二枚貝の種苗生産」にたどり着き、退職を決意。とくにトリガイは「二枚貝の中で、潜在的なポテンシャルが最も高い」と分析し、独自に研究と情報収集を始めました。
そんな中、知人からアスヘノキボウ代表の後藤を紹介され、「新たな水産資源の開発・研究」に取組むために協力隊を募集していることを知り、自分が取り組んでいるトリガイ研究で女川町の力になりたいと考え、協力隊に応募を決めました。
【トリガイ研究に立ちはだかる 高いハードル】
トリガイ研究に立ちはだかったハードルは3つ。一つ目は高度な技術が必要なこと。トリガイの種苗生産は非常に難しく、取り組んでも成功しない業者は少なくありません。二つ目は研究フィールド確保の難しさで、三つ目は必要経費の多さです。最終的に稚貝が作れるようになるまで3年かかると言われているトリガイ。先の見えない技術開発において、融資や出資を募るのは現実的ではありません。
そんな3つのハードルを一気に超えるために大きな役割を担ったのが、国の「地域おこし協力隊」制度でした。生活費と活動費が一定額支給されることで、生活の基盤を確保しながら、地域の水産関係者らと連携して研究フィールドを得ることができ、必要な経費も賄うことができます。この制度によって、起業準備や試験的な活動を進めることが可能に。現在長谷川はアスヘノキボウ所属の地域おこし協力隊員として活動しています。
【長谷川が女川町を挑戦の場に選んだ理由】
女川町は東日本大震災で町の8割が被害を受け、基幹産業である漁業も甚大な打撃を受けた町。現在、「あたらしいスタートが世界一生まれる町へ。START ONAGAWA!」というスローガンのもと、復興と産業再興に向けて多様な取り組みを続けてきました。協力隊制度を活用した長谷川が女川町を選んだ理由は、町の持つオープンな雰囲気でした。
「“よそ者”でも受け入れてくれる雰囲気があった。町の人たちも、最初は不思議そうにしていたけれど、僕のやろうとしていることを少しずつ理解し、応援してくれるようになった」(長谷川)
長谷川は、漁協をはじめとした地元の水産関係者や町役場、NPO、県などの支援を得ながら、独自の試行錯誤を重ね、着任から1年という短期間で種苗の生産に成功。これにより、町内4か所(横浦、指ヶ浜、尾浦、小乗浜)での養殖が2025年7月から本格始動しました。また、現時点で8月の3週目にも各浜への稚貝の沖出しを予定しています。順調にいけば、来夏には、女川初となる養殖トリガイの水揚げが期待されています。
【長谷川翔亮(はせがわ・しょうすけ)プロフィール】
1994年生まれ。東京大学を中退後、アメリカ・ブラウン大学を卒業(2017年)。Uber Eats Japan、Oishii Farm Corporationにて研究開発業務に従事。2024年7月、女川町地域おこし協力隊に着任。NPO法人アスヘノキボウのもとで、女川町における新たな水産資源の研究・開発に取り組む。
自己紹介記事:
https://note.com/onagawa_blog/n/nb560fe55c8ef【特定非営利活動法人アスヘノキボウについて】
2011年3月11日の東日本大震災をきっかけに、2013年に宮城県女川町で設立したNPO。
『「希望の種」をこの地で芽吹かせる』をミッションに掲げ、人口減少や担い手不足といった社会課題に向き合いながら、異なるセクター(企業・団体)と連携することで、Collective Impact を生み出し、新しい地域のあり方を実現すること目指し、活動しています。
<実績>
創業支援者数:44社(創業本気プログラム32社)
2023年総務省 ふるさとづくり大賞 団体賞 受賞
配信元企業:特定非営利活動法人アスヘノキボウ
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記事提供:DreamNews